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38-802

xxxx

なのはに嫌われるかもしれないと思うだけで、眩暈がし、フェイトは米神を強く抑えた。
「友達」で居られなくなるのは何よりも怖かった。
ただ、なのはのためになにかしてあげたくて、してあげられることが嬉しくて、そんなことを考えているだけで幸せだったはずなのに。
好きという純粋な気持ちだけが「恋」というわけじゃなかった。
触れ合えば体が熱を帯び、見つめられれば鼓動が早くなる。知ってしまった以上、知らなかったころには戻れない。
となりにいる人間が、そんなことを思っていると知ったら、なのははどう思うだろう。
この気持ちは伝えられない。
――拒否されたら、もう一緒にはいられない

しばらく、眠れない夜が続いた。答えを探してもわからない。苦しくて、苦しくて、フェイトは声をあげずに泣いた。
なのはへの想いが、いつか彼女を傷つけてしまうかもしれない。
そう思っていても、なのはから離れることはできなかった。

フェイトの抱えた「秘密」によって、二人の間には微妙な距離が生まれた。
それになのはが気づかないわけがない。
なのはは、気を使ってか、みんなが居るところで何かを問うてくることはなかったが、たまに、二人きりになったとき、遠慮がちにフェイトに尋ねる。
「フェイトちゃん、…なにかあった?」
フェイトは曖昧に言葉を濁し、口を閉ざす。なのはに悲しい顔をさせたくはないのに。
「私には、言えない?」
寂しそうな表情がフェイトの胸を締めつける。
「ほんとに、なんでもないよ」
フェイトの性格を知っているゆえに、なのはは、もうそれ以上は聞いてこなかった。

小さなわだかまりを残したまま、フェイトたちは卒業した。




管理局に入り、ひと通りのカリキュラムを習得すると本格的に実践がはじまった。
フェイトはその能力を高く評価され、多時空への航海も担当していたため、滅多にミッドにいることがない。
そのため、なのはと会う機会はずっと少なくなった。
このことは、少なからずフェイトにとって心を整理するためによい方向へとはたらいた。
たまに連絡をとりあい、休日があえば一緒に出掛ける。
ときどき会うなのはは、会わなかった間にずいぶん奇麗になっていて、フェイトの心臓はそのたびにドキリと波打った。
不自然にならないよう視線をそらして、なんでもない、と自分に言い聞かせる。
自分を誤魔化し続けることは、容易ではなかったが、それでもなのはの「友達」でありたかった。
嫌われるかもしれない、その恐怖がフェイトの心を縛っていた。
いっそ、なのはに恋人でもできたら、この気持ちがなくなるかもしれない、と考えることもあったが、
局内の噂にその名前を聞くだけで、不機嫌になってしまう自分の独占欲に自己嫌悪に陥った。

この人と共にありたい。
そう思える人に出会えたこと、それだけで十分幸せではないか。
こんなにも広い世界で、私たちは出会った。
自分が想うのと同じ強さで、なのはにも想って欲しい、なんて――
望んではいけない。

近づきすぎてはいけない。でも、離れることもできない。
やがて時は流れて、2年の月日が過ぎていた。

久しぶりになのはと会うことになったのは、管理世界での情報収集のためだった。
なのはと一緒に仕事をすることは多くはなかったが、それ程めずらしいことでもない。
二人ともその魔力値を買われていたため、管理外世界の戦闘地域への派遣やミッドでの合同捜査が来ることがあった。
だが、今回はめずらしいことに、管理世界で、しかも武装隊の派遣も無い。
先日、本局から送られてきた命令文に目を通しながら、フェイトはすっきりしない感じがしていた。
調査対象にもこれといった特異性はないようだし、ここまで大規模に調査する必要性は・・・、本局が情報を隠している?
首をかしげながらもその先を読み進めていくが、次のページで内容は終わっていた。
フェイトは腕組みをし、しばらくの間、コンソールを眺めていたが、添付ファイルがついていることに気が付いた。
とんとん、とパネルをタッチすると目の前にドーム式の建物の実相図が現れた。どうやら、今回の宿泊施設らしい。
宿泊施設は、コンテナ式、ドーム式に加えてほかにも数種類存在しているが、最近はドーム式が多い。
そんなことを考えていたが、ふいに、フェイトの目が画面にくぎ付けになった。まばたきを忘れ凝視する。
その一行はフェイトの見間違いではなかった。
「 1101室(2名): フェイト・T・ハラオウン、高町なのは 」




フェイトは視線の先になのはの姿をとらえて、歩みを止めた。いつしか習慣のようになっていた。
小さく息を吐き出して、気持ちを落ち着ける。
フェイトが一歩踏み出したところで、なのはがこちらに気が付いたのか少し早足で近づいてきた。
聞こえた弾む声に、フェイトも同じように返す。
「フェイトちゃん、久しぶり」
「うん、久しぶり、なのは」
笑顔を見せるなのはは、こないだ会ったときよりも少し大人びて見えた。
「どう思う?」
「…え?」
一瞬何を問われたのかと思い、心拍数がはねた。続けられた言葉に、フェイトはああ、と相槌をする。
「本局からの調査資料」
「私も、何か変だと思った。裏情報があるのかもしれない」
「正確にはまだわかってないからあえて伏せたとか?」
「うーん、どうだろ」
フェイトは思案しながらまわりを見渡した。調査員の参加名簿には年齢が載っていなかったから気づけなかったが、
どうやら、集められた人員は10代後半から20代のようだった。
ただの偶然だと言われればそれまでだけど、これだけの人数だ、試験的な・・・?
そんなことを考えていたが、なのはの一声によって思考は中断した。
「それより、フェイトちゃん、部屋わりみた?」
「う、うん」
うれしそうにするなのはに答えながら、フェイトはいつになく焦っていた。
数日なら気にすることもなかったのだが。調査期間は、2週間を予定していた。

中期、とはいわないまでも、2週間という期間のため、部屋にはある程度のものが完備されていた。
キッチン、シャワールーム、トイレ、寝室、ミッドにあるフェイトの寮とほとんど同じだ。
食料品は必要な分だけ食堂隣接の売店で手に入る。
とりあえず1日目は、上層部からの説明と、各チームでのミーティングのみにとどまった。
「一同解散」の号令で、皆それぞれにばらけてゆく。若い人ばかりということで、いつもよりも騒がしい。
人の流れにのって、フェイトとなのははそのままの足で食堂へと向かった。
この時間が一番混むということは今日学習した。
運よく空いたテーブルにすかさず移動して、待ち人の視線を受けながら、二人は急いで夕食を食べた。




部屋に戻ったフェイトは、まず、持ってきた荷物を整理しはじめた。
こちらに到着したときは時間がなく、そのままにしていたのだ。
といっても、洗濯も可能だから、着替えにしてもそれ程量があるわけではない。
鞄から物を出していると、なのはに呼ばれた。何の構えもなく振り返ったフェイトの頬は瞬時に紅色へと染まる。
「着替えないの?」
「―っ、き、きがえます」

あのころの自分とは違う、これは思い違いだ、そう思っても、うまくいかなかった。
きっちりと閉じ込めておいたはずの想いは、いともたやすくにフェイトの外側へと漏れ出してしまう。
指がぶつかっただけで震えてしまう体は、たとえどんなにつくろってみても、これが恋だと叫んでいた。

xxxx

フェイトの様子がおかしいと感じたのは5日目が過ぎたころだった。
仕事のミスはなく、周囲への態度の変化もなかったが、何か違和感があった。
何となく、もやもやとした思いを抱えながら1週間が過ぎたころ、それは確信へと変わった。

中学三年のある日を境に、フェイトとのスキンシップはほとんどなくなっていた。
当時、なのはは自分がフェイトの気に障るようなことをしたのだろうか、と悩んだ。
直接尋ねもしたが、フェイトは何も教えてはくれなかった。ただ、苦しそうに、なんでもないと繰り返す。
なんでもないはずはなかった。でも、それ以上は聞けなかった。
本人が話したくないと思っているのなら、話したいと思うまでは待とうと思った。
あの頃のフェイトがはなつ雰囲気にどことなく似たものがあった。
少しピリピリして、苦しそうで、だけど、平静を装っている。

待つ方が楽だった。知ってしまうのが、少しだけ怖かった。
年相応に子供だったのだ。出会いや別れがたくさんあって、変わってしまうことを恐れていた。
でも、今は違う。自分の中には、変わらない想いが存在している。
フェイトに嫌われたくはないけれど。もし、嫌われたとしても、また分かり合える自信が今のなのはにはあった。




フェイトがその日帰宅したのは、0時を少しまわったころだった。
まだ起きているなのはに、フェイトは一瞬驚いたが、苦笑して、遅くなったことを詫びた。
メール、とつぶやいたフェイトの言葉を、見たよ、の一言で遮る。
「今日はずいぶん遅いんだね」 「うん、ちょっと気になるところがあったから」
「わたしも手伝うって言ったのに」 「ありがとう。でも、大丈夫だから」
「ご飯は?」 「―-食べてきたけど」
「どこで?」 「どこって、食堂だよ?」
「まだ開いてたんだ・・・」 「あ、えと、売店は24時間だから」
帰ってそうそう、質問攻めにされるとは思ってもいなかったフェイトは困惑したものの、3つ目の質問を投げかけられる前に、
顔の前に手をかかげ、ストップ、と幾分強い声を発した。
「もう遅いから寝た方がいいよ」
出された手をつかもうと腕をのばしたが、それもかなわない。
なんだか、無償に悲しかった。
なのはの表情を見て、フェイトは顔を歪めたが、何も言わなかった。

シャワーをしている間に寝ておいてと言われたが、なのははフェイトを待った。
その間に飲もうと思ってテーブルの上に置いたコーヒーは、口をつけることなく冷めてしまっている。
少し、緊張していた。
水音がやみ、ドライヤーの音が聞こえたところで、なのはは寝室へと向かった。

することもなく、デジタル時計の秒表示を見つめていたが、扉の向こうから聞こえてきた足音に、なのははベッドから腰を浮かせた。
予想していたのか、フェイトはなのはを見ても驚くことはなかった。
「少し、話いいかな?」
「明日じゃダメ?」
「ダメ」
即答で却下すれば、フェイトが苦笑を浮かべた。
なのはが一歩つめよると、フェイトがすっと下がり、その距離を保つ。
なのはにはそれが、今の自分たちの関係をそのままあらわしているような気がした。
話をするには何も問題のない距離、でも、触れるには少し遠い。




「フェイトちゃん、無理してない?」
「してないよ」
「…嘘。無理してるように見えるよ」
「そんなことないよ」
「私には言えないこと?頼りにならない?」
「ほんとに、…なんでもないから」

あの頃と同じように返すフェイトが腹立たしかった。
でも、それよりももっと、悲しかった。

「フェイトちゃん、私といるの、そんなに辛い?」

フェイトは、黙ったままだった。沈黙は肯定に等しい。
想像していたものよりも、はるかに大きい衝撃がなのはを襲った。実際に本人から伝えられるとこんなにも痛い。
心が折れて、泣き出しそうになるのを必死でこえた。今泣いたって、フェイトをさらに困らせるだけだ。
納得はしていなかった。でも、フェイトが沈黙を続けるなら、このまま言い合っても時間が過ぎるだけだろう。
今夜はすでに遅いし、もう寝た方がいい。
わかった、となのはが口にしようと思ったとき、フェイトがぽつりとつぶやいた。
それは、本当に小さな声だったから、なのはは聞き間違いかと思った。
だが、もう一度こぼれ落ちたその言葉は、聞き間違いではなかった。確かに「好き」って――

「好きなんだ…」

「なのはが、好きなんだ」
「わたしも、フェイトちゃんのこと――」
寂しそうな、ぎりぎりの瞳にじっと見つめられた。フェイトが、力なく首を振って、息をしぼりだす。
まるで、隠しておけない秘密を苦しそうに告白するように。




「違う…。私の好きとなのはの好きは…」

違う、とつぶやいたフェイトの意味を問うよりもはやく、重なってきた唇は、信じられないほどやわらかかった。
舌で舌に触れられると、それだけで全身の力が抜けてしまった。
密着していた体が、さらに強く押し付けられ、肩に体重をかけられたと思ったら、真後ろにあったベッドに押し倒されてしまう。
フェイトの目にはなのはの知らない光が宿っていた。
足の間に強引な膝が割り込んで首筋に歯が当たった瞬間、なのははきつく目を瞑った。背中がざわざわしていた。
だが、いつまでたってもそれ以上の動きをフェイトはしてこなかった。

フェイトは、自分の肩をきつく抱きしめて震えていた。
とりあえず、ベッドから身を起こし、しばらくの間、その光景をながめていた。どうしていいのかわからなかった。
電池の切れた人形のように、身動き一つしなくなったフェイトが、苦しげに何度も息を吐き出す。
フェイトの全身は、すべてを拒絶しているようだった。
なのはは一瞬悩んだものの、その細い肩へと手を伸ばしていた。
そっと触れたつもりだったが、フェイトの体はびくりと硬直し、緊張しているのが伝わってくる。
何を言えばいいのだろう
なのはもひどく緊張していた。不用意な言葉で、フェイトを傷つけたくはない。
永遠とも思える沈黙は、しかし、それほど長くは続かなかった。

「なのはに触れたい、抱きしめたり、キスしたり、もっと――」
フェイトの瞳から真珠のような丸い涙がふたつ零れ落ちる。それを見て、なのはの心は引き裂かれるような痛みを覚えた。
うつむいてしまったフェイトが背を向け、吐き捨てるように言った。
「気持ち悪いよね」

「気持ち悪くなんてないよっ!」
とっさに口から飛び出した声の大きさに、なのはは自分でもびっくりした。
フェイトの告白や、突然のことに驚きはしたが、全然、嫌ではなかった。
同性同士が体の関係を持つことを考えたことはなかったが、それ以前に、自分が誰かとそんなふうになりたいと思ったこともなかった。
告白されたことは何度かあったが、そのどれも、なのはは断わっていた。
相手と一緒にいるビジョンが、どうしても思い描けないのだ。
共に歩んでいきたい。そう思う人は居た。



フェイトだ。
なのはにとって、フェイトは特別だった。その出会いが特殊だったというのも確かだ。
でも、たとえどんな出会い方だったとしても、それは変わらない気がした。
フェイトと抱き合いたいとか、たった一人の恋人になりたい、と願ったことはなかった。
まわりから恋愛オンチといわれる自分のことだから、そういう感情に鈍感なのかもしれない。
ただ、やさしくして、やさしくされたい。
そんなふうに思っていた。この感情が一体どこからくるのかわからなかったが、恋とか愛を超えた先にフェイトは存在していた。
運命というものが、もし、あるとしたなら、きっとこれ以上のものはない、といつからか感じていた。

「気持ち悪くなんてないよ」
もう一度、こんどはやさしく語りかけた。フェイトの肩をつかんで、少し強引に引き寄せた。
おびえるように体を丸めているフェイトを抱きしめると、泣き出しそうな息づかいに混じり「ごめんなさい」と何度も聞こえてくる。
フェイトが、こんなふうに泣くのを見るのは初めてだった。

「フェイトちゃんに何されたって、きっと、ううん、絶対、嫌いになんてならないよ」
この気持ちだけは、きっと永遠に変わらないことをなのはは知っている。
フェイトがゆっくりと顔をあげた。自分を見上げる熱っぽい瞳、濡れた唇、少しでもつつけば、何かが弾けそうに見えた。
これから起こることを想像しても、ちっとも不快ではない。
「わたしは、フェイトちゃんが好きだよ。誰よりも――」
なのははフェイトの手を引いて、自分の胸に抱きしめたまま、ゆっくりと背中から倒れこんだ。

フェイトの行為はたどたどしく、緊張のためかその指先は震えていた。
壊れ物を扱うようになのはに触れてくるそれは、ただただ、やさしかった。

xxxx

肌に当たる空気が冷たくてなのははふと目を覚ました。
自分は必ずシャツを着て寝るようにしているのに、今は何も身に着けていない。
同時に隣で誰かの寝息が聞こえ、驚いて飛び起きると、それはフェイトだった。
だんだんと記憶が戻ってくる、と体が熱を帯びはじめる。



「わ、わわっ…」
静かな部屋の中に響いた自分の声に、なのははあわてて口をふさいだ。
フェイトの様子をうかがう。やわらかな寝息が聞こえてきて、ほっと肩をなでおろした。
そういえば、フェイトの目覚めは悪かったかもしれない。すやすやと安心しきったように眠っている。
「ふふっ、かわいい」
フェイトの寝顔を見るなんて、本当に久しぶりな気がした。大人びた顔は、寝ているとあの頃のあどけなさを見つけることができる。
「…どんな夢、みてるのかなぁ」
起こさないように気をつけながら、頬に残る涙の痕をそっとなでてやる。
フェイトはいつから自分のことを想っていてくれたのだろう。
伝えられない想いに、幾度の夜を誰にも気づかれずに泣いたのだろう。
みぞおちの奥がきゅっと締め付けられるように痛んだ。
なのはは、しばらくの間、複雑な気持ちでその安らかな寝顔を眺めていた。

フェイトが小さく身じろぎをしたことで、なのはの思考は現在へと戻された。
「ぅん…、なのは?」
舌足らずになのはを呼ぶ声に、思わず笑みがこぼれる。驚かさないように小さな声で、おはようと答えてやる。
フェイトは数回まばたきを繰り返して、その瞳になのはを捕らえるとふにゃりと破顔した。まだ、寝ぼけているようだ。
あぁ、もう、かわいいなぁ、などとなのはは考えながらその様子を見ていた。
「うん、おはよ――」
う、が発せられる前にフェイトの声は途切れた。
人は本当に驚いたとき、声がでなくなるというが、きっと今のフェイトはそんな感じかもしれない。
なのはが黙ったまま、フェイトを見つめる。
フェイトの顔は、またたく間に赤くなり、青くなり、白くなり、最後にまた赤くなった。
実にいいリアクションをするフェイトがちょっと可笑しくて、声をだして笑ってしまう。
なのはが、もう一度おはようと言うのと同じタイミングで、フェイトはベッドから飛び起き、姿勢を正した。
「ごめん」
深々と頭がさげられる。
フェイトは裸ではないが、シャツしか身に着けておらず、前のボタンはすべて外れてしまっている。
見え隠れする素肌に一瞬どきりとして、視線をそらしてしまったが、あわてて元へと戻す。
なのはは怒っていた。
すばやくシーツを体に巻きつけて起き上がると、両手を伸ばし、フェイトの頬を左右から思いっきり引っ張ってやる。
手加減は一切なしだったから、フェイトがすぐに涙目になる。それでも離してやらない。






「フェイトちゃん、昨日、私が何て言ったかちゃんときいてた?」

たっぷりと十秒は数えてから、手を離した。なのはの親指の形きっちり、フェイトの頬が赤く色づく。
かなり痛そうに見えたが、なのはは考えないようにした。
え、とか、う、とか、おおよそ言葉ではないものを発してから、フェイトがおずおずと聞いてきた。
「その、…怒ってる、よね?」
「怒ってる」
「……そうだよね、怒るのも無理ないよね。私、なのはにひどいこと……」
今にも泣きだしてしまいそうな声に、なのはは苦笑する。きっとこのまま黙っていたら泣き出すかもしれない。
少し迷って、デコピンをお見舞いしてやる。今度はちょっと手加減した。
「―っあいた!」
額を押さえて、涙目のフェイトを見ていると、自分がいじめっ子のような気になってしまう。
勘違いしているフェイトへのお仕置きはこの辺でやめておくことにした。
フェイトはもうずっと長い間、心が、痛かったはずだ。
なのはがキッと睨みつけると、今度は何をされるのだろうと、フェイトがさらに身を小さくした。
「怒ってるけど、フェイトちゃんが考えてる理由とは違うの」
「え?」
ちゃんと考えてね、いたずらっぽく微笑む。予想通り情けない顔になるフェイトを見て、いじりたい、と少しうずうずしてしまったけれど――
「とりあえず、もうそろそろ起きた方がいいかも」
時計を指さして言えば、それを見たフェイトも「あ、もうこんな時間っ」と慌てだした。
フェイトがシャワーを浴びている間に、ベッドのまわりに脱ぎ散らかした服を片付け、コーヒーを沸かす。
なのはが出てくると、出来たてのコーヒーと、焼き立てのパンが用意してあった。
時間がないので、二人とも無言ですます。

部屋のかぎを閉め、駆け出したなのはだったが、フェイトがついてこない。
振り返れば、ドアの前で立ち止まったまま、もじもじしている。
不思議に思い引き返すと、フェイトはうつむいていた。
「フェイトちゃん?遅れちゃうよ?」
ウンともスンとも言わないフェイトに痺れをきらし、その腕をひっぱろうとしたとき、消え入りそうな声でフェイトが問うてきた。
「私は、まだ……、なのはの、友達、……かな?」
見つめてくる瞳は不安そうに揺れ、握りしめたこぶしが震えている。
そんなことを聞いてくるフェイトに内心あきれつつ、でも、そんな彼女が愛おしかった。




「もちろん!親友だよ!」
なのははフェイトとの距離をさらにつめる。
「それに――」
背に腕をまわし、力いっぱい抱きしめた。
耳元でそっと囁く。

――かわいい恋人

xxxx
2011年12月10日(土) 00:55:59 Modified by sforzato0




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