ラブライブ!派生キャラ チュン(・8・)チュンのまとめwikiです。

「ツイタチュン?ココガチュンチュンノアタヤシイオウチチュン?」
車が駐車場に収まり、エンジンが止まる。降車の準備をする運転手めがけ、助手席に置かれたケージの中からチュンチュンが問いかけるが、運転手は反応することなくケージを抱え、車を降りた。
「オソトハキモチイイチュン…ユレユノハモウコリゴリチュン…」
ペットショップからオンボロの中古車に揺られ到着した先は、車に勝るとも劣らないオンボロの、アパートの一室である。

男「ウィーッ帰ったぞー。」
女「おかえりー。DQNが午前中出かけるなんて珍しくない?どこ行ってたの?」

玄関には靴を置く隙間すらないほどにゴミ袋が山積し、いくつかからは甘酸っぱい発酵臭が立ち昇っている。
この部屋の主――日焼けした丸太のような腕にタトゥーを刻み、両耳と下唇にぶら下がる大型のピアスが歩くたびに金属音を奏でる、見たままのDQNである――は、腐臭を一切気にする様子もなく、履物をゴミ袋の上に放り投げ、奥のリビングスペースに向かった。

男「ホラヨ、誕生日プレゼント。前から欲しがってただろ?」
女「ウッソ!マジ!チュンチュンぢゃん!マジコレ本物?」
「チュン…?チュンチュンハチュンチュンチュン」
女「キャーマジで喋った!」

黄色い歓声を上げるこの女――昨晩の夜遊び装束のまま化粧を落とすこともせず、彼氏の家で午前中を寝潰す、見たままのDQNである――は、先程まで枕にしていたチュンチュンクッションを投げ捨てて、ケージからチュンチュン(本物)取り出し、撫でまわし始めた。

女「ウッソマジフカフカなんですけどー!」
「チュンッ!イタチュンイタチュン!」
彼女ら流の言い方をすると「ネイル用に育てられた」爪、端的に言ってしまえば伸び放題になっている爪がチュンチュンの柔肌に食い込んでいるが、女はチュンチュンが痛みを訴えていることにすら気づかず、チュンチュンを弄繰り回す。

男「クッソ、チュンチュン買ってきたオレには何もなしかよ…朝から並ばされたってのによ…」

20xx年、チュンチュンは犬猫に次ぐ定番ペットとして、その地位を確立させていた。
愛くるしい外見と仕草、人語を理解し自らの感情表出に用いる知能の高さ、そして1羽1000円前後という安価のために、ここ数年で一気に人気に火が付いたのである。
犬猫といった他の人気ペットと比べ幾段にも「お手軽なペット」であるチュンチュンは、子ども向けの初めてのペットとして重宝されると同時に、その手軽さゆえに、彼らのようなDQN層からも絶大な人気を集めていた。

「モットヤサシクナデナデシテホシイチューン チュンチュンハオンナノコチューン」
ひとしきりチュンチュンを弄り回した後、女が不満げに呟いた。
女「もっとカワイイ模様のやつとかいなかったの?こいつ地味すぎね?」
男「いねーよ。どれもこれもグレー一色だっての。」
女「えー使えねー……じゃアタシが染める。アンタのカラー借りるから。」
俯いてブツブツと文句を繰り返す男を尻目に、女はチュンチュンを抱え洗面台へ向かった。

女「くっせ……」
女はチュンチュンを洗面台に置き、棚から取り出したヘアカラーを練っていた。男が自分の長髪をいつも金色に保つために常備してある、大入りの安物である。
チュンチュンがちょうど収まるほどのプラスチックの容器から、練るたびに薬品臭が強烈に立ち昇ってくる。

「キモチイチュ〜〜ン オフヨハオンナノコノタシナミチュ〜〜ン」
一方チュンチュンは、蛇口から注がれてくるお湯を全身に浴び、久々に寛ぎを覚えていた。
目新しい環境への戸惑いと緊張、女の下手なスキンシップで、これまで経験したことのないほどに疲れ切っていたチュンチュン。
意識は徐々に遠くなり、温かなお湯の中へと溶けていくような、ふわふわとした眠気に見舞われていた。

うっとり目を細めているチュンチュンを、女が掴む。
女「ムラなく塗りたいし…とりあえず漬けて延ばすか」
「チュ〜ン…チュンチュンネムチュン……」
そしてそのまま、ヘドロのようなヘアカラー液で満たされたプラスチック容器に、仰向けのチュンチュンを突っ込んだ。

「ツメタチュンッ!?ベトチュン!?キモチワユイチュ……ビィャァァァ!!!イダヂュン!!イダヂュン!!アヅイ!!アヅイヂューーン!!」
羽毛に触れた時点では単なるべとべとした液体かと思ったチュンチュンだったが、肌へと浸み込んでくる段になって強烈な痛みを感じ始め、狭い容器の中で暴れまわった。
人間の頭皮であっても少なからず痛みを感じさせる安物のヘアカラーである。人間よりずっと皮膚が薄いチュンチュンにとって、その痛みは肌を刻まれるに等しかった。

女「暴れんなっての」
激痛にもがき苦しむチュンチュンを、女は手袋を嵌めた手でしっかりと押さえつける。女は薬品臭さへの苛立ちしか頭になく、チュンチュンが苦しんでいることにすら気が付かない。
「ヂュッ…ヂュッ…ビィッ…ビィッ…」
数分を経過したあたりで、チュンチュンは痛みを含め、何も感じなくなっていた。体そのものに変状は無かったが、感覚が麻痺してしまったのだろう。
だらんと開かれた両目からは涙がとめどなく溢れ、半開きの口からは小刻みに息をするたびに鳴き声にならない音が発されていた。

女「顔面も染めないと…」
チュンチュンが大人しくなった頃合いを見て、女は仰向けのチュンチュンをひっくり返し、顔面をヘアカラー液に漬けこんだ。
「ヂュゴボォ!……ボゥン!ボゥン!ボゴォ……」
意識が朦朧とする中、不意を突かれたチュンチュンは、目と口にヘアカラー液を食らい、再びパニックに陥った。
先程よりも強烈な痛み、しかも今度は息も出来ず目も見えない、さらに絶望的な状況。どれだけ抵抗しようとも、後頭部を抑えつける女の力には叶うはずもなく、容器の底に顔面を押し付けられたまま意識を失った。

「チュン……?ココハドコチュン……?チュンチュンハナニヲシテイタチュン……?」
チュンチュンが目を覚ましたのは、翌日の夜明け過ぎであった。
部屋には男と女が寝ており、チュンチュンはその部屋の隅に置かれたケージの中で横たわり、窓から差し込む朝日を浴びていた。

状況がつかめないチュンチュンは、とりあえずいつもの日課のとおり、身嗜みを整えることにした。
鏡の前で小一時間、とさかを整え、リボンを正し、全身の毛づくろい……どれも女の子として欠かせない、大切な日課である。

「チュンチュンハキョウモカワイイオンナノコ……チューーン!!ダレチュン!?コンナノチュンチュンジャナイチューーン!!」
昨日までは灰色の可愛い女の子が映っていたはずの鏡には、金色と灰色と赤系色のまだら模様の、怪物が映っていた。
結局人間用のヘアカラーではチュンチュンの羽毛を染められず、羽毛は灰色のままであった。一部金色が残っているのはただの洗い残しである。
さらに、ヘアカラーが深く皮膚へと浸透していった部位が火傷のように爛れ、赤を基調にした様々な色の膿が零れていた。

「ウソチュン…ソンナ……チュンチュンハカワイイオンナノコ……チュンッ…チュンッ……」
己の現実に気づくと同時に、昨日の地獄をも思い出す。
自分は買われた。もう安全で清潔なペットショップには戻れない。飼い主の下で暮らすしかない……
「ドウシテチュンチュンガ…チュンチュンガ……」

男「チュンチュンチュンチュンうっせーな……ブプッ!こいつやっぱマジウケルwww汚ったねwww」
女「マジウゼェ…じゃあお前がやれよ…」
「チュンッ…チュンッ…」
男「うっせーっつってんだろ?黙れよ!」
「チュピィッ!!」
男にケージを蹴られ、チュンチュンは巣箱の中で両目を抑え、声を殺して泣き続けた。

男「で、あいつあのままにしとくの?ダサくね?」
チュンチュンの染色に失敗してから1週間が経過し、ようやく膿が消え、チュンチュンは元の灰色に戻っていた。
しかし、ヘアカラーの一件がトラウマになり連日怯えながら過ごしてきたせいか、体のあちこちに円形脱毛があり、自慢のとさかの毛量も半分ほどに抜け落ちていた。
女「わかってるって。今度はゼッタイ失敗しないから。」

女はケージの天窓を開き、チュンチュンを放り出す。
「チュンチュンハナニモワユイコトシテナイチュン……イジメナイデ…」
女「デコるだけだからそんなに怯えんなっての」
「デコユ?ナニスユチュン?」
女は脱衣の山の下から宝石箱を探り出し、青く透き通る小さな塊を取った。100均で購入した、プラスチック製のジュエルである。
「キヤキヤシテユチュン-!キヤキヤー♪」
生来の乙女心をくすぐられたのであろうか、初めて見る装飾具にチュンチュンは目を輝かせ、両翼をばたつかせながら歌い始めた。

女「暴れんなっての。作業しずれー」
喜びを全身で表現するチュンチュンに対する苛立ちを漏らしつつ、女はジュエルにボンドを塗り、チュンチュンの腹部に張り付ける。
「チュンッ!?ベトベトシテキモチワユイチュン!!!?トレヤイチュン!?」
チュンチュンは必死に両翼で腹部のジュエルを叩き落とそうとするが、即効性のボンドは既に固まって羽毛とジュエルを結合させていた。ジュエルを叩くたびに羽毛が引っ張られ、痛みが走るだけである。
女「せっかく可愛くしてやってんのに嫌がんなよ」
声と手つきに苛立ちが籠る。女にとってジュエル貼り付けは「デコり」の第一段階にすぎず、チュンチュンの反応は単に邪魔なだけであった。

女はチュンチュンをうつ伏せに押さえつけ右手羽を摘まみ、一気にピアスの針を突き刺した。
「ヂュゥゥーーーン!!!イダ、イダイヂュゥゥーーン!!」
女「ヤバコレハマる!!人の耳たぶみたいでメッチャキモチイイ!」
女にとっては耳たぶのような触感かもしれないが、チュンチュンにとっては手の甲を貫かれていることに他ならない。灰色の翼に赤い染みができ、拡がってゆく。
初めて経験する痛みと流血に、チュンチュンは恐怖のあまり抵抗の気力すら失われ、女のなすがまま、次々と翼に針を受け入れていった。

「ヂュンッ!!ヂュンッ!!」
あっという間に右手羽に5個のピアスが刺され、赤黒く染まった羽毛の上で小さな煌めきを放っていた。
仕上がりに満足した女はすぐに左手羽の作業へと移行した。もはやチュンチュンに悲鳴を上げる気力すら無く、針が刺さるたびに小さくびくつき、「ヂュァァ」という呻き声を漏らすだけであった。

「チュンチュンノオテテガァ……」
10分弱の「デコり」により、チュンチュンの腹部には直径3センチほどのジュエルが張り付けられ、両翼には10個のピアスと、6個のリングが嵌め込まれた。
女「どうべ?マジよくない?」
男「マジウケルWWW俺のクルマみてーじゃん!胴が低くてキラキラひかってやがるWWWW」
「チュンッ…チュンッ…」

その夜、DQNカップルは街に繰り出していき、真っ暗な部屋にはチュンチュンだけが残されていた。
ケージの中にはペットフードが用意されていたが、真新しい傷が痛む両翼を使う気にはなれず、またショックのあまり食欲が湧かず、一口も手を付けずに寝床に横たわっていた。
心身ともに疲弊しており一刻も早く眠りたいところであったが、横になってみると、無視できない現実が待っていた。腹部に接着されたジュエルがつっかえて、寝返りを打てないうえに、体を丸めることすらできないのである。
「チュンッ……チュンッ……ドウシテチュンチュンガヒドイメニアワナキャイケナイチュンッ……」
チュンチュンのすすり泣きは夜遅くまで続いたが、DQNカップルが帰ってくるころには泣き疲れて眠ってしまった。

女「〜〜××!〜〜〜!!!」
男「ーーー!!!」
女「テメーなんでもう知らねー!二度と顔見せんじゃねーぞ!」
男「それはこっちのセリフだ!このクソ女!」

チュンチュンがこの部屋へと買われてきてから約1か月後のある日、狭い部屋の中で男と女の罵声が飛び交っていた。
元々お互いの我儘さに嫌気が差していたせいか、ふとしたきっかけから始まった口論が結局治まることなく、たったの数時間で離別が決まってしまった。

「ケンカハダメチュン……ミンナオトモチュンチュン……」
チュンチュンは頭上を通過していく怒声にすっかり怯えてしまい、ケージの隅で小さくうずくまっていた。微かな声で喧嘩を静止しようとしていたが、男も女も反応しない。
女は無言で自分の荷物をまとめ、チュンチュンのケージを持って、男の部屋を出て行った。

「キレイナオヘヤチューン!ココガチュンチュンノアタラシイオウチチュン?」
数時間後、チュンチュン等を抱えた女は、久々に実家の自室に座っていた。
ショッキングピンクの壁紙に豹柄のカーペットというゴテゴテした部屋ではあるが、DQN男の部屋と比べれば整理が行き届いており、清潔な部類ではあった。
男の部屋には辛い思いでしかないチュンチュンにとって、この突然の引っ越しは何より気分転換になった。

「チュンチュンノオヘヤハドコチュン?」
環境の変化に興奮していたチュンチュンは女に盛んに話しかけるが、女は一切反応しない。俯いたまま黙っている。
女「あーあークソ男のせいでムダな時間過ごしちゃったー!」
「チュンッ!?ビックリシタチュン!!」
女は突然立ち上がり、巨大なゴミ袋を広げた。タンスやドレッサー、宝石箱を片っ端から開けて、あれこれと放り込んでいく。

「ナニシテユチューン?モヨウガエチュン?」
チュンチュンの問いかけに、初めて女が反応を示した。
小首を傾げるチュンチュンをしばし眺めてから、背中を掴んでケージから取り出し、再度少しの間手を止めてから、
女「プラスチックと金属だけど、小さいから燃えるっしょ」
ゴミ袋に放り入れた。

「チュブッ!ナニスユチュン!?ココガチュンチュンノオヘヤチュン!?セマチュン!アツチュン!クユシイチュン!ゴツゴツシテイタイチューン!」
苦言を呈するチュンチュンに背を向けて、女はタンスを開け、衣類を選別していく。
女「このワンピもパンツも帽子もクソ野郎と着ていった……あーマジムカつく……」
続々と衣類がゴミ袋へと放られ、チュンチュンがゴミ袋の底へと押し込まれていく。
「チューン!チューン!タスケテ!!クユシイ!!タスケユチューン!!ココカラダスチューン!!」
衣類層の下から必死に助けを呼ぶが、女は一切気に掛けることなく、作業を続けていく。

自室に戻ってきて頭が冷えても、DQN男への好意が寸分も戻らなかったDQN女は、DQN男と本格的に決別する決断をした。
この廃棄作業は、DQN男のことを忘れ、新しい自分を始めるためのものである。
DQN男にまつわる品を全て処分して、二度と彼のことを思い出さずに済むように。

彼女にとって、チュンチュンもまた彼からのプレゼントである。
1000円前後という値段のせいか、チュンチュンを一個の生命として尊重しよう、大切に扱おうという発想は一切無く、動いて喋るぬいぐるみ程度のモノにすぎなかった。


作業は約半日続けられ、満杯になったゴミ袋は収集ステーションに置き捨てられていた。
ゴミの収集日は明後日なのだが、彼女にとってそんなことはどうでもよかった。
女「よーし思い出の整理完了!新しい恋を探すぞっ!」
「ヂュゥゥ…グユジイヂュン…ダヅゲデ……ヂュン…」
チュンチュンは相変わらずゴミ袋の奥底で助けを呼んでいたが、誰にも気づかれることなく、可燃ごみとして処分された。【了】

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