あにまん掲示板の各種スレッドに掲載されているR-18小説を保管するためのwikiです。


 窓から入ってくる日差しが私を焼く

 メイドが慌てて厚手のカーテンで日差しを隠す

「……ありがとう」

「いえいえ、それよりお嬢様。お身体の方は……」

「いつもと変わらないわ。それよりお願いした本は買ってきてくれた?」

「は、はい!こちらをどうぞ!」

 私はメイドから本を受け取ってベッドに横たわりながら読書をする

 私は生まれつき身体が弱くほとんど寝たきりの生活だった。恵みの太陽の光ですら私の身体を焼く毒だった。まるでおとぎ話の吸血鬼みたいに

 私は一日のほとんどを読書をして過ごしていた。身体を治すための医学書。お勉強の教科書。そしておとぎ話や娯楽小説まで

「いつか、元気になったら太陽の光を浴びながら。素敵なダーリンと……」

 来年には私も16歳だ。早い娘達は結婚する娘もいるらしい、そんなことを夢見ながら目を閉じる





「ううっ……ごほっごほっ…………」

 ある日私の容態が急変した。お医者様とお母様がひそひそ話す声が聞こえる

「お嬢様ですが……今の医学ではもう……」

「そんな!あの子がどうしてこんな目に……」

「……他の医師もあたってみます」

 お母様達は他のお医者様を探しに行ったようだ。一人残された部屋。月だけが私を見守っていてくれた

「いやよ……まだお外に出ていない……素敵なダーリンに出会っていない……死にたくない……」

 朦朧とする意識が私の身体の終わりを告げようとしていた

 





「なら私が助けてあげましょうか?」

「え?」

 いつの間にか部屋に入り込んできた女性。彼女は妖しく微笑みながらこちらに近づいてくる

「私なら貴女を死なないように、うんと長生きできるように出来る。まあ、もしかしたら死んじゃうかもだけど。このまま衰弱して終わっちゃうよりいいんじゃない?」

「なにか手術でも、していただけるの?」

「うーんとまあそんな感じ?で、やるの?やらないの?チャンスは一度きりよ。やらないならここでさよならね」

 なにがなんだかわからないけど、それでも

「私は、どんな風になっても生きたい……お願い……」

「いいわよ……それじゃあ……」

 彼女は私の身体に近づくと

 「いただきます♥️」

 ガブリッ

 私の首元に噛みついた



 熱い 熱い 熱い 私から血が奪われると同時にナニカが私の中に入り込んでくる! 私を犯して ナニカに変えてくる! 

 永遠に思えたその吸血は終わり、ベッドに寝かされた私はそのまま気を失ってしまった

「ふぅ……なかなか美味しかったわよ。それじゃあねお嬢様。『起き上がれる』といいわね」





「はっ!」

 私は目を覚ます。外はまだ月が辺りを照らしていた

「気がついたのね!良かったわ!」

 お母様が抱き締めてくれる

「貴女、一晩中眠っていたのよ!ごめんなさい、もう、貴女を一人にしないわ……きっと元気にしてくれるお医者様を見つけて見せるからね!」

「ありがとうございます、お母様。でもなんだか昨日のお薬のおかげかなんだか気分がいいんです」

 あの女性はなんだったのだろう。もしかしたら夢だったのかも知れない。それよりも生まれてから今日が一番気分がいい。まるで自分じゃないみたい

「それよりお母様、なんだかお腹が空いちゃいました」

「わかったわ!今持ってくるわね!」

 お母様はお部屋を飛び出すとすぐに戻ってきた

「リンゴがあったわ!今剥いてあげるからね!」

 お母様が剥いてくださったリンゴを口にする。おいしい



 でもなぜか満たされない。身体は別のものを求めていた

「痛っ!?」

「お母様大丈夫ですか!?」

「大丈夫よ、いつもはメイドにやらせて久しぶりだから失敗しちゃったわ」

 そう言うお母様の指からは赤い血が垂れていた……

 オ イ シ ソ ウ

「んっ……」

「はしたないわよ、やめなさい」

「……申し訳ありませんお母様!」

 思わずお母様の手を取ってその血を舐め取ってしまった



 ドクンッ

 と身体中に力が、熱が集まるのを感じる

 おいしい おいしい おいしい

 もっともっともっともっともっと

「ねえ、大丈夫なの?やっぱり安静にしていた方が……」

 お母様の言葉も聞かず私は身体の中から沸き上がる衝動に向かい合う

 目の前にたくさんおいしいがある

  さあ手を伸ばして

          牙を立てて

  一滴残らず

               その全てを



        奪い取りなさい



 ガブリッ

「いやっ!やめなさい!やめて!いたい!いたい!いたい!!」

 私はお母様に飛びかかると押し倒してその首筋に噛みついた

 お母様の制止も無視してただ本能のままにお母様の血をその全てを奪い取った。ああ……おいしい……

「はぁ……はぁ……うそ!?やだやだやだ!」

 我に帰ったときに部屋に残されていたのは血だらけの私と動かなくなったお母様だけだった

「違う……こんなこと……したかった訳じゃ……」

 ふと、部屋の鏡を見る。そこに写っていたのはもう動かなくなったお母様……だけだった

「うそ、まさか。これって……」

 鏡に写らない私。血に染まりながらも蒼白くなった手。それを恐る恐る口に入れる……人の身体に容易に穴を開けられそうな牙。まるで、そうおとぎ話で読んだような

「私……吸血鬼になってる……?」

 呆然と立ち尽くすしか出来ない私

「あの……どうかされました……え?奥様……?きゃぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 騒ぎを聞きつけたのかメイドがやってきて見られてしまった

「違う……違うのよ!私はこんなことしたかった訳じゃ!」

「お嬢様まさか貴女が!?この人殺し!」

 メイドに糾弾されて耐えられなくなった私は思わず窓から飛び降りた



 ぐしゃり



「どう……して……」

 死ねると思ったのにこんなこと夢だと思ったのに。でも身体の痛さがこれが現実なのだと思い知らせてくれた

 私は夢中になって走り出す。行くあてなんてなかったけど、ただその場から逃げ出すように





「おはよう、目は覚めた?」

 どれくらい走ったかわからない頃あの美女に話しかけられた

「無事に起き上がれたみたいで良かったわあ。歓迎するわよ私は……ヴァンプって呼ばれてるの、よろしくね?」

「貴女、私になにをしたの!?」

 思わず彼女に掴みかかる

「あら、こわいこわい。そんなに起こらないでちょうだい?それに貴女の望んだことでしょ?だから吸血鬼にしてあげたの。良かったわね、これからイヤってくらい長生きできるわよ?」

 ヴァンプはケラケラと笑う

「こんな、こんなバケモノになってまで生きたくなかった!そのせいでお母様は……」

「そう言うのは先に言ってもらわないと困るわねえ。でも、美味しかったでしょ?」

「うっ……」

 事実を言われて黙るしかなかった

「来なさい、どうせ行くところなんて無いんでしょう?」

 私はヴァンプを離してしぶしぶついていった



「ついたわよ。ようこそ、我らのヴァンパイア帝国へ」

 目の前には霧に包まれた街と丘の上に大きなお屋敷がある景色が広がっていた

「私達が住むのはあの丘の上の一番大きな家。心配ないわ。部屋なら余ってるから」

「これから私はどうなるの?」

「どうなる?好きに生きたらいいわよ。ああ、ごめんなさい人間としての貴女は昨日死んだから生きたらいいはおかしいかしら?」

 バカにしたような笑みを浮かべるヴァンプ

「さて、人間だった頃の名前なんて捨てなさい。みんなそうしてるわ。そうねえ……貴女は『フロイライン』なんてどうかしら?素敵でしょ?『未婚のお嬢様』貴女にぴったりだわ」

「貴女……いつか殺してやるわ」

 私は生まれて初めての殺意を目の前の女に向ける

「あら?いいわよ、その目。いつでもいらっしゃい。貴女に殺されるのが楽しみだわ」

 こうしてヴァンパイア・フロイラインが生まれたのでした

おしまい







「それからしばらく過ごして、ダーリンと出会って……それからは話さなくてもいいわよね?」

「うん、話してくれてありがとう。フロイライン様」

「別に、ただ貴方には知っておいて欲しかったから」

 私は自らの過去をダーリンに話した。久しぶりに夢で見たから、つい話してしまった

「うんうん、そんなこともあったわねえ……感動したわ!」

「死ね!」

 私はわざとらしく拍手するヴァンプに血を固めたナイフを投げつける。ヴァンプはそれを口で受け止めてバリバリと食べ始めた

「うーん♥️やっぱり貴女の血は美味しいわね。またちょうだいね♥️」 

「うるさい!さっさと消えなさい!」

 ヴァンプを追い払う。あの女は本当に……

「まあまあ、落ち着いてください」

「ふぅ……ふぅ……そうよね、それならダーリン……慰めて?」

 私は愛するダーリンに身体を預ける。彼は優しく抱き締めてくれた



おしまい

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

どなたでも編集できます