「情事契約」397〜

初出スレ:第四章397〜

属性:エロなし

広い屋敷の中で黒いお仕着せを着た使用人の男が一人、とある部屋のドアを開けた。
中を見渡し、そこが空き部屋である事を素早く確認する。
そのまま半身をねじり振り向くと、彼は背後に控える人物に向かって手招きをした。

「……お嬢様、お先に中へどうぞ」

彼が呼んだのは十代半ばであろうか、モスグリーンのワンピースが良く似合う愛らしい少女であった。
波打つ黒髪にはワンピースと共布でできたリボンをつけている。

呼ばれたものの、少女はためらうようにつま先を動かしたがその場から動こうとはしなかった。
容易に従いたくないというような表情をしている。
ため息をついた男が彼女の腕を引くと、ばっとその手を振り払い声をあげた。
「なにするのよ!」
「ぐずぐずしてると人目につくでしょうが」
あきれたようにそう言うと、少女は眉を寄せて男をにらみつけてきた。
だが、正直恐くもなんともない。
なだめるようなことを言いながら、男は少女の背を押して部屋の中へと連れ込んだ。



がちゃり。
男は室内へと自分も入ってしまうと後ろ手で中錠をおろした。
金属が動く音に少女がはじかれたように振り向いてやや後ずさる。
「鍵をかける必要があるのかしら? わたしは逃げも隠れもしないというのに」
「まあ、一応。念のためにというやつですよ」
彼が指にひっかけてくるくる回しているのはこの部屋の鍵だった。
別に彼女がこの場から逃げるなど考えていない。

この人は妙に義理堅いからね。男は心中でひとりごちる。
……俺が気にしたのは邪魔が入るってこと。
こうしちまえば中から開ける以外この扉は自分と彼女とを外から隔絶してくれる。
そう考えて男は自分の口元が思わず笑みの形になったのに気がついた。
少女は何やら不穏な気配を察し、足摺ながら男から距離をとった。
だが、それを見透かしたように低い響きで男は少女に声をかけた。

「分かってますよねお嬢様? これは俺とあなたとの間のギブアンドテイク。
コトをなしで済まそうなんて……例えば説得するだとか。そんな甘い考えは捨ててくださいね」
少女の頬がかっと赤く染まった。怒りのためか、羞恥のためにかそれは分からなかったが。

鍵をくるくる回しながら自分を見据える男を前に、少女はしばらく唇を噛み締めながら
わなないていたが、やがて意を決したように自らのスカートの裾を掴んだ。

「脅迫で他人の体を自由にしようなど、お前は本当に性根の腐った男ね」
「なんとでも。俺はもぎとれる果実は自分のものにする性分なもので」

少女は優雅なしぐさで裾を持ち上げた。まるで円舞の前に礼を取るように。
裾のフリルをたなびかせながらスカートは緩やかに持ち上がっていく。
そして彼女の指が胸元まで持ち上がっていき、白いドロワーズに包まれた
少女の秘められた場所が男の目の前であらわになった。

それを見て満足そうに笑んだ男は少女に近いてその腰に手をあてた。
スカートをかかげたままの細い体がかすかに震える。
「足を少し開いて」
男は少女にそう、命じた。

***
(続く)

関連作品:

シリーズ物:「情事契約」397〜 「情事契約」404〜
2008年07月19日(土) 14:01:26 Modified by ID:vwEPY2295w




スマートフォン版で見る