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なのはの顔が近い。
それはいつものことだけれど、それにしても近い。
吐息がかかるほどの距離。
そして私は自分でもはっきり分かるほどに顔が熱く、赤くなっている。
「な、なのはっ、顔近いよ」
「え〜〜、いいじゃない。久々に生フェイトちゃんに会えたんだから、じっくり見させて♪」
楽しげになのはが笑うたびに、声を発するたびに、吐息が私を撫でる。
駄目と言うことも出来ず、逃げ場を求めてギュッと目を閉じるとなのはがクスっと笑う。
そして、暖かい感触が私の唇に触れた。
グアっと急激に頭に血が上る。思わず目を見開くとなのはの指が私に触れていた。
「あ……」
「もー、そんなに無防備だと危ないよー。フェイトちゃん可愛いんだから、チューされちゃうでしょ」
と言ってなのはは私に触れていた人差し指に軽く口付ける。
か、間接キス……いや、それ自体は食事の時なんかによくしてるけど、なのはの仕草に頭がグラグラと揺れる。
「わ、私は別になのはなら……構わないよ」
「…………本当に?」
混乱しながら言った言葉になのはが問いかけてきた。
どこか真剣味を帯びた声音で。
だから、私も正直に頷く。
「フェイトちゃん、目閉じて」
静かに告げたなのはの言うままに瞳を閉じた。
また指を当てるのだろうかという疑念が頭をかすめたけれど、
なのはは両手を私の首の後に回して、そして、ぷるんとした柔らかな感触が唇に触れた。
そっと目を開くと間近にあるのはなのはの顔。
間違い無く触れているのは唇。
心臓が破裂しそうなほどに高鳴って、体が震える。
なのはは顔を離すと熱いため息をついた。
「はぁ……えっと、両想いってことで、いいのかな?」
「なのはが私を好きなら」
「そっかぁ、両想いだったんだ……」
なのはは力が抜けたように私の肩口に顔を埋めた。
まだ頭の整理がつかないけれど、それでいい。
ただ今は幸せな重みを感じながら彼女を抱きしめよう。
2011年12月10日(土) 01:08:59 Modified by sforzato0