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6-313-1

後編

313 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:27:20 ID:OHUSLNCm
とりあえずなのフェイ書き終わったんで、投下しようと思う。
おまけで書いた戦闘シーンが妙に長くなっちゃったけど、よければ読んでください。

314 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:28:32 ID:OHUSLNCm
フェイトは目の前の男を睨み付けていた。
辺りは夜の帳が落ち暗く、空にあるはずの月明かりも雲に覆われ、輪郭すらはっきりとは見えない。
だが、見えないことはフェイトにとってどうでもよかった。
睨み付けることで、一つの問題を忘れたかったのだ。
忘れることによって、戦闘のみに集中したかった。
魔法はすべて殺傷性設定。
相手を殺す、その一つのことがフェイトを迷わせていた。
相手は犯罪者。
重罪により命令はDead or Alive。
生死問わず、つまり場合によって殺すことはあっても、本来無理に殺す必要もないはずだ。
しかし、一つ前の事件がフェイトに重く圧し掛かっていた。


前の事件もそう難しい任務ではなかった、クロノや他の仕事になれた執務官にとっては…。
しかし、まだ執務官に成り立ての新人にとってもっとも過酷ともいえる任務だった。
あるロストロギアのレプリカに取り付かれた対象者の抹殺。
つまり、人間を殺すことだ。
フェイトが執務官になると決めた時に、リンディやクロノに言われた。
情を捨てて、非情とも思われることにしなければいけないと。
犯罪者と対峙するということは、人間の本質を多くみることになると。
あの頃はまだ半分以上理解はできていなかった。

315 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:29:20 ID:OHUSLNCm
それはフェイトが思ったよりも任務は簡単だった。
相手は理性も何もなく、ただ暴れていた。人間らしさなんて残っていなかった。
だから何も考えずやれた。
終わったあとも何も考えなかった。
いや、フェイトは考えないようにしていただけだった。
今回の任務のデータを渡された時、思わずフェイトは吐いてしまった。
気持ち悪かった。
初めて人間を殺したという事実の認識、そして試されてる現実に。
データには再犯による殺人行為を犯した魔導師を生死問わずと書かれていた。
つまりこれは上による試しだろう。
本来ならフェイトがでるまでもない相手だ。
魔力値も高くなく、武装局員を数人つれていけばすぐに終わる問題だ。
これは執務官をやっていくのなら、超えねばいけない壁ということだ。


フェイトはやるしかないと思った。
ずっと一つだけ決めていたことがある。
そのためなら全てを掛けてやり通す、これはその道へ続くただの石ころだ。
こんなとこで転ぶわけにはいかない。


男に投降の意思があるか一応確認する、これは絶対に必要なことだ。
しかし、やはり男は投降しなかった。
男もわかっているのだ、次捕まれば死刑だと。
基本的にミッドチルダの法律は軽いが、再犯による犯罪行為に対しては重い。
法律は人間を守るためにある。
しかし更生しなかった人間を守るためにあるわけではない。
再犯による殺人は9割近く死刑だろう。
その事実を男も知ってるのだ。
何故人を殺すのか、そして何故また殺人をするのか……フェイトはその疑問を感じた。
だがそんなことを聞く余裕はなかった。

316 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:30:45 ID:OHUSLNCm
辺りを覆っていた雲が引いた。
月明かりが照らしだし、男の顔が見えてきた。
データで顔はわかっていたが、改めて確認するにしてもいい気分はしなかった。
男は血の着いた顔で、薄く笑っていた。
フェイトには不思議だった。
何故男は笑っているのか、そして付着した血は一体誰のものか?
その答えはすぐに判った。
男の足元まで月明かりが届き、はっきりと見えるようになったのだ。
そこにあったのは少女の死体だった。
周囲には内臓がぶちまかれ、体の一部は吹き飛んでいた。
そしてフェイトの迷いも同時に吹き飛んだ。


《Reload Cartridge, Haken Form》

デバイス内の薬莢から魔力が送られ、
漆黒の戦斧は姿を変え雷を燈した。
フェイトは考えるより先に体が動いた。
地を蹴ると同時に飛行魔法を展開し、空中に身を躍らせた。
男に襲い掛かる。
だが、男もむざむざやられるつもりはない。
突っ込んでくるフェイトを見て、急いで防御魔法陣を生成する。
男のバリアは青く、ミットチルダ式の文字を描きながら円状の形となす。
フェイトはそのままバリアごと男に切りつける。
そして金色の稲妻と青き盾が衝突した。
魔力が激しく激突し、火花を散らす。
拮抗は一瞬でバリアに罅が入った。


317 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:31:33 ID:OHUSLNCm
だが、冷静さの失ったフェイトの刃は力押しであり、
バリアの角度を変えることで、刃の軌道を逸らす事ができた。
刃の軌道が逸らされフェイトに一瞬の隙が生まれる。
それと同時にバリアが砕け散り、男は回避行動に移った。
空中に浮かび、距離を離そうとする。
一瞬の攻防で男は勝てないと悟り、逃げることに専念するつもりだ。
しかし周囲には、フェイトが張った結界があった。
逃げ、隠れ、そして結界を破る。
とても単純なことだが、男にとって一番今重要なことだった。
だが、男は逃げ切れる自信があった。
何故なら相手は一人であり、
男は殺すことに慣れていたが、それよりもずっと逃げることに慣れていたからだ。

刃を防がれることでフェイトは、逆に冷静さが戻った。
そして、防がれたことは問題なかった。
相手の魔力が削れたのがフェイトには手にとるように分かったからだ。
フェイトは一呼吸置き戦術を構築し、杖を持っていないほうの手を相手に向けた。

「ランサー、セット」
《Photon Lancer》

フェイトの言葉に反応し、右腕にもったバルディッシュが反応する。
フェイトの周囲に、雷を伴う金色の小型な光球が4つ発生した。

「ファイア」



318 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:32:06 ID:OHUSLNCm
発射されたフォトンランサーは、高速で真っ直ぐに男に向かって飛んだ。
威力は平均的な魔導師には十分高く、直撃すれば一撃で昏倒する場合もある。
弾速も速く、空気を切り裂く音が辺りに響いた。
欠点としては真っ直ぐにしか飛ばないことと、弾の強度が低いことだ。
稲妻を伴った金色の弾が飛んでくることに男は気がつき、緊急回避行動を取る。
男は逃げ、フェイトはそのまま追うように飛翔し、フォトンランサーをフルオートで放つ。
フェイトにとって、フォトンランサーはただの牽制だ。
当たらなくともよい。

男は安心した。
これなら勝てはしないが、逃げ切れると。
弾速は速いが照準はたいしたことない、そう思った。
回避行動を取りつつ、魔力を杖に集め放つ。
放つと同時にさらに飛行魔法を加速させる。
フェイトには男が3時の方向に逃げながら、射撃魔法を放つのが見えた。
それはフェイトにとっては予定調和だった。
フェイトには青き閃光が迫ってくるのが見え――。

「ハーケンセイバー」

バルディッシュを振るい、デバイスに宿る魔力光刃が飛翔する。
ハーケンセイバーは飛翔しながら高速回転を起こし、円状へ形を変える。
男から放たれた魔法と円状の刃はぶつかり、
閃光は切り裂かれ、何も存在しなかった様に刃は飛んだ。
そして斬撃用に圧縮魔力で作られた刃は逃げる男の腕を掠めた。
防護服を切り裂き、肌を浅く傷つけ血が滲んだ。
ここにきて、男の顔に戸惑いが浮かぶ。
以前管理局に追われている時はすべて非殺設定だった。
ただの甘ちゃん集団だと思っていたのだ。

319 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:32:51 ID:OHUSLNCm
捕まえて死刑にするだろうということは分かってはいたが、
まさか殺しにくるとは思ってはいなかったのだ。


刃は弧を描き、そのまま自動誘導で男の元へ。
腕を掠めた刃は、そのまま回転し、戻ってきたのだ。

《Blitz Rush》

さらに飛翔する刃は加速した。
戸惑いは、一瞬で焦りに取って代わった。
男の反応は遅れたが寸前で回避に成功した。
だが――。

「セイバーブラスト」

爆ぜた。
避けたはずの刃が爆発したのだ。
種は簡単だ。
任意の時点でキーワード 爆発するように仕掛けられていた。
だが男には何が起こったか一瞬わからなかった。
防護服が破れ、左腕が吹き飛んだ。
鼓膜は破れ耳鳴りがした。
周囲に肉の焦げる臭いが漂った。
一部は炭化し、左半身はひどい焼けどだった。
そして男が痛みを認識する前に、首が飛んだ。


320 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:33:37 ID:OHUSLNCm
男は最後の最後で気がついた。
最初から狩られる立場で罠だったのだと。
フェイトはブリッツラッシュで、ハーケンセイバーを加速すると同時に自分の肉体も高速機動状態にしたのだった。
そして、男に気がつかれないように爆発のタイミングに合せ相手の背後に回り、首を刈ったのだ。
本来男に焦りがなければ、結果は変わらなかっただろうが、もう少し長く生きることは出来ただろう。
だが現実は非情だ。
焦りが隙を生み容易く戦闘は終わりを告げた。


首が飛ぶと同時に血が噴出し、フェイトの白いマントを赤黒く汚す。
そして飛行魔法の効果を失った男の肉体は、重力の存在を思い出し、地面に激突した。
どんっと嫌な音がした。
フェイトにとって、ただの激突音とは違う気がした。

「……」

フェイトは初めて人を殺した感触に戸惑った。
首を刈った瞬間感じた肉の感触は、料理をする時に肉を切るのに似ていたが違った。
死体を確認するために地面に降りた。
あたりに漂う臭いが嫌でマントで鼻まで覆う。
空から落ちたせいで死体の破損はひどいが何とか確認はできた。
見てすぐに後悔をした。
フェイトは何とか吐くのだけは我慢できたが、思わず顔を顰めた。
そしてこの死体を作ったのが自分だという事実に異常な気持ち悪さを感じた。
確認が終わると管理局へ通信をいれ、任務完了の報告をする。
死体回収班を回してくれるというのを聞き、フェイトはほっとした。
あらかた話も終わり、通信を切った。
気持ちが悪かった。
淡々と話す管理局員、そして自分にも。
死体の近くにいるのは嫌になり、少し距離を置いて休んだ。
10分程度で回収班がくると聞き、その間に落ち着こうと思った。


321 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:34:21 ID:OHUSLNCm
「ただいま」
フェイトは家に帰り、扉を開いた。
あの後回収班が予定より少し遅れたが、問題なく死体と周りの汚れの片付けが終わり、帰還することになったのだ。
「ああ、おかえりフェイト」
「クロノ…」
フェイトの顔色が真っ青だった。
しかしクロノはいつもと接する態度は変わらなかった。
クロノは今回の任務を知ってるのだ。
だから何も言わない。
フェイトは普段と変わらないクロノの様子がとても有難かった。
疲れたから部屋で寝る旨をクロノに伝え、部屋に入った。
今は誰とも話したくはなかったからだ。


/フェイト


部屋に入り、電気も点けずに布団に倒れこんだ。
疲れた……。
肉体よりも精神が消費した感じがする。
魔法も無駄に使わずほとんど消費もしていないのに。
部屋に入る前、リビングに居たアルフが心配そうにを見てたのを思い出す。
精神のリンクにより私の感情が伝わったのかな。
クロノから事情を聞いてるらしいから、何も言ってこなかったけど。
心配かけちゃったかな。
余計な心配かけないようにリンクを少し弱める。
普段は精神リンクより会話でのコミュニケーションを大事にしてるから感情が強くは伝わらないけど、
不安定になるとどうしても伝わりすぎてしまうことがある。
今だけはどうしても誰とも話したくなかった。


322 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 19:34:56 ID:OHUSLNCm
前回の任務は、ミドルレンジからのプラズマスマッシャーにより止めを刺し、塵一つ残らなかった。
しかし、今回は直接自分の手で相手の首を刈った。
刈る瞬間、一瞬躊躇を覚えた。
でも止めなかった、迷わないと決めたから。
手に残る肉を引き裂く感触が今での残ってる感じがする。
なんだか嫌な感じだ。
切った時はあまり実感がわかなかった。
だけど今はなんだか……ずっと感触が手に残り、私を責めてる様だ。


悩んでいるといつの間にか部屋が明るくなっていた。
もう朝なのかな…寝不足の頭を振り意識をはっきりとさせる。
帰ってきてそのまま部屋にきたから、まだお風呂に入ってないことを思い出した。
重い体を引きずり、クローゼットから着替えを取り出し、お風呂場に向かう。
まだ朝早いとはいえ、時間もあまりないから手早くシャワーで済まそう、そう思った。
熱いシャワーを浴びながら考える。
この道を選んだことに後悔はないつもりだ。
執務官として生きていくには必要だったし、
そして私が強くなるためにも必要だったと思う。
これからも沢山の人間や魔道兵器、そして危険なロストロギアなどと戦うことがある。
その時、一瞬の判断の迷いは自分だけじゃなく周りの仲間にも危険が及ぶことを忘れちゃいけない。
プレシア母さんは、迷ったことでアリシアを失い、辛い思いをした。
だから私は迷うことで後悔したくない。
迷うことで失うなら迷いたくはない。
だって私はなのはを失いたくないから。
2年前にあった事件でのなのはの怪我、ぞっとした。
足元から全てが崩れていく感じがして、私はこの道を完全に決めた。
しかし、それでも…それでも気がかりのことがあった。
なのはにだけは人を殺したことを知られたくない。
そしてこの手で、もうなのはに触れることはできないのかもしれない。
私の手は人殺しの手だ。

334 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:43:59 ID:OHUSLNCm
/なのは

最近フェイトちゃんの様子がおかしいと思う。
学校でずっと何かに耐えるように辛そうにしてる。
たぶん最初の気がついたのは一週間前ぐらいで、
気になって何度か聞いてみたけど答えてくれない。
そして三日前からもっと悪くなったの。
今だって昼休みだというのに、椅子に座って俯いてる様子が分かるの。
そしてフェイトちゃんの態度が余所余所しくなり、困惑しちゃう。
今まではずっと一緒に食べてたご飯も一緒に食べなくなったし、
フェイトちゃんの手に触れようとすると何かに怯えたように、体を硬直させる。
どうしちゃったのかな、フェイトちゃん。
理由が聞きたい、けど聞こうとすると困った顔をするフェイトちゃんを見て聞けなかった。
大好きなフェイトちゃんが辛そうな顔をするのが嫌だ。
そして力になれない自分も嫌だった。

「あー!もう…そんな死人みたいな辛気臭い顔して…なのはこっち来て」

思考の海に沈みそうだった時、アリサちゃんの叫びが聞こえた。
声の方向に顔を向けると、席に座ったまま、本当に死にそうな表情のフェイトちゃんと、席の前で苛立ちを感じながらもそれでも心配そうなアリサちゃんが居た。
この前13歳を迎えたアリサちゃんは、以前よりずっと大人になったけど、相変わらずたまに爆発しちゃう。
以前はすずかちゃんがストッパー役だったんだけど、今は違うクラスでここには居ない。
でも、こんな時はアリサちゃんに感謝をする。
踏ん切りがつかず、話したくても話せなかったフェイトちゃんと向き合えるから。


335 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:44:36 ID:OHUSLNCm
「フェイトちゃん」
「……なのは」

いつもと変わらない声に悲しみを感じた。
だから…。

「着いて来てフェイトちゃん」
「えっ!?ちょっ…な、なのは」

片手でフェイトちゃんの腕を掴み、もう片手に自分のとフェイトちゃんの鞄を持つ。
ここじゃ話せないから屋上へ行こうと思った。
早歩きで引っ張るようにフェイトちゃんを連れながら考える。
フェイトちゃんが何に苦しんでるのか知りたい。
だってわたしはフェイトちゃんのことが―――

「待って、なのは」

廊下を出て、階段を上る辺りでフェイトちゃんが声を上げた。

「なにフェイトちゃん?」
「えっと、手…歩きにくいから離してくれないかな」

ちらりと、つながれた手に目を向ける。

「あっ、ごめん、フェイトちゃん」

折角久しぶりに手をつなげたのに。
名残惜しい気持ちを抑え、ゆっくりと手を離す。
フェイトちゃんは以前はそんなこと気にしなかったのに。
手を離すとフェイトちゃんが隣に並び、並んで一緒に階段を上った。


336 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:45:43 ID:OHUSLNCm
秋の空の下は肌寒く、屋上にはわたしとフェイトちゃん以外誰もいなかった。
並んでベンチに座り、片方の鞄を渡す。

「ありがとう、なのは。…話があるんだよね?」
「うん」

うーん、いざ切り出そうと思うと、どう話を切り出すか迷っちゃう。
フェイトちゃんは頑固だから率直に聞いても教えてくれないと思うんだよね。

「なのは、先にご飯たべようか?お昼休み終わっちゃうしね」
「え、あっ、うん」

思わず頷いてしまった。
フェイトちゃんときちんとお話したいけど、一緒にご飯を食べるのは魅力的な提案だったから。
脇に置いた鞄からお弁当を取り出し、蓋を開ける。
横目でフェイトちゃんの様子を見ると、同じようにお弁当が手にあった。
以前、お揃いに買ったお弁当箱だった。
シンプルなデザインで二人とも気に入って、色違いで買ったの。
カバー以外は真っ白で、カバー部分がフェイトちゃんは黄色で、わたしはピンク色なの。
でも、何故かフェイトちゃんはお弁当を見つめたまま動かなくて…どうしちゃったのかな?

「フェイトちゃんどうしたの?」
「ううん、なんでもない」

フェイトちゃんはわたしの言葉を聞き、少し躊躇して蓋を開ける。
変なフェイトちゃん。

「フェイトちゃん、取替えっこしよ」
「なのは、その…」



337 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:46:36 ID:OHUSLNCm
いつもお互いにお弁当の中身を取替えっこしてるのに、
お弁当の中身を隠すようにする様子がおかしくて、じーっと穴が開くほど見つめると、
フェイトちゃんがあきらめた様子で中身を見せてくれた。

「フェイトちゃん、どうしたのそれ?ご飯と野菜だけだけど…」

一瞬フェイトちゃんの体が硬直する。

「ひょっとしてダイエット?」
「えっ!?あ、ああ、うん。そうなんだ、最近ちょっと体調が良くないのもダイエットのしすぎかなって感じなだけで私は大丈夫だよ、うん」

明らかにほっとして、我が意を得たりという様子のフェイトちゃんに違和感を感じる。
確かに最近、体調も良くなさそうだったけど、体調だけじゃないよ、フェイトちゃん。
ダイエットだけでそんな態度なんて普通取らないよ?

「嘘だよね、それ」
「ううん、本当だよ、なのは」
「じゃあわたしの目を見て言える?」
「……」

真っ直ぐに見つめると一瞬目が合い、フェイトちゃんは目を下に逸らした。
本当は嘘でも目を合せてほしかった。
だってそんなこともできないぐらいフェイトちゃんは追い詰められてるのがわかっちゃったから。
フェイトちゃんの態度にどうしようもないぐらい切なさを覚える。



338 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:48:06 ID:OHUSLNCm
「どうしてそんなに辛そうなの?体調が悪いだけじゃないよ。
ずっと悲しそうで、何か我慢してる。わたしは知りたいんだ、
フェイトちゃんのことだから」
「それは…」
「本当のこと教えてフェイトちゃん、どうしてわたしを避けるの?
わたしのこと嫌いになっちゃった?」
「違う!!なのはを嫌いになるなんてありえない」
「じゃあどうしてなの?」
「ごめん、なのは…言えないんだ」

ベンチから立ち上がろうとするフェイトちゃんを見て、咄嗟に体が動く。

「フェイトちゃん!」
「なのはっ!?」

腕を掴み、強引に引き寄せるとそのままベンチに押し倒す。
膝の上にあった弁当は床に落ち、中身がもれる音がした。
けど何よりもフェイトちゃんが大事だった。
このまま行かしたら駄目だって、ずっと後悔するって、わたしの心が言ってる。

「ちょっと、なのは…動けないよ」
「動けないようにしてるの。フェイトちゃんが逃げないように。
フェイトちゃんが本当のこと言うまで絶対離さないんだから」

ほんのちょっぴり…ううん、体中にフェイトちゃんの存在が感じられてずっとこうして居たくなってくる。

「困ったな。昼休み終わったらどうするの、なのは」
「終わっても退かないから…どうしても退いてほしい?」
「うん、その…それにこの体勢はよくないよ、やっぱり。誰かきたら誤解されちゃう、なのはは困るでしょ」
「わたしは困らないよ、フェイトちゃんとだったら…」

339 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:50:14 ID:OHUSLNCm
「お願いなのは、そんなこと言わないで。…勘…い……うに…る」
「何、フェイトちゃん。小さくて聞こえなかった」

小さくて掠れるような声でほとんど聞こえなかった。

「なんでもないよ、なのは」

こんなに近くでフェイトちゃんに名前を呼ばれると、気持ちが溢れて来て我慢できなくなっちゃうよ。
自分の顔が赤く染まっていくのが分かった。
よく見るとフェイトちゃんも顔が真っ赤だ、嬉しくなって顔が綻んでしまう。
こんな時なのに心に余裕が生まれ悪戯心が起きた。

「あのね、どうしても退いてほしい?」
「…うん」
「だーめ」

顔を近づけ、耳元囁く。

「な、なのは…」

さらに耳まで真っ赤に染まったフェイトちゃんが困り顔で名前を呼ぶ。
このままわたしのペースに流されるのはまずいと思ったのかフェイトちゃんは急に、体の下から逃げ出そうと暴れる。
逃がさないようにぎゅっと強く体を抱きしめる。

「逃がさないよ、フェイトちゃん。わたしを見て」

体を掴んでた手を、顔を挟む様に手持っていく。
真っ直ぐに視線を合わせ、瞳を覗き込む。
フェイトちゃんの瞳はルビーよりも赤く、宝石よりもずっと綺麗で、吸い込まれそうな錯覚を与えてくれる。
この瞳が大好きで、ずっとわたしだけを見てほしい。
だから、一つの賭けをする。

340 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:51:25 ID:OHUSLNCm
「ねえフェイトちゃん。どっちか決めて。」
「どっちって?」

きょとんと不思議そうな表情を浮かべたフェイトちゃん。
大人びたフェイトちゃんが、こんな風にちょっと子供っぽい表情を浮かべるのが堪らなく愛しい。

「何があったか教えてくれるか、わたしの目を真っ直ぐ見て、嫌いって言って」
「ずるいよ、なのは。私がなのはを嫌いなんて言えないってわかってるのに」

フェイトちゃんの瞳に涙が浮かぶ。

「ごめんね、フェイトちゃん」

フェイトちゃんが人を傷つけること言えないのは分かってる。
優しい人だから、誰よりも。

「なのは、私」

フェイトちゃんは諦めたように息を吐き。
一旦言葉を置いて、少し迷うように切り出してきた。

「執務官の仕事ってね、事件捜査や法の執行の権利とかがあるのは知ってるよね?」
「うん、フェイトちゃんがやってる仕事だから」
「でも、それだけじゃないよね。犯罪者、魔道兵器、ロストロギアとの戦闘そして、現場人員への指揮 。それってどういうことかわかるかな?」
「ええっと…?」

フェイトちゃんが何が言いたいのかよくわからなくて混乱する。


342 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:57:23 ID:OHUSLNCm
「場合によってね、相手を殺したり、殺す命令だしたり、死んでこいって言わないといけない」
「フェイトちゃん…」
「一週間前初めて人を殺した。詳しくは機密だから言えないけど、その時はまだ平気なつもりだった。
でも三日前もう一度殺す任務があって、それでね。自分の手で相手の人を切ったの…後悔はしないって決めてた。
だから私は平気。平気なんだよ、なのは。平気なのに、どうしてかすごく気持ち悪くて。母さんに作ってもらった料理も喉をあまり通らなくて、
肉を食べると吐いちゃうし、どうしてかな。平気なはずなのに――」
「フェイトちゃんっ!!」

尚も言い募ろうとするフェイトちゃんを止める。
それ以上は言わせたくなかった。

「ううん、言わせてなのは。強くなりたかった、なのはを守れるように。
そのためならなんでもするって決めてた。ずっと前から。
なのはと友達になった時、わたしの心と体全てを使って守るんだって決めてた。
もちろん、なのはだけじゃなくアルフや家族のみんな、アリサやすずかとはやてだって守るつもり。
けど、なのはだけ違う。私はきっとなのはが居ないと生きていけない。
なのはは私に終わりをくれた人で、そして始まりをくれた人で、ずっと特別だったんだ。
私はなのはにずっと恋をしてたんだ。
すごく曖昧でこれがどういう感情なのかもわからなくて、わかったのはあの事件、なのはが怪我をしてわかったの。
なのはが死ぬんじゃないかって、そう思うと怖かった。
だから私は毎日病院にお見舞いにいった。
なのはが心配だっただけじゃない、怖かったから失うのが。私はこんな気持ち嫌だった。
なのはの心配より自分の心配をしてる私が許せなかった。それに、すごい悔して後悔した。
なのはが怪我した時、私がその場にいなくてなのはを守れなくて、だからもっと強くなりたかった。他の全てを捨ててでも、なのはを守れるように。
それでも私が人を殺したりすることをなのはに知られたくなかった。
なのはは優しいから汚い私でも友達でいてくれるかもしれない。
でもなのはに嫌われたらと思うと夜も眠れなくて。
それに私の手はもう人を殺していて、手は汚れているから、
なのはに触れられなかった、なのはが汚れるから、
だからどうしたらいいか分からなくて触れられなかったの……ごめんね、なのは。言ってることめちゃくちゃだよね」



343 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:58:38 ID:OHUSLNCm
わたしの下で涙を流すフェイトちゃんを見てられなかった。
フェイトちゃんの問題はすごく難しいと思う。
わたしにも何が正解なのかわからない。
フェイトちゃんはいつも一生懸命でまっすぐに私を見てくれてる。
涙を流すフェイトちゃんを見ると、胸が切なくなる。
少しでも…ほんの少しでもいい。
フェイトちゃんが楽になれるように強く抱きしめる。
汚くなんてない、フェイトちゃんの心は私よりずっと綺麗で、ずっとわたしの知らないとこで戦ってたんだ。
だからフェイトちゃんの手を取り、そっと手の甲へ口付けを落とす。

「な、なのは、私の手は――」
「駄目だよ、離さない」

わたしの手から離れようとするフェイトちゃんの手をしっかりと大事に握る。
繋いだ手は離さない。

「わたしはフェイトちゃんの手…大好きだから。
フェイトちゃんが汚れてるっていっても平気。
それにねフェイトちゃんがどう思ってもこの手を離すつもりはないから、
わたしの大事な人の手だから」
「なのはっ…なのは」

フェイトちゃんの顔に流れる涙をそっと指先で拭う。
もっと沢山何かを伝えたかった、
でも言葉にするのは難しくて、だから今わたしにできることをする。

「こうやってフェイトちゃんの涙を拭くの前にもあったよね、覚えてる?」
「うん、あの時もそうだった、なのはは何も言わずただ涙を拭いてくれた。
すごく嬉しかったんだよ」
「そっか」
「うん…もう少しこのままでいい?」
「もちろん」

344 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:59:37 ID:OHUSLNCm
「落ち着いた、フェイトちゃん?」

もうとっくにお昼休みが過ぎ、5時間目の授業が始まってた。

「うん。なのはにはなんか恥ずかしいとこ見られちゃったな」
「にゃはは、可愛かったよフェイトちゃん」
「なっ!?」

林檎の様に顔を赤く染めたフェイトちゃんの反応に満足する。
手を取り引っ張ってベンチから体を起こすと、小さくありがとうと返事をした。

「それと、思ったんだけど、クロノ君やリンディさんだって色々あるんだよね?」
「うん」
「手、どう思う?」
「手?」

分からなくて首をかしげるフェイトちゃん。
それだけじゃわからないかな、そう思ってもう少しヒントを出す。

「うん、フェイトちゃんは自分の手が汚いって思ってるみたいだけど、
クロノ君たちも汚いって思う?」
「ううん」

フェイトちゃんは激しく首を横に振りながら返事をする。

「そっか……そういうことなんだ。
でもね、なのは。私が人を殺したことには変わらない、それでもなのはの隣にいていいの?」
「わからない、人を殺すことがいいとか悪いとかそんなことはわからないの。
でも、それでもわたしは知ってるから、フェイトちゃんが優しいことを。
それに、フェイトちゃんが隣にいない世界なんて考えられない、居ないと嫌だよ」
「なのは…ありがとう」
「ううん、いいの」

346 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 23:00:24 ID:OHUSLNCm
お互いに笑みを浮かべ、笑いあう。
まだフェイトちゃんの笑みはぎこちないとこがあるけど、一週間ずっと笑ってなかったからそれでも嬉しい。
わたしのほうがありがとうって言いたい。
だって、フェイトちゃんの笑顔って、見てるとなんだか嬉しい気分になるの。
それにフェイトちゃんの気持ちも分かっちゃったしね。

「フェイトちゃん」
「なの…んっ!?」

返事を待たず、そっと手を頬に添え、真っ直ぐに見つめ、唇に唇を重ねた。

「これが告白の返事ね」
「こ、告白?私告白なんて……」
「あれ?フェイトちゃんいったよね?私に恋してるって」
「あっ…あれはそのなんというか、必死だったから、自分でも何いったのか覚えてなくて」

不機嫌だぞって顔をして頬を膨らませると、案の定フェイトちゃんはおろおろする。
そんな困った様子のフェイトちゃんが可愛くて、

「むー、じゃあもう一度ちゃんと言って」
「…わかった」

瞳を射抜くようなフェイトちゃんの真剣な眼差しを感じて、強く鼓動が鳴る。

「なのは、好きだよ、誰よりも。君を愛してる」
「フェイトちゃん…わたしもフェイトちゃんが好き。ずっと好きだった」

今度はフェイトちゃんのほうから、そっと顔を寄せ、唇を重ねる。



347 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 23:02:23 ID:OHUSLNCm
「フェイトちゃん、本当に授業さぼりになっちゃったね…」
「ううっ、でもなのはが離してくれなかったし」
「それはフェイトちゃんが可愛すぎるから…」
「なのはだって…」

二人でゆっくりしてたら結局5時間目も終わり、そのまま6時間目も過ぎ、放課後になっちゃった。
思ってること一杯一杯お話した。
フェイトちゃんがどれぐらいわたしのことを好きかとか、
わたしもフェイトちゃんに負けないぐらい好きだって言って、
どっちがどれぐらい好きか勝負になったりしちゃった。
フェイトちゃんは自分が勝ってるっていうけど、わたしだって負けるつもりはない。
本当にね、フェイトちゃんが望むならなんだってしちゃうよ。
フェイトちゃんはわたしの仕事をもう少し危険じゃないのしてほしいって言うけど、
教導隊の仕事が私の夢だって知ってるから、
なるべく危険なことはしないってことで納得してくれた。
わたしよりずっとフェイトちゃんほうが危険だと思うんだけどなあ。
それと一つの約束をした。
離れることになっても、ずっと心は一緒だって、
さびしくなったら名前を呼んで、わたしはどこにでもいくから。


そのまま教室には戻らず、わたしの家までフェイトちゃんを連れて帰る。
そのまま一緒に夕食を食べて、フェイトちゃんのお家に電話して、
今日はこっちに泊まることを伝える。
リンディーさんは、最近のフェイトちゃんの様子が心配だったから快く了承してくれた。
二人で部屋に篭り、向かい合うようにベッドの上に座る。
フェイトちゃんは迷ってたけど、わたしはやめる気はない。
折角のチャンスを無駄にする気はなかった。
フェイトちゃんのことだから、後でやっぱり付き合えないって言い出しちゃいそうだから。
だからフェイトちゃんの体にわたしを刻む。



348 名前:なのフェイ[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 23:03:17 ID:OHUSLNCm
フェイトちゃんの乱れた服を整え、行為の残香を隠すようにブラウスのボタンを閉めて、
乱れたブロンドの髪も手櫛で梳いてあげる。
ブラウスから伸びる白い首筋には朱が彩られ、
もう一度しちゃおっかな…そんな欲求が感じられたけど今は我慢する。
フェイトちゃんはもうわたしのものだから、あせっちゃ駄目だって言い聞かせる。
わたしってこんなだったかな、フェイトちゃんが可愛いからいけないんだよね。

「あ、そうだ」
「ん?なにかな」
「今度模擬戦しよ、フェイトちゃん」

前々からずっとフェイトちゃんとは模擬戦がしたかった。
わたしが怪我しちゃったから、フェイトちゃんは遠慮してるけど、でも本当は嫌じゃないはず。

「えええ、今日危険なことしないって約束したばかりだよ、なのは」
「むー、フェイトちゃんは私に危険なことするの?」
「そんな、しないよ」
「じゃあいいでしょ、ね?久しぶりにフェイトちゃんと戦いたいんだ。フェイトちゃんだけじゃなくて、わたしもずっと強くなったこと知ってほしいの。だめかな?」

わたしよりも少し背の高いフェイトちゃんに、上目づかいに見上げお願いする。

「う…わかったよ、なのは」
「じゃあ、フェイトちゃんこの事は二人だけの秘密ってことで」
「二人だけの秘密…」
「うん、嫌?」
「ううん、嬉しい。二人だけの秘密だね、なのは」

後編
2007年10月16日(火) 22:47:06 Modified by nanohayuri




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