人類で初めて、冥王星を含んだ太陽系外縁天体の探査を目的として打ち上げられた無人探査機。
ディスカバリー計画、
エクスプローラー計画に続く「ニューフロンティア計画」の一環としてプロジェクトが進められた。
月より始まり火星、金星、水星、木星……脈々と続いてきた宇宙開拓のバトンを受け継ぎ、この太陽系の果てに待つ惑星へと“飛び出した”もの。
先に太陽系を脱したものとしてはボイジャー1号、2号が存在するが、彼らはあくまでも太陽系外の先への放浪……“航海”を目的としたものであり
パイオニア10号による探査でも天王星、海王星以降の探査が行われることはなく、冥王星より先の『最果て』は未踏の地となったままであった。
その中で冥王星、及びエッジワース・カイパーベルトの調査を行うべく造り出されたのがこのニュー・ホライズンズ。
彼女に託されたものは人類未踏の偉業。我々が住まう太陽系という宇宙の最果てに挑む事。それはこの宇宙を、我々人類の『既知の領域』に変えるという事に等しい。
人々からの期待、輝かしき星条旗、冥王星を見つけ出した男の遺灰、そして未知なる生命への言葉を抱き、ニュー・ホライズンズは宇宙へ向けて飛翔。
地球を脱する際の速度は時速16万kmを超え、探査機ユリシーズの記録を抜き去り我々の住む星より飛び立っていった。
来る2015年。冥王星圏へと辿り着いたニュー・ホライズンズは観測を開始。
彼女が収めた1枚の写真はこれまでの冥王星像を一変させるものであり……これによって、未知なる『冥王』という神秘は解き明かされた。
現在知られている冥王星のイメージ(ハートのような模様が見えると話題となったもの)は、他ならぬこのニュー・ホライズンズが撮影したものである。
やがて冥王星の探査を追えたニュー・ホライズンズは、さらなる最果ての領域へと挑むこととなる。
それはウルティマ・トゥーレ、最果ての星と呼ばれた天体への接近。現在ではアロコスと称される小惑星の探査である。
ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた太陽系外縁天体として候補に挙げられ、人類が辿り着くべき「最果ての領域」と定められた地点。
極めて困難な道程でありながら、彼女は星々の隙間を縫い最果てへと辿り着く。打ち上げからおよそ13年後のことであった。
これによって、人類の探査機が初めてカイパーベルト及び外縁天体へと到達。これを以て――――太陽系という領域は、人類の『既知』なる領域へと書き換えられた。
ニュー・ホライズンズ。彼女はまさにその名を体現するように、この宇宙に新たなる人類の地平線を敷いてみせたのだ。