架空の世界で創作活動及びロールプレイを楽しむ場所です。


GTXゴトロス連邦の高速鉄道

0:33

「オビエスト行き最終間もなく発車します」

優しい声の駅長が街中に叫ぶ。振り向けば列車は、いまドアが閉まりかけてあかり灯る窓の中では、故郷へ帰る人々が談笑している。走り出せば間に合うだろう。ここで乗り遅れてはいけない。振り向けばドアは閉まる。私は窓ガラスを叩き続けた。そして、手のひらに残るのは白い煙と乗車券。
0:45
「もう駅閉めますよ」

駅員が生気のない声で言った。さっきの優しい声の駅長はもう帰ってしまったみたいである。私は素っ気ない態度で乗車券をゴミ箱に捨てて駅を出た。
1:02
私は駅前の格安ホテルにチェックインした。荷物で手がふさがっていたので、ホテルの管理人に部屋の鍵を私の口に入れるように言った。そして、鍵を口にくわえながら部屋に入った。たくさんの人がこの鍵を使ったんだろうけど、今日一日の疲れからかそんなことはどうでもよかった。

「はあ、乗り遅れちゃったなあ」

携帯を見ると、祖母からの着信が16件来ていた。明日は乗り遅れないようにしなければならない。私はそう思いながら眠りについた。
4:45
まだ、5時だというのに上の階からゴソゴソ音がする。それに起きている気配がする。さすが格安ホテルだ。私はもう少し寝たかったが、寝付けなかったので朝早くのラウネ市街地を歩くことにしてみた。
5:25
朝早くのラウネはかなり静かで、この地球の反対側では車が行き交って人々が賑やかに生活していることが信じられないぐらいの静かさである。青白くなった街並みは幻想的だった。そして朝は気温が低く、心做しか空気が綺麗に感じられた。私は深呼吸した。鼻から抜ける冷たい空気。少しばかり心が軽くなった気がした。
6:25
さすがにこの時間になってくると、徐々に車の往来が多くなってきた。カフェのテラスにはコーヒーを飲みながらパソコンをカチカチしている女性が座っている。これがキャリアウーマンというものか。少し川沿いに歩くことにしてみた。川のせせらぎに耳をすませば、自然の息吹を感じることが出来る。
7:06
この時間になってくると、川のせせらぎが聞こえなくなるぐらい車の往来が増えた。忙しなくすぎる時間。私はこの時間も好きである。路面電車の本数も増えて、路面電車から鳴るチリンチリンという音が鳴り響く。
8:26
9時近くになると学生達が登校する時間になった。8時30分にチャイムが鳴るのだろうか。学生達が猛ダッシュで学校へ向かっている。私もそんな時代があったなと過去を振り返る。私が子供の頃はGTXもなかったから、今の子供はだいぶ行動範囲が広くなっだと思う。なぜなら5500カールでラウネからオビエストに行けるのだから。
9:02
格安ホテルからチェックアウトした。少し眠たいが、ラウネの街を探検できてよかった。睡眠はGTXの中で取ろう。
9:12
今度は乗り遅れない。9:30出発のGTXに乗り込む。座席は普通席・ビジネス席・プレミアム席があったが、少しばかり奮発してビジネス席を指定した。これで残金は300カール*1である。ビジネス席との比較のためにまずは普通席に座ることにしてみた。普通席は前との間隔が狭く、足を伸ばそうとすれば、前の席にスネが当たってしまう。クッションはまあまあフカフカだ。そして、ビジネス席に移動する。ビジネス席は、前の席との間隔が広く、足をある程度伸ばすことができる。普通席にはないフットレストも付いていた。さらにフリーWiFiも完備されている。これはチケットの値段に見合っている。そう感じた。出発の前にデッキで祖母と通話した。

「どうして昨日は来れなかったの!」

と大声で怒られてしまったが、GTXに乗ったことを証明すると声のトーンとボリュームがいつも通りになった。
9:30
GTXはゆっくりと動き出した。プラットホームでは、優しい声の駅長が深くお辞儀をしていた。なんて徹底されたサービスなのだろう、と思った。私は今回オビエストに住む祖母にGTXで会いに行く。
9:48
GTXは、加速し130km…250km…とその速さを徐々に高めていった。

「チリン!チリン!」

私の携帯だ。マナーモードにするのを忘れていたので、周りの乗客から白い目で見られた。皆はこうならないようにGTXの中では携帯はマナーモードに設定した方が身のためである。祖母からの電話だった。デッキにいちいち出るのも面倒なので携帯の電源を落とすことにした。
10:02
意外と振動は大丈夫だ。さすがスカセバリアル製の電車だ。乗客は満員とまではいかないものの、8割ぐらい席が埋まっている。なぜ私が特急ではなくGTXを選んだかというと、単に乗ったことがなかったからである。特急の所要時間と比較すれば大分短い。しかし料金は特急と変わらない。特急の停車駅は6駅だが、GTXはその半分である。GTXはとにかく急ぎたい人にオススメだ。
10:25
暫くフリーWiFiを使ってSNSを見たあと、私は眠ることにした。蒸気のホットアイマスクを付けて、耳栓までした。私は敏感な人間なのでこれぐらいしなければ寝ることができない。
12:05
「ギャハッ!」
JKの声で目が覚める。もうすぐでオビエストに到着する。サイジン駅で在来線と合流し、在来線と並走する。車内チャイムが鳴りアナウンスが始まる。

「この列車はオビエスト行き高速列車GTXです。まもなく終点オビエストに到着します。お忘れ物のございませんようご支度下さい。出口は左側です。本日もGTXをご利用いただきまして誠にありがとうございました。」

丁寧なアナウンスが終わると、車掌のアナウンスが始まる。丁寧な自動放送のあとだと心做しか車掌の早口な放送が雑に聞こえる。
12:30
私は1日遅れでようやくオビエストに到着することが出来た。早速ホーム上で祖母に電話をかける。通知は予想通り十数件来ていた。

私「もしもし、オビエストにつきました」
祖母「年寄りに心配かけさせないでよね」
私「すまんすまん」

こんなやり取りをしたあと、携帯を閉じて祖母の家に向かう。オビエスト駅でオビエストメトロに乗り換える。祖母が住んでいる家の最寄り駅はオビエスト駅から5駅の所にある。チケットを買い、地下鉄のエスカレーターを降りていく。平日の昼間ということもあり、意外と空いていた。
12:57
祖母の家の最寄り駅に着いた。しかし、ここで重大なミスを犯していることに気づく。祖母へのお土産を忘れたのである。私の手持ちは300カールしかない。どうすればいいのだろう。私はそう思いながらコンビニに立ち寄った。300円でありったけのお菓子を買うことにしたのである。
13:20
祖母の家に到着した。コンビニで買った300カールのお菓子は口に合わないと言われ受け取って貰えなかった。

祖母「今日は泊まっていくといいよ」
といった。私は明日も仕事があったので、遠慮しようとしたが、GTXの存在を思い出した。朝一番の列車に乗っていけばいいやと思い、その日は泊まることにした。GTX万歳。
0:30
私は本社から送られた書類を片付けてから眠ることにした。思ったより膨大な量だったので最終的に眠りについたのは午前2時頃だった。そして気づいたことがある。帰りのGTXのお金がないことを。

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