架空の世界で創作活動及びロールプレイを楽しむ場所です。

聖暦1992年5月初旬の頃。私達カレッジの生徒達は、間も無くやってくる休暇を心待ちにして過ごしていた。というのも、五月の始めは祭日や祝日が連続しており、一週間程度のまとまった休みがある。厳格な寄宿学校も、休暇中のことは生徒にもそこまで干渉できないから、各々実家に戻り、旅行なり社交なりに精を出すのだ。
「実家最高!消灯だとか服装だとか、やかましい規則から解放される!」
 …とまあ、全ての生徒達の思いを代弁すればこういうことだ。そして、それは私とて例外と言い切れるものではない。あまり認めたくないことではあるが、私も休暇は少し楽しみだった。
 その日私は学生寮の個室ー親友のアンナとの相部屋だーで、スマートフォンを片手に邸宅で切り盛りをしているステパンと通話をしていた。
「ステンカ、そちらはどう?」
「問題ありませんよ。ただ、相変わらずユージェニー宮は広過ぎますよ。流石にこの家を五十人からで管理するのは無理があります」
 ユージェニー宮殿とは、ヴィシニョヴィエツキ公爵家が王都カルドニアに持っている邸宅の一つだ。元々は数ある別荘の一つ(!)として作られたものだが、今では当主が議会や社交シーズンで王都に滞在する時に起居するタウンハウスとなっていた。一応、私の登録状の住所はそこである。
「それじゃ、本領の方に連絡して人を寄越すように命令しておくわ」
「はい。ところで、休暇にはお帰りになられますか」
「勿論。寮母さんのヘルシーなご飯も好きだけれど、やっぱり、料理長のスペシャリテが恋しくなるわ」
「キャビアと卵のアレですか。分かりました、材料の調達を頼んでおきます」
「宜しくね…そうそう、多分公務とかお手紙が溜まっているでしょう?」
「ええ。公務はそれ程でもありませんが、社交のお誘いが沢山。休暇中の舞踏会やサロンの集まりだけで、三ダースは有りますよ」
「…はぁ、丁寧にご辞退のお手紙を書くのが憂鬱ね。とりあえず、爵位と立場ごとに大まかに分けておいて。帰ったら直接対応するから」
「はい、分かりました」
 すっかり慣れた通話を切ると、部屋の扉が開いてアンナが戻ってくる。体つきはすらりと細長く、私よりも背が高い。引き締まった脚はしなやかで強く、走っても飛び跳ねても、…考えたくはないが蹴りを放っても常人より優れているだろう。
「電話してたのか」
「そうよ。休暇でユージェニー宮へ帰るから。色々と支度がいるの」
「へぇ」
「アンナは?」
「アタシは遠慮しとくさ。カルドニアから夜行列車で行く様な実家だし…あんまり遠すぎら。休み中も寮にいて、部活の自主練でもしてるよ」
「あら、それならまたウチに泊まる?最近電化製品をキチンと置く様になったのよ。テレビとか、パソコンとか」
「あの陸の孤島にもようやく文明の利器が入った訳だ」
 苦笑いするアンナ。私としては耳の痛いことだが、事実であるからには仕方がない。二年前に亡くなった私の父と母は、共にスマホやテレビ、パソコンなどの電子機器を嫌う人柄で、邸宅には殆どその類の物を置かなかったし、私に使い方を教えることも無かった。
 その心意気は徹底していて、私をこのカレッジに入れたのもそういう理由だ。何しろここは、中等科未満ではそもそも携帯電話の類を持ち込むことは厳禁、中等科からは旧型の折り畳み携帯電話まで、高等科からようやく無制限になるというほどに高速の締め付けが厳しいのだ。
 その結果、私は復学初日に大いに電子音痴の醜態を晒すことになり、公爵にあるまじき振る舞いとして笑われることになってしまった。…尤も、そのおかげで新しく友達もできたし、今ではすっかりクラスに馴染めたから、悪いことばかりではなかったが。
 とにかく、それはさておいて。私は王都に滞在する様になってから、今まで電子的には陸の孤島(何しろWi-Fiの類が無い)と化していたユージェニー宮殿にテレビやパソコンを置き、インターネット回線を引くなど情報インフラを整えさせた。そもそもとして電波の入らないヴィラヌフ宮殿やヴィシニョヴィエフ城では仕方ないにしても、流石にタウンハウスでこの体たらくでは良くないとようやく気がついたのだ。
「とりあえずあんまり退屈はさせないから。泊まらない?部屋はいくらでもあるわよ」
「…じゃ、お言葉に甘えるよ。部屋はこの前と同じ様に、小さめのところにしてくれたらありがたいな」
「どうせ夜までお話しするし、相部屋にする様指示しておくわね。着替えの類だけ用意してもらえたら、後はいくらでも居てくれていいから」
「懐が深いってのはいいねえ」
 と、そんな風に休暇の予定を明るく立てていた夜。忙しない足音が近づいてきて、その平穏を打ち破った。
「あら…」
「誰か来るな。しかもやけに急いでる」
 気がついた直後、部屋の扉がコンコンコンと、礼儀正しくノックされた。一体誰だろうか。
「どなた?」
「ええと、私はアデリナ・イェニスタです。入ってもよろしいでしょうか」
「イェニスタといえば…」
「どうぞ!」
 入ってきたのは、明るい茶髪のチャーミングな女の子だった。制服のワッペンから、同じ高等科の生徒であるとわかる。だが、私とアンナにとって、彼女の立場は一々それを確認しなくもすぐにわかるものだった。
 何しろ、彼女の父親はこのイェスパッシャンで一、二を争う有名人なのだから。
「アデリナさん、確かお父君はエステバン・イェニスタ男爵だったわね」
「はい。父は一代貴族のエステバン・イェニスタ男爵です。少し前まで、FCカルドニアのフォワードを務めていました」
 エステバン・イェニスタ。この国では知らぬ者など居ない、元サッカー界のスター選手だ。現役時代は、長い伝統を誇りながらも落ち目であったFCカルドニアを再びトップのプロリーグ優勝に導き、勢いそのままに年間得点王、最優秀選手賞を最年少で受賞。その後も華麗な実績を積み重ね、国際大会ではイェスパッシャン代表としてプレー。七回にわたって国際サッカー協会からバロンドールを受けた。
 その国内での人気ぶりは凄まじく、五桁の会員数をもつファンクラブが私の知る限り国内に四つ存在するだけでなく、現役引退の発表から早くも二年後には自伝映画が大ヒットを飛ばした程だ。
 そして、遂に2年前の1990年。彼は四十五歳の若さで一代貴族、「ロサリオのイェニスタ男爵」に叙爵され、貴族院に列した。現在では貴族院議員として議会に参加し、国内でのスポーツ振興の為に精力的な活動を行なっている。
 アデリナは、そんな国民的スター選手の次女だ。入学した時には、名だたる名門世襲貴族の子弟を差し置いてニュースに取り上げられ、校内でも抜群の知名度を誇る生徒の一人となった。
「アデリナさん、こうしてきちんとお話しするのは初めてかしら」
「はい、公爵閣下」
「その閣下は止して。同い年なのだから、そんなに気負うことは無いの」
「…ありがとうございます」
 彼女は申し訳なさそうに頭を下げ、目を伏せる。有名人の父を持ちながらも、彼女は傲慢とは無縁の性格だった。常に控えめで謙虚、他の生徒達には親しい間柄の友人を除いて敬語を使い、強く我を主張することが無いのだ。
「アデリナさん、良かったら私のことはリュリスと呼んで。無論、イェシーでも、ヴィシィでも、好きな風に呼んでちょうだい」
「では、リュリスさんと」
「はい。ちなみにこちらは私の親友でアンナ・カルデロスさん。筋の通った性格だから、心配しなくていいわ。…何か、大切なお話があるんでしょう?」
「!!」
 アデリナは図星を突かれた、という表情を浮かべ、身体をこわばらせた。やはりか、と言う思いが私の胸を満たす。もとより予想はしていた、そもそもこんな夜に他人の部屋、それも私の部屋を訪ねるなんて、間違い無く厄介な相談事だろう。恐らくは上流階級、世襲貴族絡みの事だろうか。
 とはいえ、私は彼女をすげなく追い返す気にはならなかった。先ほど述べた通り、彼女は有名人の子供で有りながら、それにつきものの悪徳とは無縁で、逆に多くの人に好感を持たれる性格だった。私もその一人で、いつも名門を鼻にかける貴族の鼻持ちならない若者と接していたから、却って彼女をより好ましく思っていた。
「…あまりお付き合いも無かったのに、いきなりお願いするのは失礼だとわかっています。でも、リュリスさんの他に頼れる人が浮かばなくて…」
「…どうぞ、聞かせて頂戴」
「姉さんを、私の姉、ジョアンナを助けて下さい!」
 涙ながらに彼女は言った。そして、ポツポツと語り出した、彼女の姉が巻き込まれた、あまりにも恐ろしい事件のあらましを。

 「あなたのお姉さん?」
「はい。ジョアンナ・イェニスタ。一昨年にカレッジを卒業して、今は大学生です。ですが…」
「それで?」
「…最近姉は怪しいパーティーに出入りしていたんです。夜九時に家を出て行って、朝早くに戻ってくるんです。どこに行くの、と聞いたら決まって『パーティー』だって…でも、その様子は明らかに変なんです。服はケバケバしいドレスを着て、お化粧も濃くして、帰る時はフラフラと足元もおぼつかない様子で…。何をしていたの、と聞いても曖昧に答えるだけで、なお問い詰めようとするとヒステリックに喚くんです」
「そのパーティー、詳しいことは分かりますか?」
「はい。そのパーティーは、世襲貴族…ラ・ベルーガ侯爵閣下の御令息、アーデルビュー伯爵が主宰されているもので、定期的に邸宅のギャレット・ホールで開かれているんです。ご存知ありませんか、王都の著名人が集まるサロンの一つで、そこに行くには招待されるか、参加者の紹介状が必須になるっていう…」
「ちょっと待って、少し思い出してみる」
 私は記憶の中の貴族名鑑を引っ張り出して捲った。ラ・ベルーガ侯爵、確かに名の知れた名門貴族だ。今時随分と少なくなった、カントリーハウスとタウンハウスの双方を所有する貴族地主で、当代の侯爵は投資家として大成功を収めていたはずだ。
 そして、アーデルビュー伯爵、侯爵家の後継の若者。随分と昔に、父に連れられて参加した舞踏会で姿を見たことがある。その頃はまだ十代後半の青年で、甘いマスクで貴婦人達の人気者だった…。
「確かに、ラ・ベルーガ侯とアーデルビュー伯は知っているわ。でも、そのサロンの事はよく知らないのだけど」
「…伯爵はお父君に代わって、今の社交界での人脈作りに勤しんでいるんです。沢山の晩餐会や舞踏会に顔を出されたり、ご婦人方と観劇に出られたり。その一環として、サロンを主宰なさっていると父から聞きました。その昔、ユージェニー宮殿に集まった人たちの大サロンの様なものを志向していると…」
 アデリナは何人かの参加者の名前を挙げて見せた。その中には、高名な文人や学者、経済界の大物、与党の有力政治家、若者の間で人気のカリスマミュージシャンなど、幾らか名前を知っている人間も多くいた。確かに、そうした人達と直に会えるとしたら、多くの人にとってその場所はとても魅力的に映るだろう。
「…なるほど。確かに、魅力的な集いの様ね。でも、あなたはそうは思っていないんでしょう?お姉さんは、単にサロンで遊んでいるだけじゃなくて、何か恐ろしいことに巻き込まれたのじゃないか、と」
「…っ、はい」
 彼女は話を続けた。より一層苦しげな様子で。
「…ある日、家に手紙が届いたんです。差出人は、ジョアン・ドウ、とだけ書いてあって。中を見てみると、手紙と、しゃ、写真が入っていて…それが、原因なんです。姉さんの恐ろしい写真が…!」
「落ち着いて、アデリナさん。お姉さんの恐ろしい写真って、どんなものだったの?」
「い、今ここにあります。ご、ご覧になって下さい下さい。私の口からはとても言えません…!」
 そう言って、彼女は懐から封筒を取り出し、中の写真を私に見せてきた。
「なっ…!」
 それは、彼女の姉、ジョアンナのあられもない姿を写した物だった。ほぼ一糸纏わぬまま、男の手を取って踊り周り、淫蕩に耽っている様子を何の憚りもなく映し取っている。
 だが、それだけではない。そこには単なるポルノ写真に備わる猥褻さだけでなく、何か凄絶な雰囲気があった。映るジョアンナの顔からは、吐き気を催す様な、筆舌に尽くし難い邪悪の気配がした。
「…これを送られた時、父と母は気も狂わんばかりでした。何しろ、我が家は貴族としては船出したばかり、そんな時にこの大スキャンダルです。もし外に露見してしまったら、どんな風に繕っても、どうにもならないでしょう」
「……麻薬じゃねえか?」
「え」
「なんつーかさ、この感じ、明らかに何か薬やってる様に見えんだよ。根拠はねえが、なんとなく」
「………」
「ところで、今そのお姉さんはどこに?出来ることなら直接お話を伺いたいのだけど」
「姉は…実は、行方不明になっています…」
 なんということか、哀れなジョアンナは、監視をつけて部屋で療養させていたにも関わらず、隙をついて三日前に家を飛び出し、そのまま行方が分からないという。
「け、警察には…」
「無理だよ、リュリス。それが貴族社会ってもんだろ」
 アンナの言う通り、警察に届け出る事は出来ていない様だった。アデリナはキュッと強く唇を引き結び、涙を堪えている。
「手紙には、娘の醜聞を流されたくなければ、我々に協力しろ、と。間違いありません、あの伯爵が送ってきたんです。それで、姉さんもきっとそこに…」
 話が事実だとすれば、麻薬の様な非合法的な物が絡んでいるのは間違い無い。単なる乱交パーティーならば、甚だしく非道徳的とはいえ、法的に非難される部類のものではないが、麻薬がそこに加わるならば、それこそ爵位剥奪も視野に入る重大な王家と王国への背信だ。
「野郎、中々危ない橋を渡るわね…」
「と、どうしたんだリュリス。そんな怖い顔して…」
「いいわ、アデリナさん。この件、リュリス・ヴィシニョヴィエツキ公が引き受ける」
「ほ、本当ですか!?」
「おい、リュリス、大丈夫か!?家の人たちとも相談したほうが…」
「しない。心配をかけたくないし、何よりこれは貴族の不始末。同じ貴族の私が一人で引き受けるのが筋よ。それに…もしも、もしもよ。何の罪もない娘を虜にして、薬を使って使い潰そうなんて卑劣なことを考える貴族がいて…それを何もせず指を咥えて見ているだけなら、光輝ある四大貴族の名が泣くわ」
「そんなこと言ったって…」
「ごめんなさいアンナ。今回お泊まりは中止ね。…あと、ステンカに何か聞かれても、絶対に秘密にしておいて。お願い」
 身勝手な約束を強引に承諾させると、私はまたステパンに電話をかけた。
「ステンカ?さっきの招待状のことだけど、もしあったら一つだけ行きたいのがあるわ。そう、ラ・ベルーガ侯爵家の集まりで…」

 「それにしたって、一体どう言う風の吹き回しですか。唐突に、アーデルビュー伯の仮面舞踏会に参加なさるなんて」
「いいじゃない。あそこには有名人が沢山いるし、会ってみたいのよ」
「そんなミーハーな…」
 少し後の日曜日。タウンハウスに戻った私は、ステパンに頼んで舞踏会の為の衣装を用意してもらった。仮面舞踏会、と銘打っているからには一応仮面がいる。(私の場合は、髪の毛の色ですぐに身分や正体が割れてしまうが)また、招待状には夜会服に限らず、面白い仮装でも良いと記されていたから、着るのはステパンが普段着る様な執事の正装にした。
「意外と似合いますね。特に足が長いですから、すらっとして綺麗ですよ」
「ありがと。でも、この手袋は煩わしいわね。手先が鈍くなるわ」
「まあまあ。あと、はいこれ。懐中時計は欠かせませんよ」
「チェーンが少し見える様に入れるのよね」
「そうですそうです。うーん、やっぱり綺麗ですね」
 アンナは約束通り万事を秘密にしてくれた様で、彼は訝りながらも準備を進めてくれた。アデリナが教えてくれた付け焼き刃の知識も役に立ち、多少のミーハーさも年頃ゆえあるだろう、と考えてくれたのだと思うことにした。
「ただまあ、髪の毛だけは仕方ないですね。仮面の下付け髭を貼り付けましょうか」
「老人のふりをしろってことね…」
 万事の支度を終えると、私は馬車に一人で乗り込み、ゴンゴラ街にあるラ・ベルーガ侯爵家の邸宅へと向かった。乗り込んだ時に降っていた小雨は段々と激しくなり、車を二十分ほど走らせると忽ちの内に豪雨となった。
 旧市街を北に向かった通り、王宮に程近い高級住宅地に侯爵家のタウンハウス、ギャレット・ホールは位置している。周囲には他にも多くの歴史ある世襲貴族の邸宅が軒を連ねているが、その中でも威容は群を抜いており、バロック様式の壮麗なファザードが訪問者を迎える。
 舞踏会が始まる午後十時から十分ほど前に、私は馬車を正門前に停めさせた。仮面とマントを身につけ、門衛に招待状を見せて中へと入る。古代の神殿を思わせる円柱に支えられたペディメント(破風)からは、厳しい顔の天国の番人が私を見下ろしていた。
 室内に入って濡れたマントを家の使用人に預け、案内されるままに舞踏会の舞台となる大ホールに入る。
 大ホールは外観とは対照的に、少し時代の降ったロココ様式で作られていた。白壁に金の蔦を絡ませるような装飾がされ、シャンデリアの吊るされた天井には、そこを太陽として、周りを回る星達の姿が描かれている。
 他方それらの星が見下ろす下界には、ワインと小さなアラカルトを載せたケータリングのテーブル、そしてそれを囲んで仮面をつけた「どこかの誰かさん」たちがおしゃべりを楽しんでいる。
「(相変わらず気分が悪くなる場所ね)」
 私にとっては、こうした社交界の集まりは今でも胸のむかつく場所だった。無責任な噂話、雑談の延長で交わされる政治的な取引、煙草とお酒の人を堕落させる香り、目を塞ぎ、耳を聾する光と音楽…酸蝕される理性に悪意が手をかけ、泥沼に引き摺り込む。
 私にとって社交界とはそう言う世界であったし、今いるこの場所こそ、まさしくそれを体現している。僅かな油断が、私を二度と戻れない暗黒へと引き込みかねないのだ。
「時に、そこの凛々しいお方」
「なんでしょうか」
「おや意外だ。てっきり、白髪にふさわしいご老人かと思ったが、お若い声ですな」
 声をかけられて振り向くと、そこには私より少し背の高い男がいた。服装は仮装のつもりなのだろう、粉を振りかけた似合わないカツラをかぶり、十八世紀の絵から飛び出してきたような仰々しい上着とベスト、半ズボンにブーツを履いている。仮面を付けて身分を隠してはいるが、中身からは下心が溢れ出ている。
「まさか、名前を聞くような御無礼はなさいませんね?」
「勿論です。お若い声のご老人に興味はありますが、その様な野暮はここには合いませんので」
 男は笑みを浮かべると立ち去って行く。私は心の中で、その背中に向けて唾を吐いた。
「ようこそいらっしゃいました、紳士淑女の皆様!」
 それから少し経った頃、バタンと大きな扉が開き一人、身なりの良い若者が入って来た。
「初めてのお方がいるかもしれませんので自己紹介をいたします。私はアルベルディン・デラクルス=ラ・ベルーガ、アーデルビュー伯の方が通りが良いでしょうか。今回の集まりの主催を相務めさせていただきます」
 アーデルビュー伯爵ー彼は大層人好きのする風貌の男だった。線は細いが、目鼻立ちは明瞭で、キラキラと輝く青色の瞳が忘れられない印象を残す。髪の毛の色は見事な金髪、調べたところ現役の貴族タレントだと出てきたが、確かにそうだろうと私でさえ思う。
「今回は仮面舞踏会、日付が変わるまでは、相手の名前や身分を探るのはご法度です。また、合わせて隣の小部屋を開放しますので、ダンスに疲れた方々、ごゆっくり歓談したい方々はそちらへどうぞ。それでは、今夜もどうぞ、お楽しみあれ!」
 それを合図に、待機していた楽団が演奏を始める。穏やかな曲に合わせて、辺りの人たちがペアを作って踊り出した。だが、私はそれが目的ではない。まずはジョアンナを探さなくてはと必死で辺りを見回した。
「あっ!」
 すると、意外にも彼女の姿はすぐに見つかった。ホールの隅で、一人の男性と組んでダンスを踊っている。仮面を付けてはいるが、事前に聞いていた背格好や、特徴的な踊りの癖からすぐに彼女とわかった。
「(頬が既に蒸気しているし、朝も異様にかいているみたい。明らか普通じゃないわね)」
 すぐに側に近づき、確保しようとする。まずは第一目的を果たさなくてはならないからだ。その時、
「麗しの君、どうかこの曲は私と踊ってくださいませんか」
「あなたは…」
 振り返った時、私が舌打ちをしなかった事は褒められてよいと思う。何しろ、そこに立っていたのは先ほど私を見つめていたあの古臭い男だったからだ。
 本当ならば言下に断ってやりたいところだったが、舞踏会でダンスを拒むことなどあってはならない。渋々私は彼に手を差し伸べた。
「(…意外に上手いわね。私のステップやターンのタイミングをよく知ってる。実は結構名前のある貴族なのかしら)」
 その後も私は数曲この謎めいた男とダンスをしたが、彼は私とうまく息を合わせて踊ってくれた。またそれだけではない、彼はあくまでダンスと食べ物を楽しみに来ていたらしく、無駄口を私に対して叩くことは無かった。曲が終わって、休憩時間になれば適当なケータリングから食べ物を摘み、また始まれば私と踊る。全く奇妙だった。
「そういえば、あなたはお酒は嗜まれないのか?『思い出のお方』」
「…私は故郷の蜂蜜酒以外は、あまり体質に合わないのですよ、『麗しの君』」
「えっ…」
 この国で出回る蜂蜜酒の殆どは、私の故郷であるオルディナツィアとその周辺で造られている。人が「故郷の蜂蜜酒」と言う場合、外国人でもなければその意味は…。
「あなたは、ソルターヌィの方なのですか?」
「…Це секрет」
 彼は明瞭な『故郷の言葉』で短く答えると、笑みを浮かべてまた私から離れていった。間違いない、彼は私の正体を知っている、知っている上でああして気取って見せているのだ。
「…一体何者なの…?」
「さて、それでは、いよいよ日付が変わりました皆さま!ここからは無礼講です、合わないと言う方はお帰りになっていただいて構いません!ですがお残りになって頂ける方は、是非ともダンスやお話をお続けくださいますよう!」
 気がつくと手元の時計は既に十二時を過ごしていた。辺りを見回すと、何人かの客が仮面を外している。その中には、確かに有名な俳優や政治家、経営者も多くいて、そうした人々が正体をカミングアウトするたびに貴婦人たちから歓声が上がった。
 私も仮面を取るべきだろうか。ふと思ったが、その時視界にあの古臭い男が目に入った。彼は仮面を外していない。あれが外さないのに私が外すと言うのはなんとなく気に入らなかった。そんな時、
「誰か!アタシと踊りましょう!」
「なっ!?」
 きいっ、と言う高い声で叫ぶや、仮面を放り捨てたジョアンナがテーブルにひらりと飛び乗ったのだ。しかし、周りの人間はそれを咎めようとはせず、ゲラゲラと狂ったように笑い、熱に浮かされた様に手を差し伸べる。
「(何、一体何が起こっているの?)」
 ところが、異様なのは彼女の周りだけではなかった。あちこちで似た様な現象が起こり始めている。一人の女性が突然叫び声を上げて踊り出したり、服を脱ぎ捨てて男に抱きついたり、無論その逆もいた。ホールの全てが、止める者の全くいない熱狂に冒されていた。
「(…まさか、食べ物やお酒の中に…!)」
 恐らくその勘は正しかった。一歩踏み出した時、私はその下に投げ捨てられて無惨にも砕け散った酒のグラスを見つけた。側には不吉な血の色をしたワインが水溜りを作っている。
 私は何か飲み物を口にしただろうか。間違いなく酒は一滴も飲んではいない。だが、ジュースの類は恐らく口にしているはずだ。この時私は、あの男が酒を一口も飲まなかったことを思い出した。彼は知っていたのだ、酒や飲み物の中に何かが仕込まれていることを。
「(くそっ、してやられた…!)」
 くらり、と視界が揺れた。あたりに漂う異様な香りと雰囲気がより濃くなるのに合わせて、私の意識は均衡を無くしていく。ガクガクと足が震え、それとは逆に体には奇妙な浮遊感がある。三半規管は混乱して警告を発し、それこそ例えではなく本当の吐き気が襲ってきた。
「まさか、空気まで汚染する、なん、て…!」
 力無く膝をつくと、カタンと仮面が剥がれ落ちた。しかし、それを気にしている暇など無い。なんとか立ち上がらなくては、ジョアンナを助けてここから逃げなくては。それだけを考えて、私は扉を目指し、カタツムリの様に前へと進んだ。しかし、一歩進んだところで、私の視界はぐるりと回転し、意識は暗転した。

 目を開けた時、真っ先に飛び込んできたのは見知らぬ天井だった。あの恐ろしい喧騒の気配は遠くに去り、ただ外に降りしきる雨の音だけが聞こえてくる。背中と片腕には、ビロード貼りのクッションの感触がある。恐らく、長椅子に寝かされているのだろう。
「…ん、ん!?」
 とにかく起きあがろうとするが、うまくいかない。意識に靄がかかり、手足が痺れて力が入らないのだ。
「お気づきですか?」
「…!!」
 ぬっと目の前に現れたのは、仮面舞踏会で見覚えのある、あの古めかしい仮面だった。
「(あの男、やっぱり一味だったのね…!)」
 起き上がって悪口の一つでも言ってやりたいところだが、それも上手くいかず、はぁはぁと息だけを無駄に消費してしまう。
「ヴィシニョヴィエツキ公を捕まえたのか!?」
「伯爵!」
 乱暴に扉を開け放ち、踏み込んできたのはあのアーデルビュー伯だった。先程までの紳士的な振る舞いはどこへ消えたのか、激しい感情の昂りで顔を赤くし、してやったりと言う恐ろしい笑みを浮かべている。
「よくやってくれた。社交界嫌いの公爵がここに来ただけでなく、まさか協力者まで得られるとはな!」
「これで、大望が叶いますな」
「ああそうだ。あの公爵家を強請る種を手に入れれば、俺は政界や社交界の支配者も同然…いずれは、王国一の大貴族になれる…」
 ああそうか、そう言うことだったのか。私は得心した。この男は元々サロンなど開く気は全く無かったのだ。知名度のある人間、資金力のある実業家、政治に力を持つ政治家…そんな上流階級の人間やその子女を集め、パーティーで正体を失わせ、種となる不祥事を集める。そして、暫くしてまた姿を現して恐喝を行うのだ。
「このことが露見すれば俺もお前も破滅だ。ならば、お互いの利益になることをしようじゃないか…」
 なんと卑劣な男だ。真の名門、貴顕たる世襲貴族に生まれながら、その名を侮辱し、平民を惑わして自身の利益を図ろうとする。こんな男と同じ貴族などと言われることは絶対に嫌だ。
 だが、それでも体は言うことを聞かない。逃げ出すことはおろか、たった一言「下種野郎」とも言ってやれない。あまりの情けなさに涙が流れた。
「ようし、じゃあ薬が切れないうちにことを済ませてしまおうか」
「どうするんです?」
「わかるだろう、ちょっと『刺激的な』映像を撮るだけさ。折角だから、カメラマンもお願いできるかな?」
 刺激的な映像、その言葉に芯から怖気が走る。こんな男に、こんな卑劣な社交界の汚泥を啜って太ったドブネズミに、公爵としての、いや、女性としての尊厳を蹂躙されてしまうとは!
「…!…!」
「おや閣下。大丈夫ですよ、時期にあなたもこれが好きになります。今夜が忘れられなくなって、またここにやってくるでしょう。ようこそ、私のサロンへ…」
 奴は私の上にのしかかり、襟元のシャツに手をかけて開こうとする。もうダメだ、ことが終わる頃には、私はもう私でいられない。
「ステンカ…」
 最後に絞り出したその声は、最後の希望に縋った願いだったのか、それとも彼への謝罪だったのか。今はもう、分からない。私は諦めて、ぎゅっときつく目を閉じた…。
「…おい、伯爵」
「ん?」
「この下種野郎!」
 聞き馴染んだ声が耳を打った。その瞬間、何かが空気を切る音がして、ごん、と固いものが触れ合う音が続いた。
「…!!」
 目を開けると、なんとカメラを構えていたはずの仮面の男が、伯爵の顔面を強かに殴りつけていた!
「がっ…!」
 椅子が大きく揺れる。危うく倒れ込むのではないかというくらいに。
「な、何をする貴様…!」
「こっちのセリフだ!汚い手で公爵に触りやがって!」
 伯爵の激語に対し、更に激しい声を上げてもう一度拳を打つ。立ち上がったところに左頬を殴りつけられた伯爵は、ぐわんと大きくよろめいて、壁側に逃げ出した。
「い、一体、何者だお前は!」
「もう少し早くそれを聞いておくべきだったな。具体的には、今から二時間半ほど前に」
 そう言うと、古臭い男は仮面を脱ぎ捨てた。その下から現れたのは、見間違えるはずも無い、私が名前を呼んだ…
「ステンカ…!」
「もう大丈夫ですよお嬢様」
「お前は…見たことがあるぞ…そうだ!公爵が爵位を継承した時に側にいた…!くそっ、一体どうやってここへ潜り込んだ!?お前の名前は参加者の中に無かった!」
「その記憶力があるなら、貴族名鑑くらい簡単に覚えられたんじゃないか?イェニスタ男爵の紹介状で俺はここに来たが、その時の名前は確か…」
「…!モンティボー伯爵!」
「そうだ。後継だけじゃなく、他の付属称号も覚えておくんだな!」
 なんと、彼は私の持つ一ダース以上の爵位や称号の一つを用いて、実態がないにも関わらずその貴族に成り済ましたのだ。
「クソッタレ…!だが、お前はここから生きて出られないぞ!まだここが敵地だってことを忘れるなよ!」
「よく分かってるが、同じ手口で入り込んだのが俺だけだと一言でも言ったか?」
 彼は手早く長椅子から私を抱き上げる。すると、その途端扉が乱暴に開き、屈強なタキシード姿の男たちが部屋に雪崩れ込んできた。そして、一瞬のうちに伯爵を押さえつける。
「がっ…!」
「彼らは同じ様な手口で忍び込んだ司法官憲の捜査官だ。他の参加者の司法取引と非公表を条件にして紹介状を手に入れたわけだ。…仮面舞踏会でなければ失敗していたかも知れないな」
「ヴィシニョヴィエツキ公爵閣下、モンティボー伯爵閣下、捜査へのご協力ありがとうございます。すぐに病院へ行く救急車を手配致しますので」
「宜しくお願いします。…いいか、よく覚えておけ。『貴族の不始末は貴族でつける』のなら、『当主の戦いを助けるのは家臣の務め』だ」
 私を抱いたまま、ステパンは部屋を出て長い廊下を歩いていく。このまま入り口まで行き、私を病院まで連れていくつもりなのだろう。
「ステ…ンカ…ごめん、なさ…」
「…まだ無理はしないで下さい。お話は病院でゆっくりしますから」
「ん…」
「でも、ご無事で何よりでした。本当に」
 私は彼の胸に体を預け、今度は心からの安らぎの中で、目を閉じた。
 
 その後のことを細々と語る必要はあまり無いだろう。と言うのも、大体が型通りというか、常にある様なことだったから。
 国内屈指の名門であるラ・ベルーガ侯爵家の後継者である、アーデルビュー伯爵が起こしたこの事件は、イェスパッシャン社交界の頽廃と、上流階級の歪んだ結びつきを白日のもとに晒した大スキャンダルとして、国内外に大きく報道された。
 特に司法取引に応じた参加者以外の個人情報は、殆ど余すところなく取り上げられ、毎日の様に著名人の謝罪会見がお茶の間を賑わせた。
 また、その一方で世襲貴族の起こした事件というだけあって、一般市民からの批判は凄まじかった。円卓議会では特にこの点が強く追及され、庶民院では左派政党系の議員が貴族制そのものを強く非難し、貴族院の廃止まで踏み込んだ議論を繰り広げた。
 これを受けて女王と王国政府は異例にも、貴族の誇りと義務を守る様に上諭を出し、囂々たる非難を収めようと努めた。そして、盛られた薬を抜く為に入院し、ようやく家に戻れた私の下に、その余波が降りかかったのだ。
「はいどうぞ、りんご剥けましたよ」
「ありがとうステンカ」
「よおリュリス、元気か?」
「私もいるよ!」
「アンナ、フラン!来てくれたのね」
「来る途中に駅のスタンドで新聞買ったんだけどさ、すげえな、全部例の事件が一面に出てる」
「まあ確かに、凄いニュースになったからね」
「ちなみにリュリスも一面に出てるぞ」
「げっ」
「えっ、あっほんとだ!」
「『貴族の誇りの為に リュリス公、決死の潜入!』だそうですよ」
「やめてぇ…」
 そう、私はあの日以来奇妙なヒーロー扱いをされていた。貴族社会の闇を貴族自身が暴いた、という想像力豊かな記事によって。
 あの事件が最初に報道された時、私は哀れな犠牲者の一人として伝えられた。薬を盛られ、前後不覚に陥って危うく陵辱されかけた少女。このまま報道が続けば、私は詐欺師に騙され、何もかも奪われかけたお馬鹿なピエロのイメージが定着してしまうところだった。
 しかし、私がそんな危険な場所へ飛び込むきっかけとなった人々は、そんなことを許す様な恩知らずではなかったのだ。程なくして、エステバン・イェニスタ男爵が、次女のアデリナ嬢を伴って記者会見を開いた。そこで二人は、私がどうしてあの頽廃と冒涜の宴に潜り込むことになったか、私とステパンがいかに危険な戦いを潜り抜けて、貴族の誇りを守ったかを、自身の名誉も顧みず詳らかに語った。
 国民的スター選手のこの発言は、その家族が一件に巻き込まれたという衝撃と共に忽ちのうちに拡散され、再びセンセーショナルに報道を席巻した。結果、治療の為に入院中で外の情勢をよく知らなかった私は、いつのまにかノブレス・オブリージュの体現者として大いに顕彰される立場になってしまったのだった。
「取材や出演依頼が殺到してますよ、あっちこっちから」
「なんだったかしら、ボーカルの息子が参加してたロックバンドと共演してくれとかそういう話もあったわよね」
「リュリスは弦楽器の達人だからな。ヴァイオリンとギターと、後なんだっけ、バラライカだっけか」
「全然違うわ、バンドゥーラよ。いずれにしても馬鹿らしいわ、地元局ならともかく…」
「その地元ですが、今オルディナツィアだけじゃなくて、ソルターヌィ県全土がお祭り騒ぎらしいですよ。昨日ルブヌィの市長から電話があって、今回の件を町おこしに使っていいか問い合わせが来ました」
「もう好きにしてって連絡しておいて。でも、意地でも私はテレビになんか出ないから」
 なんと騒がしいことか。私への直接取材は、急遽王都に登ってきたステパンの父、イヴァンが上手くシャットアウトしてくれているが、何処からか漏れ出した情報を元にフリージャーナリストたちが、逞しくもユージェニー宮殿の前で写真を撮ろうと待ち構えている。基本的に派手な扱いをされたくない私にとっては居心地悪いことこの上無かった。しかも、明後日には学校の寮に戻らなくてはならない。
「休暇は殆どふいになるし、世間は騒がしいしで、本当に勘弁してほしいわね」
「もう暫く続いてしまうと思います。今の野党にとっては、上流階級のスキャンダルを種に党勢を拡大する好機ですし、一方これ以上派手に叩かれたくないこちら側にとっては、お嬢様を持ち上げて話をすり替えたいでしょうから」
「何を他人事の様な態度をとっているの、ステンカ?それとも、『モンティボー伯爵』閣下とでも呼んだほうがいいかしら」
「勘弁してくださいよ。何しろ、お嬢様を抱き抱えて出てきたところを撮られたんで、俺も追いかけられそうなんですから」
「ざまあみろってとこね」
「あっ!助けてあげたのにそういう言い方をしますか!?」
「でもあの部屋に運んだのはあなたでしょ!?私にトラウマが残ったらどうするつもりだったのかしら」
「うぐ」
 結局、彼が潜り込むきっかけになったことについて、詳しいことは聞けずじまいだ。あの後、アンナが密かに謝ってきたが、多分それだけではない。彼女から情報を聞いたところで、一召使である彼が簡単に潜り込めるほど、貴族の集まりというのはガードが緩いものではないからだ。
 きっと、影に日向にあらゆる手を尽くしたのだろう。私がたった一人で向かった戦いなのに。
「…ねえ、ステンカ」
「なんでしょう」
「私決めたわ。取材を受けることにする、但し手紙形式で。直接質問には答えないし、テレビにも出ない」
「そうですか!じゃあ、そう父さんとアダムズさんに伝えます」
 彼が立ち去っていく背中に向けて、小さく呟いた。
「…その代わり、これからもきっちり私を守ってね。私だけのドン・キホーテ…」

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