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「じゃあねすずか、また明日」
「ばいばいアリサちゃん、また明日」

いつも通りの帰り道。
鮫島さんにお辞儀をして、アリサちゃんの車から降りる。我が家こと月村の屋敷が目の前だった。
扉を閉めると、そのまま車は走り去っていく。窓の向こうに手を振るアリサちゃんが見えた。
屋敷の扉を開けるや否や、お帰りなさいと声がした。私専属のメイドのファリンだ。
ただいまと言って扉を閉める。廊下を通って私の部屋に着くと、食事の時間にお呼びしますのでと言って
ファリンは去っていった。
いつも通りの、昔から変わらない生活。ただ一点を除いては。
鞄から携帯電話を取り出して、ささっとメールを打ち込む。

To: 高町なのは
Title:
Text: 次の日曜日、デートしない?

そのまま送信ボタンを押した。携帯を机に置き、制服を脱いでハンガーにかける。
着替えが終わった頃に着信音が鳴った。

From: 高町なのは
Title: Re:
Text: いいよ!何処へ行く?

ふと頬が緩む。何処へ行こうか。ショッピングモールか映画館か。少し遠くの電気街も良いかも知れない。
返信画面を開いて、思うがままに文を連ねる。きっと今夜はずっとこの通りだろう。
なのはちゃんとの秘密の交際。それだけで私は心が浮き立つのを抑えられなかった。


【彼女の悲劇】


なのはちゃんとの――正確にはアリサちゃんともだが、その出会いを忘れたことは一度たりともない。
私のヘアバンドを取ったアリサちゃんに、その頬をはたいたなのはちゃん。まるで漫画の一コマのような構図。
でも現実は漫画のようにはいかないもので、そのまま二人は取っ組み合いの大喧嘩。
おろおろしていた私は、気がつけばやめてと叫んでいた。
そうして私達は親友になった。
二人は絵に描いたいじめっ子でも王子様でもなく、私と同じただの女の子だったのだから。
きっとその時に、私はなのはちゃんに惚れてしまったのだろう。

しかし彼女に魅入られたのは私だけではなかった。アリサちゃんもそうだったのだ。
でもアリサちゃんは、彼女に対して好意を素直に表せない性分だった。
負けん気の強いなのはちゃんとは、衝突してしまうこともしばしばだった。
だから私は、二人の仲を取り持つように徹した。彼女の一番になれなくとも、
彼女の傍にいられればそれでいいと思っていたから。それに私はアリサちゃんのことも大好きだった。
私達の世界は三人で完結していた。幼かった私は、それが永遠に続くと信じていた。

その二年後、私達の世界に二人の女の子が加わった。フェイトちゃんとはやてちゃんである。
そして私は、なのはちゃんが私達の世界から脱しつつあることを知った。
きっと遠くない先に、彼女は私の手の届かない世界へと行ってしまうのだと。
彼女と一緒にいるためには、資産も家柄も何の役にも立たなかった。
魔力資質という力だけがその資格だった。私もアリサちゃんもそれには恵まれなかった。
彼女と最初に出会ったのは私達なのに、彼女と生きていけるのは後から出会った二人だった。
しかし不思議と嫉妬の感情は起きなかった。
ただ私は五人になった私達の世界が、穏やかに続けばいいと思っていた。いつか訪れる彼女との別れの時まで。



それでもなのはちゃんとの別れを思うと、私の心が大きく波打つのは間違いなかった。
行かないでと縋れば良かったのかも知れない。
しかしそうすれば、私達の世界にはたちまち亀裂が入ってしまうだろう。私にはそれが何より恐ろしかった。
穏やかな日常と荒れ狂う恋心。どちらを取るかの狭間で、私の心はぎしぎしと軋み続けた。
彼女と会う度に胸が張り裂けそうになった。

 ◆

数か月前の、ある日の帰り道。
珍しくなのはちゃんと二人きりで帰る機会があった。
公園に寄っていこうかと、彼女はそう言った。私はそれを躊躇なく受諾した。
二人でベンチに座って、ふと空を見上げる。真赤な夕陽が雲の狭間から顔を覗かせていた。
それから他愛もない話をした。話題ならいくらでもあった。
なのはちゃんもフェイトちゃんもはやてちゃんも、この頃は学校を欠席することが多くなったから。
彼女が楽しげに彼方の世界のことを話すと、私は適度に相槌を打って質問を返した。
そうすると彼女はますます機嫌を良くして話を続ける。
これが私の役割だった。かつては二人の、今では四人の調整役であることを自らに課してきた。
彼女の瞳を覗くと、そこにはこちらの世界ではなくあちらの世界が映っているような気がした。
彼女は最早別の世界の住人になりつつあったのだ。

そんななのはちゃんを見ているうちに、心の奥底から何かがふつふつと沸き立つ感覚がした。
以前なら難なくそれを抑え込めたはずだった。
毎日彼女に会えたかつてなら、毎日彼女と帰れたかつてなら。
五人でひとつの私達の世界を、壊してしまうことが何より恐ろしかったはずだった。
けれども今は、彼女の前には私しかいなかった。
これは彼女を私だけの世界に引き込める、千載一遇の好機に他ならなかった。
夕陽を覆っていた雲はとうにかき消えている。
円い赤色を映した私の瞳は、きっとぎらぎらとした真紅に滾っていただろう。

そして。
私の一世一代の告白は成ったのだった。
両腕でなのはちゃんをベンチから逃げられないようにして、好きだと目を合わせて言った。
きょとんとする彼女にキスをして、大好きと泣きじゃくって彼女の胸にしがみついた。
初めて会った時と同じように、私はただ溢れる衝動のままに想いを伝えた。
なのはちゃんは私を抱き寄せてなだめてくれた後に、困ったような顔をしていた。
当然だ。同性の友人に突然愛の告白をされれば、誰しもそのような顔になるだろう。
あちらの世界に行ってしまうまで、いや一年でも一ヶ月でも一週間でも、いや一日だけでもいいから
私の恋人になってくださいと縋りついた。
この関係は誰にも知られなくていいから、誰にも知られないようにするからと。
私は完全に駄々をこねる子供同然だった。
ただ彼女と一度だけでもいいから、二人だけの世界に居たかっただけなのだ。
顔を上げるとなのはちゃんは微笑して、いいよと一言告げてくれた。

嬉しくて涙が溢れた。
それがたとえ、終わりの決まった誰にも明かせぬ関係だとしても。


 ◆

幾度目かの着信音がした。新着メールを開く。

From: 高町なのは
Title: Re: Re: Re: Re: Re: Re:
Text: それじゃあ、九時に駅前の広場で!

了承の返信を送ると、携帯を閉じて机に置いた。そのままばたんとベッドに倒れ込む。
私は幸せだった。
なのはちゃんと二人きりなら私は潤滑油の役割ではなく、ただの内気な女の子に戻ることが出来たのだから。
それは紛れもなく私と彼女だけの世界だった。
この前は髪飾りを買いに行った。フェイトちゃんの黒いリボンへの対抗心から、
彼女に私と色違いのヘアバンドを薦めた。私は桜色のリボンを買って、髪を一つに束ねてそれで結んだ。
しかしこの関係が秘密である以上、それを大っぴらに使うことはできなかった。
突然髪型をお揃いにしようものなら、誰かに訝しまれるかも知れない。
アリサちゃんもフェイトちゃんもはやてちゃんも、そういう感情の機敏には極めて聡い。

私は彼女を手に入れるために、五人でひとつの私達の世界を壊すことが最後まで出来なかったのだ。
だから交際を隠そうとした。行かないでと言えなかったから、交際に期限を設けた。
なのはちゃんに譲歩のつもりで言った言葉は、全て私の臆病さに他ならなかった。
アリサちゃんなら、なのはちゃんを手に入れるために世界を壊すことも厭わなかっただろうか。
行かないでと縋りつけただろうか。ならば彼女にふさわしいのは、私よりアリサちゃんではないのか。
彼女を連れていったフェイトちゃんが妬ましかった。彼女と生きていけるはやてちゃんが羨ましかった。
少し前までは嫉妬などしなかったはずなのに、今となってはこの有様だ。
枕に顔を埋める。日曜のなのはちゃんとのデートのことを考えた。
彼女はちゃんとヘアバンドをつけて来てくれるだろうか。その時は力一杯甘えてしまおう。

悲しくて涙が溢れた。
それがとうに、誰にも知られず終わることが決まった関係だったからだ。

 ◆
2012年11月18日(日) 22:43:47 Modified by sforzato0




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