架空の世界で創作活動及びロールプレイを楽しむ場所です。

サハラ暦26565年(聖暦1992年)6月下旬

大サハラ帝国の大使は、大使館の敷地内での生活が義務付けられる。私用・公用問わず外出する際は外出歴を付ける義務もある。こうなった理由は、過去に大使が大使館の外で反サハラ人過激派に襲撃された事件があったからだ。生命には変えられないものの、いささか窮屈さを覚えなくはない。

朝、目覚ましが鳴る前に起きた私は、今日の業務のために朝のルーティーンをこなしていく。ズボンをはき、上半身を整える。最近の若者の一部はカーリストの国々の流行に乗り、上半身も服で覆うらしいが、私は大使としてふさわしい、大サハラの伝統的な格好に着替える。

さて、今日の仕事は、近々新たに大使館職員として受け入れる必要のある外国人の入国を求める書類の作成と、大使館の防衛力強化の提言の作成だ。

大使館職員として、サハラ人を新たに2名迎え入れる必要があり、外交官というわけではないのだが、この国の取り決め上すべての入国外国人について許可を求める必要があるのだ。

あの可愛らしい王女様にまた会えるかと思うと心の癒しにはなるが、この制度そのものは非常に面倒だ。次に会った時に制度改革について探ってみるか。

大サハラ帝国は、ラピタ王在位10年記念式典に国内での論議があり使者を送れず、外交において他国に一歩後れを取っている。他国がラピタを自分の都合のいいように誘導しようとしていると本国からの連絡が入っているため、なんとしても他国の介入を妨害し、ラピタ王国を独立した国家として存在させる必要がある。

ピロリンピロリン

私が書類作業を進めていると、受付からの内線が入ってきた。

「グラフェンです、どうされましたか?」

「大使に面会希望が来ています。ラピタ人のエラムという方だそうですが」

ふむ、今日に面会の予定はなかったはずだが……。

「所持品検査をして、武器をうちに預けてもいいなら会おう」

「かしこまりました」

そういうと受付は電話を保留にした。しばらくすると、保留が解除された。

「こちらの条件に同意しました。面会の部屋はどうしますか?」

「面会室2で頼む」

「かしこまりました。すでにこちらの準備は終わっているので大使は準備が終わり次第向かってください」

「了解。では失礼」

メモ用にタブレット持ち、面会室に向かう。さて、どのような要件なのだろうか。

「お待たせしました。駐ラピタ大使のグラフェン・ローゼスです。よろしくお願いします」

ラピタ語(首都でよく使われているだけなので、これをラピタ語とするかは本国では議論がある)で話しかけると、

「ハじめまシて、エラムと申シます。よろシくおネがいしマす」

エラムなる青年は非常になまっているもののサハラ語をしゃべりだした。

「ほう、サハラ語がしゃべれるのですか。すごいですね。ラピタでサハラ語を喋れるのを見たのはあなたが初めてです」

「ありガとうゴざいマす」

「それで、今回はどのような要件で?」

「そうデした!今日ハ、このラピタで大サハラ帝国の交流会ヲやってホしいのでス!」

「ほう、交流会ですか。いったいなぜ?」

「わタし、大サハラの歴史ヲこの本デ読んで感動シました!もっとラピタのみンなに大サハラのこと知ってほしいノです!」

なるほど?これは想定外だな。向こうから大サハラとの友好を呼び掛けてくるなんて。しかしこれはいいのではないか?

「なるほど、非常に興味深いアイデアだ。検討を始めてみることにしよう」

「本当でスか!?願ってモないことデす!ぜヒよろしくオ願いシます」

「いや、今日はありがとう。非常にためになった。是非とも検討させてもらおう。他には何かあるかな?」

「ソれは良かったデす!提案は以上デす」

「そうか、ありがとう」

「いえイえ、それでハ、失礼しまス」

そういうと、彼は部屋から出ていった。

なるほど交流会か。事務仕事に追われていてそこまで考えが及ばなかったな。彼はいい視点を持っているようだ。彼のような人材が増えれば、ラピタの独立も確固たるものになるだろう。

それにしても、大サハラ帝国を現地人に覚えてもらうにはぴったりなイベントだ。本国に許可を取って大々的に開催できるようにしてみようか。今日の仕事は増えたが、大サハラ帝国のすばらしさを他国に伝えられるなら安いものだろう。

そう思い、私は書類仕事を再開した。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

メンバーのみ編集できます

メンバー募集!