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「あなたと一生を共に過ごしていきたいんです。
私が歌う意味はあなたに聞かせるため…」

そう、如月千早が彼女のプロデューサーに告白して、十年が経った。


二人は結婚して共に暮らしていた。
彼は多くのアイドルを抱えるプロデューサーとして、
千早は常にヒットを飛ばすシンガーとして活躍していた。
だが、それだけに忙しさにストレスをためることも多くなっていた。

「ったく、やってらんねーよ…ただいま」

深夜に彼が家の扉を開けると、
カップ麺を食べながら大音量でヘッドホンから流れる自分の歌を歌っている千早がいた。

「〜♪…ああ、おかえり、夕食なら自分でやって」
「おい、千早」
「何?」

千早がヘッドホンを外す。
音漏れしている『inferno』が妙に寂しく部屋に聞こえる。
お互いが鋭い目つきで睨み合う。

「旦那に夕飯一つ作らないってのはどういうことだ」
「レンジでチンすればいいでしょう。
私だって疲れてるの。子供でもないあなたの面倒なんかいちいち見てられないわ」
「疲れてんのはお互い様だろう。
だいたい、夕飯の時の夫婦の団欒って言う重要な時間をお前は無くすつもりか?」
「夕飯時のあなたは仕事の愚痴を私に言ってるだけじゃない。
私の話なんか聞こうともしない。まったくもって、くだらない時間だわ」
「そうやってつまらない言い訳をして家事の一つもしないから歌が下手になるんだ」

彼がそう言った瞬間、千早はカッとなって言った。

「今のあなたに私の歌の何が分かるっていうの?!
私はいつも歌に拘りを持って、私の全てを懸けている。
それともあの頃みたいに、歌に影響があると言えば、
私が何でも言うことを聞くと思ってるの?!
今の私は、あなたなしでもやっていける。
大体家事だって、この仕事をしている割にはうまくやっているつもりなのに…
なのに、あなたは…そうやって…!」

ヘッドホンを思わず彼めがけて投げつける千早。

「…千早、お前…!」
「…勝手にしなさいよ!」

彼女は自室に籠ってしまった。
ヘッドホンから尚も流れる歌が、彼には虚しく聞こえた。


次の日、千早とプロデューサーは顔を合わせることなく、仕事に向かってしまった。
実際には千早が早朝に出かけるので、顔を合わせられないのだ。

「今の私は、あなたなしでもやっていける」

昨日の千早の言葉が彼の胸に響く。

(俺と千早じゃ、うまくやっていけないのか…?)

彼から見れば、今の千早は自信過剰だった。
出すCDはすべて飛ぶように売れ、広告収入は莫大、
そしてオーディションは今年に入ってから無敗。
もっとも、彼女の身分からすればオーディションに出る必要はないのだが、
彼女は「自分の実力を落としたくない」という自分の意志から出続けている。
登場のたびに歓声が上がり、番組に出れば出演者から褒め称えられる。
そんな状況もあってか、いつしか
彼女の歌は派手な演出と高低の難しさをアピールしたものに変わっていった。
既に歌っていた曲も編曲により豪華にリミックスされていた。
こうなったのには千早がプロデューサーの手を離れると
決心したことを彼が承諾したからなのだが。
夫婦だからと自分に対し敬語でなくなった彼女の口調を差し置いても、
彼にとって今の千早は自分が結婚した頃の『好きだった千早』ではなくなっていた。
そして、昨日のあの言葉。

(生活においても、お互いに必要でなくなってしまったのか?)

「何、考えているんですか」

目の前にいたのは彼がプロデュースしていた元アイドルの秋月律子。
現在プロデューサーをしている彼女に、プロデューサーのイロハを叩きこんだのも
今は千早の夫である彼その人だった。

「おお、律子か。久しぶりだな」
「質問に答えてませんよ」
「厳しいな〜。千早のことをちょいとな」
「ニクいですね〜。仲が良くって」
「それがそうでもなくてね」
「夫婦喧嘩ですか」
「まあ、そんなもんだ。大したことねーよ」

少し考えて、彼女は言った。

「表情から察するに、結構深刻みたいですね」
「…律子には敵わんな」
「それなりにあなたといた時間は長いですから」
「そうかい」
「一人で悩んでも仕方ないですよ。私で良ければ、相談乗りますよ?」
「すまないな。時間は…まあざっと二時間程か」

彼は昨日あったことを全て律子に話した。

「…随分話してくれますね」
「それなりに信頼してるんだよ」
「…結論からいえば、どっちもどっちってとこですね。
お互いが腹を割って話さないと、終わりますよ。
特に芸能界はちょっとしたことが発端で関係が悪くなりますから」
「厳しいこと言ってくれるねえ」
「事実ですよ」
「でもまあ、そうかもしれないな」
「ちょっと…プロデューサー?」
「俺と千早はもうダメなのかもしれない。
お互いの悩みを打ち明けることもできないし、
そうしようと思うと相手に悪口を言うだけになってしまう。
でも、今俺は律子にこうやって悩みを打ち明けられている。
他の娘にはこんなことしないのにな」
「…口説いてるんですか?」

律子は笑って言った。
だが、彼は真剣だった。

「ああ、そうだ。
今の千早より、律子の方が謙虚で、礼儀正しい。
そしてなにより俺以上のプロデューサーとしての素質もある。魅力で溢れてるよ」
「そんなのって…でも…あなたには…」
「どうなってもいいんだよ、俺は。
律子だって一人はさみしいだろう?」

今の律子は一人身だった。
以前彼女は別のプロデューサーと付き合っており、性行為もしていた。
結婚目前と言われていた時、彼が別のアイドルと付き合い始めてしまったのだ。
そして彼女はそれを泣きながら当時まだ千早のプロデューサーと兼任であった
彼に話したことを覚えている。

「ええ、欲を言えばあなたが千早を…なんて、これ以上は言えませんけど。
でも、今の私はあなたを信頼してます」

彼女はスーツを脱いでいく。

「多分こういうことも最近はしていませんよね?
時間もあると言ってましたし、私なんかで良ければ…」
「そう自分を卑下するな。光栄だよ」


Yシャツとブラジャーを取ると、彼女の大きめの胸がまろび出る。
声を抑えてふるふる震える彼女は美しかった。
彼女は髪の毛を皮切りに、身体のあらゆる部位を愛撫され、息を吹きかけられた。
本来人が多い筈の部屋の事務机の上で、裸体を露わにしている彼女自身への羞恥。
誰も人がいない時間帯とはいえ、多くの人から見られているような幻想が見えて興奮する。
黒いタイツをパンティーごと脱がす彼の感触すら、
今は性感帯を刺激する効果に近い反応を彼女に与える。
他人の夫、それもかつて自分と同僚でありライバルだった女性の夫と性行為をする背徳感。
そこから来る戸惑いを殺して、更なる快感に変えて。
舌を絡ませ、激しい接吻をする。
比較的背が高い彼女が椅子に座る彼の膝の上に乗る形で圧し掛かっていく。
その絵は聊か異様とも取れたがそんなことはお互いどうでもよかった。
彼女の処理していない陰毛とジッパーを下した彼の陰毛が舌先以上に縮れて絡む。
同時に、胸を揉みしだかれて嬌声を思わずあげ、顔を赤らめる。

「もう、いいですよ。時間もないでしょう?」

茂みを自分でかき分けるのも彼女にとっては何年ぶりだろうか。
そんな感情は突き上げる快感と腰に来る衝動で即座に消え去ってしまった。


「…あの、プロデューサー?」

服を整える彼女に見ほれながら、彼は答えた。

「なんだい?」
「もし、欲求不満だというなら、その…毎日、期待しないで待ってますから」
「ああ、いや、こちらとしてもそっちの都合もあるし無理はさせないつもりだ」
「それと」
「ん?」
「無理というなら諦めますが…いずれは、私を拾っていただければ嬉しいです」


仕事が終わった彼は家に帰っても嬉しそうだった。

「ただいま千早」
「随分と嬉しそうね。何かあったの?」
「いや、何にも」

そういって彼は自分の夕食の支度をし始めた。

「ねえ」
「ん?どうした?」
「いや、昨日は言い過ぎたみたいで…ごめんなさい」
「別にいいんだよ、俺も悪かったし」
「そう…怒ってない?」
「だから、俺も悪かったって…怒ってねーよ」

その彼の表情を見た千早はどこか、寂しそうだった。
そして心なしか、ヘッドホンから流れる『蒼い鳥』も昨日の曲より小さく聞こえた。


次の日、プロデューサーはわざと早めに家を出て事務所へと向かった。
既に事務所についていた律子がパソコンと分厚い本を見比べて流行情報を丁寧にメモしていた。

「律子、今日も大丈夫か」
「私、今日、時間少ないですけど、でもできる限りは」

彼女はそう言って彼のズボンを下ろした。

「大胆だな」
「私も必死ですから、なんて。
ただ少しの間でも私だけを見てほしい、それだけです。そのためなら」

律子が彼の肉棒を口に咥え、舌を転がす。
彼が目を瞑って耐えるのを満足そうに見上げる。

「こんなこと、千早にしてもらったことあります?」

胸を出して口から出した肉棒を挟む。

「り、律子…!」

精液が彼女の身体に飛び散った。

「ふぅ…危うくスーツが汚れるところでしたよ」

軽く笑って服を着なおす彼女を、彼は思い切り抱いた。

「律子は本当に可愛いよ」
「本気にしちゃうじゃないですか…」
「俺は本気だよ」


一方、千早は番組の司会者の急な事故により、仕事が早く終わってしまっていた。
そこで、事務室にいる夫の様子を見に行くことにした。

「この時間なら、暇しているはず。
あの人は仕事が早いから。
昨日は無理して私の前で明るくされて、寂しかったけれど、私の方から会いに行けば」

独り言が出てくる。それだけ彼女の中で彼の存在は大きい。
今でこそ仲が悪いが、その思いを歌で表現してもいる。
自分にしかわからない作りこまれた曲と、意味深な歌詞で。

「千早ちゃん、旦那に会いに行くのかい?仲いいね〜」

番組のディレクターが笑いながら言った。

「ふふっ、ありがとうございます。
では、あなたとはあまり話したくありませんので私はこれで」

こういった毒舌がさらりと出てくるのも最近の千早の自信の表れだろう。

「手厳しいな〜。ま、しっかりやんなよ。特に旦那とHする時とか、ね」

下品な笑いを浮かべて彼は去っていった。

(そういえば、ご無沙汰だったわね。そんなこと考えてもいなかった…
最近冷たくしてたし、もしかしてあの人、欲求不満かしら?)

千早はその下品な言葉から普段の自分を思い返す。

(帰ってから、久しぶりにしたら、喜んでもらえるかしら…そうしたら、
私たちの仲も元に戻るかも)

そんなことを考えながら軽い足取りで事務所へと前に向かった。
しかし、事務室の扉から見えたのは激しいキスをする自分の夫と、かつての同僚、律子。

(嘘…!嘘よ…!なんで、どうして…あの人が…律子と?!)

部屋の中から声が聞こえる。

「もう、千早とはやっていけない。
礼儀正しくて、素直な千早はもういない。
千早は俺なしでもやっていけるんだ。律子、俺と一緒に…」

(私のせいなんだ、何もかも私のせいなんだ)

心臓の音が大きくなる。それは、彼女が弟を失った時に聞こえた音と、同じ音で。

(私が、あんなことを言ったから…取り返しのつかないことに…!)

彼女は家へと引き返した。

「あ、律子…もう時間じゃないか?」
「ああもう、私としたことが…時間を忘れるまでするなんて…。
でも結局、最後まで出来ず仕舞いでしたね」
「いいっていいって。じゃあ、またな」
「ええ、それじゃあまた」


複数のアイドルのレッスンとオーディションに立ち会った
プロデューサーはいつも通り深夜に帰宅した。
家の扉を開けると、不意に美味しそうな匂いが漂ってくる。

「おかえりなさい、あなた。夕食、作っておきました」
「す、凄く豪華なメニューだな、大変だったろ?!」

机の上にずらりと並んだメニュー。
大きめの料理本が置かれているあたり、苦労して作られたものだとうかがえる。

「いえ、食材はほっておいても送られてくるし、
家はキッチンも大きいからさして苦労は…」
「何言ってんだよ!調理が大変なのは変わらないじゃないか?!」
「そう…?それじゃあ、食べてもらえます?」

料理を一つ一つ味わって食べる。
実際美味しい。料理経験がそんなにある方ではないから、かなり難儀したはずだ。

「とても美味しいよ、ありがとう」
「そう…喜んでいただけて、とても、嬉しい…です」

エプロンをした千早が指をもぞもぞと動かしてはにかんだ。
その姿に、彼は久々に千早を可愛いと思った。
見ると、指が包帯で覆われている。

「千早?!」
「な、何かしら?まずいものでもあった?焦げてたりした?」
「違う!指、どうしたんだよ?!見せてみろ!」
「大したことないわよ…」

彼女の包帯から火傷跡がのぞいている。

「わざわざ、こんなになるまで…どうして…」
「ほ、ほら、夕食作れって言ってたじゃない…ですか。
そう、だから、たまには本気だしてみよ…みましょうか、なんて思いまして」
「す、すまないな」
「ほら、私のことはいいから、夕飯食べてください。せっかく作ったんですから」
「あ、ああ…」


夕食を食べ終わって彼がバスルームに入ると、千早が後ろから入ってきた。
彼女は服を着ておらず、胸の辺りを軽く手で隠している。
彼が浴槽につかっていることもあって、彼女が隠しきれていない秘所に思わず目が向く。

「な、千早…?」
「お背中、流しましょうか…?」
「いいって!」
「そう…?」

千早は悲しそうな目をした。

「難ならここでその、久しぶりにしても…いいんですよ?」
「何だよ、急に。だいたい、その…め、メイドさんみたいな変な言葉遣いはやめろよ」
「いけなかった…?変…?」
「変だよ。さっきから無理してまで、夕食に豪華なものだしたりさ…」
「だったら、私はどうしたらいいの…?」
「え…?」

千早の目が涙で揺れる。

「私…今でもあなたと一緒にいたいの!離れたくないの!
でも、私のせいで、あなたは私を嫌いになろうとしている…
だから、これからは何でもあなたの言う通りにする!
おいしい料理を作れと言われれば作るし、
礼儀正しい私がいいというなら言葉遣いを変える!
倒れるまでセックスしろと言われればその通りにするし、
仕事を辞めろと言われればもう辞めるわ!
だから、お願い、捨てないで…他の人のところに行かないで…
私の両親のような関係になるのは嫌…そのためなら、私、今ある自分を捨ててもいい!
あなたといられるなら、もう、歌だって…うぅ…わた…し…」

泣き腫らす彼女を浴槽からあがった彼が抱いた。

「そんなことしなくても俺はありのままの千早と愛し合いたいんだ。
無理しないでくれ。
俺はバカだな…そんなになるまで、千早を追いつめて。
何にも千早のこと、分かっちゃいなかった。
そんなに俺を愛してたんだな…」
「ぐすっ…ごめんなさい…うまく…表現でき…なくて…」


風呂からあがり、二人で肌を重ねた。

「千早、全部、見てたんだろ?俺のこと、許さないとか、思わないのか?」
「私は何も見てないわ。
あなたが私だけをこれから見てくれれば今まで何があろうと、気にしない」
「…すまない」
「謝らないで、お願い…初めてした時のように、ね?」

塗れた包帯まみれの彼女の指が、彼の頬をなぞる。
小さな胸を弄り、硬い腹をなぞった。

「どうしたの…やっぱり、物足りない、かな?」
「そんなことない、千早の身体だって、確かめてただけ」

自分から脚を大きく開くが、それに抵抗があるのか彼女の顔はのぼせたように真っ赤だ。
ディープキスも久々で慣れていないのか、
口を大きく突き出して相手の反応をうかがっている。
それがプロデューサーには滑稽で、頭を小突かれるが彼女は嬉しそうだった。
それでも何をしていいかわからずもぞもぞしていると、秘所を上下されて感じてしまう。

(ああ、自分はこの人とこうしているのが楽しいんだ)

そう実感して彼女は「もっと…」と思わず言ってしまう。
お互いの唇が触れ合い、身体が擦れ合い、震え、何度も互いを押し倒して、また返して。
息を上げながらくすくすと笑い合って。
腋毛やら陰毛やらを引っ張り合って。
最終的に上にいるのは、千早だった。

「挿れるわよ…」
「初めてじゃなかろうに」
「そ、その…自分からは初めてだから、その、ちょっと、怖くて…でも」

腰を下げて一気に自分の身体をねじ込んだ。
ほぼ飛びかけていたが欲望のままに彼を受け入れ、体をめちゃくちゃに動かして、
彼が果てると同時に千早が胸元に倒れこんだ。
お互い触れ合う胸から腹の感触が尚もまだ性欲を刺激する。

「もう…限界…」
「千早…頑張ってくれて、ありがとう」
「あなたが喜んでくれれば、それでいいの」
「凄く満足だ。もうどこにも行きやしない。
それと、今までのこと、怒ってるならいつでもおしおきしてくれ」

千早は自分の手の平にふぅっと息を吹き、彼の頬を力強く引っ叩いた。

「ふふっ、これでいい?」
「…った…身に染みたよ」
「これからは言いたいことも全部言える関係にしましょう、無理せずに」
「ああ、大好きだよ、千早」
「私の方があなたのことを好きよ」

軽いキスをして、そのまま二人は眠った。


「律子、その…」
「言わなくてもわかります。よりを戻せて、良かったですね」

携帯越しの彼女の言葉は、嫌味ひとつなかった。

「もう私とはこれっきりにしてくださいね。彼女の為にも」
「ああ、律子…」
「何も言わないでください…でないとあなたのこと、嫌いになれないじゃない…」
「…すまない」
「謝らないでください…それじゃあ、さようなら」

わざと大音量でヘッドホンの曲を聴き、彼の会話が聞こえないようにしていた千早は、
彼が電話を切ると同時にヘッドホンを外して言った。

「それじゃ、行ってくるわね、あなた」
「ああ、今日は俺が千早が帰るまでに夕飯作っとくから」
「ふふっ、よろしく頼むわね」

そうして晴れやかに扉を開けて外に駆け出す千早と、
それを見送るプロデューサーはまさに結婚当初の二人の姿だと、お互いに感じていた。

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