架空の世界で創作活動及びロールプレイを楽しむ場所です。

ナレーション…ナ
リリィ…リ
クリス…ク
その他適宜示す。

 とある国(ゴトロス連邦マウサネシア連邦共和国かな?)のドキュメンタリー企画で放送されたものを文字起こししたという体で書きます

ナレーション:プライド。それは、凡ゆる人々が生きていく為に持っているもの。それは、時に人間の活力の源となり、時に人間を苦しめる。しかし、それがあるからこそ、この世界を作り上げる華々しい成果は生まれる…この番組は、この世界の最前線で働くプロフェッショナル達が持つ、「仕事への誇り」を密着取材を通じて見つけ出す、ドキュメンタリーである。

♪〜地上の星的なテーマ
タイトル:PRIDE of Professional 〜開国のフロントライン リリィ王女の戦い〜

(ラピタ王国の資料映像がそれっぽく編集されて流れる。途中、「平穏なる鎖国」、「その唐突なる幕切れ」、「侵蝕される誇り」、「流れ込む外国文化」、「燃え上がる反発の火の手」みたいなテロップをリズムに合わせて流す)
(サビに合わせてリリィの映像とか、セリフっぽくしたテロップを入れる)

テロップ:母なる国を守る、その為の戦いへ

ナ:1992年6月のとある日。ラピタ王国首都タアロア。王宮に程近い書記官府の執務室で、尨大な職務に立ち向かう女性がいる。
(カメラ:リリィにズーム)
ナ:彼女の名はリリウオカラニ・ティナ・ポマレ。ラピタ王国の宮廷書記官長を務める、若き王女だ。リリウとは「痛み」、オ・カラニとは「国王であるところの」を意味する。繋げれば、「国王である故の痛み」、とでも言うべきだろうか。
(リリィがインタビューに答えている)
リ:「私はあなた方の言葉で言うと、『アルビノ』と言う体質です。確かに名前の通り、日差しの強いところに出ようとすると、日焼けで体は痛みますし、海に入ることも勿論できません」
ナ:彼女の名付け親は、父親である現国王が自ら行った。一体何故、この様な名前をつけたのだろうか。
リ:「初代国王であるポマレ1世は、私と同じ様にアルビノであったと伝わります。そして、彼の人生を記した伝記に、次の様な一節があるのです。『わたしは耐える。痛みに。民の痛みを全てこの身に受ける。それこそ、国王である所以なのだから』。きっと父は、大王と同じ姿で生まれた私に対して、『王の一族に相応しく、人々の痛みを背負う者であれ』と言う意図を持って名付けたのでしょう」
ナ:国民からは「リリィ王女」と呼ばれて親しまれる彼女。しかし、その身に背負う物の重みは計り知れない。彼女は正に、この古き王国の平和を背負っているのだ。

(画面が白黒の写真や映像に切り替わる)
ナ:ラピタ王国が建国されたのは、今から凡そ250年程前の事。現在のタアロア周辺の首長であったタラホイヴァイラ・アトゥア・ティナと言う人物が、島に割拠していた20余りの国々を従え、有史以来初めて島の統一を成し遂げたことに始まる。王家の名である「ポマレ」、とは初代国王に付いた渾名であり、「白髪」を意味する。
ナ:以降王国は支配地を広げると共に、積極的な交易によって近代的な国作りを目指し、時折鎖国の時代を挟みつつも、順調な発展を遂げてきた。しかし、今から100年前にその情勢は大きく変化する。
(資料映像 クーデターや内戦の映像に)
ナ:当時の国王が暗殺されたことに始まる内戦により、近代化を進める派閥は粛清され、王国は長い長い鎖国の時代を迎えた。約100年間にも渡り、この国は世界に対して門を閉ざし、ありと凡ゆる情報はシャットアウトされ、外界との交流は途絶した。
(画面切り替わり 学者のコメントに)
ジョーンズ:「100年間にも渡って、外国との交流が無かった訳ですから、今から10年前の開国というのはそれこそ本当に物凄いことな訳ですよね。外国なんてほぼ忘れ去られていて、また私たちもこの国のことを忘れているか知らなかった訳ですから」
ナ:そう語るのは文化人類学者として、また外交官として現地に駐留するスカセバリアル条約機構のアセルニー・ジョーンズ博士。ラピタ研究の第一人者にして、現地の事情に精通した者の一人だ。
ジョ:「リリィ王女というのは、えー、所謂初代の王様の生き写しである、というふうに言われる。ミドルネームの『ティナ』、というのはそういうことなんですね。そして、その生き写しの人というのは、王国では神様同然に扱われている訳です。ですから、そういう存在として、外国に対して立ち向かわなければいけない。その様にお話になっておりました」
(映像切り替わり、リリィの執務室に戻る)
ナ:リリィ王女が務める役職は多岐に渡る。宮廷書記官長、神殿の最高神官、王国の外交チームの指導者、議会議員…。22歳の若き女性には、あまりに重過ぎるのではないか。
(リリィがインタビューに答えている)
リ:「まあ確かに、大変と言えば大変ですが、ずっと昔からやっていることなんです。もう慣れてしまいました」
インタビュアー:(いつ頃から?)
リ:「神官としては10歳、書記官長については12歳の時から、先代の方について仕事を学び、14歳の時に正式に継承しました」
イ:(ということは、開国以来ほぼずっとですか)
リ:「そういうことになります。外国の方との付き合い方は誰も教えてくれなかったので、とても苦労しました」
ナ:リリィ王女はそう笑っていたが、その仕事の量は尋常ではない。日々何百件と持ち込まれる職務を処理し、それ以外にも国民向けに呼びかける新聞記事も執筆している。我が国のキャリアウーマンも脱帽の仕事ぶりには、取材班も驚きを隠せなかった。

ナ:リリィ王女は、普段はどの様な一日を過ごしているのだろうか。それだけの激務をこなせる理由は、一体どこにあるのだろうか?今回取材班は、特別な許可を得て、彼女に一日密着取材を行うことができた。

テロップ:朝5:00
(水平線から登る太陽の映像)
ナ:リリィ王女、及びラピタの人々の朝は早い。元来厳格な時間概念を持たないこの国では、日の出こそが新しい日の始まりであり、起床して仕事に出かける時間である。
(映像切り替わり。正装して神殿で儀式を行うリリィの映像)
ナ:この日の最初の公務は、神官として王家の神殿に向かい、神々や祖先に向けての儀式を行うことだ。彼女は日の出の前には起床して身を清め、日が昇ると同時に儀式を始める。彼女によれば、もう10年は続けている習慣である。
リ:「祭祀というのは本当に大切です。この国をお守りくださる神々への対話は、王女として最も大切な務めの一つなのです」
(映像切り替わり。王宮の広間で国王、及び兄妹達と食事をするリリィ)
ナ:朝6:00、朝食。祭祀が済むと王宮へ戻り、父国王、そして王宮で暮らす家族達と食事を取る。幼い弟や妹に話しかけるその姿は、普段の凜とした姿からは想像もつかない程温和で優しい。「家族と過ごす時間ほど貴重なものは無い」、事前のインタビューで彼女はそう語っていた。
(映像切り替わり)
ナ:朝7:00。書記官長府に戻ると、彼女は執務室のテレビとラジオのスイッチを入れ、取り寄せた自国や外国の新聞に目を通す。
リ:「国内の出来事や、国際情勢について知っておくことは全てにおいて大切です。外国大使と話し合ったり、議会や閣議でも情報は命ですから」
ナ:新聞を読み終わると、彼女は手元の鈴を鳴らして補佐官を呼ぶ。扉を開けて入ってきた補佐官、クリストファー・オウムアムア氏の手には、朝から送付されてきた大量の書類が抱えられている。
クリス:「まず、前日までの訴訟資料です。破毀院が1件、地方首長の法廷が15件、村首長の法廷が38件です。ご判断を」
ナ:まず最初に処理するのは書記官長としての仕事だ。彼女はこの国の凡ゆる公文書について、その保存を行うか破棄を行うかを決定する権限と責任を持っている。
リ:「この国では文字資料というのは、ある種神聖な物です。破棄をする際にも、しっかりと礼儀と手続きを踏んで行わなくてはいけません」
ナ:故に彼女はどれだけ煩雑になっても、必ず一件一件目を通し、決定の署名を行う。目を通すと3種類の印鑑を押して署名するのだ。即ち、「保存」、「下げ渡し」、「焼却」である。大抵の資料は「下げ渡し」、となりそれぞれの首長に処分が任される。
リ:「これは保存。王立図書館長の方に回しておいて」
ク:「かしこまりました」
ナ:10:00。書記官長としての職務が全て片付くと、次は外交官としての職務を行う。各国大使を通じて行われる申請をチェックし、必要な物は摂政や国王の下に上奏するのだ。
リ:「書籍、観測道具の輸入許可は摂政府の専権だから其方に。外国人の入国許可と行動自由の権利は国王大権だから残しておく。貿易収支の管理は写しを取ったら大蔵卿へ、写しの方は保存すること」
書記官:「了解致しました」
イ:(何故軽微な案件も摂政や国王に?)
リ:「未だ鎖国の習慣が色濃く残るこの国では、上位者の権威が無ければ何が起こるかわかりません。特に、外国人はそれだけでヘイトクライムの対象になりかねませんから、必ず王様の許可証と保証書で身柄を保護する必要があるんです」
ナ:全ての案件を無事に決裁し終えると、彼女は王宮へ向かう。午前の間に国王の裁可を得て、大使館に通達する為だ。
イ:(今回は何の案件を?)
リ:「各国共同で進められている飛行場建設の為の技術者入国、及びチューイー国との共同宣言に関して行う儀礼の為の外交官入国の許可証ご裁可を上奏します」
ナ:王宮へ着くと、親衛隊兵士の案内で国王執務室に向かう。外国のカメラが執務室に入るのは、これが初めてのことだ。
兵士:「宮廷書記官長殿、上奏の儀ありて拝謁を願っております!」
国王:「入るが良い」
リ:「失礼致します」
(執務室内で公務を処理するポマレ10世の映像が映る)
ナ:この人物こそ、ラピタ王国第10代国王のポマレ10世だ。歴史ある王家の当主に相応しい威厳と風格を備えている。
リ:「上奏文の通り、外国人の入国と国内の移動について、お許しを頂きたく参上しました」
王:「うむ」
ナ:国王が裁可を行う案件は非常に多い。議会により可決された法案の公布、摂政から上奏される政策執行の許可、及び国内の裁判で下された判決の最終的可否の判断など、国家の三権の全てに渡り広範な権限を有している。だが、それ故に国王の職務は多忙かつ過酷であり、リリィ王女の数倍の案件を1日に処理しなくてはならない。
王:「宜しい、ではこれで各国大使館に詔書を交付せよ」
リ:「恐れ入ります」
(国王の署名と国璽が押捺されている画面)
テロップ:国王により裁可を得た案件は、それぞれの職掌の官庁に送付され、または王の名の下に直接公布される。
(詔書を専用の箱に納め、勅使に預けるリリィ)
イ:(これで午前の仕事は終了?)
リ:「はい、もう正午ですので、一旦休憩を取った後に午後の公務を行います」

一旦スタジオか何かに返す

(執務室)
ナ:12:00。この国では正午になると一旦仕事を切り上げ、多少昼休みをとる習慣がある。彼女も、舶来のお菓子や紅茶で束の間の休息を楽しむ。
(リリィがケーキ的なものを食べている映像。少しして切り替わる)
(カメラクリスへ)
ナ:そのご相伴を務めるのは、いつも補佐官のクリストファー氏だ。彼女とは幼少期から20年来の付き合いで、「クリス」と愛称で呼ばれている。
(クリスのインタビュー映像)
イ:(あなたから見てリリィ王女とは?)
ク:「お世辞にもお仕えし易い主人とは言えないかもしれません。自由奔放で、時折鋭いことを言うかと思えば、信じられないほど幼い事もなさいます」
イ:(幼少期のリリィ王女はどの様な人でしたか?)
ク:「今とあまり変わりはありません。知的好奇心が旺盛で、堅苦しい儀礼が大嫌いで、いつも抜け出してはお叱りを受けていました。ですが、開国以降はそうした問題行動も少なくなって、お務めをきちんと果たされるようになっています」
イ:(最後にリリィ皇女の印象をお聞かせください)
ク:「付き合いのし難いお方であるとは思います。ですが、間違い無くこの国にはなくてはならないお人ですし、私に取っては一番大切な方です。これから先、何があろうともお仕えし続けるつもりです」
ナ:彼の様に、この国では彼女を敬愛する人物は非常に多い。それは、単に彼女が初代国王の生まれ変わりと信じられているからではなく、その聡明さと天真爛漫さに多くの人が惹かれているからであろう。
(映像切り替わり。議会長老院へ。議論の様子が映し出される)
ナ:14:30。リリィ王女の姿は議会にあった。盛んに議論が交わされる王国議会、その演壇ではこの国の摂政ジョアシャン王子が演説している。
ジョアシャン:「この国は変わらなければなりません!近代国家、新しい時代に適応したラピタ王国を作り、次代へ引き継ぐことこそがー」
ナ:しかし、議員達の対応は芳しくない。二院制のこの国では、上院である長老院議員のほとんどが保守派なのである。また、下院の民衆院でも保守派の力は無視できないほどに大きい。しかし、そんな逆風にも、彼女は立ち向かう。
リ:「ご覧下さい、この事業への投資がどれだけの利益を生むか。どれだけの国民を食べさせていけるか!細密な計算の末に導き出した結論です。この計画が進展すればー」
ナ:改革によって得られる利益を余さず伝え、心を揺さぶる演説で長老達の説得を試みる。激しい議論は日が暮れるまで続けられた。
(夜。議会から出てきたリリィが書記官府に戻る映像でフェードアウト)
ナ:20:00。普通のラピタ人ならば既に眠っていてもおかしくは無い時間でも、書記官府と王宮の明かりは灯っている。彼女は何をしているのだろうか。
リ:「あぁ、これですか。これは今度発行する政府の観光パンフレットの素案です。この国の伝統や美しい自然を、もっと様々な人に知ってもらいたいと思っています」
イ:(まだ外国人観光客の入国は許可されていないのでは?)
リ:「ええ、まぁ。でも勿体無いじゃありませんか、折角長い間息づいてきた歴史や、他のどこにもない自然や生き物がいる。出来ることなら、色々な人に見てもらいたいんです」
ナ:その表情は、一日中続いた激務にも関わらず明るい。まるで、毎日が楽しくて仕方が無い子供の様な純粋さだ。
(映像切り替わり。書記官府のベッドで眠るリリィの映像)
ナ:23:30。今日この日の仕事が全て終わると、彼女は王宮へ帰ることなく書記官府で眠りに付く。時刻は既に真夜中、ラピタ人が「魔物の時間」と呼んで恐れる時間帯に近い。既に彼女の他はクリス氏を除いて皆眠ってしまい、書記官府は静寂に包まれていた。

ナ:我々は今まで、数多の国の人々を取材し、そのプライドに迫ってきた。しかし、彼女ほど身分が高く、また精力的に働く人間は見たことが無い。我々は彼女に、その秘密を直接訊いた。
(リリィのインタビュー映像)
イ:(何故これ程激務をこなせる?)
リ:「…そうですね、強いて言えば『この故郷が好きで好きでしょうがない』から、でしょうか。積み重ねてきた歴史も、日々を明るく送る人々も、一緒に歩んでくれる友達も、鮮やかな生き物達も。私は私の故郷が、故郷に生きる全てのものが大好きなんです。だから、頑張れる。故郷が私を見てくれている、私の仕事で平穏な暮らしの中で生きる人々の幸せが一分でも、一秒でも長く続く。そう思えば、どこまでも奔り続けられます」
イ:(これからこの国をどの様な国にしていきたい?)
リ:「一言で言うのなら、『星空の見えるデニエスタ』を作りたいですね。…私たちの祖先が守り続けてきた物を失うこと無く、かと言って単に時代に取り残された遺物でもない。或いは、カーリストを崇拝した近代化によって、美点も欠点も捨て去った、画一的な先進国でもない。私達だけの、私達にしか作れない。そんな新しいラピタの未来を描きたい、そう思っています」
(フェードアウト)

♪〜エンディングテーマ
ナ:ラピタ王国の若き俊英、リリィ王女。その背には故郷を背負い、若き瞳は無限の未来を見据えている。彼女の描く世界は、すぐそこにあるのかも知れない。

(エンディングと共にキャスト)
制作協力:ラピタ王国政府

  終

制作・著作
 
━━━━━
 
 ⓃⒽⓀ




 タアロアのとある食堂。街頭テレビの前。
「…すごく、面白かったなぁ。おれ、感動しちまったよ…」
「なみだで前が見えないわ…」
「リリィ様ぁ〜。ワシらの為にあんな大変なお仕事を〜」
「あぁもう、纏わりつかないで!正直今わたしすっごく恥ずかしいのに!」
「いやぁ、ほんと、良いドキュメンタリーでしたねぇ」
「こらクリス!呑気にお酒飲んでないで助けなさいよ!『いつまでもお仕えしたい』って言ってたじゃない!」
「ちなみに王様もご満悦だそうですよ」
「そんなこと訊いてなーい!!」

本当に終わり

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