ゴッドイーターでエロパロスレの保存庫の避難所です

何事も、勝負においてはまず相手を知ることから始めるべし。
彼女……第一部隊の、つまり私のチームのリーダーほど有名でかつあの容姿であれば、彼女を狙う男は数多くいるだろう。彼女を守るためにも、一度彼女に近づく男を徹底的に調べることにしようと思う。



朝、ベテラン区画。

彼女はまだ寝ているのか部屋からでてこないので、自動販売機の前にあるベンチからドアを見張る。
彼女より先にソーマが彼の部屋から出てきて、ぎょっとしたように何をしているんだと尋ねられた。
お前も要注意人物の一人だ、と心の中で思っていたが顔には出さずリーダーを待っているのだと答えた。
彼女の部屋とソーマやサクヤさんの部屋はすぐ隣で羨ましい。
私が新人区画からベテラン区画に移動するときは、彼女の部屋の近くになれないものか、ツバキさんに交渉してみよう。

それから待つこと約十分。眠たげな顔をしながら彼女が部屋から出てきた。
私の顔を見ると不思議そうにどうしたんですか?と聞くので一緒に朝食を食べませんかと誘ってみる。見張るのなら一緒にいるのが一番だ。
彼女は相変わらず不思議そうな表情ではあったがこくりと頷いてくれた。

食事時の食堂はアナグラ中の人間が一度に集まっているのではないかというくらいに人が多い。
もっともこれはいつものことなので慣れたものだ。手早く二人分のパンを買ってリーダーの部屋で食べることを提案する。
彼女は久しぶりにアリサの部屋に行きたいですと言ったが、私は今コーヒーを切らしてしまっていて……と言って少々強引に彼女の部屋に決めた。
おびただしい数のリーダーの盗撮写真がベッドやら机の上やらに散らかっていなかったら喜んで招待したのだが……。
いつかちゃんと片付けなければならないだろう。

彼女の部屋に着く。
私は焼きそばパン、彼女はカレーパンをそれぞれ食べる。
焼きそばパンもそうだが、ロシアになかった食べ物がこの支部にはたくさんあるので食事は毎日新鮮な気分だ。
彼女がそういえばしばらく焼きそばパンを食べてないと言うので、一口どうですかと勧める。
彼女が嬉しそうに頷いたので、あーん、と言って食べかけの焼きそばパンを彼女の口に差し出した。
彼女は少し照れくさそうに顔を赤くしたが、あーん、と小さく言って焼きそばパンをかじってくれた。
これは何だかいい雰囲気じゃないかと思って私にも一口くださいと言う。
二度目だから抵抗が薄れたのか、彼女も笑顔であーん、とカレーパンを私の口に差し出してくれた。
一口かじって間接キスですね、と言うと彼女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
どうして私はカメラを持っていかなかったのだろうか。照れる仕草が可愛すぎる。
パンを食べ終えてコーヒーを啜っていると、のんびりした穏やかな雰囲気になった。
彼女と二人、とりとめのないことを話しながらまったりと過ごす。何とも幸せな気分だ。
当初の目的を忘れて和やかに過ごしてしまったが、最近仕事が忙しくてリラックスできなかったから久しぶりにまったりできましたと嬉しそうに彼女が笑ってくれたのでよしとする。

昼、食堂。
結局午前中はずっとそんな風に過ごしていた。
彼女は午後には仕事があるそうなので、早めに昼食を食べませんかと聞く。
この時間なら食堂の席も空いているだろう。
食堂の座席は半分くらい埋まっていた。
彼女がソバという聞き慣れない食べ物を注文していたので、それは何ですかと尋ねてみた。
ソバとはこっちの地方に伝わる独特の麺類だそうで、ひょっとしたら私の味覚には合わないかもしれないと教えてくれた。
なので、私はパスタを注文してあとで一口試食させてくれませんかとお願いした。
彼女は周りに人がいっぱいいるのを見て、「あーん」はしませんよと恥ずかしそうに小さな声で言った。
それだけでお腹いっぱいになりかけてしまう。
最近は、彼女をオカズに白米が食べられるんじゃないかと割と本気で考えている。
お互い注文した物を受け取り空いていた席に座ると、彼女がソバの食べ方を教えてくれた。
一口食べてみると、確かに食べ慣れない味ではあったが冷たくてのどごしもよくて中々美味しかった。

それからは、お互い麺を啜りながら第一部隊のメンバーの食事の好みの話をした。
リンドウさんがビールを好きだと言うのは知っているが、他のメンバーが好きな食事は特に思いつかない。
ひとしきり考えていると、彼女があ、と言ってぽんと手を打った。
そういえば、ソーマの部屋におんなじ飲み物の空き缶がいっぱいありました。何の銘柄かわからないけどあれは相当好きですね。
リーダー……ソーマの部屋に行ってるんですね……。
女性が男性の部屋を訪ねる。それは、つまり。
突如告げられた新事実に私は暗い気持ちになった。いつの間に二人の関係はそこまで進んだんだろうか。
よ、二人で何の話してんの?
これから先の未来に絶望した私と、今度ソーマに何の缶なのか聞いてみましょうと楽しげに言うリーダー。
対照的な二人に昼食に来たらしいコウタが声をかけてきた。
ソーマの好みがどうとか聞こえたけど、もしかしてガールズトークって奴?
能天気な問いをするコウタ。
そんで、どっちがソーマのこと気になっちゃってるの?
神は私にとどめをさそうと言うのか。これが散々神々を喰らってきた私への報いなのか。

リーダーは違いますよ、食べ物の話です、と言って苦笑する。それすらも私には照れ隠しのように見えてしまう。
ああ、もしも死ぬのならせめて彼女をかばって死にたい。彼女の未来のために。
いや、それだと彼女の重荷になるかもしれない。彼女の記憶にいつまでも残るのはいいが、トラウマの苦しさは私が誰よりも知っている。
そうだ、ロシアに行こう。そして、この極東支部での幸せは一時の夢だったのだと思おう。
ああ、もし結婚式に呼ばれたらどうしようか。彼女の花嫁姿は見たいが、花婿がいるのならそれは私にとって辛すg
大体、ソーマにはシオちゃんがいるじゃないですか。
……彼女の顔を見る。穏やかな翠色の目は、その台詞に何の他意も隠していないことを示しているように見える。
とりあえずは安心する。
ああ、神よ。今度からアラガミを捕食する時は、よく味わって食べます。私の神機が。

午後、エントランス。
彼女は仕事に行ってしまった。こればかりは仕方がない。私も自分の仕事をしよう。
ヒバリさんにリーダーは何の仕事に行ったのかと尋ねると、カノンさんが発注した任務に二人で行ったらしい。
そういえばカノンさんは、秘密特訓と称してよく彼女と二人で任務に出ていた気がする。
……とんだダークホースがいたものだ。
アリサさん、何だか顔が怖いですよ?とヒバリさんに言われた。失礼な。

夕方、エントランス。
彼女とカノンさんが帰ってきた。
どうやら誤射姫の実力を存分に発揮したらしく、カノンさんはケガも汚れもないのにリーダーのほうは服がボロボロだ。
すいません、すいませんとカノンさんが必死に謝っている。
あの、大丈夫ですから、また一緒に任務に行きましょうとこちらも必死でカノンさんを慰めているリーダーを見て私は嫉妬で気が狂いそうになった。
医務室には私がついていくので、カノンさんはヒバリさんに報告を。
少し冷たい口調になってしまったのか、カノンさんがしゅんと項垂れる。
言い過ぎたかと思ったが、リーダーがフラフラしはじめてきたので慌ててエレベーターに運び込んだ。

彼女の部屋。
医務室でとりあえずの処置はしたけれど、まだ心配ですと言って半ば無理矢理彼女の部屋についていった。
彼女をベッドに寝かせて人心地つくと、すいません、と彼女が謝ってきたので困ったときはお互い様ですと言った。
今度からカノンさんと任務に行くときは私もついていきますから。
そう言うと、彼女は困ったように言った。カノンさんも、悪気があるわけではないんですよ。
庇うような言葉に、また嫉妬心が溢れる。
話を変えようと、夕食はどうしますか?と聞いてみるとサラダだけ食べると言うので食堂に取りにいく。
途中でカノンさんに会ったので、彼女が気にしないように言っていましたと伝える。
今度から私も特訓に付き合いますから、と告げると、なぜか嬉しそうな顔をしてありがとうございます、助かりますと言った。
確かに悪い人ではない。戦闘中以外は。

彼女がベッドでサラダを食べながら、何だか今日は任務中以外はずっとアリサさんと一緒にいますねと呟いた。
不安になって、嫌でしたか?と尋ねると彼女は慌てて首を横に振って嫌じゃないですよ!と否定してくれた。
せっかくですから、アリサさんがいいなら夜も二人でずっと話してませんか?彼女からの誘いを断るわけもない、私は喜んでと頷いた。

夜、彼女の部屋。
話していれば喉が渇くだろうと思って自販機でジュースを二本購入したが、それも既に無くなっていた。
ゴッドイーターという仕事への愚痴、リンドウさんとサクヤさんがラブラブすぎて一緒にいると目眩がする、コウタのバガラリー布教がうるさすぎる。しばらくそんな話をしていた。
彼女がさっき言った通り今日は一日中彼女と一緒にいてずっと話をしていたのに、それでも話のネタは尽きることがなかった。
ふと我に返ると、時計は午後十時をさしていた。彼女も壁にかかった時計を見て、もうこんな時間なんですね、と残念そうに言う。
私にも彼女にも明日は仕事がある。もうお開きにしなければならない時刻だろう。
そうですね、そろそろ失礼します。
彼女ともっと話していたいという衝動にとらわれながらも、また明日と言って何とか彼女の部屋を出る。

そういえば、当初の目的は果たせなかった。彼女に、または彼女自身が興味・好意を持つ人間を調べるという目的だ。
とりあえずコウタにソーマ、カノンさんといったところか。
私が一日中彼女に張り付いていたので今日は声をかけなかっただけかもしれない。
ああ、そういえば、彼女の写真をどこかに隠さなければならない。あのままでは彼女は勿論他の誰も部屋にいれるわけにはいかない。
そんな風に写真の隠し場所を考えているとエレベーターが新人区画のフロアについた。
エレベーターのドアが開く。反射的にドアを閉める。そのままベテラン区画のボタンを押す。

ドアが閉まる直前、この回のバガラリーは神すぎる、アリサにも早く見せなきゃ!と泣いているバカと、
ここ数日毎日のように間違えて作りすぎちゃったから、などと言って二人のラブラブ手料理を持ってくるバカップルがでかいタッパーを持っている光景が見えた。

彼女の部屋に戻り事情を説明すると、期待通りに今日は一緒に寝ましょう、と苦笑しながら言ってくれる。
彼女のベッドの中、ふざけたふりをして華奢で、それでいて柔らかな彼女の体に抱きつきながら、私はこの僥倖をもたらしてくれたバカ三人に心の底から感謝した。


ああ、いい匂い。私は今幸せだ。



おわり

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