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Hello, Again 13




745 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/27(日) 22:54:15 ID:jt3F8m8Y


*  *  *



『……痛かった……?』

『へ、平気……』

『……気持ち……よかった……?』

『…え…と……なのはは……?』

『私は…………………………痛かった……』

『!……ごめん!!』

『え、ううん!最初だけだよ!大丈夫だからっ』

『ごめんね……もうしないから』

『謝られることされた憶えない………それに…………フェイトちゃんものすごく優しかったよ?』

『……う、うん……』

『……ねぇフェイトちゃん』

『うん?』

『こういうときってさ………もう少しこう……くっついたり……腕枕とかしないの……?』

『え?あ、ど、どうなのかな。私は知らない』

『そ…っか…………なんちゃって!ちょっと言ってみただけ!あの、別にそんなルールないから気にしないで?』

『……うん……』

『えっと……雨、まだ止まないね、フェイトちゃん』

『そういえば……うん、髪まだ湿ってる感じがする』

『ホント?寒くない?フェイトちゃん、 もっとくっつけば温か――』
『なのは、風邪ひいたらいけないから何か着よう?』

『………そうだね……解った……』




突然の雨に見舞われた思い出の日。
なのはにとって素敵な、そして今思えば僅かに引っ掛かりを覚えた思い出。





746 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/27(日) 22:57:00 ID:jt3F8m8Y


――あのとき……


――私たち本当に愛し合った……?


――あれは何だったの……?
――もうしないから、って……何なのそれ

――あぁ 別に私に触りたいなんて思ってなかったんだ
――車の中でもそうだったもんね


――私……あんまり愛されてなかったみたいだね


――両思いになって、一緒に暮らすようになって、あなたはきっと私のことそんなに好きじゃなくなってたんだ
――あなたは優しいから、私のすること断れなかったんだよね


――でも私は……そうじゃない


――あなたがこんなふうになってしまった今でも好きなの
――以前よりもずっと、自分がどのくらいあなたを好きになっていたのか気づいてしまったの


――このまま目覚めないままなら、体だけでも私のものでいてくれる?


――だけど……



声が聞きたい

その瞳が見たい


――だからこのまま話せないなんて、目を開かないなんてイヤだよ……



――苦しいよ……







887 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:14:49 ID:6DyWIkyU


*  *  *



夕方になりやっと帰宅したなのはが寝室の扉をノックすると中からリンディの声がした。
「おかえり、なのはさん」
「すいません遅くなって」
ベッドの横の椅子に座るリンディの傍らで
フェイトは穏やかとも苦しそうとも言えない、感情のない抜け殻のように眠っていた。
そんなフェイトの顔を見ながらリンディは言った。
「いえ、いいのよ。フェイトの顔を見続けるのはちっとも苦じゃないもの」
リンディはとても疲れた様子だった。
「それにさっきまでアルフも居てくれたのよ」
それは体力的なものではなく精神的な疲労のようだった。
「そっか……アルフさんが……」

それからなのはは審問会議のことをリンディに話した。
話している間なのはは床の上に置かれた大きな鞄が目につき、嫌な予感がしてならなかった。

――この鞄は……
――荷物をまとめるためのもの、だよね……

「そう……解りました」

リンディはなのはの話が一通り終わると椅子から立ち上がった。

「……あの、リンディさん……それと……」
「はい?」
「私がついていながらフェイトちゃんをこんな目に遭わせて本当にごめんなさい!」

なのははリンディに向って低く頭を下げた。
リンディは一瞬驚いた様子だったがなのはが顔を上げた頃にはいつもの笑顔だった。

「いいのよ、なのはさんは何も悪くないもの」
「いえ、まだ謝ることが……」
「……なにかしら?」

鞄を手にしたリンディに、なのははそれを制止させるように言う。
それは謝るような態度ではなく、強い意志を主張するものだった。

「……もしリンディさんがこれからフェイトちゃんを連れて帰るって言っても、それは断るつもりです」
「……」
「連れて行かせません」
「……」
「ごめんなさい」





888 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:16:28 ID:6DyWIkyU


リンディは暫く黙っていた。
そしてゆっくり口を開く。
「……そうね。フェイトにはきっとあなたが必要だわ」
「リンディさん……」
「だって私を知っているフェイトは、私の知っているフェイトは、いつでもあなたの側に居たがっていたんだから。
私はこの子を今だって大切なその娘だと思っているから、その願いを叶えてあげたい」
「はい……」

リンディはフェイトの頭をそっと撫でるとその閉じられた瞼を数秒間見つめ、漸くなのはの立つ扉の方へ向った。
そしてなのはの正面で立ち止まる。

「ただしあなたの謹慎処分が終わったらフェイトのことは私が看ます」
「え……」

なのはを見据えるリンディは厳しい口調だった。

「考えたくはありませんが、一ヶ月しても意識が戻らなかったらどうするつもりです」

どうやって今の状態を続けるつもりです、なのはさん?
そのリンディの言葉は、まるでなのはに対して『目を覚まさない我が子を母親が介抱し続けることは出来るが、
目を覚まさない恋人を他人が、それも一方的に想っているだけなのかもしれない人物が介抱し続けることなど出来ない』
と言っているように思えた。


心は実母に、体は義母にとられてしまう


そんなふうにさえ思えた。

現実にはプレシアはフェイトの心なんて欲しがらなかった。
これまでリンディがなのはをフェイトから遠ざけようとしたこともなければ
恋人になったことを反対されたことなどなかった。
それは解っている。
解らないのはこんなことを思ってしまう自分自身だ。


――嫌

――嫌!!

――リンディさんにだって奪わせない!!

――私から奪わないでよ!!!

――所詮私の気持ちは無意味だっていうの!?

――どうして私はフェイトちゃんの側にいることが出来ないの!!!


「私からフェイトちゃんを盗らないで……!」





889 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:18:05 ID:6DyWIkyU


「なのはさん……? 誰もあなたから盗ろうなんて――」

「フェイトちゃんは渡しません。絶対渡しません」

「……そう、だけどね、ずっとこのままなんてとてもじゃないけど無理だわ」


――このままじゃ……
――今のままじゃ無理……?


――そうだよね、それなら……


「……なら……仕事を辞めます」


仕事を辞めてずっと面倒見ると実証すれば、
そうすれば自分がフェイトを一番想っていてもいいと言うのなら。

ただし自分にとっての誇りを失うことになるだろうけれど。


「いけません」


苦肉の決断を強いられたなのはに対して、リンディの言葉。

「……何故ですか?」

全てを投げ打って愛する人のもとへ向うことがそんなに許されないことだというのか?
何故――?
今度こそなのはは感情を抑えることが出来なかった。
自分とフェイトを引き離すものに対する怒りを。

「私がフェイトちゃんの側に居ることをどうして認めてくれないんですか!?
仕事を辞めてまでフェイトちゃんのことを想ってちゃ悪いですか!?」

「そうじゃないのよ、なのはさん」

「何がそうじゃないって言うんですか!私の夢と希望を捨てるその覚悟を解ってくれないんですか!?」

「あなたが夢や希望を捨てることなんて誰も望まないからよ!!」

「けど……!!」





890 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:19:44 ID:6DyWIkyU


「フェイトの好きなあなたは何処にいったの……?」

「……私が……?」


――何処かへ行ってしまったのはフェイトちゃんで

――私は何処へも……

――私は……


「あなたがあなたでなくなったらフェイトも誰も救われないわ」

「……私はフェイトちゃんがいてくれなければ今までのようにはいられないんです……」

「だけどフェイトが好きだったのは、空に夢を描いてヴィヴィオと笑っているあなただわ」

「……」

「私はあなたからフェイトを取り上げたりしない。フェイトだってそんなこと望んでないと思っているわ。
ただ私は……娘が大切にしていたものを失わないでほしいだけ。それがフェイトの母親としてあなたに要求することよ」

「……リンディさん」

「だってそうでしょう?あの子が好きだったものがなくなってしまったら、私は何処にあの子を見出せば良いの……?」


リンディの言葉はなのはに以前のフェイトのことを思い出させた。
なのはと同じ空を飛べることを喜び、なのはがヴィヴィオを抱き上げるのを見て微笑むフェイト。


「私たちを忘れて、目を開けず動くこともないあの子に……いつでも戻って来れる場所を残して」


そして……



『なのはは凄いね。あんなに素敵な人たちを育てたなんて』

『教導官の仕事って凄いんだね』



ベッドに肘をついて、憧れの眼差しでなのはを見つめるフェイト――






891 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:21:28 ID:6DyWIkyU



「大丈夫よ、フェイトの意識が戻ったらそのときは仕事を放棄してでもすぐに来てもらうから。
きっとあなただけが頼りだろうから」
なのはが早くいつもの生活に戻って早くヴィヴィオと一緒にいられるように、
謹慎明けからはフェイトをハラオウン宅若しくはミッドチルダの病室で看る。
そうした方がきっといいだろう、とリンディは言う。



『やくそく』

『ヴィヴィオいい子でいるからきっと迎えにきて、ママ』



そしてなのはに小さな小指を差し出すヴィヴィオ――



「なのはさん……?」
何も言わなくなったなのはにリンディが呼びかける。
すると漸くなのはは躊躇いながらもリンディに同意した。

「……解りました……」

リンディは胸を撫で下ろし、なのはの腕に優しく手を添えた。

「間違ってない。きっと間違ってないわ」
「……ええ……」




それからリンディはなのはに見送られて廊下を歩く。
空の鞄を重そうにして、後ろ髪を引かれるようにして。

「思い出すわ、フェイトが小学校の四年生のときのこと」
「え?」

玄関までの短い道のりの間、リンディは目を細めて語り始めた。





892 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:24:06 ID:6DyWIkyU


「あの子が初めて友だちとクリスマス会をしたときのことよ。月村さんのお宅でだったかしら?
フェイトがプレゼント交換であなたにオモチャの指輪貰ったときのことよ」

ようやく落ち着きを取り戻したなのはは急にふられた話題にすぐには反応できなかったが、
確か昔すずかの家でクリスマスに集まったことがあった。
アリサとすずか、はやてとなのは、そしてフェイトの五人それぞれがプレゼントを用意して。

「あぁ、そういえばそんなこと……私が用意したあの指輪、有名なブランドのレプリカだったんです。
すごく奇麗だったから気に入ってしまって、自分にも買ったんです」

そして誰に当たるとも知れないそのプレゼントはフェイトが手にすることになった。

「あの子凄く喜んでたわ。どうしたのそれって訊いたら『これ、なのはとお揃いなんです』って頬を赤くしちゃって。
学校も制服も携帯電話も全部、あなたと一緒のものには何だって嬉しがってたわね……単純だけどかわいいでしょ?」

確かにフェイトは制服を手渡されたときも携帯電話を買うときも、嬉しそうだった。
それはリンディが言うように『なのはと一緒だったから』なのかは解らないが、もしそうなら
もっと早く気づきたかったと思った。

「ええ……そんなことで喜ばれてたなんて、なんか恥ずかしいです」
「でもフェイト、その後自分の指輪をなくしたの」
「どこかで落としたんでしたっけ」
「ええ、アルフが指輪で遊んでいて落としたらしくてね、あの子ったらその夜隠れて泣いてたのよ……」
「そ、そうだったんですか?知らなかった……」
「それほどあの子はあなたと一緒がいいの」

今はもうフェイトが忘れてしまった過去。
けれどリンディとなのはの心に生きるフェイトの姿はけして色あせることはない。

「……嬉しい」
「フェイトはあなたと一緒が一番いいのよ」



リンディは玄関の扉のノブを握ってから少し振り向いて、さらに話を続けた。
「ふふふ、そういえばね、こんなことなのはさんにバラしちゃったらフェイトに怒られるかもしれないけど、
あの子半年前に海鳴市に戻ったとき、あなたに指輪を買おうとしてたの」
「えっ!?」
「昔のこと覚えてたらしくて、クリスマスに貰ったものとよく似たデザインのものばかり見てたわよ」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ……でもあの子そういうところは奥手だから、結局買ったのかどうかは知らないけど……」
「そうなんだ……」





893 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:26:40 ID:6DyWIkyU


フェイトがそんな行動をしていたなんて知らなかった。
こんな状況になる前に、こんなにも嫉妬や不安やフェイトのなのはに対する気持ちへの
疑いでいっぱいになってしまう前に、もしフェイトからその指輪を貰えていたら――

それがなのはの求める『愛の証拠』になっただろうか?

もちろんリンディが思うような意味でフェイトがその指輪を買うつもりだったのかはもう解らないまま。
それもリンディの思い出の中とはほど遠い関係になってしまった……
もうその指輪は貰えることもないだろうし、そんな状況ではない。
そう思うと悲しくてたまらない。




それからリンディは扉を開いて外へ出る。
「それじゃあ何かあったらすぐに呼んでちょうだいね」
なのはが見送りのため外へ出ようとするが、リンディは首を振ってそれを止めた。
そして先ほどの懐かしむような優しい表情からは一転し、思い詰めたようになのはに言った。

「あの子……フェイトがもう苦しまないように助けてあげて」
「リンディさん……」
「あの子を助けて下さい」

寝室にいたときとは反対に、今度はリンディがなのはに対して深々と頭を下げた。

「え!リンディさ――」
「お願いします」

そう言ってリンディは扉を閉めた。

「……」

なのはは瞬間その場に立ち尽くしていたが、
やがて胸を締めつける自らの思いが冷静に脳に伝わってきた。

リンディに頭を下げられる資格なんて自分にはないんだ

寝室での自分の身勝手な発言をリンディに謝ろうと思い
ノブに手を掛けたその時、扉の向こうでリンディが泣いていると気づいた。
小さくすすり泣く声と扉に感じるリンディの背中の弱々しい重み。





895 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:27:33 ID:6DyWIkyU


なのはは扉を開けることが出来なかった。




11年間もフェイトの母親として愛情を与え続けてきたリンディ。

娘を奪った人間に頭を下げ、お願いしますと言った義母。

フェイトのことを想って大切な娘を自分に預けた母親。





プレシアなんかではない。
フェイトの本物の母親はこの人だと強く思った。



そして自分がちっぽけに思えた。




『フェイトの好きなあなたは何処にいったの?』

『そっとしておいてあげるのが一番ではないでしょうか』

『君もさぞや失望したことだろうね』

『まだヴィヴィオは小さいんだぞ』

『なのは、辛いのは君だけじゃない』

『それでよかったん?』

『フェイトママはもうヴィヴィオのこと嫌いになっちゃったの?』

『ごめんね、僕はフェイトを救ってあげられそうにない』




私にはあの人を想う資格はないのだろうか?
私の気持ちは一体何なんだろうか?
私の愛は自分勝手で浅はかで、間違っているのだろうか。




なのははその答えを恐ろしくて聞けない。





896 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/29(火) 23:34:09 ID:6DyWIkyU


*  *  *



なのはがベッドに横たわるフェイトの顔を見つめ続けて数時間が経った。
夕食時はとっくに過ぎ、いつもなら入浴も済ませている時間。
しかし空腹も何も今はどうでもよかった。
ただ呼吸だけをするフェイトから離れたくなかった。
なのはは眠るフェイトに向って囁いた。

「フェイトちゃん……お母さんのこと嘘ついててごめんね……」

今更どうしようもないと解っている。
それでも謝らずにはいられない。

なのははベッドに上がるとフェイトの隣に横になり、フェイトの髪を撫でた。
相変わらずフェイトの表情から感情は読み取れない。

「フェイトちゃん、今何を考えてるの?今、何処に居るの……?」

もうなのはのいない場所に居るだろうか――

それから暫くしてフェイトの肩を抱き寄せると、頬に自分の唇が僅かに当たる距離まで顔を寄せた。
「きれいだね……」
こんなにも近くで見る恋人の顔は相変わらずとても奇麗だ。


いつかこの美しい人はなのはのものだった

そんなこともあった

きっと恋人だった

そう思いたい





898 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/30(水) 00:11:18 ID:0o3ZFMJq


「私たち……恋人だったんだよね?」

なのはは囁く。

「フェイトちゃんが私のこと好きだって言ってくれたんだよ」

自ら口にした大切なが思い出が心を巡り始める。

「凄くうれしくてお互い泣いちゃったんだよね」

自分の言ったことが嘘でなければ、あれは確か本部の施設の屋上で――夜空がとても奇麗だった。

「言わなかったけど私はもっと前から好きだったんだから」

恋人たちの思い出を自分自身が忘れないように語り続ける。
それが本当にあったことだということを、もう忘れてしまいそうだから。

「初めてキスしたのはフェイトちゃんの車の中で……」

――あなたは驚いてたよね
――急だったし、無理矢理だったのかな

「初めて愛し合ったのはこの部屋のこのベッドだったね……」

――あの雨の日、あなたと一緒に選んだこのベッドで抱き合った

「あの時は顔から火が出るくらい恥ずかしかったな」

――でも嬉しかった……
――もうこれであなたの全部が私のもので、私の全部があなたのものになったんだって思った


――あなたはどう思っていたのかな……


なのははその身が触れているベッドの柔らかさとフェイトの体の感触を何度も確認し、
自らに思い出さそうとするが、記憶はもう朧(おぼろ)げに、夢のようになのはの中を漂うだけ。

「それでね、私たちには一緒に暮らしてる女の子がいるんだよ」
「左目はあなたと同じ瞳の色……同じ色だよ……」

――私いつも文句言ってたけど本当はあなたがヴィヴィオを甘やかして
  可愛がっているときの笑顔を見るのが好きだった





899 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/30(水) 00:13:13 ID:0o3ZFMJq


「三人で居ると本当の夫婦と娘みたいだって思って幸せだった」

――こんな幸せな日がずっと続くんだって思ってた

――本当はあなたがどう思っていたのか、今はもうよく解らないけれど……



――あの幸せな日は夢だったのかな


  
――私はそれでも……それが夢でも幸せだったの

――あなたが居て、ヴィヴィオが居て……笑ってくれていたから……




「本当に……もの凄く幸せだったんだよ、私……」




――逢いたいよ




――神様




――もう一度あの人に逢わせて




言葉を発する度に触れていた唇をその頬から離し、
そっとフェイトの頭にキスを落とすと、なのはは瞼を閉じた。
このまま何処かに消えてしまいたかった。




Hello, Again 14
2009年08月30日(日) 16:58:07 Modified by coyote2000




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