（前略）山間の温泉宿に来た高坂一家。
一風呂浴びた穂乃果ちゃんは、宿の裏手の遊歩道を散歩しています。
穂乃果ちゃんの足音のほかは何も聞こえてこない、静かな夕方を。
突如、甲高い鳴き声が沈黙を引き裂きます。
ﾏｰﾋﾟﾖ!ﾏｰﾋﾟﾖ!
「変わった鳴き声……鳥かな？」
温泉を満喫し身体も心も火照っていたのでしょう、穂乃果ちゃんは薄明の中、散歩道の奥へと歩みを進めていきます。
ﾋﾟ-ﾖﾋﾟ-ﾖ!
ﾋﾟﾖﾁｭﾝﾏﾂﾁｭﾝ!ｽｸﾞｺﾞﾊﾝﾆｽﾕﾁｭﾝ!
甲高い鳴き声が２種類に増えます。新たな鳴き声は――わずかに低めでしょうか――人の言葉を話しているようにも聞こえます。
穂乃果ちゃんはますます好奇心を駆り立てられ、歩みを早めます。
ガサッ
ﾋﾟﾖｯ!
体長３０センチほどの真っ白な羽毛に覆われた丸っこい鳥が、脇の茂みから飛び出しました。
特に怯える様子もなく、穂乃果ちゃんのほうをまっすぐ見つめてきます。
穂乃果ちゃんはしゃがんで手を伸ばしますが、それでも鳥は動きません。
「初めて見る鳥さんだ。なんていう種類なんだろう……」
穂乃果ちゃんに大人しく撫でられながら、鳥はﾁﾝﾁﾝと快さげに鳴いています。
ﾋﾟﾖﾁｭﾝﾄﾞｺﾆｲﾕﾁｭﾝ!?
そう遠くない距離から、また鳴き声が聞こえます。
「お母さんが探してるのかな？」
穂乃果ちゃんが鳥から手を離し、立ち上がろうとすると、
バキバキッ ガサッ
茂みを形作っていた低木が折れる音とともに、体長１メートル超の巨鳥が現れました。
「こんなに大きな鳥、見たことないや……」
さすがの穂乃果ちゃんもびっくりです。しゃがんだまま巨鳥を見上げて、固まってしまいました。
ﾏｰﾋﾟﾖ!ﾏｰﾋﾟﾖ!
白いほうの鳥が巨鳥のもとへと駆け寄っていきます。しかし、巨鳥は雛には一切目を向けず、穂乃果ちゃんを見つめています。
ﾊﾉｹﾁｭﾝ!!!!!!!!!!!!!!!!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!
天地を劈くような咆哮とともに両翼を高く掲げ、巨鳥が穂乃果ちゃんに覆いかぶさりました。
仰向けに組み伏せられてしまった穂乃果ちゃんは、巨鳥のなすがままに全身をまさぐられます。
巨鳥の身体はぶよぶよと質量があり、穂乃果ちゃんがいくらもがいても払いのけることができません。
意外と柔らかく短い嘴が穂乃果ちゃんの頬を執拗につつく一方で、両翼は器用に衣服をはだけさせていきます。
ちょうど穂乃果ちゃんの膝には巨鳥の下腹部が当たっています。じんわり湿っているのは、茂みに付着した雫を羽毛が吸っていたのでしょうか。
ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!
露わになった肌を、生温かい嘴に啄まれ、ゴワゴワした両翼で乱暴に撫でまわされる穂乃果ちゃん。
普段は人目に晒すことすらない敏感な部分を突如人外生命体に蹂躙され、恐怖のあまり声を上げることもできません。
ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁ……ﾋﾞﾖｫｯ……
巨鳥の右後頭部に棍棒がめり込むとともに、身体がわずかに左へずれる。
穂乃果の視界からグレーが消えると同時に、湧いてくる希望、漲る活力。左太腿を啜る巨鳥の頭を踏みつけ、穂乃果は立ち上がり、振り返ることなく駆け出す。
巨鳥はすぐに巨鳥を体勢を立て直し、全身の羽毛を逆立たせ、一層甲高い金切り声を上げる。
ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾁｭﾝﾁｭﾝﾉﾊﾉｹﾁｭﾝ!!ﾁｭﾝﾁｭﾝﾊｳｽﾆｶｴﾕﾁｭﾝ!!!
そこに屈強な男たちが立ち塞がる。地元猟友会の勇士達だ。
「被害者は……逃げきったな。」
「まだ向かってくるぞ！気を引き締めろ！」
益荒男５人が巨鳥を取り囲み、棍棒で殴る。
「ボディはダメだ効いてない！目を狙え！」
銛を突き立てる。
「手ごたえがねえ、急所はどこなんだ？」
斧を振り下ろす。
「下腹部に窪みがあるぞ、ここなら内臓に近い！」
岩石を打ち付ける。
「行動を封じる、足を潰せ！」
そして
「皆離れろ！撃つぞ！」
パァン！パァン！パァン！
ﾁﾞｭｳﾝﾝ……
猟銃の弾丸に身体のあちこちを貫かれ、ようやく巨鳥は息絶えた。
所要時間約２時間、使用弾丸１００発超……猟友会史上最難の狩りとなった。
巨鳥の鳴き声は山全体に響き渡るほどにすさまじく、第一声から絶命するまでその勢いは衰えることなく猟友会員達の耳を傷めつけた。
だから彼らが足元の「ﾏｰﾋﾟﾖ」を聞き落しても仕方なかったのだろう。
種の本能の深奥に刻まれた「ﾊﾉｹﾁｭﾝ」を体験した雛鳥は、親を失ったショックを補って余りあるほどの興奮に身を震わせていた。
おしおきになってねぇ……
一風呂浴びた穂乃果ちゃんは、宿の裏手の遊歩道を散歩しています。
穂乃果ちゃんの足音のほかは何も聞こえてこない、静かな夕方を。
突如、甲高い鳴き声が沈黙を引き裂きます。
ﾏｰﾋﾟﾖ!ﾏｰﾋﾟﾖ!
「変わった鳴き声……鳥かな？」
温泉を満喫し身体も心も火照っていたのでしょう、穂乃果ちゃんは薄明の中、散歩道の奥へと歩みを進めていきます。
ﾋﾟ-ﾖﾋﾟ-ﾖ!
ﾋﾟﾖﾁｭﾝﾏﾂﾁｭﾝ!ｽｸﾞｺﾞﾊﾝﾆｽﾕﾁｭﾝ!
甲高い鳴き声が２種類に増えます。新たな鳴き声は――わずかに低めでしょうか――人の言葉を話しているようにも聞こえます。
穂乃果ちゃんはますます好奇心を駆り立てられ、歩みを早めます。
ガサッ
ﾋﾟﾖｯ!
体長３０センチほどの真っ白な羽毛に覆われた丸っこい鳥が、脇の茂みから飛び出しました。
特に怯える様子もなく、穂乃果ちゃんのほうをまっすぐ見つめてきます。
穂乃果ちゃんはしゃがんで手を伸ばしますが、それでも鳥は動きません。
「初めて見る鳥さんだ。なんていう種類なんだろう……」
穂乃果ちゃんに大人しく撫でられながら、鳥はﾁﾝﾁﾝと快さげに鳴いています。
ﾋﾟﾖﾁｭﾝﾄﾞｺﾆｲﾕﾁｭﾝ!?
そう遠くない距離から、また鳴き声が聞こえます。
「お母さんが探してるのかな？」
穂乃果ちゃんが鳥から手を離し、立ち上がろうとすると、
バキバキッ ガサッ
茂みを形作っていた低木が折れる音とともに、体長１メートル超の巨鳥が現れました。
「こんなに大きな鳥、見たことないや……」
さすがの穂乃果ちゃんもびっくりです。しゃがんだまま巨鳥を見上げて、固まってしまいました。
ﾏｰﾋﾟﾖ!ﾏｰﾋﾟﾖ!
白いほうの鳥が巨鳥のもとへと駆け寄っていきます。しかし、巨鳥は雛には一切目を向けず、穂乃果ちゃんを見つめています。
ﾊﾉｹﾁｭﾝ!!!!!!!!!!!!!!!!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!
天地を劈くような咆哮とともに両翼を高く掲げ、巨鳥が穂乃果ちゃんに覆いかぶさりました。
仰向けに組み伏せられてしまった穂乃果ちゃんは、巨鳥のなすがままに全身をまさぐられます。
巨鳥の身体はぶよぶよと質量があり、穂乃果ちゃんがいくらもがいても払いのけることができません。
意外と柔らかく短い嘴が穂乃果ちゃんの頬を執拗につつく一方で、両翼は器用に衣服をはだけさせていきます。
ちょうど穂乃果ちゃんの膝には巨鳥の下腹部が当たっています。じんわり湿っているのは、茂みに付着した雫を羽毛が吸っていたのでしょうか。
ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!
露わになった肌を、生温かい嘴に啄まれ、ゴワゴワした両翼で乱暴に撫でまわされる穂乃果ちゃん。
普段は人目に晒すことすらない敏感な部分を突如人外生命体に蹂躙され、恐怖のあまり声を上げることもできません。
ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾊﾉｹﾁ……ﾋﾞﾖｫｯ……
巨鳥の右後頭部に棍棒がめり込むとともに、身体がわずかに左へずれる。
穂乃果の視界からグレーが消えると同時に、湧いてくる希望、漲る活力。左太腿を啜る巨鳥の頭を踏みつけ、穂乃果は立ち上がり、振り返ることなく駆け出す。
巨鳥はすぐに巨鳥を体勢を立て直し、全身の羽毛を逆立たせ、一層甲高い金切り声を上げる。
ﾊﾉｹﾁｭﾝ!ﾁｭﾝﾁｭﾝﾉﾊﾉｹﾁｭﾝ!!ﾁｭﾝﾁｭﾝﾊｳｽﾆｶｴﾕﾁｭﾝ!!!
そこに屈強な男たちが立ち塞がる。地元猟友会の勇士達だ。
「被害者は……逃げきったな。」
「まだ向かってくるぞ！気を引き締めろ！」
益荒男５人が巨鳥を取り囲み、棍棒で殴る。
「ボディはダメだ効いてない！目を狙え！」
銛を突き立てる。
「手ごたえがねえ、急所はどこなんだ？」
斧を振り下ろす。
「下腹部に窪みがあるぞ、ここなら内臓に近い！」
岩石を打ち付ける。
「行動を封じる、足を潰せ！」
そして
「皆離れろ！撃つぞ！」
パァン！パァン！パァン！
ﾁﾞｭｳﾝﾝ……
猟銃の弾丸に身体のあちこちを貫かれ、ようやく巨鳥は息絶えた。
所要時間約２時間、使用弾丸１００発超……猟友会史上最難の狩りとなった。
巨鳥の鳴き声は山全体に響き渡るほどにすさまじく、第一声から絶命するまでその勢いは衰えることなく猟友会員達の耳を傷めつけた。
だから彼らが足元の「ﾏｰﾋﾟﾖ」を聞き落しても仕方なかったのだろう。
種の本能の深奥に刻まれた「ﾊﾉｹﾁｭﾝ」を体験した雛鳥は、親を失ったショックを補って余りあるほどの興奮に身を震わせていた。
おしおきになってねぇ……
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