【18禁】佑子さんの憂鬱

 ※ 本作品は18禁です。
   未成年のとしあきの閲覧はご遠慮下さい。
   なお、この小説は本編の今後とは関係ありませんので、その上でご覧下さい。



 思えば、あの食事を口にしたのが問題だったのだ。

 幾ら何でも、気を許しすぎた。
 本来、彼女――――――アバドンは敵である筈の存在だ。
 一度は殺し合いを演じ、死の淵近くまで自身を追い遣った――――――恐れるべき敵だ。
 今でこそ、柊探偵事務所に住み着いているが、油断していい相手ではない。
 にも関わらず、彼女の用意した夕食を喜々として食してしまうとは。

 何たる不覚。

 「ド畜生…」

 泣こうにも泣けない。
 自分が自分でなくなったかのような、微妙な喪失感。
 嗚呼―――――――――あのイタズラっ娘は、何でこんな真似をしてくれやがったのか。
 
 「何でだあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 甲高い絶叫を上げて…
 鏡の中にいる“美少女”は悶絶した。


 「ふふ…どんな感じぃ?」
 「最悪だよ」
 黒髪の少女は、げんなりと項垂れながら呟いた。
 言葉と共に魂すらも抜けるような凄惨な声色―――しかし、それに思う所もなくアバドンは笑う。
 柊探偵事務所の所長であるその少女――――否、元・少年の柊 佑太郎は、今にも泣きそうな顔でアバドンを睨み付けた。
 「元に戻るんだろうな、これ」
 「ダイジョ〜ブだよ♪早ければ明日の昼くらい…遅ければ一週間くらいで元に戻れるハズだから♪」
 う〜ん、と唸るようにアバドンが告げる。
 ソファーに座って、食後にも関わらずクッキーをぽりぽり齧る姿からは、どうにも真剣味が感じられない。
 あまりにも曖昧―――――なのに非常に愉しそうな言葉に、思わず語気を荒げる佑太郎。
 「嬉しそうに言うなぁ!この人外ド畜生!」
 「愉しいもん♪」
 「もん♪じゃねぇよ!あ〜…何でこんな事になっちまうんだよぉ〜…」
 「泣かない泣かない」
 「お前が言うな!そもそも、何でこんなことしたんだよっ」
 「……としあきの集合的無意識とか、そんな感じで」
 「あ〜もう…っ!」
 頭を抱えて悶える。
 先ほどから、自分の口から発せられている、透明感のある綺麗な声。
 普段の自分では絶対に出せない、高く澄んだ声――――――それが本当に自分のものだとは思えず、佑太郎は未だ困惑の檻から
 抜け出せずにいた。
 「透香!透香もこいつに何とか言ってやってくれ」
 「……よく、わかりません」
 テレビを見ていた透香は、一瞬だけこちらを振り向き―――――興味なさげにテレビに視点を戻した。
 他愛もないお笑い番組をクスリとも笑わずに凝視するその姿は、シュールなことこの上ない。
 「……孤軍奮闘、か」
 「ともかく、今日からゆーくんは“佑子”ちゃんってコトにしとこうね」
 「何でだ!」
 唐突なアバドンの言葉に、思わず立ち上がって声を荒げてしまう。
 今日はこんなのばっかりだ。
 「佑太郎って名乗っていいの?」
 「…よくないけど…」
 「じゃあ、それしかないじゃん♪」
 にこにこと笑うアバドン。
 小憎らしいことこの上ないが―――――――篠崎あたりに見つかると、また厄介そうなのでそうするしかなさそうだ。
 最長で一週間ほど、別人として過ごさねばならない。
 いかにも肩が懲りそうなものをぶら下げて、握れば折れそうな身体で・…。
 (こりゃ、探偵も休業かな)
 大学にも行けそうにない。
 単位が危ないのに、と佑太郎――――もとい佑子は、がくりと項垂れながら嘆息した。

 ・

 ・

 「……ったく」
 澄んだ声が反響する浴室に、佑子の舌打ちが木霊する。
 髪をいつものクールミントシャンプーで洗いながら、佑子は入浴までに味わった女の不便さに憔悴し切っていた。
 腕力が弱まっているので、いつも持てるレベルの重いものでも持てなかった。
 加えて、ブラがなかったのでいちいち揺れる胸が本当に鬱陶しい。
 何というか―――――――男に生まれてよかったといちいち再認識させるような、そんな一時間だった。
 「…ふぅ」
 洗いにくい髪をやっとの思いで洗い終え、シャワーでざっと流す。
 肌を軽く叩く湯の感触が気持ちいい。
 泡を全て流し終えた後、栓を閉じてから髪を軽く梳くようにして絞る。
 こうするといいと、透香から教わっていたのだ。
 「………しっかし…」
 曇った鏡を掌でさっと拭いて、自分の肢体を鏡越しに見る。
 正直言って、かなり綺麗だと思う。
 感性が別物だからそう思うんであって、ナルシズムではないと思いたいが――――――それにしても、綺麗だった。
 均整の取れたプロポーションは、山猫のようにしなやかに引き締まっている。
 ほっそりとした手足に、柔らかみを帯びた腰つき。
 そして、無駄にとまでは行かずとも大きな膨らみを見せる双丘。
 撫でれば滑らかな感触が心地良い、男のようにざらついていない生絹のような肌。
 「…随分と美人じゃん、僕」
 ―――多少はナルシズムかも知れない。
 でも、それでもいいかと思わせるくらいに、鏡越しの彼女は男から見て魅力的だった。
 「…ん?」
 浴室の外から、ドタドタと騒音が聞こえる。
 せっかく人がいい気持ちで風呂に入ってるのに、無粋なものだと嘆息する。
 が――――――

 「YOU BOY〜〜〜!!」
  
 絶望的な声が聞こえた。
 このタイミングで来るとか、もう心の底から勘弁して欲しい。
 とりあえず、いつもの通りに回し蹴りから入れてみることにした。
 「人が風呂に入ってる時に来るなと……何度言えばわかるんだ、あんたは―――――ッ!」
 直撃。
 脛が側頭部を強く打ち据え、闖入者――――――GOOD BOYをダウンさせる。
 「アウチッ!」
 側頭を抑えて悶絶するGOOD BOY。
 だが、立ち直りが早いのも変態の特徴。
 すぐに起き上がり、光の速さで脱衣し浴室の入り口に敢然と立ちはだかった。
 「YOU BOY!一緒にお風呂に……って、5W1H?」
 不意に言葉が途切れる。
 GOOD BOYはいつもの調子をすっかり忘れて、目の前の“女性”を凝視していた。
 元が男な女の子。
 いつもの癖で―――――股間だけをタオルで押し隠している、黒髪の女性を力の限りに凝視していた。
 「佑子ちゃ〜ん!おっぱい見えてるよぉ」
 「…!」
 慌てて左腕で胸を庇う。
 急に気恥ずかしさが込み上げてくる。
 「あ、アバドン!お前だな、この変態をウチに入れたのはっ!」
 「だって、その方が面白そうだし♪」
 憎悪で誰かを殺せるなら――――――。
 そんな視線で、佑子は変態の後ろからちょこんと首を覗かせている飢えたる少女を睨み付けた。
 だが、そんなものはやはり関係ないらしく、アバドンは佑子の裸身をにやにやと眺めている。
 「グッボ、これゆーくんだから。遠慮なくヤッちゃっていいよん♪」
 今、さらっと最悪なことを言われた気がする。
 「OH!このレディがYOU BOY!」
 「うん。あたしは透香ちゃんどうにかしてくるから、戻ってくるまでごゆっくり〜」
 「つまりぃ〜…YOU BOYとセクロスOK!?」
 「そゆこと♪せいぜいゆーくんメロメロにしちゃってねン♪」
 「OKOK!THANKS!」
 GOOD BOYは力の限りに笑みを浮かべ、親指をぐっと立ててみせる。
 やる気まんまんのようだ。
 「は…はは…あっはははは…」
 もう、笑うしかない。
 これから始まる決戦の予感に、佑子は持てる全ての力を費やそうと決意した。

 ・

 「で…早いとこ風呂場から出てけよ変態野郎」
 手で胸と股間を隠しながら、じりじりと後ずさる佑子。
 そんな佑子に、手をわきわきと動かしながらにじり寄る変態。
 「OH!ツレない…ツレないよ、YOU BOY!そんなYOUにBIGサーヴィスッ!!」
 GOOD BOYが両手を広げる。
 そして、大声で叫んだ。
 「フェルマァァァァァァァァァルゥ!アァァァァンチッ!!」
 その途端に噴き出す“何か”。
 (―――臭ッ!?)
 鼻を衝く異臭。
 透香の放つ腐臭とはまた違う、何というか―――――――そう、生理的に臭い。
 『オトコ臭い』を極限まで突き詰めたような体臭(フェロモン)に、膝の力が抜ける。
 「え…?」
 ぺたりと浴室にへたり込む。
 足に力が入らなくなった―――――それだけじゃない、身体もどことなくヘンだ。
 動悸が激しい、むず痒い違和感が止まらない。
 「…なに、したんだ…?」
 「Meの必殺技“フェルマール・アンチ”さ!
  極限まで高めた男性フェロモンを放出することで、傍にいるオトコをメッロメロLOVEに!!!
  ――――――最大の問題は、フェロモンが強烈すぎて性質がREBIRTH!!
  娘っ子に全く効果がないどころか、むしろ逆すぎてガチ『やらないか』臭がするってPOINTかなぁ!?
  で・も……YOU BOYには効果覿面♪元がBOYだしねっ♪
  ―――――――――女体化でホルモンバランス反転してんじゃねーのとか、そういうツッコミはナシの方向でね」
 何て腐った技だ。
 変態に相応しいと言えば相応しいが―――――――コメントに困る技だ、しかもテンション超高いし。
 佑子は、妙な脱力感と違和感に苛まれて嘆息した。
 だが、GOOD BOYの『フェルマール・アンチ』の効果が本当に出ているとすれば、この状態にも説明がつくのだ。
 佑子は頑なにそれを考えようとはしない。
 女性としての経験がない佑太郎―――佑子には、理解し難い感覚。
 浴室に立ち込める異臭。
 それは、恐らく過多なフェロモンの匂いだけではあるまい。
 意識せずとも、腿を摺り寄せているのが何よりの証拠であると―――認めたくないが故に、佑子は気付いていなかった。
 しかし、それを目ざとく見つけたGOOD BOYは佑子の前に歩み出る。
 仁王立ちの彼の股間には―――――――反り勃つ剛直。
 (…っ!)
 一瞬だけ、高鳴る鼓動。
 「HEY…どうしますか、YOU BOY」
 びくびくと脈打つ巨大な肉槍。
 得意げに見下ろすGOOD BOYの顔面に蹴りを入れてやろうという考えは、既に佑子の頭の中にはなかった。

 ・

 「透香ちゃ〜ん♪ラーメン食べに行こっ♪」
 テレビを見ている透香を引っ張り出す為に、アバドンは五千円札をひらひらと小さな手で弄ぶ。
 「…ラーメン?」
 「そ。ゆーくんが『グッボと仕事の話するから、これで何か上手いモン喰って来〜い!』だって」
 透香の目がきらりと光る。
 前に買い物に行った時に食べられなかったラーメン屋台を思い出す。
 「…いき、ます」
 「そう来なくちゃね♪んじゃ、行こ行こ♪」
 透香の背中を押しながら、にこにこと屈託のない――――――ように見える笑みを浮かべるアバドン。
 アバドンに押し出されて少し困惑しながらも、透香も玄関に向かって歩き出す。
 (フフ―――女体化してるウチは性欲過多になるんだよねぇ…ゆーくん、どんだけメロメロになるか楽しみ♪)

 ・

 「…く…ぁっ」
 壁に押し付けられた佑子は、両手首を纏めてGOOD BOYに抑え付けられる。
 抵抗するにはしたが、腕力の差が覆ることはなく――――さらに、一種の腰くだけ状態になっている佑子が勝てる見込みなど
 万に一つもなかった。
 「WORDだけだねぇ、YOU BOY。全然、力を感じなかったYO」
 「…ば、ばかやろ…っ」
 苦悶に顔を歪める佑子。
 そんな佑子の顔を見て、GOOD BOYは愉悦じみた貌を覗かせる。
 「女日照りなDESTINY背負ってるからねぇ。愉しめる時に愉しんでおかないと、後で後悔するんだYO」
 「お、おまえ…僕はおと…ひぁっ」
 GOOD BOYの手が、佑子の双丘を撫ぜる。
 最初は優しく、だんだんと捏ね回すようにGOOD BOYの手は円を描いて蠢き回る。
 それに合わせるように、佑子の胸も餅のようにその形を変える。
 「ふ…あっ」
 「YOU BOYはオパーイ弱いなぁ」
 「や…やめ…っ」
 足ががくがくと震える。
 しなやかな肢体を支え切れないと言わんばかりに、膝は今にも折れんと痙攣する。
 もう両腕を抑える必要はないと思ったのか、GOOD BOYの左手は股間へと回された。
 「ちょ、やめ…っ!うあぁ…あっ!?」
 くちゅり、と指が肉壷に触れる。
 入り口を掻き分けて侵入する指は、引っ掻くように肉壁を擦り上げる。
 たまらず、佑子は両手を背後の壁につけ、背中を預けて倒れないように堪える。
 「あ…ん……く…ぅ…っ」
 男である以上、決して感じることのない快感。
 ペニスを弄ることでは得られない、それとは異質の快楽。
 抗うことによって引き絞られた弦は、今か今かと矢を放つその時を待ち構えているように思えた。
 (…わけ…わかんない…っ)
 溢れ出る愛液。
 幾度となくホワイトアウトする思考。
 佑子に抗うだけの力も精神も残っていない――――――もはや彼女は、目の前の男の為すがままとなっていた。

 ・

 「はぁ…あ…」
 仕舞いにはへたり込んでしまい、覆い被さられるように秘部や胸を弄り回された佑子は、呼吸も荒く、ぐったりと力なく
 壁に背を預けたまま座り込んでいる。
 あれから20分以上……全身をくまなく愛撫された佑子だが、一度たりとてイったりはしなかった。
 ――――――――否、イケなかったのだ。
 イキそうになると、GOOD BOYはその手を止める。
 その繰り返しに佑子の抵抗心は磨耗し、力なく萎んで行ったのだ。
 もはや気にする余裕もないのか、M字に開いた脚からは何の抵抗の意志も見られない。
 虚ろな目は、焦点なく虚空を見ている。
 ――――――既にこの時点で、男性たる佑太郎の意識は失かったのかも知れない。
 指に付いた佑子の愛液をぺろりと舐めながら、GOOD BOYは再度、その剛直を佑子の前に突き出す。
 「…あ……」
 「どうして欲しい…YOU BOY?」
 様々な思考が交錯し、考えなんてまとまらない。

  (挿れて欲しい)
      (こんな奴、死んでもゴメンだ!)
    (気持ちよくなりたい)
            (僕は男だ、女じゃない!)
     (イキたい)
          (イキたい)
 (相手がこんな変態なんて、絶対に認めない)
      (イキたい)

 「…イカ…せ…ろっ」
 折れる。
 快楽に負けて、心が折れる。
 「じゃあ…どうすればいいか、解かるよNe」
 突き出された剛直。
 愛撫しながら興奮を覚えていたのか、牡の匂いが鼻を突く。
 (―――――ダメ、だ…)
 手が伸びる。
 罅だらけの心が抗い続ける――――――だが、手は止まらない。
 そして…

 脈動する肉棒に手が触れたその時、彼≠彼女の心は折れた。

 「…あつい…」
 かつて、佑太郎が恋人と行為に及んだ際の記憶が断片的に蘇る。
 彼女は何をしたか。
 自分を気持ち良くさせる為に何をしたのか。
 ――――――今、それをしなくては……この先がないことを、佑子は何ともなしに理解していた。
 「ん…っ」
 口を開き、舌を突き出す。
 見下げ果てた変態に屈してしまった自分の不甲斐なさに――――――悔しさに、涙が頬を伝う。
 舌先がペニスに触れる。
 開いた口は、そのままペニスを包み込むように飲み込んでいく。
 「…ふ…んふぅ…っ」
 鼻から息が漏れる。
 先ほどよりも、より濃厚に鼻を―――――神経を衝く牡の体臭。
 それは、脳髄を麻痺させ、佑子を更なる快楽に誘う甘美な麻薬となる。
 「ふ…ん…く、ふぅ…っ」
 嫌悪感が、性欲に塗り潰されていく感覚。
 拙い動きで、佑子は唇と絡めた舌を使って剛直を擦り上げた。
 「O、OH!」
 ぶるり、と身体を震わせるGOOD BOY。
 その感覚は、男である自分にも理解できる感覚だ。
 単純に、気持ちいい。
 相手の―――――女性の行為で感じている証拠。
 そう思うと、何故か心が少し浮き立つ感じがするのを、佑子は必死に否定しようとした。
 だが、絡めた舌は離れようとしない。
 上下に動く頭も止まらないし、窄めた口唇は開く気配もない。
 ――――――――――要は、止めるつもりなどない。
 佑子は既に、目の前の“男性”に奉仕する理由も納得してしまっているし、その行為の嫌悪を打ち消してなおも迸る、
 この後の行為に寄せる期待を捨てることができなかったのだ。
 奉仕の最中、弄ることなくとも溢れ出す愛液が、それを如実に物語っていた。
 「OH!SHOOOOOOOOOOT!」
 「んむ…ん!んんんんんんん!!?」
 ぶるり、と大きく震えるGOOD BOYの腰。
 佑太郎――――しかも、女性の肢体を持つ彼を屈服せしめたことによる愉悦、肉竿に絡み付く舌の拙いながらも生々しい感触、
 そして、征服感と共に訪れる快楽―――――――それらが、佑子の口内で爆ぜた。
 「Foo…」
 糸を引きながら、ゆっくりと引き抜かれる男根。
 そして、佑子の口の端から零れる白濁液。
 「う…はあ……っ」
 我を失ったかのように、呆然とする佑子。
 目の前には、未だ堅さを失わないGOOD BOYの自慢の一物。
 もはや我慢の限界だと言わんばかりに、佑子の熱っぽい視線はその一点に向けられていた。

 「LIMIT?」
 「あ…」
 「鏡に手を付いて、HIPを突き出してプリィ〜ズするんだYO……OK?」
 耳元に息を吹きかけるように囁くGOOD BOYの声。
 それは、今までに聞いたどんな生き物の声よりも甘美に響く。
 脳に染み渡るような声に抗う術など持たない少女は、こくりと首を縦に振る。
 そして、言われるがままに鏡に手を付き、腰を力の限りに高く上げた。

 
 「…お、おねがい…佑子の…ここに……ちょう、だい…っ」


 牝の匂いを撒き散らす秘部に剛直の先を宛がい、腰を掴むGOOD BOY。
 「OK。行くYO…YOU BOY」
 「い、いやだっ!!」
 壁に手を付いたまま、後ろを振り返る佑子。
 そして、俯きながら―――――――――――彼女に出来る、最後の抵抗を口にした。
 「ゆ、佑子……佑子って、呼んで…」
 今から、眼前の男と獣のように交わるのは柊 佑太郎ではない。
 そう思わねば、ココロが砕けてしまいそうになるから。
 ――――――――――男の“佑太郎”は、浅ましく男の一物を求めて、ゆるりと淫靡に腰を揺らめかせる人間じゃない。
 それが、彼≠彼女の最後の抵抗。
 どう取ったのかは解からないが、GOOD BOYはそれを難なく受け入れた。
 「OKだぜ。YOU GIRL……HOLL IN!」
 亀頭が埋没。
 そして、徐々にその異様が肉壷の中へと埋まっていく。
 秘裂が広げられ、肉唇を押し退けられる感じと言いようのない圧迫感が佑子の思考を寸断する。

 「あ…うあ…ああぁあ、あぁ…っ」

 そして、強烈な一突き。
 「ふあっ!?」
 腰と恥丘を叩きつけるような腰の振り。
 異様な太さと長さを持つ肉棒は子宮口の近くまで一気に侵入し、異様に張ったカリが肉壁を容赦なく掻き上げる。
 膜は無い。
 恐らくは佑太郎が童貞ではないから―――――――なのだろうが、事実がどうなのかは解からない。
 「あ…ぁ…き、きつ……っ」
 初めての挿入。
 痛みはなく、異物感と怒涛のような快楽だけが心臓を容赦なく締め付ける。
 挿入されているだけでも、膣内で蠢く脈動だけで肉壁がふるりと震える。
 満たされたような感覚―――――――充足感を体内に感じながら、佑子の脳裏はより白く霞む。
 佑子は息が詰まるような快感に襲われながら、必死に呼吸を整えようとする。
 「VEELはないね…じゃあ、START!」
 ぬるり、とペニスが引き抜かれる。
 そして再度の挿入。
 単純な動きだが、それは今の佑子を狂わせるには充分な刺激だった。
 「ひあっ!ふ、ふか…っ」
 「GO!」
 激しいストロークに、打ち据えられる腰。
 少しでも快楽を享受しようと、ゆるりと円を描くようにくねる尻肉を、GOOD BOYがより一層強く掴む。
 子宮口を抉じ開けんばかりに突き挿れられる肉槍が、一突きごとに佑子の意識を高みへと押し上げた。
 「はぁ、あ、く、あっ」
 空気を求めて喘ぐ佑子の艶やかな声が、浴室に響く。
 溢れ出る粘液―――佑子の女性としての肉欲が、GOOD BOYの男としての肉欲に絡み付く。
 滴り落ちる愛液は、浴室に濃厚な牝の匂いを立ち込めさせる。
 「ん…あ、いっ、あ…!」
 怒張したGOOD BOYの一物は、肉壁を幾度となく掻き分けて女としての底―――最深部を目指して盲進する。
 
 「やや、愉しんでるね♪」
 がらりと風呂の戸が開き、にやけたアバドンの顔が覗く。
 少女の視線に気付き―――――――次に思い立ったのは、透香が帰って来ている可能性。
 彼女には、こんな所は見せたくない。
 「ちょ…ま、まってぇ…っ」
 止まらぬ反復運動に、悦楽で蕩け切った貌で説得力のない拒否―――――必死の抵抗を試みる佑子。
 せめてと、声を押し殺す佑子。
 その様子を楽しそうに眺めながら、アバドンは空中に朱のラインをさっと引いた。
 「ダイジョブだよ〜。ちょっとトイレって言って、転移で様子見に来ただけだから♪
  透香ちゃんはまだラーメン食べてる最中だよ」
 朱のラインは、円陣となってアバドンの下腹部に収束する。
 そして―――

 「んっく…え?」

 アバドンの股間には、ほっそりとした肢体に似合わぬ巨大な男根が生えていた。
 「え…ん…ちょ…っと…どうして…っ」
 「どうでもいいじゃん♪そんなワケで、たっぷり声を上げて楽しんでねン♪」
 アバドンが、佑子の頭を掴んでその肉棒を口に含ませる。
 「ん、むぅ…ん…んっ……ふぁあっ」
 咥内の唾液がアバドンの男根に絡みついて、てらてらと光る。
 女体化の副作用で淫靡が脳裏を埋め尽くしているせいか、それともGOOD BOYの肉棒に酔い痴れているせいか。
 佑子は積極的に舌を絡ませ、アバドンの股間のそれを吸い上げた。
 「いいよ〜、ゆーちゃん♪えっちだね〜」
 「んむ…や、やぁ…ん…は、あっ」
 「HOLLも締まってきてイイ感じYO!もっと奥までガンガンATTACK!」
 GOOD BOYがより一層、腰を強く打ち付ける。
 太く長いそれが子宮口を易々と突破し、子宮口を抉じ開ける。
 引き抜く際に巨大な亀頭は子宮口から肉壁を一気に擦り上げ、それがまた佑子に信じ難いほどの快楽を与える。
 佑子の膣内は、その肉竿からあらゆる快楽を得ようと、ぎゅうぎゅうと締め上げて離さない。
 GOOD BOYの腰の動きに合わせるように、佑子の腰が淫らに揺れる。
 「ん〜、そそるねぇ…ゆーちゃん♪」
 アバドンもまた佑子の咥内を侵略する。
 あの“佑太郎”に奉仕させているという事実がアバドンの悦楽を増長させており、満たされぬ快楽の中に在ってなお、その貌は
 悦に歪み、淫に蕩ける。
 淫靡に蕩けた佑子の目を見る度に、浴室に立ち込める愛蜜の濃厚な香りを嗅ぐ度に、アバドンの狂気は加速する。
 「や、だ、だめ、な、なにか…き、きちゃう…っ」
 「OH!膣がぴくぴく動いてるYO!こ…これはちょっと…MEもキタよ!」
 佑子の腰が痙攣し、膣壁が男根を強く締め上げる。
 感じたことのない……男性のそれとは質の異なる絶頂―――女性としての絶頂に困惑しながらも、上り詰めていく快感。
 絞り取るようなその肉の質感に、GOOD BOYの鈴口が膣内でより一層膨張する。
 「グッボ♪ゆーちゃん元は男だし、妊娠なんてしないからいーっぱい出しちゃってね♪」
 「OK!」
 GOOD BOYのピストンの速度がより一層上昇し、抉るように突き出された肉棒はなおも深淵―――佑子の女性、その中心
 を目指して侵攻する。
 膣内で痙攣し、暴れ狂う肉棒に佑子はどこまでも酔い痴れた。
 「だ…めっ、だめ…っ」
 「OH!SHOOOOOOOOT!」
 最後の一突きは今までのどの突きよりも深く強く。
 子宮口を抉じ開け、鈴口が佑子の中心を覗いているその刹那――――――弾けるように溢れ出す。
 「あ、うあ…ひあぁあああぁぁあ!!!!」
 強く腰を掴んで、GOOD BOYは恍惚の中で精を放つ。
 佑子の肢体は、それから一滴でも多くの精を絞り取ろうと淫靡に脈動する。
 「あ…ふぁ…で、でてる……」
 脈打つ肉竿に、脈打つ肉壷。
 一瞬のような、永遠のような――――時間が停止したような射精を終えた肉棒が、ずるりと秘部から引き抜かれた。
 支えを失った佑子の腰が、力なく落ちる。
 だらしなく開けきった秘部からは、白濁液が溢れ出して床を伝う。
 淫蕩に蕩けきった佑子の貌は紅潮し、清楚さとは対極の―――本能に訴えるような魅力を醸し出していた。
 「うわ〜…すっごいねぇ♪私はイッたことないからわかんないけど、多分それがイクってことだよね?
  いーなーいーなー、ゆーちゃんいーなー♪」
 アバドンが至極楽しそうにはしゃぎ回る。
 そして、くるりと一回転。
 生えていたペニスはいつの間にか消失し、元の黒いサマードレスを纏った姿に変わる。
 「私はそろそろ透香ちゃんのトコに戻るね♪トイレって言ってあるから、あんまり長いと心配させちゃうし」
 「……GIRL、トイレにしてはスローリィ過ぎると思うYO…」
 「あれあれ、私が遅い…私がスローリィ?冗談じゃねーーー!っ言いたいけど、それは置いといて戻るね♪
  お邪魔ムシは消えたげるから、第二ラウンド、楽しんでね〜♪」
 黒衣を翻して軽くジャンプ。
 一回転すると共に、黒く解けて霧散するアバドンの身体。
 浴室には、ぐったりと力なく伏せている佑子と、未だ収まらぬ剛直を反り勃たせている変態だけが残された。


 「―――――とりあえずベッドでROUND 2……FIGHT?」


 ・

 ・

 ・

 あれから、時間的には二十分程か。
 佑太郎の寝室に、ぐちゅりと卑猥な水音が響く。
 だが、その水音すらも掻き消さんばかりの嬌声が室内に響いていた。
 「だ…だめっ、こし…とまら…ないっ」
 ベッドに横たわるGOOD BOYの恥骨の辺りに跨り、深々と剛直を咥え込んでいる。
 アバドンが去ったことで二人きりになったこと、先程既に痴態を晒してしまったこと、そして快楽による思考の麻痺。
 佑子はもはや隠すことなく、全身でその快楽を享受していた。
 GOOD BOYが下から突き上げる―――佑子はそれを妨げることなく、腰を廻すようにグラインドさせる。
 膣壁を擦り上げる亀頭が、膣内でぐりぐりと動く―――その感じに、佑子の嬌声はより高く。
 「はぁっ、き、きもち…いっ、いいっ、あ、んっ」
 「Foo!YOU GIRLもVERYその気になったじゃナイ!」
 口の端からだらしなく涎を垂らしながら、涙を浮かべて腰を振りたくる。
 その堪らなく淫蕩な姿に、GOOD BOYは既に二度目であるにも関わらず一度目よりなお固く起き勃つ。
 「ドゥだいYOU GIRL、MEのイチモツはGOOD FEELかい?」
 「ん、うんっ、いっ…も、もっと…もっとおく…にぃっ」
 がくがくと首を振りながら、潤んだ瞳でGOOD BOYを見つめる。
 快楽とはかくも異な事か―――両刀の変態ですら愛しく見えてしまうのだから。
 否―――正確には、下から突き上げているその肉竿に愛着が生まれてしまっただけかも知れないが。
 錯覚にも似た愛を抱いて、佑子はGOOD BOYの上で淫らに踊る。
 「は、激しいじゃないかYO…YOU GIRL」
 上体を起こして、GOOD BOYが佑子の肢体を抱き寄せる。
 背中に触れる、GOOD BOYの手の感触。
 あれだけ嫌悪していた男に抱き締められているというのに、その大きな手に佑子は逞しさすら感じてしまう。
 包まれているような感覚に、胸がきゅっと締め付けられる。
 間近に立ち込める汗と男の体臭が、佑子の快楽中枢に麻薬じみた快感を注ぎ込んだ。
 「あ、ふ、ふか…い…っ」
 下からの激しすぎる突き上げに、佑子の肢体が大きく上下する。
 半ばまで抜けたそれは、佑子の股座との間に幾筋もの糸を引いて――――そしてまた、突き込まれる。
 絶え間ない快楽の連鎖。
 「あ…ぐ、ぐっど…ぼぉい…っ」
 手を伸ばす。
 がくがくと揺れて、弓なりに反る肢体から――佑子の手が伸ばされる。
 GOOD BOYの首筋へ。
 肩にその細い手が置かれ、掻き抱くように首筋を絡め取る。
 そして、手も脚も視線も―――その全てを享受せんと、佑子がGOOD BOYに絡み付いた。
 とてもではないが、美形だとは言えないその貌を、陶酔じみた眼差しで見つめる佑子。
 部屋を満たす濃厚な空気に酔い痴れた佑子の貌には、堕天した女神を思わせるような淫蕩な美しさがあった。
 「あ…も、もう…げんか…いっ」
 膣内が急速に締め上げられる。
 GOOD BOYの眉が顰められ、鈴口が爆発的に肥大化するような感覚。
 膣内で暴力的に暴れ狂うそれは、既に限界の兆しを見せている。
 だからこそか―――――佑子はその手をGOOD BOYの背中に回して、脚を腰に絡めた。
 最も深い所で射精を受ける為に。
 最も深い所で快楽を受ける為に。
 「き…きて、なか、なかにっ」
 そして――――
 「OH!ボラーレ・ヴィーア(とんでいきな)!」
 暴力的な二度目の射精。
 どくどくと脈打ちながら注ぎ込まれる子種。
 子宮の中を侵略する白濁液に、佑子の快楽が一気に高みまで押し上げられる。
 脳裏が白く弾けて、暖かいものが全身に拡がっていく感じ
 先程も感じた絶頂―――だが、先程よりもより高く昇っていく。
 「あ、あ…いっく…うあ、あああああああああああぁぁあ!!!」
 だらしなく舌を出しながら、仰け反って天を仰ぐ佑子。
 絶頂と共に漏れる、最後の嬌声。
 その甘美な悲鳴と共に、砕け散った理性の破片がなおも砕かれ散って逝く。
 「あ…でて…」
 二度目の膣内射精に、身体を小刻みに痙攣させながら絶頂の甘い味を噛み締める。
 そんな佑子の意志のままに、膣壁は最後の一滴までも貪欲に絞り上げようと脈を打つ。
 紅潮した頬に蕩け切った瞳。
 涙と涎でぐしゃぐしゃになっているにも関わらず、美しさに満ちたその貌をゆっくりとGOOD BOYの肩に落としながら、
 佑子の意識は深い底へと堕ちて行った。

 ・

 ・

 「ん……」
 目覚める。
 どれくらい意識を失っていただろうか……。
 時計を取ろうと寝返りを打った佑子の眼前に、GOOD BOYの顔があった。
 「うわっ!?」
 思わず悲鳴を上げる。
 その声で目覚めたのか、GOOD BOYがぱちりと瞼を開く。
 「グッモーニ…って朝じゃないNE」
 「どれくらい経った?」
 何故だろう。
 既に淫気は抜けているのに、目の前の男が傍にいることに対する違和感や警戒心が薄れている。
 一度でも身体を許してしまえばこんなものなのだろうかと、佑子は自分自身の単純さに苦笑する。
 「ん〜…10分くらいだNE」
 「あ、そう」
 物音がしない。
 透香やアバドンはまだ帰って来ていないらしい。
 それが佑子を堪らなく安堵させ、その警戒を薄めているのかも知れなかった。
 今少しは、気だるげな余韻に浸ってごろごろするのも悪くない―――佑子はそう思っていた。
 「Fooom…」
 何か不満そうに、GOOD BOYが呻く。
 悩むような後悔するような…珍しく深刻そうな呻き声に、佑子はちょっとした不快感を抱いた。
 あれだけこの身体を貪っておいて、と―――その態度にカチンと来る。
 が、GOOD BOYはその予想の斜め上を行く呟きを漏らした。
 「アナルもヤッておけばよかったYO」
 絶句する。
 呆れて声も出ない。
 「そうすれば、YOU BOYも……って、ソーリィ!今はYOU GIRLだっけNE」
 慌てて訂正するGOOD BOY。
 全く、紳士的なのか何なのか―――さっぱり理解できない。
 もっと獣のように、自分が満足する為だけに―――文字通り“犯し”に来るかと思ったのに、事の外GOOD BOY
 は佑子の快楽も視野に入れた性行為に興じていた。
 利己的ではない、相手と共に上り詰める――レイプではなくセックス。
 それが、佑子の中で彼の評価を少しだけ書き換える要因となっていた事に、佑子自身も未だ気付いていなかった。
 「まあ、YOU GIRLが元に戻るまでTIMEは幾らでもあるYO」
 情事の後だというのに、気だるさなど微塵も感じさせない大声でGOOD BOYが笑った。
 しかも、堂々と『次回も襲います』宣言までしている。
 ここまで突き抜ければ、馬鹿ももはや清々しい。
 「はぁ〜…」
 溜息をひとつ。

 呆れながら、馬鹿笑いを続けるGOOD BOYの横顔に――――聞こえるか聞こえないかくらいの声で、そっと囁いた。




 「……ばか」
2006年07月29日(土) 02:28:17 Modified by sss9991




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