4-6:一致団結編

初公開:2017/11/06

【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

社長の独白が終わり、編纂室は暫く静寂に包まれた。
アイムとオニロの正体、大戦世界を監視する側の目論見、そして集計班と社長の叛逆とその結末。
殆どの会議所兵士は一度に流し込まれた大量の情報を整理するためか、沈黙するしかなかった。

その中で、事の次第を“思い出した”アイムとオニロだけが、社長を気遣うように心配そうな視線を彼に送った。
まるで走り終えた後のように肩で息をしていた社長が二人の視線に気が付いたのか、ぎこちなく口角を上げ笑みを浮かべた。

参謀「色々あったということか」

一言で片付けられず率直であやふやな感想を述べた参謀の言葉にも意味は幾らかあった。
多くの兵士が意識を現実に戻し再び社長とアイムたちに注目した。

参謀「アイムとオニロ、お前たちの正体にも驚かされたが。まさか社長が【占い師】に突然なったのは、そういう経緯があったとはな」

社長「これまで大戦世界に関する4度の占いをしました。
1度目は英雄登場の占いを、2度目はDB襲来とオニロ君・アイム君が相打ちとなってしまう占い。3度目は時限の境界の予告の占いをしました」

アイム「全く気づかなかったぞ…」

全く意味がない占いだと思っていた、と言外に含んだニュアンスの言葉をアイムが発したことで、その場の空気は幾分か和らいだ。

スリッパ「4度目は?」

社長「…本当は預言書の未来から外れた瞬間に占いを出して奴らを欺いてやろうとシューさんと企んでいた。
私たちは溜飲を下げたかった。何よりアイム君とオニロ君を救いたかった。
そして、目論見通りシューさんは引退していた竹内さんを独自に呼び戻した」

竹内「ワシに白羽の矢が立ったというわけじゃな」

結構なことだ、と好々爺は声を上げて笑った。

社長「預言書には竹内さんの存在について一切書かれていなかった。
シューさんと私は、竹内さんの存在こそが今回の騒動のキープレイヤーであると確信していた。
DBの腐臭に唯一抵抗を持つ【第二の希望】を招集することで、DB討伐隊は預言書が示す戦力内容から大幅に増強されることになり、
その時点で本来の預言<DBと軍神の相打ち>は打ち消されたはずだ。未来は不確定となった。ただ…」

アイム「それと引き換えにシューさんは既にいなくなっていた、か…」

アイムの言葉に、社長は唇を噛み締めた。

社長「覚悟はしていたはずだ。竹内さん招集の暴挙を奴らが見逃すはずもなかった」

筍魂「こうなることを予期して、シューさんは社長の存在を隠し続けていたんだろうな」

¢「いつまでも不器用な兵士だ…」

社長はふうと深く息を吐いた。憑き物が落ちたように、全てを語り終えた社長は晴れ晴れとした顔だ。

美しい。

オニロは社長の姿を見て素直にそう感じた。
葛藤を乗り越えた純粋で澄んだ兵士の心は、本来その極地に達しているはずの軍神<アーミーゴッド>の魂を受け継ぐオニロでさえ眩しく見えた。
バグという抜け殻を破った本来の社長の姿は、まるで雨上がりにかかる虹のように軍神の二人には眩く映った。

社長の勇姿を見届けたアイムとオニロは、顔を見合わせ互いに頷いた。

―― 社長は自分の戦いを今終えた。次はボクたちの番だよ。

言葉を発さずとも、オニロの決意をアイムはすぐに察知した。
もとより同じ存在であるがゆえ、ここにきて互いの考えはすぐに分かるようになっていた。
だが、ここまで心が通じ合えるのは、筍魂が与えたあの戦闘術・魂の試練があったからだ、とアイムは感じた。

―― ここからはオレたちの仕事だ。社長が、集計班が必死に繋いだバトンのリレーを受け取って走らないといけない。
    軍神<アーミーゴッド>として皆を鼓舞し、無き兵士が救ってくれた生命を最大限活用する場がきた。

軍神としての第一声はアイムから発せられた。

アイム「社長、いままで辛かっただろう。ありがとう。そしてごめんな」

アイムは社長に深々と頭を下げた。
今まで叩くだの斬るだの言われていた当の本人は、幾らアイムが自身の存在を思い出したとはいえ予想をかけ離れた行動を目の前に慌ててしまった。

社長「あ、頭を上げるあひゃよッ!あっ」

きれぼし語が自然と出てしまい、社長は思わず口を抑えた。

途端にアイムは顔を上げた。
先程までの真面目な顔はどこへやら、アイムはニヤニヤと笑っていた。
してやったり、という悪戯っ子の顔を社長に向けている。

アイム「あんたはやっぱりバグってる姿のほうが向いてるよ。そんなシューさん2号みたいな慇懃無礼な口調は調子が狂っちまうぜ。
まあ今までが狂わされてなかったと言ったら嘘になるけどな」

アイムの言葉に皆は笑った。呆然としていた社長も笑った。
オニロがアイムの言葉の後を継ぐように一歩皆の前に出た。

オニロ「社長が語ったとおり、アイムとボクはそれぞれ、かつて軍神<アーミーゴッド>と呼ばれた存在の片割れです。
ボクたちは思い出しました。あの頃の大戦を。そして力になれず終いに衰退していく大戦も。

大戦を盛り上げて救うはずのボクたちが、ひょんなことから会議所に拾われて。
逆に皆に鍛えられて救われて…正直、申し訳ない気持ちとそれを上回る感謝で心がいっぱいなんです」

オニロの真摯な言葉は皆の胸に力強く突き刺さった。
人を惹きつける軍神譲りのカリスマ性と、一生懸命な彼が紡いでいく言葉の一つ一つが皆を勇気づけていく。
アイムには皆の意識が急速に向上していくのを肌で感じとった。

オニロ「ボクたちは命の恩人である会議所の皆さんを見て育ちました。
今ここに忠誠を誓います。ボクたちを育ててくれた師匠を含めた恩人たち、そして自らの危険を顧みず全てを語ってくれた社長。
全員を守ることをここに誓います」

オニロは一度言葉を切り、兵士全員の顔を見回した。
自身に満ちたオニロの表情に、全員の表情が引き締まったものになっていく。
最後に、オニロは空席になったままのロッキングチェアをじっと見つめた。

オニロ「ボクたちの生命を救ってくれた存在を忘れることはありません。
そして自らの存在を賭してまでボクたちに託した使命を…恥辱の神DBの討伐を、成し遂げてみせます」

アイム「DBはいま、兵士たちから奪った心の頁<士気>を食いつないで必死に生き長らえている。
討伐隊の活躍で溜め込んでいた士気を放出し、奴の存在は風前の灯だ。とはいえ、奴は負のオーラの権化。
いくら皆の活躍で弱体化に追い込んでも、すぐに心の頁<士気>を奪って奴は肥大化する。
まだまだ強敵だ。
それに、いくら厳しい訓練に耐えたからといってオレたちもまだまだヒヨッコだ」

二人の師匠はアイムの言葉に苦笑した。

オニロ「お願いします。討伐には、皆さんの力が必要なんです。
皆さんの力を、勇気をかしてください。
新しい歴史を、皆さんで創っていきましょうッ!!」

オニロの叫びに、その場に居た全員が深く頷き何名かは呼応するように雄叫びを上げた。

兵士たちの心の本に再び頁<士気>が戻っていく様子を、アイムは目を細めて見つめていた。
失われていた兵士たちの頁は、過去の大戦の中で自然に兵士自身が放出し雲散霧消してしまったモノだ。
兵士たちはそれをマンネリ、飽きと呼んでいた。
それをアイムたちが再びかき集め、元々あった場所に戻したのだ。

此等は、DBが兵士から無理やり奪った頁分ではないため、本来兵士が持っているはずの頁<士気>から見ると未だ不完全である。
しかし会議所兵士たちの高揚した表情を見て、今この時だけはどんな悪意を持った邪神が攻め込んできても撃退するだろうと。
全員の結束力の強さを目の前で見て、アイムは強くそう感じるのだった。



【K.N.C180年 会議所 ??】

DB「待っていろよォ会議所」

遠くにそびえ立つ会議所を睨み、急速に傷を癒やしていたDBは独り舌舐めずりをした。

DB「時は一刻を争う。すぐに始めるぞォ」

背後に控えていた黒砂糖と山本は御意とばかりに片膝をついたのだった。


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