あにまん掲示板の各種スレッドに掲載されているR-18小説を保管するためのwikiです。

作者:ベリーメロン

「お義母さ――ノエリア様の命令だから仕方ないけど、ここにはもう来たくなかったな……」

 エリアルは放棄された氷結界の森に足を踏み入れながら、ため息混じりにポツリと呟いた。
 かつて氷結界とされる勢力が住んでいたその地は、封印されし龍達の余波による極寒に支配されており、ここで苦もなく活動できるのは今や氷結界に生まれ育ったエリアルを筆頭とするリチュアの者達くらいだろう。

「確かこの辺りだっけ」

 儀式に必要な素材が氷結界の地にある森で採れるので、それを採ってきてほしい。それがエリアルがノエリアより受けた命令だった。

(よりによってココに来なくちゃいけないなんて……)

 エリアルには忌むべき記憶がある。鍵をかけるように幾重にも封緘し、記憶の奥底に沈めた記憶が。
 幼い頃、依巫と呼ばれていた頃に一人でココにきてエリアルは――

「大丈夫、もうアレはいないんだ。あの戦災で絶滅したはずだから……だから大丈夫」

 ブツブツと言い聞かせるように独り言を続ける。そうでもしなければやってられないとでも言うように。
 そうやって雪が重なって幾重にもそうになった氷の大地を踏みしめながら、目的のものを探し始める。

「ああ、たぶんこれだ」

 やっと素材を見つけたエリアルは、安心したようにそれを採取して持参した容器に詰めていく。一刻も早くそこから離れたいという一心で、採取に集中する彼女は自分を見つめるモノに気付くことができなかった。

「えっ?」

 ヒュンという風を切る微かな音。同時に凍り付いたかのように感覚がなくなって、ダラリと垂れ下がる左腕。
 疑問に思ったエリアルの目に映ったのは左の二の腕辺りに突き刺さった氷のように透き通る針であった。
 痛みはなく、出血もしていないが、まるで麻酔でも打たれたかのような怠さ。針は氷のように溶けて消えたが、左腕はそれでも動かない。この感覚をエリアルはすでに知っている。

「ま、まさか……」

 這いずるナニカが氷の大地をパキパキと鳴らす。それの正体を確かめるよりも早くエリアルは弾かれたように駆け出した。

「にげなきゃ……逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃっ」

 まだ足は動く。動かないのは左腕だけだ。バランスは崩れるし、足元は到底走るのには向かない氷の大地。
 挙句の果てにはせっかく採った素材もかなぐり捨てていたが、当のエリアルはその場から逃げることだけを意識しているようだった。
 しかしそれも長く続くことはない。

「あ」

 二度目の風切り音。右足のふくらはぎ辺りに刺さった氷の針。そしてカクンと力の抜ける右足。
 不安定な足場を駆けていたエリアルは、突然の脱力に崩れるように倒れ込んだ。

「やだ……うごいてっ!うごいてよっ!」

 針はエリアルの体温によりすぐに溶けて消えてしまったが、右足の力は依然として戻らない。
 あの氷の針には毒がある。そんなことは知ってはいたが、今のエリアルは考える暇すらなかった。

「うごかなきゃっ……にげなきゃっ……」

 背後から鳴り響く這いずり音に、エリアルは無我夢中で右腕と左足のみで這うように逃げようとする。
 もはや追跡者から逃げ切れるはずはなかったが、その正体を知っているエリアルはわかっていてもその無駄な行為をやめられない。
 しかし狡猾なる追跡者はもはや逃げ切れない相手にも手を抜くことがなかった。

「い、嫌っ……」

 まさに追い撃ち。力が抜けて動かなくなった左足にはあの針が刺さっていた。
 右腕だけではもはや脱力した四肢を引き摺って這うことすらできず、背後から徐々に近付いてくる這いずり音をただ聞いていることしかできなかった。

「なんでっ……なんで絶滅したはずなのにっ……」

 身体は震え、呼吸は荒い。それは寒さによるものだけではなく、幼少期に刻み込まれたトラウマによるものだ。

「やだ……やだよ……」

 氷の森の大地を踏み這うナニカはエリアルの懇願とは正反対に姿を現した。

「なんで……魔酔虫が生き残ってるの……」

 氷結界の地には魔酔虫と呼ばれる巨大な芋虫が生息している。
 基本的に寒さに弱いはずの昆虫族の中で、ほぼ唯一極寒の氷結界でも活動ができる種だ。その分厚くブヨブヨの皮は防御にも役立つという。
 この虫の最も恐ろしい特徴として、その名の示す通り非常に強力かつ危険な麻酔毒がある。その強さはもはや魔酔とまで呼ばれており、屈強なモンスターでも身動きができなくなるほどだ。
 だが、それも本来ならば封印されし龍によって、氷結界の生物はほぼ全て鏖殺されていたはずだった。かの虎王や真炎の神すらも斬り裂き凍てつかせたトリシューラによって。

「いやっ、こないでっ……」

 エリアルが抵抗できないことを見抜いているのか、魔酔虫はゆっくりと這い寄っていく。
 小柄なエリアル程度ならすっぽりと覆い隠せそうなほどの巨体。こんなに巨大な芋虫の成虫がどんなものになるかと思うだろうが、彼等に成虫という概念はない。
 ならば魔酔虫がどう繁殖を行うかといえば、

「んぶっ……はなしてぇっ……」

 エリアルに覆い被さった魔酔虫は、上体の鉤爪の付いた脚でガッシリ彼女の身体を掴むとそのままどこかへと運んでいく。
 やっと見つけた母体を逃さないために。
 
◯◯◯

 依巫と呼ばれていた頃のエリアルは、まさしく天才児だった。
 同年代の誰よりも高い巫力を持ち、それによって強力な霊をも宿らせる。当時の彼女にはわからなかっただろうが、氷結界上層部からはいずれ大陸の覇権を握るための力になるとも見做されていた。
 しかし、ある時に転機は訪れる。それは氷結界の開放派がトリシューラを開放したときではない。
 それよりももっと前、幼少期の彼女が氷結界の森に遊びに行ったときに……



「うぅ……」

 魔酔虫によって連れ攫われたエリアルは、洞穴の中で磔にされていた。動かない手足は魔酔虫の粘着糸で絡め取られ、仰向けに大きく足を開く形で固定されている。
 洞穴の中は外に比べればずっと暖かい。おそらくここに住み着くことであの魔酔虫は生き延びていたのだろう。

「毒さえ抜ければ……きっと……」

 鉤爪だらけの脚に掴まれて連れ攫われたせいか、エリアルの服は所々が大きく裂け、白い地肌が見え隠れしてしまっている。もしここが洞穴でなければ、氷結界生まれの彼女でも凍えることは免れないほどに。
 腕など一部にできたミミズ腫れの赤い線は痛々しいが、彼女にとってはこれは些細なことではなかった。
 それよりも、問題は

「はやく、にげないと……」

 まだ動く頭で必死にエリアルは考える。
 魔酔虫はエリアルのような強い巫力を持つものを殺すことはしない。
 それはなぜか?

「はやく、にげないと、またあの時みたいに……ボクの身体が……」

 代わりに同胞を増やすための胎にする。魔酔虫はこの氷結界に住むために、より脂肪を溜め込みやすい幼虫のまま成虫にならなくなった蟲だ。
 故に成虫になれない以上その体は未発達なままであり、自分たちだけでは子孫を作れないのである。卵の外殻は弱く、空気中に晒そうものならすぐに渇ききってしまうほどの脆さ。
 だからこそ別の胎がいる。それも強靭で何度でも卵を抱卵でき、産み落とすことのできる母体が。
 巫力に守られ、肉体を維持できるエリアルという母体は最高の条件だろう。

(また、同じことをされてしまう)

 依巫と呼ばれていた当時のエリアルはこの森に入り、魔酔虫に襲われ、そして――脳裏に浮かぶ歪に膨らんだ腹。
 幸いにも産まれる前に捜索隊により救助されたが、十も越えない程度の幼い身体は無慈悲に蹂躙され、彼女の心にあまりにも深い傷痕を残してしまったのだ。

(いやだ……いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ……)

 もう二度と経験したくない体験。
 さらに今回の魔酔虫はあの時よりも遥かに大きい。本来は小さい頃のエリアルをすっぽり覆う程度だが、あの個体は大人でも平気で覆えそうなほどの巨体だ。

(こんなのに……襲われたら……)

 それも今度は救出なんて来るかはわからない。いや、義母――ノエリアは早期の対処なんてしてくれないだろう。という確信がエリアルにある。
 彼女にどれだけ盲信しても、自分を愛してはくれはしない。という確信がエリアルにある。
 昔に触れた優しさがあるからこそ、エリアルは今のノエリアの異質さを拒めない。
 その果てがこれだった。

「あ……」

 掠れた声が溢れる。恐れた事態が、魔酔虫が戻ってきてしまっていた。
 産み付ける前に精力をつけるため何かを食べてきたのか、その口な得体のしれない何かの破片が取り残されている。

「こないで……」

 蟲に懇願を聞くはずもない。魔酔虫は無慈悲に這い寄ってくる。
 のしかかられれば、華奢なエリアルの身体からミシミシと軋む音が響く。

「あ゛ぐ……やめ、て」

 産み付けるのに邪魔だとでも言うように、エリアルの衣服が鉤爪脚で引き裂かれた。
 ただの虫程度になら見られて羞恥の感情は湧かないだろうが、魔酔虫はこちらの胎を使う蟲。剥かれたことによる恐怖は計り知れないだろう。

(まずい、このままじゃ凍え死ぬ……)

 洞穴の中とはいえ冷気を完全に遮断できているわけではない。死を感じる冷気に耐え兼ねて、エリアルは巫力を用いて体温を維持させる。
 本来なら一瞬の隙をついて使いたかった巫力を別のことに使わされ、エリアルの一手は早くも潰されてしまったのだ。

「う゛っ」

 鉤爪脚とは別のブヨブヨとした短い脚がエリアルの身体を這う。
 痛みはないが不快な感触が全身を撫で回し、エリアルは強く目を瞑って耐え忍ぶことしかできない。
 誰かに触らせることなんて、まだ一度もエリアルの身体を醜悪な蟲が触っていくのだ。

(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!)

 やがて魔酔虫は「丁度いい位置」を見つけると、脚を蠢かすのを止めた。代わりにサイズ相応に巨大な口を開くとエリアルの方へ近付け、青白い煙をエリアルに吐き出す。腐臭の入り交じる口内は、目から涙が出そうだった。

「……っ」

 咄嗟に息を止めるエリアル。その口から出るものを知っているからこその行動だったが、数十秒止める程度でそれを食い止めることなど不可能だ。

「ぅ、あっ……かふっ……」

 魔酔虫の口から漏れ出すのはガスだった。ただのガスではない。これから卵を胎に産み付けるに当たって、母体を壊さないための処置である。
 つまり強制的に発情させ、産卵管を通しやすくするための。

「あっ……やだっ……こんなの、やだ……」

 煙を無理やり吸わされたエリアルは、極寒の中だというのに無理やり引き起こされた熱によって魘される。
 引き裂かれたスカートの奥で見え隠れする下着は、それだけでぐっしょり湿ってしまっていた。
 やがて前準備を終えた魔酔虫は、とうとう本番へと移り始めた。

「ひっ……」

 魔酔虫は体を折り曲げるようにエリアルに下半身を向けていく。本来排泄を行う部分と思しき場所から、一本の管が蛇のようにウネウネと伸びていた。
 その太さは痩せ気味のエリアルの手首ほどあり、記憶のものよりも太かった。

「いや……」

 それは産卵管。強く日の差すことのない氷結界に生息している故に、腹側からは魔酔虫の体内が透けて見える。そこには無数の球体がゴロゴロと並んでいる。その全てが魔酔虫の卵だった。
 伸びてきた産卵管がエリアルの下着を起用に退かしていき、その下の女陰を先端で擦り上げる。

「やだっ!こんなのやだぁっ!だれかっ!だれかぁあああっっっ!」

 半狂乱になりながら、エリアルは泣き叫ぶことしかできなかった。幼少期のあのときだってこんな風に叫ぶことしかできなかった。絶対に助けなんて来ないとわかっていても、叫ぶことしかできなかったのだ。
 そして魔酔虫にはそれが煩かったのだろう。魔酔虫の口から伸びていく舌のような器官が、ミミズのように蠢きながらエリアルの口いっぱいに挿入された。

「んぶぅっ!?」

 醜悪な蟲に口内を犯されて、エリアルは一気に目じりに涙をためる。口内に挿し込まれた「舌」はエリアルの喉の奥まで入り込み、直接何かを流し込んだ。

(あま……い……)

 魔酔虫の出す毒とフェロモンを混ぜ合わせたそのジュースは、獲物の体を弛緩させ思考力を削ぐ効果を持つ。

「あ゛……あ゛ぁ……」

 引き抜かれればエリアルはやっと口を開放されたというのに、微かな声しか漏らせなくなっていた。
 頭は痺れたように霞がかり、発情による熱だけがエリアルを意識させる。

「や……だ……だれ、か……」

 それでも残っている理性はこの先に待つ絶望を必死に拒んでいたが、魔酔虫にはもはや抵抗できなくなった体のいい苗床としか見られていないだろう。
 産卵管はやがて狙いを澄ますかのようにエリアルの陰部にピタリと止まると、一切の慈悲もなく前進する。

「あ゛っ……ぎぃっ……」

 身体から抵抗力を奪われ、発情ガスにより濡らされていたとはいえ、自分の手首の太さとそう変わらないものを突っ込まれたエリアルは苦悶の声を上げる。

「う゛あ゛っ……はいっで……くる゛……」

 産卵管はそんなエリアルを無視して奥まで進んでいく。目指すは当然、卵を孵すのに最も適した子宮まで。
 エリアルが吸わされたガスには発情作用以外にも、子宮口を緩ませる作用もあり、産卵管は容易く女の聖域へ我が物顔で侵入した。

「ボクの……なかに……はいってきてる……あかちゃんのへやこじあけられて……」

 あの頃の未成熟な胎とは違う。今のエリアルは大人ではないが、すでに人の子を孕めるほどには成熟してしまっている。
 本来ならば、ここにはもっと違う、尊いものが存在することになっただろう。しかし、今そこを我が物顔で牛耳るのは醜悪な蟲の産卵管だ。

「ノエ、リアさまぁ……やだぁ、やだよぉ……」

 エリアルは壊れたように掠れた声で泣きわめくが、魔酔虫が止まることはない。ただ無機質に本能の行くままに少女の身体を蹂躙するだけだ。

「あ…………」

 やがて、魔酔虫の産卵管が歪に丸く膨らんで蠢くのが見えた。よく見れば魔酔虫の透き通った腹の中で、卵が産卵管へと向かっていっている。
 すなわちあの膨らみは

「やだ……こんなのやだ……またうみつけられちゃうっ……だれかっ……たすけて……」

 ぐすぐすと泣き出すエリアルに対し、魔酔虫は慈悲を持つこともない。産卵管をくねらせながら、大事な卵をエリアルの膣に送り込んでいく。

「ひぎっ」

 卵の大きさはおおよそピンポン球ほどだろうか。それが卵を安全に送り込むために、太くなっている産卵管の中を通ればどうなるか。
 当然のようにエリアルの陰部を無理矢理に押し広げ、ミチミチと嫌な音を立てながら伸縮する産卵管によって押し込まれていく。

「いたい……いたいのに、なんでぇ……」

 先に打たれたガスによる影響か、激痛と快感と相殺し肉体への負担も弛緩されたせいで思った以上にすんなりと入っていく。
 そうして、その最奥すらも。

「いやっ……いれないでっ……やだっ……そこあかちゃんのへやなのっ……おしこまないで……」

 なおも無慈悲。魔酔虫は産卵管によって押し広げた子宮口へ、卵を押し込んでいく。やがて、「一つ目」がエリアルの胎内に産み落とされることとなった。
 胎に入り込むゴロリとした異物の感触は、それだけでエリアルを幼年期のトラウマを根こそぎ掘り起こす。

「いや……なんで……なんでボクだけ……また……」

 ぼろぼろと溢れる涙。しかし卵の産み付けは一つだけで終わるわけもない。エリアルの精神とは裏腹に、魔酔虫は次々と卵を胎内へ産み落としていく。

「うぃんだ……あばんす……えみりあ……のえりあさ……おかーさん……やだ……だれか、たすけて……」

 幼少期の時と同じように、徐々に歪に膨らんでいく腹をエリアルはただ泣きながら見ていることしかできなかった。

◯◯◯

「う……あ……」

 そうやってエリアルが卵を産み付けられてから二週間ほどが経過しようとしていた。
 衰弱しきったエリアル。それでも生きながらえてしまっていたのは、魔酔虫が定期的に口移しで元が何なのかも知れないドロドロに溶けた物を例の「舌」で流し込むからだった。
 さらに彼女の強い巫力が、しぶとく生存させてしまうのも大きいだろう。

(もういや……しにたい……)

 幼少期の時はまだ、産み付けられはしたものの早い段階で救われることとなった。しかし今回はすでに二週間も経過し、彼女の精神は限界にまで磨り減らされている。

「ころして……」

 魔酔虫にとって、エリアルは大事な母体だ。エリアルがどれだけ自死を望もうと魔酔虫はそれを許さない。
 舌を噛むには体力も足りず、定期的に投与される弛緩ガスのせいでそれすらも許されなかった。
 そうして、そんなエリアルが最も恐れた時が、とうとう訪れる。

「あ゛っ……!?」

 胎内で蠢く確かな感触。エリアルは顔をひきつらせるが、なにもできず受け入れることしかできない。

「いや……こんなのやだ……むしなんてうみたくない……でてこないで……でてこないでよぉ……」

 蠢くナニカは子宮から這い出ると、そのまま産道を通る赤子のように出口を目指していく。

「ひぐぅっ……やだぁ……あぎっ!」

 本来は神聖な行為のはずだったそれは醜悪な蟲に乗っ取られていた。
 苦痛に呻くエリアルに対し、少女の陰部を広げて顔を出したのは魔酔虫の幼体だ。生まれたばかりのソレは、皮膚の形成が間に合っていないのか透けており、内臓まで見えてしまっている。

「はぁっはぁっ……やだ……ちかづいてこないで……」

 生まれたばかりの幼体は、導かれるようにエリアルの身体を這っていく。
 目指すはここ二週間で張ってきていたエリアルの乳房。大きくも小さくもなく、形の良いエリアルの双方は蟲が這うと柔らかく歪んで震える。

「あ……」

 やがてご馳走にむしゃぶりつくように、エリアルの乳房にしゃぶりつく幼体。

「すわ、ないで……なにもでないから……」

 しかし、エリアルの言葉とは正反対に彼女の乳房は、母乳を滲み出し始めた。栄養たっぷりのソレを存分に吸う幼体。

「なんで……やだ……ボクは、にんしんなんて……」

 エリアルは自分の身体の変化に気付けていなかった。
 魔酔虫に何かをされるたびに嫌悪感で震えるエリアルだったが、子宮内に直接卵を産み付けられ、発情ガスも定期的に投与されていたその身体は想像妊娠に近い症状を起こしていたのである。

「いや……こんなのやだ……」

 本来なら幸せな生活を送りながら、行っていたであろう光景が醜悪な蟲によって塗りつぶされている。

「こんな、むしのために……ボクは……ボク、は……」

 そしてそんなエリアルに追い打ちをかけるように、再び胎内で脈動する気配を感じた。
 エリアルがどれだけ喚こうと、子宮から順々に這い出てくる蟲はしばらく止むことはなかった。


「はぁっ……はぁっ……」

 何匹産んだのか。もはや数えていないエリアルだったが、その数は数十は超えているだろう。
 幼体たちはエリアルの身体を這い回り、母乳を順に吸っていったところでどこかへ去っていった。

(でも、これで……)

 歪に膨らんだ腹が萎み、異物感も消えたところでやっとエリアルは不快感が薄れたことで安堵する。
 地獄の二週間が終わったのだと思ってしまったのだ。

「あ……」
 そんなエリアルに指す影。疲れていたエリアルだが、その正体を見てすぐさま顔を絶望に染める。

「こない、で……やめて……もうゆるして……」

 魔酔虫は、産卵管を揺らしながら再びエリアルに覆い被さっていく。
 エリアルの地獄はまだ続くとでも言うように。

◯◯◯

「それで、エリアルの容態はどうだった?」

 アバンスは幼馴染のエミリアに、躊躇いがちに問いかけた。答えは沈黙と、哀しげに伏せた瞳。
 アバンスはその反応を見て悔しげに俯く。

「今はお母さんが見てくれてるわ。身体は少し落ち着いたけど……心にとても深いキズを負ってるの」

 エミリアは姉妹同然に育ったエリアルの様子を思い出す。魔酔虫による凌辱を一ヶ月も受け続けた少女はひどく衰弱し、心に至っては完全に崩壊していた。
 まるで童女のように常に怯えて震えており、姉妹同然のエミリアや見舞いに来る幼馴染のウィンダ、そして母親同然のノエリア以外の相手には発狂するほどになってしまっていた。

「もっと、俺が早く助けられていれば……」

 奥歯を噛み締めるアバンス。
 氷結界の地は広大だ。そこで失踪したたった一人の少女を早期に見つけることなど、誰ができようものか。
 一ヶ月で見つかったことすら奇跡といえるだろうが、それでもアバンスは兄妹同然に育った幼馴染の惨状に、自責の念が収まることがない。エミリアもまた、エリアルを一人で行かせてしまったことを強く後悔していた。

◯◯◯

「嗚呼、可哀想なエリアル……今はお母さんが見ていてあげるから、ゆっくりとお休みなさい」
「おかーさん……しっぱいしたボクのこと、きらいになったりしない?」
「大丈夫、お母さんは貴方のことが大好きよ」
「よかった……」
「さぁ、今は休みましょう……良くなったらまた好きなもの作ってあげるわ」
「うん……………………」



「私、本当に貴方みたいな子は大好きよ。とっても使いやすいもの。魔酔虫は予想外だったけど、心が壊れたのはちょうど良かったわね……」

――スベテハ ジャネンノ ノゾムママニ

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