最終更新:ID:/dEtNn846w 2016年12月14日(水) 14:03:08履歴
「克つ、は勝つとも書く。つまり相克のサイクルは、月の支配下にあるんじゃないんですか?」
「勝のにくづきは舟が由来しているものよ。勝の大事な部分は、力が含まれていること。それはある力は別の力に克つという、相互の象徴である験」
「うーん、良いアプローチだと思ったのですが」
「全然ダメ。五行思想は強力なものなのだから、現実を観察して理論と照合する演繹をし、そこから五行思想に基づくアブダクションを発見すれば良い。」
「私と貴方様の相互はどうなのでしょう? 私は悪魔で、サタンの手先。サタンは明星で、明星は金星だから金のはずですよね」
「まぁ、相違ない」
「貴方様は……ううん、なんでしょう。お嬢様に深い繋がりがあるなら、赤で火かしら。火と金で、貴方様の勝ちですね。わあん、負けちゃったわ」
「はいはい、勝手に言ってなさい」
「あ、うまい!ふふ、それじゃあ失礼いたしますね」
「……妖怪や魔女の名前はその者を体現する。私のファーストネームから、私は木。金克木、勝つのは貴方よ」
「ねぇ、これ、何の実験?」
「あなたの、その幻視の眼の閾を測ります」
「い、閾って……」
「ん?貴方の専攻でしょ?」
「ちょっとズレてるってば。相対性心理学じゃなくて、相対性精神学」
「あ、そうか……。まぁまぁ、それはそれ。さぁ、この秘封倶楽部の秘宝、『深秘的楽曲集』よ!」
「なにそれ……魔術紛いのもの? 幻想というより、オカルトって感じなんだけど。表紙に映ってる人は誰なの?」
「上海アリス幻樂団と、黄昏フロンティアって謎のサークルが製作したCDよ。表紙に映ってるのは秘封倶楽部の初代会長さん、だとおもう」
「上海アリス幻樂団って、あの弾幕プログラミングで動く人形劇を製作した? 秘封倶楽部はそのサークルと繋がっていたの?」
「他には何も残されてないからなんとも……。まぁまぁ、これもこれ。みてみて、珍しいでしょ、骨董屋で手に入れたCDプレイヤー。電源をいれるわよ。音を可視化させるサイマティクス装置を繋いで、えっと、曲ごとの丁度可知差異を入力する表がこれで……」
不可知論。
幻想は証明することができない、幻想が在るか無いか判断はできないという理論。
私たち人間は、現象からでしか物事を判断できない。
幻想の証明には、肯定も、否定もない。
そこには反論も、反駁もない。
でも、それは立証じゃない。
だから私は可知論を掲げる。
貴方のことが『知ることができ』たら良いと、想いながら。
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