架空の世界で創作活動及びロールプレイを楽しむ場所です。

「大王陛下、そろそろ学校に出発される時間でございます」

いつものようにケオ・アリーにシンバルの音で叩き起され、いつも通りに朝食を食べ、色々身支度をしていたらもうこんな時間だ。

「もう準備できたわよ」
「はっ。車を手配しますか?」

車とは防弾仕様の黒塗りの高級車のことである。しかし私は車で学校に行くのは嫌いだ。

「要らないわ。徒歩で25分程度の距離、私は自分の足で歩くもの。 」

手を叩くと、私と同じ高校の制服に扮した2人のマウサナ人SPが現れた。2人とも私によく似た外見をしており、この2人は道中、学生に扮してこっそりと護衛するのである。
マウサネシアという国において、少なくとも本土では銃撃事件など革命以来起こったことがない。ましてやこんな地方都市で通学中のほとんど何の権力も無い大王陛下を襲撃しようだなんて考える者がどこにいるだろうか。
わざわざ黒い車で現れてもかえって注目されるだけだ。だから私は普段は歩きで学校に行くことにしているのだ。




学校は5階建ての、鉄筋コンクリートの白くて味気ない建物である。敷地内には教室以外にも体育館や武術館、プールなどの建物がある。
全部で3学年あり、1学年につき8クラス、1クラスが平均40人前後なので、この学校には950人くらいの生徒が居ることになる。

マウサネシアでは私立高校は存在せず、全員が公立高校に通う。高校には学区の制度があり、偏差値に応じてその学区内で相応の高校に通うのだ。
そして私の偏差値は61くらいなので、相応の学区内ナンバー2の高校に通っていて、まあ平均よりは頭良いけど天才というわけではない。

「おはようございます大王陛下」
「おはようございます」
「では、あとの警備は頼みましたよ」

入り口で挨拶している警備員に返答して、2人のSPはそこで帰ることになる。

教室に入ると、リャル・ラノとニュス・トルの2人の友人はもう来ているようだ。

「おはよ」
「おはよ〜。ねえ今朝のニュース見た?」
「今朝のニュース…?」
「エーラタヤーが感染症で封鎖されたってやつ」
「でもそれ封鎖されてないって噂もあるよ」
「情報が錯綜してるんだね……」

マウサナ人は集中力が低い種族であるため、1つの授業は30分+10分休憩で行われる。
8:00朝のホームルーム
8:20一限目「数学」
9:00二限目「国語」

マウサネシアの学校では、教師が黒板に板書したのを生徒が各々のノートに書き写す方式で行われる。

9:40三限目「道徳」

3時間目は「道徳」の授業だ。マウサネシアでは高校でも道徳が必修科目であり、ほとんど太陽教の教義と同じ内容を教えているのだが、今回はSNSにおけるネットリテラシーの授業だった。

10:20四限目「数学」
11:00五・六限目「体育」

そして5時間目は武術の授業であり、本日は「竹槍訓練」をやることになっている……


「竹槍訓練って意味あるのかしら」

マウサナ人に性別は無いため着替えでも区別がない。だから、スカートを履いたまま体育用の短パンを履き、見られないように工夫しなければならない。
そのため、プールの時は身体を巻くことが出来るカーテン状のタオル(小学生がよく使ってるやつ)が必要になる。

「何の役にも立たないと思うよ」

「まあ楽しいから良いじゃないか!」

実際のところ何故このような竹槍訓練が存在するのかを私は知っている。そしてこれは、戦争のためではない。
これはいわゆる、「精神増強教育」の一環であり、共に竹槍訓練を行うことでマウサナ人の団結力を高め、さらに精神力を強める狙いがあるのだ。
マウサナは精神力を重視した国家であり、「大体のことは精神力があれば何とかなる」という考え方をしているためこのような教育を行っているという。

「では竹槍をこのように構え、合図があったら叫びながら突撃しましょう。あそこに敵がいると思って、敵を倒す気概で突撃しましょう。」

「「はいっ!!」」

「突撃!」

「うわぁぁぁぁぁあ!」
「やぁぁぁぁぁぁあ!」
「きゃぁぁぁぁぁあ!」
「きぇぇぇぇぇぇえ!」

皆がそれぞれ自由な叫び声(しかも、甲高い叫び声である)をあげながら必死になって突撃する姿は、他国の人間が見れば『狂気』としか感じられないだろう。

「ぜぇはぁ」
「はぁはぁ……セレちゃん、大丈夫?」
「はぁはぁ、私には、あんまり、向いてないなぁ、こうゆうのは……」
「私はまだまだ元気よ」
「体力バカは違うなぁ」
「バカとは何よバカとは」

明らかに上に立つべき大王がやるような訓練ではないのだが、大王以前に、1人の高校生である以上は、やらなければならない。

その後は1列に並んで「突き」の訓練をひたすらやったり、順番に藁人形を突き刺す訓練などを行った。



12:20昼食

「はぁ疲れた……」
「はっはっは、次は昼ごはんだー」
「お腹すいたね…」

体育の授業が終わり再び制服に着替えると、3人で食堂へと向かう。
マウサネシアの学校ではお弁当は持ってくる必要が無く、全員が学校の食堂で食べるのだ。

「今日はBメニューにしよう…」

入り口の数台ある機械には既に行列ができていて、『A(赤、米料理)』『B(青、芋料理)』『C(緑、麺類)』『D(黄、カレー)』の4つのボタンがある。
IDカードの磁気部分を機械にスライドするとボタンが点灯し、Bの青いボタンを押すと、プラスチック製の青いトークンが出てくる。

Bセットのカウンターに1列に並んで、コンベアに乗って運ばれてくるプレートを受け取っていく。
1000人の生徒と職員の昼食を捌くためには、調理においても多くの工程が自動化されているのだ。

マウサネシアではどの高校でも学食で出される食事は全く同じである。AセットとBセットは10種類で10日で一周し、CセットとDセットは5種類で5日で一周する。
そのため、一日に選べるのは4つだけであり、自動化の影響で自由も効かない(ただしマウサナ人の新陳代謝は男性並みであるため、日本の基準だとマウサネシアの普通はやや大盛りとなる。)

本日のBセットの内容は、主食兼汁物が『カテシ(大量の芋と野菜がごろごろと入った、ピリ辛の味噌スープ)』、主菜が『ハマ(川魚)のフライ+タルタルソース』、デザートが『スイートバナナ(黄色くて茶色い斑点があるバナナ)1本』だ。

ポワーン!
マウサナ人の伝統習慣で「食事に感謝しながら食べる」ための、伝統的な鐘が定期的に鳴らされている。
みんな慣れてるので誰も気にしないが、マウサネシアではレストランでも鳴っているため外国人観光客からはうるさいというクレームが来るらしい。

空いてる席を探して、いつもの3人で座る。

「そっちはCセットとDセットなんだね」
「今日はカレーの気分なんだ」

Cセットは『旭島風鶏ガララーメン』とデザートの『スピラ(ミカンに似た柑橘)』、Dセットは『グリーンカレー&ライス』とデザートの『スイカ』のようだ。

ポワーン!
また鐘が鳴った。

「やっぱりカレーはグリーンカレーが王道だね」
「いや、私はオレンジカレーの方が好きよ」
「いや、ここはレッドカレーでしょ」

我々の会話はいつもこの調子だが、時折耳に入ってくる他のマウサナ人の会話は、少々違うようだ。

「…は………かった…」
「……すぎて……壊れそうに……」
「…昨晩は……で……腰が痛く……」

普通のマウサナ人の高校生の会話だが、聞くだけで恥ずかしくなるようなかなりどぎつい下ネタが時折混ざってくるので油断出来ない。

ポワーン!
また鐘が鳴った。

「うーん……」
「どうしたの?」
「眠くなってきちゃった……」
「確かに私も眠いな……」
「そろそろ昼寝の時間だね」


1:00お昼寝タイム

昼寝の時間は40分間だが、昼食に確保された40分のうち30分くらいしか使わないため実質50分を昼寝に利用できる。
マウサナ人は温暖な環境に置かれた状態で昼食を食べると眠くなる種族であるため、マウサナ諸国では昼寝の習慣があり、学校や職場でそのための時間が確保されているのだ。

教室に戻ると既に何人かは座ったままうつ伏せになって寝ていた。私もこれから昼寝する。

「じゃあおやすみ……」

40分後

ジャーン!ジャーン!

「ほら授業始まりますよ!」

「うーん……」

先生が教室でシンバルを鳴らしながら大声を出してクラスの全員を起こすと、七限目が始まった。

1:40七限目「生物」
2:20八限目「外国語」
3:00九限目「音楽」
3:40夕方のホームルーム

マウサナ人は困ったらとりあえず人海戦術をすれば大抵のことは解決すると考えている種族であり、それは学校にも現れている。
夕方のホームルームが終わると、10分ほどで「全員で」掃除を行う。マウサナ人に言わせれば、40人の人海戦術によって掃除を早く終わらせることができるのだ。

「じゃあ私は帰る。」
「私も帰るよ」
「私は部活だから、じゃあね!」

それが終わると、帰宅する者、部活動に向かう者に分かれて、それぞれの放課後を過ごすのである。
私はというと、特に部活動には入っていないため、そのまま帰ることになる。

「大王陛下、お待ちしておりました」
「あっ待ってくれたのね、ご苦労さま」

高校の入り口で待っていた2人の変装したSPと再び合流し、行きと同じように帰路につく。


「おかえりなさいませ大王様」
「あらアリー。ただいま。」

この後は特に特筆すべきことはない。
宿題をして、大王の職務を少しやったら、あとは自由時間である。
スマホゲームをやって、夕食を食べて、またスマホゲームをやって、風呂に入って、寝る準備をする。

こうして、大王陛下である私の、普通のマウサナ人高校生「っぽい」一日は終わったのである。

(おわり)

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