架空の世界で創作活動及びロールプレイを楽しむ場所です。

マウサネシア連邦共和国
ラピタ王国

10年前、ラピタ島のタアロアに程近い砂浜に、一隻のマウサナ漁船が漂着した。
それから3ヶ月後、漁船は哨戒中のマウサネシア連邦海軍の巡視船に発見され、保護された。
同船の生存と、船員達全員無事のニュースは忽ち全土を駆け巡り、生還は絶望的と考えていた国民の間に一大センセーショナルを巻き起こした。



「しかし、12人ではく、二人もお釣りを付けて14人で帰ってくるとは意外ですね」

「よりにもよって、現地からラピタ人男性二人を連れ帰ってくるとは……」

「話によると、現地のラピタ人と恋仲になった者が数人おり、うち二人はマウサナまで着いてきたようです……」

「それで、どうするの?」

「さっそく聞き取り調査を行ないましょう」

二人のラピタ人男性は、マウサナ人があまりに可愛いので一目惚れして、熱心にアプローチした結果、マウサナ人も想いを受け入れて両想いになり、親の反対を押し切って本国まで付いてきたという。

「外交問題になりかねない……」

「とりあえずこのことは自国民には極秘としましょう」


1週間後、ついにラピタ王国への対応に関する会議が行われた。

「それで、実際にラピタ王国に対する対応を協議しよう」

「まず、ラピタ王国は……言うなれば喉元に空いた隙だと考えます」

「それは何故?」

「ラピタ王国は主権国家ですが同時に無主地でもあります。もしここが他国に取られると、喉元に楔を当てられているも同然です」

「では、ラピタ王国そのものはどんな国でしょうか」

「国王が居る事実上の絶対王政国家です。首都ですら国民は『雨宿り小屋』のような建物で生活をしており、その貧しさはアルフォネシアやザンジを遥かに超えると思われます。その上、人口は50万人を超えるくらいです。」

ラピタ島は10倍すればマウサナ本島に匹敵する面積になるのだが、人口では100倍しても全く足りない。平地が狭い上に農業生産性に乏しく、現状では人口を養えないのだ。
あのザンジですら、田舎でも最近は化学肥料や農薬が細々と使われ始めているというのに。


「恐らく、1人あたりGDPは200前後でダントツの最下位だと思われます。」

「うーん可哀想だ」

「これは救済策を検討する必要がありますね」

「それに、やはり安全保障面では必要不可欠です。」

ラピタ王国が属するグリヤ海・焼海諸国の中では、経済力でも軍事力でもマウサネシアが最強である。
アスラタネスは含まないため、おそらく国力順にマウサネシア、ウォールセン、モルキア、ユダ、ヘブライ、キサマ、ロアンゴ、アルフォネシア、ザンジ、セコトル、オールサ、ベーヌアトゥ、そしてラピタである。
そのためこの海域の北側はそれに次ぐ国力を有するウォールセン、南側はマウサネシアが制海権を持っている。

しかしながら、この外側にはマウサネシアを遥かに上回る超大国がいくつも存在する。

デニエスタ(アスラタネス含む)やソビエト連邦は5倍の国力を有し、大サハラやニューランズは3倍、ベルカも数倍の国力を有する。

ラピタ王国の地は他国にとっても戦略的に重要であるため、マウサネシア以外の勢力がここを確保してしまうと、安全保障面で困る。
国民国家が最も優先すべきなのは自国居住民の安寧であるため、その観点からもラピタ王国はマウサネシアが確保しなければならないのだ。

「それで、ラピタ王国の処遇はどうするべき?」

「事実上の主権下に置いて『生存圏』に組み込むのが得策だと思います。そうやってラピタ王国と自国民を同時に助けるのです。」

マウサネシアの『生存圏』には、本国の排他的経済水域はもちろん、マウサネシア語諸国共同体各国(旧植民地)が含まれている。
これにラピタ王国を組み込むことで新たな国防の要としつつ支援を行う、ということである。

「具体的にはどのように組み込み、どのように支援するんです?」

「我が国以外とは引き続き鎖国を維持させることで余計な概念をブロックします。そして軍隊の駐留もやがては認めてもらうのです。」

「思うに、あの国にとっては『象徴君主の社会主義』がベストだと思います。資本主義の概念はあの国民には合いません。」

「では、我々の手で『象徴君主の社会主義』に導いて、ラピタ王国の国民を救済する方向で行こう。」

助け合って平等に暮らしている民衆にとって、資本主義による貧富の差は分断を生じさせ、それは伝統の崩壊を産む。
そして、資本主義が浸透してしまえば商人が強い権力を持ち、王権を上回るほどになってしまうのは、ラピタ王権にとっても好ましくない。
しかしながら、あの人口にしては立派な王宮と、2世の暴挙を見るに、暴君が即位すれば国民は危険になるというのは容易に想像できる。
資本家や王家に生殺与奪の権を握らせるのは良くない、生殺与奪の権は国民が自分自身で保有すべきものなのだ。

かといって社会主義の定石通り、王家を完全廃止するのは好ましくない。それはマウサナ人から太陽教や太陽神を奪うのと同義であり、伝統の崩壊を意味する。

本来の社会主義は王権や宗教を認めないが、『雪とライ麦の冷帯大陸国家』の常識が、『スコールと芋の熱帯島嶼国家』に通用すると考える方が不自然である。

そこで、マウサナは社会主義をラピタ王国に合わせて改造する。ラピタ式の社会主義『象徴君主の社会主義』がここに誕生したのである。

「現実的に考えると、まずは逼迫した問題に対処するべきです。ラピタ王国では飢饉や疫病が深刻です。」

「まずは、品種改良された種芋と、肥料を供給すること、そして医薬品の支援と医者の派遣をラピタ王国政府に打診しましょう。」

「電化も必要だから、発電所の建設についても相談するように頼むよ」

「学校教育における支援も行いましょう」

「留学を受け入れて、社会主義人材を育成しよう」

「ラピタ王国で太陽教を布教したいです」

「聖職者の派遣についても要請はしておこう。ただし王権を脅かさないという条件付きだろうけど。」

「まあまあ、まず最初にやるべきこととしては、マウサネシアの外交官駐在……つまりマウサネシア大使館の設置ですね」

これによってラピタ王国への対応は決定し、自国民の安寧とラピタ国民の救済を両立することとなった。
そして、バルニバービ号遭難から半年後の9月、マウサネシア連邦政府の使節団を乗せた巡防艦MCG-6014(愛称:「ガジャ・マダ4号」)が秘密裏に出航したのであった。

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