ゴッドイーターでエロパロスレの保存庫の避難所です

 室内を薄暗く染めるのは、常夜灯のオレンジの小さな灯り。
 常夜灯の灯りはベッドサイドに並ぶ酒瓶に映り込み、緩く上下する布団に陰影を落とす。

 枕に突っ伏し布団に潜り、啜り泣きにも似た小さな声を上げる少女の剥き出しのまろやかな肩が、仄かに赤味を帯びて見えるのは果たして常夜灯の灯りの所為だろうか。
 果たして嗚咽の声は、くぐもっていようともこれ程甘く聞こえるものだろうか。


 猫の情交の啼き声は、赤子の泣き声に似ると聞く――。


「……ふ、っん、……ぁんんっ……!」
 枕に涙を染み込ませた目元は赤く、身体の下に敷いた一対の腕の先、片手は年の割に豊かな乳房を揉みしだき、もう片方は両膝を着けて高く上げた下肢に伸び、その細い指先を柔肉で隠された奥へと埋めていた。
 月に一度鮮血を零すその道は、今は血では無く透明な蜜をたらたらと零して少女の手指を濡らしている。

 極東支部初の新型神機使い、そして失踪した前隊長に代わり極東支部第一部隊を束ねる隊長となった少女が、自慰に耽っているなど――果たして誰が思うだろうか。

「そー……、ふ、ぁ……ぁ、あ……」

 泣き顔とも善がり顔ともつかぬ顔で、少女は想い人に腕を掴まれた時の、あの指の感触を思い出しながら、秘所に埋めた自分の指で疼く膣壁を擦り慰めていく。

 ――違う。あの指は、もう少し太くて、もっとゴツゴツしていた。

「あっ…あぁっ……」

 足りない、足りない――。
 疼くのはもっと奥。自分の指では届かない其処を埋めたいと本能が啼いて望むが、それでも無機物を入れる勇気は無く。
 溢れた愛液を指に絡め、秘所を弄る指を増やす事で身体の疼きを誤魔化す。

「ソーマ……そーまぁ……っ」

 枕に額を押し付け、胸をシーツに擦り付け、腰を高く上げて。
 まるで獣の様な――独りで慰めるにしてもはしたない格好だってのは判ってる。
 彼にも想い人の少女が居るのだと薄っすらと感付いても、それでもどうしても切なく、諦め切れず。

 未練がましいと初めて自分の指を埋め……想いながら達して、仰向けでぼんやりと視界に入る天井に、独りという孤独と虚無感に泣いた。

 それ以来、自分を慰める時はうつ伏せか肩をベッドに着いた四つん這いで、視界を枕で埋める様になった。
 背に圧し掛かる布団の重みを、ソーマの身体だと脳を誤魔化して。後ろから胸を揉み込まれ、腹と臍を撫でられ、秘所を擦り肉芽を弾くのは彼の浅黒い指――。
 頭の中でソーマの声を思い出せば、それだけでトロトロと蜜が零れてくる。
 ――欲しい、彼が欲しい。ソーマの肉でこの空洞を埋めたいのだと、餓えた身体が唾を零す。

 ベッドの頭側の壁一枚向こうには、彼が居る。
 この壁の向こうは、彼が寝床にしているソファ。
 それでも――彼にこの声が聞こえる筈なんて無い事を、あたしは知ってる。
 壁は防音素材が使われてるし、何よりソーマは三台のスピーカーから音楽を流しっぱなしで寝るのだ。耳の良い彼には、そうしないと物音が聞こえて寝辛いらしい。

 ――あのローターの音も五月蠅いヘリの中でも平気で寝てるのにねぇ。

 思い出した無防備な寝顔に顔を緩ませ、このまま昇りつめようと一際激しく指を動かした。

 明日も、何時もの様に、笑い猫の様にふやふやと笑う為に。
 明日も、あの少女と食事付きの“デート”に向かう彼を、笑って見送る為に。



+++



 は、と荒い息を吐き、濡れ汚れたティッシュの上に二枚三枚と新しいのを重ねて潰し、屑籠に叩き付けた。

 ああ、最悪だ。最悪だ。

 立ち上がるのも億劫な程なのに、頭の中が煮えている。
 整わない息に苛立ちながら壁の向こうを窺えば、隣室は音も無くただ空気がざわめいている。
 自分の荒い呼吸にアイツの声が被さって聞こえ、頭を振って追い払う。



 気付いたのは何時だったか。
 夜中、偶然。
 寝床のソファを囲む三台のスピーカーから垂れ流している間奏の無音に、短い引き攣る様な泣き声が交じった。
 始めは気の所為かとも思い、しかし気の所為ではなかった声に音楽を切る。

 亡霊なぞ、信じちゃ居ない。化けて出られる心当たりなぞ掃いて捨てるだけあるのに、ついぞ見た事も無い。
 息を潜めてそばだてた耳が拾ったのは、ソファの背が面している壁向こう。前隊長と……入隊して半年も経たずに隊長の座に祀り上げられた、現隊長の部屋。
 何時もふやふやと日向の猫の様に笑い、自分の様な疫病神にも厭かず構い。
 何度突っ撥ねても柳に風、糠に釘、暖簾に腕押しと微笑みながらのらくら構ってくるアイツが、泣いているのかと、そう思い。

 ――しかし泣き声にしては背筋に疼く感覚に戸惑い、嗚咽に混じる艶に気付き顔に熱が上った。

 何故? と思い、次いで慌てて耳を澄まし隣室の気配を探り。……アイツの気配しか無い事に、知らず止めてた息を吐いた。
 アイツも――自分で自分を慰めるなんて事をするのかと、壁向こうから漏れ聞こえる泣き声めいた嬌声に聞き入り――。
 聞き入っていた事に愕然として止めていた音楽を再生し、それでも足りぬとヘッドフォンで耳を塞いだ。

 それから、時折。
 深夜になってから隣室に耳を澄ましている自分に気付き音量を上げ、それでも音の隙間を縫って聞こえる喘ぎに下半身に手を伸ばし、微かな、微かな声を拾い手を動かす。
 別に自慰が初めてと言う事は無い。生理現象、日々の処理。機械的に成していたその行為に、音が、画像が付いてくるようになり、嫌悪感と共に回数が増えた。
 それまでは何とも思わず処理に使ったティッシュを屑籠に放り込んでいたが、アイツの声と顔をオカズに吐き出した白濁液を拭ったソレが酷く汚らしく思え。――使用後の紙屑はトイレに流す様になった。
 ……一応、流しても大丈夫なやつには代えてある。



 今晩もティッシュで拭っただけでは足りず、のろのろと屑籠から拾った紙屑をトイレに流し、その足でシャワールームに入って徹底的に、時には冷水を頭から被って洗う。
 冷え切った身体とボタボタと雫の垂れる頭を力任せに拭い、ソファから毛布と枕を手に普段使わないベッドに向かう。
 壁一枚しか遮る物の無いソファで眠ってしまえば、遂にはアイツを組み敷く夢まで見そうで。
 アイツの部屋から一番遠い、神機の装甲パーツが占めるベッドの隅で身体を丸め――。

 ――不意にアイツが寝ているのがリンドウの使っていたベッドだと思い出し、衝動的に沸騰した苛立ちに任せ、装甲をベッドから蹴り落とした。


 ――化け物が、人間の真似事をして何になる――。


 アイツが、どんな表情で、誰を想ってあんな心臓を締め付ける様な甘く、切ない声を上げて身体を慰めているのかなんて、考えてはいけない。
 あわよくば――その相手が、自分だったら良いなどど――そんな甘い妄想を抱いてはいけない。

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