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5-801

801 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 22:12:15 ID:QDMZNuuD
なのヴィが好きなんだ
だから・・・落とさせてもらうよ

802 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 22:13:01 ID:QDMZNuuD
どれほどの時間そうしていたのだろう。
町並みを赤く染め始めた夕日を背にしてフェンスに寄りかかり、なのはとヴィータの二人は並んで佇む。

なのはは静かに流れてくる風に身を任せ、目を閉じる。
ヴィータはそんな彼女から僅かに視線を逸らす。
何も言葉を交わすことなく。
一人分の空間を間において。
車の音、電車の音、子供の声。
遠くから聞こえるそれらが風と共に穏やかに流れる。
とりわけ大きなビルの隙間を零れ落ちるように沈む夕日が、地面にその影を長く落とす。

ヴィータは視線をなのはから逸らしたまま、唐突に口を開いた。

「あたし、お前のことがキライだから」


803 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 22:13:54 ID:QDMZNuuD

静かに目を閉じたままの彼女は何の反応も返さない。
それは予想した上での事だったのだろう。ヴィータもそれ以上口を開くことはなく。
電車の音、口ぐちに別れの挨拶をする子供たちの声。
そういったものがまた遠くで流れ、沈黙が重く響く。

静かにそよいでいた風が突如として強く吹き、彼女たちの髪を大きく揺らした。
なのはに向けて伸びたそれは、しかし間に置かれた距離を飛び越えることはない。
彼女の肩に触れるか触れないかというところで弱まった風に、諦めたように力なく元の位置に戻る。

「・・・知ってるよ」


804 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 22:17:13 ID:QDMZNuuD

彼女の言葉に、ヴィータの頬がさぁっと赤らんだように見えたのは気のせいだろうか。
あとにはただ沈黙だけが流れる。
赤や青のライトを瞬せながら、飛行機がゆっくりと赤と紫のグラデーションの中に消えていく。
相変わらず二人に言葉はなく、間に置かれた距離に変化はない。
ただ、ずっと繋いだまま離されることのなかった二人の手が地面に影を落としていた。

その影の手がぎゅっと握り直されたように動いたのは、一体どちらのものだったのか。

805 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 22:22:54 ID:QDMZNuuD

小さく鼻を啜る音が響く。
やがて、ヴィータの肩がびくりと震え。
次の瞬間、ヴィータはなのはの腕の中にいた。
反射的に跳ね除けようとしたその手が二人の間に挟まれる。
頬を寄せるというよりも、まるで首を絡ませようとするかのように深く抱きしめられて。
力強く背中に回されたなのはの腕とは裏腹に、小刻みに震えるその身体。

声はない。

自然と、二人の間にあったヴィータの手が、その背中に回された。

806 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 22:28:16 ID:QDMZNuuD

ヴィータの腕に力が込められる。
まるで自分の体に取り込んでしまおうかとしているかのように、強く。
息苦しさ故か、それとも別の何かなのか、ヴィータが顔をなのはの首筋に埋める。

ビルの谷間に夕日が消えていく。
同時に、地面に落ちる一つとなった二人の影も黒く滲んで薄くなる。
再び遠く響き、消えていく飛行機の音。
電車の音。
子供たちの声はもう聞こえない。

肩口からくぐもった声が漏れる。

「だからおまえがキライなんだよ・・・バーカ」

彼女の手が、強く背中のシャツを掴んだ。

807 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 22:28:49 ID:QDMZNuuD
終わりです。
駄文失礼しました
2007年10月07日(日) 02:41:54 Modified by nanohayuri




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