「チュンチュン♪」
家のベランダに住み着いたチュン(・8・)チュンが卵を産んだ。人の言葉を理解でき、その上話せるというのは珍しい。だから最初はうまくやってペットにしようとした。しかしやかましい上に糞や身体の臭いがひどい。卵から雛が孵り、そんなものを撒き散らすヤツがこれ以上増えるのは御免だ。なんとか手を打ちたいのだが・・・。
考えが浮かばないのなら我慢するしかない。そう思いながらスクフェスを起動した。今回はことりのイベント。ことりは嫌いなキャラなのだが、スマイル属性が弱いからなんとか2枚取りたい。しかし「大人気」だからボーダーが伸びることで有名なことりのイベントだ。ラブカストーンが15個しかない現状では諦めざるをえないだろう。
そんなことを思いながら報酬SRの絵柄を見てみると、ことりの手にはイースターエッグのようなものがあった。これはチュン(・8・)チュンへの嫌がらせに使えるかもしれない。
ベランダに出ると、チュン(・8・)チュンが糞をしていた。これがとにかく臭いんだ・・・。
「やあチュン(・8・)チュン、頼みがあるんだが聞いてくれよ」
怒鳴りつけそうになる心を抑えながら、努めて冷静に振る舞う。
「チュン?チーユケーキクエタラキイテアゲテモイイチュン」
なんだこの傲慢な糞鳥は。しかしここで怒ってしまっては意味がない。顔の筋肉が引き攣っているのは感じたが、どうにか表情に出ないようにした。
「チーズケーキはあげよう」
一瞬部屋に戻り、捨てる予定の皿に乗せたチーズケーキのようなものをチュン(・8・)チュンに見せた。
「ハヤクヨコスチュン!」
単純なことだ。チーズケーキを見せれば言うことを聞くんだから。ちなみにこのチーズケーキ、本物ではない。友人に頼んで作ってもらった食品サンプルだ。本物のような匂いをつけているからチュン(・8・)チュンは騙された。
そっと皿を置くと、チュン(・8・)チュンはチーズケーキに一目散だ。渡すものを渡したんだから、卵を拝借しても良いだろう。チュン(・8・)チュンの死角から卵をかすめ取った。
そして素早く部屋に戻る。
「ピィィィィィィィィィ!!!」
けたたましいチュン(・8・)チュンの叫び声が聞こえた。食べようとしても食べられない。本物ではなく食品サンプルなんだから当然だ。
「コンヤノタベヤエナイチュン!チュンチュンヲダマスナチュン!!タマチュンカエスチュン!!!タマチュン!タマチューーーーーーン!!」
卵を取り返そうと窓に体当たりをするが、強化ガラスの窓はビクともしない。チュン(・8・)チュンが暴れているうちにこのタマ(・8・)チュンとやらに細工をしないとな。
チュン(・8・)チュンの卵はチュン(・8・)チュンの毛と同じ色をしており、チュン(・8・)チュンと同じ顔がある。別にこの顔が笑ったり怒ったりするわけではないが、とても不気味だ。チュン(・8・)チュンは相変わらず窓に体当たりしている。
スクフェスを起動しイラストを見ながら、趣味に使う絵具で卵に色を塗った。ムラができないように丁寧に塗る。綺麗に塗り終えることができたが、どれだけ縫っても浮かび上がってくる顔には恐怖を感じた。
ベランダへの窓の方に向かうと、チュン(・8・)チュンは傷だらけになりメソメソと泣いていた。何度もぶつかった部分の窓には、羽毛とチュン(・8・)チュンの血が着いていた。これを掃除するのは面倒だが、チュン(・8・)チュンを追い払うことができれば構わない。
「騙して悪かったね、チュン(・8・)チュン。タマ(・8・)チュンを返させてもらうよ」
申し訳ないという気持ちは微塵もないのだが、申し訳なさを込めて言った。
「チュン!?ハヤクカエスチュン!!」
チュン(・8・)チュンは足元でピョコピョコと飛び跳ねている。良い感じで飛び跳ねているので思い切り蹴飛ばしたくなったが、潰れてしまい掃除の手間が増えそうなのでやめておこう。
「まあまあ、これでも食べて落ち着きなよ」
そう言って本物のチーズケーキを見せた。先程の友人とは別の友人に頼んで手に入れた、賞味期限切れのものだ。
「ヤン!ヤン!マタニセモノチュン!コンドハダマサエナイチュン!」
先ほど騙されたことを覚えていた。単純だといわれるチュン(・8・)チュンでも、食べ物の恨みは覚えているのか。
「見てみなよ、今度はちゃんと本物だぜ?」
目の前でチーズケーキを切って見せた。これなら信じるだろう。
「ソエナヤハヤクイウチュン!」
そう言ってチーズケーキに向かって走って行った。今のうちに細工をしたタマ(・8・)チュンを巣に置いておく。チュン(・8・)チュンが戻ってきても、あの顔は見えないような向きにしておいた。
果たしてチュン(・8・)チュンがどんな反応を見せるのかが気になり、部屋の中からチュン(・8・)チュンの様子を観察することにした。ビデオカメラもセットしてある。数分後、チュン(・8・)チュンがチーズケーキを食べ終えたようだ。
「オイシカッタチュン♪」
卵のことなどもう忘れ去っているようだった。やはりチュン(・8・)チュンはチュン(・8・)チュンだ。巣に近づくと、チュン(・8・)チュンは異変に気付いた。
「チュン!?チュンチュンノタマチュンジャナイチュン!」
自分が産んだはずの卵の色が水色になっていて驚いているようだ。この反応からして、きっと自分が巣にいない間に他のチュン(・8・)チュンが勝手に卵を産んだと勘違いしたのだろう。
「チュンチュンガイナイアイダニチュンチュンノワンヤーゾーンニダエカハイッテキタチュン…」
ほう、チュン(・8・)チュンの巣は「ワンヤーゾーン」というのか。おそらく「ワンダーゾーン」と言いたのだろう。
「デモチュンチュンノタマゴナクナッテユチュン…」
ここにきてようやく自分の卵のことを思い出したようだ。そうすると、チュン(・8・)チュンはハッとした。
「ダエカガチュンチュンノタマチュンヌスンダチュン!」
自分の卵を何者かが盗み、代わりにこの水色の卵もどきを置いたのだと思い込んでいた。
「チュンチュンノタマチュンヌスンダヤチュ、ユユサナイチュン!」
そう言うと、チュン(・8・)チュンは予想外の行動に出た。なんと卵に向かって攻撃を始めた。
「チュン!チュン!」
手羽、クチバシ、爪、使えるものは全て使ってチュン(・8・)チュンは卵を割ろうとする。
「ヤッタチュン!」
少しすると、卵が真っ二つになっていた。卵黄と卵白がベランダに垂れ流しになっている。なんと卵黄の部分にもチュン(・8・)チュンの顔のようなものがあった。これには驚いた。
「チュン?チュンチュントオナジオカオガアユチュン。フシギナコトモアユチュン」
まだこいつは卵の正体に気付いていないようだ。これからどうするのかを観察していたが、チュン(・8・)チュンは眠り始めた。窓に体当たりを繰り返した上に、卵をわることに必死で疲れてしまったのだろう。
チュン(・8・)チュンが眠り始めたのは好都合だ。今のうちに真っ二つになった卵を回収し、ネタバラシの準備をしよう。乾いた塗料は膜になっているから、爪で引っ掻いてやればすぐ剥がれるだろう。
爪楊枝も使いながら、塗膜を剥がすことができた。あえて顔の反対側は水色の塗料を残しておいた。あとは巣にこれを戻し、チュン(・8・)チュンが目覚めるのを待つだけだ。割れていないように見えるように、チュン(・8・)チュンの方に顔が向いているようにセットした。
「プワーオ」
割れた卵を巣に置いてから1時間ほどが経った頃、チュン(・8・)チュンが目を覚ました。
「ユメニハノケチェンガデテキタチュン。ハノケチェンニアイタイチュン」
どうやら良い夢を見たようだ。しかしまだ卵に気付いていない。早く気付けよ!と思わず声に出しそうになったがこらえた。
「プーワプーワシータモーノカワイイナ!ハイ♪アトッハマッカヨンタクサンナヤベタヤ〜♪カヤフユーデーシーヤーワーセー♪」
このフレーズに似たフレーズ、聞き覚えがあるぞ・・・。
「タマチュン!?」
そのフレーズをどこで聞いたか思い出そうとしていると、チュン(・8・)チュンが卵に気付いた。
「タマチュンドコニイッテタチュン?」
行方知れずだった卵か戻ってきて嬉しいのだろう、チュン(・8・)チュンは卵に抱き着いた。その時だった。
「チュン!?」
チュン(・8・)チュンが飛びついた衝撃で卵が真っ二つになった。
「ピィィィィィィィィィィ!!!タマチュンワエテユチュン!ダエノシワザチュン!」
毛を逆立ててチュン(・8・)チュンが怒った。思わず笑い出してしまった。笑いながらもビデオカメラに手を伸ばし、録画をストップした。
「ハハハ!そうだよ!このタマ(・8・)チュンを割ったのはチュン(・8・)チュンだよ!」
笑いも収まらない内に、ベランダに出てチュン(・8・)チュンに真実を伝えてやった。
「ウソチュン!チュンチュンヲダマスナチュン!」
目の前の真実から目を背けたくもなるだろう。
「ほう、じゃあこれを見るといいよ」
ビデオカメラに映し出されたのは、チュン(・8・)チュンが卵を割っている姿だった。
「コエハチュンチュンジャナイチュン!!!」
まだ信じられないようだ。少し映像を早送りしてやる。後ろ半分だけ水色のタマ(・8・)チュンに、チュン(・8・)チュンが抱き着いたシーンだった。するとみるみるうちにチュン(・8・)チュンが青ざめていった。
「チュンチュンガ…チュンチュンガタマチュンワッタチュン…?」
ようやく真実に気づいたようだ。
「そうさ!君が自分の手でそのタマ(・8・)チュンを割ったんだよ!ああ、なんてかわいそうなタマ(・8・)チュン!自分の親に割られてしまうなんてなあ!」
大げさにかぶりを振ってみる。もっとも、自分がやったことへのショックでチュン(・8・)チュンは聞いていないようだが。チュン(・8・)チュンがこの後どう出るかと思って見ていると、震えだした。怒りのあまり攻撃をしてくるのだろうかと思ったが、様子が違う。
「チュエーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!」
チュン(・8・)チュンは泣き出してしまった。これで懲りただろう。そう思い俺は部屋に戻った。
その後もしばらくチュン(・8・)チュンはベランダにいた。しかし食事を求めてくるでもなく、ただただ泣いて過ごすばかりだった。たまにチョコレートの欠片などを置いてやったが見向きもせず、やがて飢えて死んでいった。チュン(・8・)チュンの雛や卵に対する愛は本物だったということだろう。
何はともあれ、勝手に住み着いて邪魔だったチュン(・8・)チュンを排除することに成功した。初めは追い払うだけのつもりだったが、思いもしない形で自滅してくれた。これでまた静かに暮らすことができる。
おしまい
家のベランダに住み着いたチュン(・8・)チュンが卵を産んだ。人の言葉を理解でき、その上話せるというのは珍しい。だから最初はうまくやってペットにしようとした。しかしやかましい上に糞や身体の臭いがひどい。卵から雛が孵り、そんなものを撒き散らすヤツがこれ以上増えるのは御免だ。なんとか手を打ちたいのだが・・・。
考えが浮かばないのなら我慢するしかない。そう思いながらスクフェスを起動した。今回はことりのイベント。ことりは嫌いなキャラなのだが、スマイル属性が弱いからなんとか2枚取りたい。しかし「大人気」だからボーダーが伸びることで有名なことりのイベントだ。ラブカストーンが15個しかない現状では諦めざるをえないだろう。
そんなことを思いながら報酬SRの絵柄を見てみると、ことりの手にはイースターエッグのようなものがあった。これはチュン(・8・)チュンへの嫌がらせに使えるかもしれない。
ベランダに出ると、チュン(・8・)チュンが糞をしていた。これがとにかく臭いんだ・・・。
「やあチュン(・8・)チュン、頼みがあるんだが聞いてくれよ」
怒鳴りつけそうになる心を抑えながら、努めて冷静に振る舞う。
「チュン?チーユケーキクエタラキイテアゲテモイイチュン」
なんだこの傲慢な糞鳥は。しかしここで怒ってしまっては意味がない。顔の筋肉が引き攣っているのは感じたが、どうにか表情に出ないようにした。
「チーズケーキはあげよう」
一瞬部屋に戻り、捨てる予定の皿に乗せたチーズケーキのようなものをチュン(・8・)チュンに見せた。
「ハヤクヨコスチュン!」
単純なことだ。チーズケーキを見せれば言うことを聞くんだから。ちなみにこのチーズケーキ、本物ではない。友人に頼んで作ってもらった食品サンプルだ。本物のような匂いをつけているからチュン(・8・)チュンは騙された。
そっと皿を置くと、チュン(・8・)チュンはチーズケーキに一目散だ。渡すものを渡したんだから、卵を拝借しても良いだろう。チュン(・8・)チュンの死角から卵をかすめ取った。
そして素早く部屋に戻る。
「ピィィィィィィィィィ!!!」
けたたましいチュン(・8・)チュンの叫び声が聞こえた。食べようとしても食べられない。本物ではなく食品サンプルなんだから当然だ。
「コンヤノタベヤエナイチュン!チュンチュンヲダマスナチュン!!タマチュンカエスチュン!!!タマチュン!タマチューーーーーーン!!」
卵を取り返そうと窓に体当たりをするが、強化ガラスの窓はビクともしない。チュン(・8・)チュンが暴れているうちにこのタマ(・8・)チュンとやらに細工をしないとな。
チュン(・8・)チュンの卵はチュン(・8・)チュンの毛と同じ色をしており、チュン(・8・)チュンと同じ顔がある。別にこの顔が笑ったり怒ったりするわけではないが、とても不気味だ。チュン(・8・)チュンは相変わらず窓に体当たりしている。
スクフェスを起動しイラストを見ながら、趣味に使う絵具で卵に色を塗った。ムラができないように丁寧に塗る。綺麗に塗り終えることができたが、どれだけ縫っても浮かび上がってくる顔には恐怖を感じた。
ベランダへの窓の方に向かうと、チュン(・8・)チュンは傷だらけになりメソメソと泣いていた。何度もぶつかった部分の窓には、羽毛とチュン(・8・)チュンの血が着いていた。これを掃除するのは面倒だが、チュン(・8・)チュンを追い払うことができれば構わない。
「騙して悪かったね、チュン(・8・)チュン。タマ(・8・)チュンを返させてもらうよ」
申し訳ないという気持ちは微塵もないのだが、申し訳なさを込めて言った。
「チュン!?ハヤクカエスチュン!!」
チュン(・8・)チュンは足元でピョコピョコと飛び跳ねている。良い感じで飛び跳ねているので思い切り蹴飛ばしたくなったが、潰れてしまい掃除の手間が増えそうなのでやめておこう。
「まあまあ、これでも食べて落ち着きなよ」
そう言って本物のチーズケーキを見せた。先程の友人とは別の友人に頼んで手に入れた、賞味期限切れのものだ。
「ヤン!ヤン!マタニセモノチュン!コンドハダマサエナイチュン!」
先ほど騙されたことを覚えていた。単純だといわれるチュン(・8・)チュンでも、食べ物の恨みは覚えているのか。
「見てみなよ、今度はちゃんと本物だぜ?」
目の前でチーズケーキを切って見せた。これなら信じるだろう。
「ソエナヤハヤクイウチュン!」
そう言ってチーズケーキに向かって走って行った。今のうちに細工をしたタマ(・8・)チュンを巣に置いておく。チュン(・8・)チュンが戻ってきても、あの顔は見えないような向きにしておいた。
果たしてチュン(・8・)チュンがどんな反応を見せるのかが気になり、部屋の中からチュン(・8・)チュンの様子を観察することにした。ビデオカメラもセットしてある。数分後、チュン(・8・)チュンがチーズケーキを食べ終えたようだ。
「オイシカッタチュン♪」
卵のことなどもう忘れ去っているようだった。やはりチュン(・8・)チュンはチュン(・8・)チュンだ。巣に近づくと、チュン(・8・)チュンは異変に気付いた。
「チュン!?チュンチュンノタマチュンジャナイチュン!」
自分が産んだはずの卵の色が水色になっていて驚いているようだ。この反応からして、きっと自分が巣にいない間に他のチュン(・8・)チュンが勝手に卵を産んだと勘違いしたのだろう。
「チュンチュンガイナイアイダニチュンチュンノワンヤーゾーンニダエカハイッテキタチュン…」
ほう、チュン(・8・)チュンの巣は「ワンヤーゾーン」というのか。おそらく「ワンダーゾーン」と言いたのだろう。
「デモチュンチュンノタマゴナクナッテユチュン…」
ここにきてようやく自分の卵のことを思い出したようだ。そうすると、チュン(・8・)チュンはハッとした。
「ダエカガチュンチュンノタマチュンヌスンダチュン!」
自分の卵を何者かが盗み、代わりにこの水色の卵もどきを置いたのだと思い込んでいた。
「チュンチュンノタマチュンヌスンダヤチュ、ユユサナイチュン!」
そう言うと、チュン(・8・)チュンは予想外の行動に出た。なんと卵に向かって攻撃を始めた。
「チュン!チュン!」
手羽、クチバシ、爪、使えるものは全て使ってチュン(・8・)チュンは卵を割ろうとする。
「ヤッタチュン!」
少しすると、卵が真っ二つになっていた。卵黄と卵白がベランダに垂れ流しになっている。なんと卵黄の部分にもチュン(・8・)チュンの顔のようなものがあった。これには驚いた。
「チュン?チュンチュントオナジオカオガアユチュン。フシギナコトモアユチュン」
まだこいつは卵の正体に気付いていないようだ。これからどうするのかを観察していたが、チュン(・8・)チュンは眠り始めた。窓に体当たりを繰り返した上に、卵をわることに必死で疲れてしまったのだろう。
チュン(・8・)チュンが眠り始めたのは好都合だ。今のうちに真っ二つになった卵を回収し、ネタバラシの準備をしよう。乾いた塗料は膜になっているから、爪で引っ掻いてやればすぐ剥がれるだろう。
爪楊枝も使いながら、塗膜を剥がすことができた。あえて顔の反対側は水色の塗料を残しておいた。あとは巣にこれを戻し、チュン(・8・)チュンが目覚めるのを待つだけだ。割れていないように見えるように、チュン(・8・)チュンの方に顔が向いているようにセットした。
「プワーオ」
割れた卵を巣に置いてから1時間ほどが経った頃、チュン(・8・)チュンが目を覚ました。
「ユメニハノケチェンガデテキタチュン。ハノケチェンニアイタイチュン」
どうやら良い夢を見たようだ。しかしまだ卵に気付いていない。早く気付けよ!と思わず声に出しそうになったがこらえた。
「プーワプーワシータモーノカワイイナ!ハイ♪アトッハマッカヨンタクサンナヤベタヤ〜♪カヤフユーデーシーヤーワーセー♪」
このフレーズに似たフレーズ、聞き覚えがあるぞ・・・。
「タマチュン!?」
そのフレーズをどこで聞いたか思い出そうとしていると、チュン(・8・)チュンが卵に気付いた。
「タマチュンドコニイッテタチュン?」
行方知れずだった卵か戻ってきて嬉しいのだろう、チュン(・8・)チュンは卵に抱き着いた。その時だった。
「チュン!?」
チュン(・8・)チュンが飛びついた衝撃で卵が真っ二つになった。
「ピィィィィィィィィィィ!!!タマチュンワエテユチュン!ダエノシワザチュン!」
毛を逆立ててチュン(・8・)チュンが怒った。思わず笑い出してしまった。笑いながらもビデオカメラに手を伸ばし、録画をストップした。
「ハハハ!そうだよ!このタマ(・8・)チュンを割ったのはチュン(・8・)チュンだよ!」
笑いも収まらない内に、ベランダに出てチュン(・8・)チュンに真実を伝えてやった。
「ウソチュン!チュンチュンヲダマスナチュン!」
目の前の真実から目を背けたくもなるだろう。
「ほう、じゃあこれを見るといいよ」
ビデオカメラに映し出されたのは、チュン(・8・)チュンが卵を割っている姿だった。
「コエハチュンチュンジャナイチュン!!!」
まだ信じられないようだ。少し映像を早送りしてやる。後ろ半分だけ水色のタマ(・8・)チュンに、チュン(・8・)チュンが抱き着いたシーンだった。するとみるみるうちにチュン(・8・)チュンが青ざめていった。
「チュンチュンガ…チュンチュンガタマチュンワッタチュン…?」
ようやく真実に気づいたようだ。
「そうさ!君が自分の手でそのタマ(・8・)チュンを割ったんだよ!ああ、なんてかわいそうなタマ(・8・)チュン!自分の親に割られてしまうなんてなあ!」
大げさにかぶりを振ってみる。もっとも、自分がやったことへのショックでチュン(・8・)チュンは聞いていないようだが。チュン(・8・)チュンがこの後どう出るかと思って見ていると、震えだした。怒りのあまり攻撃をしてくるのだろうかと思ったが、様子が違う。
「チュエーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!」
チュン(・8・)チュンは泣き出してしまった。これで懲りただろう。そう思い俺は部屋に戻った。
その後もしばらくチュン(・8・)チュンはベランダにいた。しかし食事を求めてくるでもなく、ただただ泣いて過ごすばかりだった。たまにチョコレートの欠片などを置いてやったが見向きもせず、やがて飢えて死んでいった。チュン(・8・)チュンの雛や卵に対する愛は本物だったということだろう。
何はともあれ、勝手に住み着いて邪魔だったチュン(・8・)チュンを排除することに成功した。初めは追い払うだけのつもりだったが、思いもしない形で自滅してくれた。これでまた静かに暮らすことができる。
おしまい
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