60 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/02(火) 23:00:38 ID:gXuoySTp
61 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/02(火) 23:01:14 ID:gXuoySTp
62 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/02(火) 23:01:49 ID:gXuoySTp
63 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/02(火) 23:02:31 ID:gXuoySTp


 盾の守護獣ザフィーラ。今は子供のお守り犬として重宝されている。
 そのことは別にいい。子供を守るというのは大切なことだ。幸い、ヴィヴィオも自分には懐いてくれている。

「ザフィーラ、ご飯だよ」

 ヴィヴィオの置いたご飯に口を付ける。ヴィヴィオは、その横でテーブルに座ってごはんを食べている。
 当然食べているのは同じものではないが、一緒に食べるということはそれだけでも気分が全然違う。心が豊かになれるのだ。

「食べたら、歯磨きだよ」
 
 ヴィヴィオはいい子だ。アイナさんやなのはに言われたことをきちんと守っている。
それどころか、食後の歯磨きの大切さを言い聞かされた結果、ザフィーラにまで歯磨きを勧めるのだ。
 食後に歯磨きをする狼など聞いたことがない。そもそも、どうやって歯ブラシを持てばいいのか。
 最初にヴィヴィオに歯磨きを勧められたときは正直途方に暮れたものだ。失望はさせたくないが、こればかりは無理である。
まさか歯を磨くために人間型になるわけにもいくまい。
 どうしたものかと考えていると、ヴィヴィオが新しい歯ブラシを用意していた。

「ザフィーラはお手手がないから、ヴィヴィオが磨いてあげるね」

 本当に優しい子だ。こんな子を守るためなら、自分は喜んでこの姿のままでいよう。
 ザフィーラは決意を新たにしていた。

「はい、お水」

 水を口に含んでうがいする。実際の狼なら無理だろうが、ザフィーラにはできるし、この程度ならやって見せても問題はないだろう。

「えーと」

 ヴィヴィオが辺りを見回した。どうやら、ザフィーラが口に含んだ水をどうするか考えているらしい。
 ザフィーラは、今自分が飲んだ水入れの中に戻すつもりだった。水はまた新たに汲んでもらえばいい。
 顔を水入れに近づけると、ヴィヴィオが制止した。

「駄目、汚いから。こっちだよ。お外に出してね」

 ベランダに連れて行かれる。なるほど、外なら、地面に吐いてもどうということはない。
 ザフィーラは素直に、しかしなるべく隅の方、すぐに排水溝に流れていく側に水を吐いた。
 フェイトはソファに寝そべったまま、漫然と窓の外を眺めていた。
 雨。せっかくのお休みなのに雨。
 なのはやヴィヴィオとずっと過ごせるという意味ではありがたいのだけど。

(いいのか? 私はいつでも帰るぞ?)
(あ、いいよいいよ、ザフィーラ。気にしないで。ヴィヴィオも一緒にいられて喜んでるし)

 家族団欒を邪魔していると思っているのか、ザフィーラは居心地が悪そうだ。
 女だらけの中に男が一人、という状況は八神家で嫌と言うほど慣れているはずなので、気後れしているわけではあるまい。

(だったら、せめてその格好を何とかしてくれないか。目のやり場に困る)

 言われてフェイトは、自分が下着姿だと言うことに思い当たる。

(別に、見慣れてるでしょう? はやての所にはよくお泊まりに行ったし)
(……それはお前たちがまだ子供の頃だ。今の年齢を考えろ)
(私は気にしないよ?)
(私が気になると言ってるんだ!)
(気になるの? アルフとはやてに言いつけてやる)
(何故そうなる)

 ザフィーラは、器用に念話で溜息をついた。

(まったく、将がこのていたらくを知ったら嘆くぞ。やつのお前への評価は高いというのに)
(う。それを言われると……)
(第一、ヴィヴィオの教育にも良くないだろう。室内では下着姿が当たり前だと覚えてしまったらどうするんだ)
(そういうのは、なのはとアイナさんに任せてるから)
(……キャロがあんな風に育ったのが奇跡だな)

 実際、キャロもあまり羞恥心はないのだけれど。

(頼むから服を着ろ)
(えー。めんどくさいよ)
(ティアナやハラオウンが見たら泣くぞ)
(クロノは喜ぶと思うよ。ああ見えてむっつりだから)
(そんな裏情報はいらん)

 ヴィヴィオは台所にいる。今日、大好きなママが二人ともお休みだと知ったヴィヴィオが「朝ご飯を作る」と言い出したのだ。
 ちなみに、昨夜から言い出したことなので、フェイトとなのはは昨夜の内にサラダを作って冷蔵庫に入れてある。
 ヴィヴィオがやることはパンを焼くこと、冷蔵庫からサラダと牛乳を出すこと、コーヒーメーカーのスイッチを入れること。それだけだ。
勿論、立派なお手伝いである。
 並べられたパンとサラダを見て、ヴィヴィオを褒めるフェイト。見ると、ザフィーラのご飯もちゃんと準備されてある。
 何故かヴィヴィオは、フェイトに褒められるとベランダへと駆けていく。

「雨、降ってるね」
「そうだよ。今日はずっと雨だよ」
「ねえ、フェイトママ。ザフィーラがお外に出ると濡れちゃうよ」
「それじゃあ今日はザフィーラもお家の中だね」
「お外に出せないと、ザフィーラがお水を出すところがないの」

 慌ててザフィーラが状況を念話で説明する。

(…ということだ。水飲み用のボウルが余分にあれば、それを出してくれれば助かる)
(あるよ。別に、水飲み用でなくてもいいよね? 吐き出すだけだから)
(それはそうだが)
(洗面器が余分にあるよ)
(充分だ)

「良かったね、ザフィーラ。これで濡れなくて済むよ」

(本当に、いい子だな、ヴィヴィオは)
(それは、私となのはの子供だもの)
(その高町はどうした。休みの日はいつもこんなに遅くまで寝ているのか?)
(普段が早起きだからね。お休みの日はこんなものだよ)

「ヴィヴィオ、そろそろなのはママを起こしてきて」
「はーい」

(高町の寝覚めはいいのか?)
(うーん。ヴィヴィオはしばらく戻ってこれないかも)
(なら、ちょうどいい)

 ヴィヴィオの背を見送って、人間型になるザフィーラ。

「あれ? どうしたの?」
「腕ずくでも服を着てもらう」
「え」


 ユーノがなのはの胸元で喘いでいる。

「出すよ、なのは、出すよ」
「出して、ユーノ君、中に、中にいっぱいっ!」

「起きてよ、なのはママ」

 一瞬で夢の世界が消えて、現実に戻されるなのは。

 ……うわ……なんて夢………

 顔が真っ赤なのが自分でもわかる。ユーノに抱かれている夢なんて。
 欲求不満だろうか? いや、昨夜は久しぶりに休暇が合ったフェイトと遅くまで……………。うん。欲求不満はないはず。

「今日はヴィヴィオが朝ご飯作ったんだよ」

 その言葉がなのはの意識をさらに覚醒した。
 そうだった。なのはは思い出して上半身を起こす。ヴィヴィオの作った朝ご飯を食べないなんて、それは絶対に駄目だ。
 夢なんて忘れてしまっていい。

「今日は雨が降ってるから、お外に出れないんだよ」

 室内着に着替えるなのはの周りで、ヴィヴィオが踊るようにはしゃぎながらその朝の出来事を報告している。

「それでね、フェイトママが許してくれたから、外じゃなくて中で出せるの」
「え?」

 思わず聞き返すなのは。

「だからね、ザフィーラが中で出せるの」

 脳裏に蘇る夢の内容。
 いや、フェイトとザフィーラがそんな関係だとなんて聞いたことがない。
 なのはは軽く頭を振って部屋を出た。

「いいからはやくしろっ!」
「ちょ、ザフィーラ……」

 そこでは、下着姿のフェイトがザフィーラに押し倒されていた。

 何やってるの? と聞く前に反射的にディバインバスターを放った自分は間違ってなかった。なのは今でもそう信じている。


著者:野狗 ◆gaqfQ/QUaU

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