4-1:終章のオープニング編〜

初公開:2017/05/20


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目を覚ました時、自分の身体は何もない飴色の空間を所在無げにふわふわと浮いていた。
思い出そうとしても意識が朦朧としている。自分が誰なのか記憶を手繰り寄せようにも記憶がない。

完全に覚醒していない意識の中で直感する。
そうか、これは夢なのだと。

1秒かはたまた100年か。
時間の概念を忘れる程にその空間に漂い続けていると、不意に仄かな光が自身を徐々に包み、やがて一面が真白となった。
とても目を開けていられず、思わず腕で顔を覆った。まばゆい光が自分にはとても場違いな空間のように思え身を固くした。
だが暖かな光は自身を包み込むように体を芯から温め、その感触がこそばゆかったものの、次第に嫌ではなくなった。

暫く経つとまるで長い間自身が此処にいたようにくつろぐようになった。時間の概念がないので、こちらも1秒あるいは100年過ごしたかはわからない。
居心地がよく、夢のような空間だとさえ感じた。今、自身のいる空間が夢であるというのにおかしな話だと笑った。
まばゆい光に目は未だ慣れず顔を腕で覆い続けながらも、確かな幸せを感じていた。

至福の時間を過ごした空間に身を置きすぎ、だから気を許しすぎていたのだろう。
気が付かなかったのだ。

いつの間にか光の空間から叩き落され、自身が底知れぬ闇へ向かっていることに。
目を開けた時には、一面はうってかわり真暗の闇で覆われていた。
怯える。夢だとわかってはいても、底なし闇に堕ちていく自身の精神は二度と現実に戻れないのではないかという予感があった。

恐怖に打ち克つように、自身の両拳をぎゅっと握った。
目は瞑ったままで、力強く。

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「長かった。長年かけて、ついにやっとここまでこれたァ」
― 囁くような声を聞いて。ゆっくりと、夢の中で瞼を開ける ―

「正のオーラで結集してできた貴様を、この場で俺様が戴くことで掌握ッ。完全に会議所を掌握する」
― 意識が定まらない、うすぼんやりとした感覚が身体を支配する ―

「貴様を消し去ることで、俺様は会議所の希望を全て断ち切る」
― どこか見覚えのある光景、覚醒しない脳を働かせる ―

「貴様はッここで俺様に喰われて消える」
― 思い出すのは、暗い室内 ―

「悔しいか?悪く思うなよ。これも全て俺様のため。会議所の歴史を変えるため」
― 思い出すのは、異様なまでに冷えた部屋の空気 ―

「覚悟しろ、逃げることなど なッ!自ら四散しただと。そんな馬鹿なッ!!」
― 思い出すのは、ふわふわ浮いているような不思議な心地良い感触と ―

「ふざけるなッ!!幾ばくもの月日をかけて今日を待っていた!貴様を喰らうことのみ考えて今日を生きてきた!なのに、なぜッ」

「なぜだッ!!!なぜッ!!!!なぜだーーーーーーーーッ!!」


          ―― 頭を鈍器で殴られたような酷く重たい感触 ――


夢から、覚めた。



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きのたけWARS 〜DB討伐〜
Chpater4. 大戦に愛を

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信じがたいことに、かつてきのこたけのこ大戦世界には【神】が存在した。
兵士たちが【神】という存在を忘れて久しい。
だが、大戦世界には数多もの【神】が存在した。

農家では、畑から収穫したきのことたけのこを出荷前に【農耕の神】へ供え、家庭で振る舞われる際には【食事の神】へ祈りを捧げ、
子供が夜更かしをしていると親は【幽霊神】の伝説を語り、やんちゃな童たちを震え上がらせた。

伝聞が伝聞を呼び、大戦世界黎明期の兵士たちは【神】の存在を認知するようになった。
日常生活のなかでどうにも自分たちの力で解決できない事象があると、兵士たちはまるで猿の一つ覚えのように【神】に縋るようになった。
時には居もしない【神】をその場で創り出して縋り、その願いに応える形で【神】は生まれてきた。兵士たち自身が【神】を創り上げてきたのだ。

もし世界を天の上から見守る管理者がいたら、当時の下界の兵士たちの様子にはだいぶ呆れたかもしれない。
それ程までに一時の大戦世界は兵士たちの懇願で溢れかえった。仕方なく、管理者たちは粘土をこねるように次々と【神】を造形し生み出していった。

暫く経ち、とりわけ大戦場ではいつからか【戦の神】への信仰が爆発的に強まり始めた。
初出は窮地のきのこ軍兵士が、居もしない【戦の神】をやけくそ気味に叫んだことが始まりと言われているが今となっては知る由もない。
その戦いはきのこ軍が大逆転勝利を収めた。

かくして、いつの間にか絶体絶命時に【戦の神】へ祈りを捧げると大逆転勝利できるという伝説が、まことしやかに囁かれ始めるようになった。
時代が進み文化的にも成熟した大戦世界では、一時の神信仰は鳴りを潜めつつあった。
代わりに神といえば【戦の神】と皆が認識するように、武運をまとった神を兵士たちは想起した。



兵士たちは、畏怖と敬意そしてほんの僅かの親しみをこめ、その神を【軍神<アーミーゴッド>】と名付けた。



軍神<アーミーゴッド>は大戦世界に生まれた。
そして常に戦場では先頭で兵士たちを鼓舞し続ける存在となった。
兵士たちが軍神<アーミーゴッド>に縋れば、たまに大逆転が起きる。
勝利の立役者を、階級を超えた軍神Åとして表彰する動きも一時は盛んとなった。


かつて確かにきのこたけのこ大戦世界には【神】が存在した。
しかし兵士が大戦への興味を失うにつれ、軍神<アーミーゴッド>は兵士たちの心の拠り所では無くなり現世へ留まる必要が無くなった。
軍神<アーミーゴッド>は名残惜しつつも、現世から姿を消し天の上へと戻った。いつか兵士が“希望-心の本-”に胸を膨らませ、自身の存在を必要とされるまで世界を見守ることとした。

そして、現在。
歴史の歩みを止めたK.N.C180年で、思わぬ形で【神】は復活した。
その【神】は今。会議所の地下、冷たい地べたにその身を投げ飛ばされ、かつての栄華はどこにもなく、ただただ恥辱の神に見下されていた。

DB「久しぶりだなァ軍神<アーミーゴッド>。目覚めた気分はどうだィ?」

オニロ「DB…」

アイム「貴様という奴は…」

その【神】は自身の魂を二つの器に分けていたため不完全だった。
それ故、歴史を変えるほどの窮地に追い込まれていた。


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