架空の世界で創作活動及びロールプレイを楽しむ場所です。

 今から五年前のタアロアと言えば、恐らくは一国の首都の中では最も異質な都市であったろう。この20世紀末の時代ともなれば、どこの街でも街灯が道路を照らし、建物の明かりによって夜であっても手元が見えないと言うことはないはずだが、このタアロアではそんな常識など通用しない。
 夜になると市街は文字通り闇に包まれ、月と満天の星灯りの他に備え付けの光源は無く、夜に出歩かざるを得ない事情のある者は、蝋燭を芯にした提灯や松明を掲げて怯えながら道を行くのである。
 ことが起きたのは7月の初め、日がくれて闇がひたひたと迫り来る時間のことである。
「あぁ、面倒だった」
「お疲れ様です、リリィ様」
 この日リリィとクリスは、都の西の郊外に位置する離宮、クルルヌイ宮殿で行われた議会に出席しており、ひどくその審議が長引いた末にこの夜の帰り道となってしまったのだ。
「長老院って人数が少ないくせに途轍もなく長い。調整もへったくれもあった物じゃないわ」
「まあまあ。お爺様方は頭が硬いと割り切るしかないですよ」
 タアロアは王宮を中心に、大まかに東西南北の町からなる地域区分がされているが、王宮の西南側に位置する「西の町」(事実上は都城の西半分)は、戦乱や疫病によって荒廃して久しく、住む人も無く畑と荒地、廃墟が広がっているだけだった。
 故に夜ともなれば尚のこと暗く、足元さえ満足に見ることが叶わない。クリスはひどく気を使いながら、提灯で獣道に等しい街路を照らしていた。その時、
「リリィ様、止まってください」
「な、なに?」
「今怪しい影が見えました」
 提灯をリリィに預けると、彼は腰に帯びた剣の柄に手を掛けて、ジリジリと前に進む。そして、その影の正体を遂に捉えた。
「ルイズさん…?」
「え、それって…」
 アルセチア大使館三等書記官、ルイズ・マリーニは行き倒れていた。都の西側、家屋一つ無い荒地に挟まれた街路で、アルコールによって赤くなった顔を晒しながら眠りこけていた。

 翌日。待ち侘びていた日の光が、東の海に顔を出した頃。ルイズは、目を開けてすぐに知らない茅葺の天井を見た。そして、冷静に周りを見回し、自分が熱帯木材の床の上に寝かされ、大使館には存在していたはずのクーラーが無く、ひどく蒸し暑い部屋の中に囚われていることを悟った。
「ここは、どこ?」
「お目覚めですか」
「ひゃあぁ!」
 唐突に野太い男の声で話しかけられた彼女は、驚いて飛び上がると、見覚えのあるその姿に安心してため息をついた。
「な、なんだ…クリスさんですか。よかった」
「お食事をお持ちしました」
 クリスは藁束を束ねたような簡素な壁の向こうから大股で部屋に足を踏み入れ、盆に載せた芋や魚、飲み物を彼女の前に置いた。
「その…ここはどこ、私はなんでここに…」
「覚えていないんですか。あなたは昨日の真夜中、西の町の大辻でぶっ倒れてたんですよ」
「へ!?」
「側の水筒にきっついラム酒が入ってました。ダメじゃないですか、あんな飲み方したら」
「お、覚えてない…な、なんでそんなことに…あっ!」
「思い出しましたか」
「お、思い出した。そういえば…」
「…ひとまず事情は、リリィ様の前でお願いします。もうすぐお出でになりますから」
「え、リリィ様もここに?」
「そりゃそうでしょう。だってここ、王宮ですから」
「え、お、王宮!?」
「おはよーう…」
「あ、おはようございますリリィ様。この通りお目覚めに」
「は、はわわわわ…」
「よかった。昨日大変だったんですよ、倒れていたあなたを王宮まで運んで、部屋に入れて処置を…」
「た、大変申し訳ありませんでしたぁぁー!」
「え、ええぇ…」
 文字通り額を擦り付けての土下座をしたルイスを、リリィは困惑の目で見直したのだった。

 それから少しして。ようやく態度が落ち着いたルイズは、さながら知らない檻に入れられたネズミか何かのように、ぶるぶると震えて部屋の隅で縮こまっていた。リリィが躊躇いがちに近づこうとすると、これまた小動物じみた声をあげて更に丸くなろうとする。
「これじゃあ貝と変わりませんよ」
「うーん、まだ警戒されてるというか…」
「ご、ごめんなさい。私如きがこんなご迷惑を…はっ!というかこれ外交問題なのでは、ぴえぇどうしよう…」 
「ルイズさん」
「ひゃ、はい!」
「落ち着いて下さい。ゆっくり、そう、深呼吸…はい、じゃあ改めてお聞きしますけど、なんで道っぱたに倒れてたんですか?」
「じ、実はですね…」
「んー?」
「そ、その日大使館でちょっとしたトラブルがありまして…詳しくは秘密なのでいえないんですけど、それで大使閣下にものすっごく怒られて…」 
「あぁ、だから運ぶ時寝言で、『ごめんなさい、大使さん、こんな出来損ないでごめんなさい』とか言ってたのね…」
「わ、わたわたしそんなことを…!?」
「もっと酷いことも口走ってたわよ。ね?」
「はい。『今すぐ川に飛び込んで死にます』とか、『首を括ればご満足でしょうか』とか。普通酔っ払いって気が大きくなるもんだと思ってましたが」
「う、うぅ…本当にすみません…」
「まあまあ。ラピタじゃ酔っぱらいを拾って自宅に連れ帰るのはよくあることですから。誰だってそういうことはありますよ」
 リリィの不器用な慰めは、多少ルイズの傷ついた心を癒した様で、彼女はうっすらと涙を浮かべながら頭を下げた。
「ごめんなさい。ヤケになって、あんな風にお酒飲まなきゃ…」
「食堂で飲んだの?」
「はい。イッチバン強いのをって頼んだら、あの甘いお酒が出てきて」
「確かにラピタで一番強いときたらラム酒しか無いですもんね」
「『妖怪殺し』をあの水筒くらい一気に食らったら普通死ぬわよ。残りから察して一口二口ならともかく、一気飲みしなかったのは幸運ね」
「ぴぇ…ごめんなさい、ごめんなさい…」
「なんかこの人さっきからごめんなさいしか言ってないですね」
「アルセチア語がわかるの?」
「いいえ。でも大体察しがつきました」
「ほ、本当にごめんなさい…す、すぐに大使館に戻ります。ご迷惑おかけしました。それじゃ、さよなら…」
 慌てて立ち上がり、もつれながら部屋を出て大使館に帰ろうとするルイズ。すると、出し抜けにリリィがそれを声で押しとどめた。
「待ちなさい」
「ぴっ!?」
「リリィ様?」
「…ルイズさん」
「ひゃ、はい!」
「明日と明後日、お休みを取りなさい。それから今日は早退きして、王宮の前で待つこと。時間は…正午でいいかしら」
「な、なななんで…」
「なんででも」
 この時の彼女の笑顔は、有無を言わさぬ迫力があった。歳の上ではルイズの方がずっと上なのだが、それでも何も言えず蛙と化してしまう程に、この時閃いた表情は凄絶であった。

 その日の正午。ルイズ・マリーニの姿は王宮の正門前にあった。落ち着きなく辺りをソワソワと見回し、意味がないとは知りながら腕時計を何度も確認している。顔にはうっすらと冷や汗が浮かび、キョロキョロと見回す目は忙しなく、自信の無さを雄弁に表し、これから何が起こるのかという恐怖に苛まれていた。
 辺りを行き交う人も、この明らかに挙動不審な外国人に対して訝しげな視線を向けている。それすらも針の様に突き刺さると感じる彼女の精神は、間も無く限界に達しようとしていた。その時、
「あら、約束通り来てくれたのね」
「お、王女様ぁ〜」
 王宮の中から、クリスを後ろに連れたリリィがぬっと姿を表した。装いはいつもの通り、裾長て襟付きの白チュニックにズボン、羽織ったマントに刀という様子だが、履物がいつもと異なっている。彼女とクリスが履いていたのは、おそらくは登山に用いるであろうブーツであった。
「そういえば、用意してきたものはある?」
「はい。着替えと、虫除けと、長ズボンと、お菓子…でも、何をしようっていうんです?」
「これからちょっとした旅に出るから。しっかり着いてきてね」
「旅?」
 そう言うと、リリィはスタスタと歩き出した。真っ直ぐ目指すのは、都の南大門である。そして、その向こうには草生い茂る荒野と、こんもりと緑色の木々の山が控えているのが見えた。
「へ、ちょ、ちょっとー!?」
 ラピタ人二人に外国人一人、うちラピタ人は王女とその付き人、と言う奇妙な取り合わせの三人は、都城を出て簡単に整備された街道に入り、東に向けて茫漠たる平野を歩き出した。左の方には曇り空を反射してか、白波立つ灰色の海が広がり、右手の方には遠方に行く筋かの煙を立たせる山々が広がっている。正面の野原は広く見渡す限り叢続く風情であるが、他に集落や村がある様子は見られなかった。
「ここは都から東に伸びて、山を越えてケオプラニの村まで続いてます。途中ニオベで分岐して、プカプカ国の方に」
「…で、私たちはこれからどこに」
「ここから…うーん、まず、皆さんのとこの度量衡で六キロ歩くわ。そうして、あそこに大きく迫り出した山の麓の方に折れ曲がって行くと目的地」
「随分歩くんですね…足が持つかな」
「まあ持つ持つ。ちなみに目的地は山の麓ですけど、途中ちょーっと坂道があるので。気をつけてね」
「リリィ様、蛇に気をつけて下さい」
「へ、蛇!ひゃぁぁぁぁ」
「こらクリス!怖がらせる様なこと言わないの!」
 と、この様な調子で三人は街道を歩き、粗末な橋を渡り、小さな旅を続けた。…といっても、実際のところラピタのインフラは獣道の延長線でしかないほどに悪く、三キロの道のりも文明社会の人間には非常に骨が折れる。その上背の高い叢などで迷えば帰れる保証さえないどころか、妙な虫に刺されて風土病に罹患する恐れもある。それを冒して一体どこに行こうと言うのだろうか。
 都を出ておよそ二時間半。途中休憩を挟みつつ歩き通した三人は、坂道を登り遂に目的に達した。そこは…
「ここは?」
「ようこそ、ポマレ王家の秘蔵離宮。カイルア離宮、又の名を『風上の離宮』へ!」

 カイルア離宮は、都から少し離れた山の麓、木々に覆われた小高い台地の上に位置し、北を見ればどこまでも広がる大海を見渡すことができる。創建者は、今から五十年近く前の話である。
 建物の大きさ自体はリゾート地の大きな別荘に毛が生えた位のものであるが、大きく目を引くのは遠くの海を眺める為に建てられた塔と、壁は白く屋根は赤色に塗られた木造の母屋で、周囲の眺めと建物自体の古めかしさが合わさって独特の風情をたたえていた。
「はわぁ…」 
「古いとこだけど、今でもきちんと管理されてるのよ。よっこいせ」
「リリィ様、その手すり危ないです。木が腐ってるかも」
「ええ!?」
「…あ、あの、ここで一体何を…」
「まあまあ、着いてきて着いてきて」
 ガラガラと重々しい音を立てて扉を開き、リリィに次いで二人は離宮の中に足を踏み入れた。
「ようこそおいで頂きました、王女殿下。クリス殿、それからルイズ殿」
「え、あ、どうも…」
「彼はここの管理人、ヒロ・クアキニさん。実家はコノヒキやキアアイナも務める名門アリイよ」
「いやいやその様な。私など、アリイの分家末節、お情けでカフナの階級に留まっておりますだけで…。それはそうと、この度の急なお出では何事でしょうか」
「そうですリリィ様。結局ここに着くまで、俺にも話してくれませんでしたね」
「ああ、その…実はね」
 彼女は息を吸い、少し恥ずかしげに目線を逸らして、今回の旅の目的を告げた。
「ルイズさんに元気になってもらうついでに、温泉にでも入ろうかなと思って」
「はい?」
「ふぇ?」
「だから、ルイズさんを元気付けて、ついでに私たちも温泉に浸かって日頃の疲れを癒したいなとそう言う話よ」
「あの、リリィ様。それ説明になってない気がむぐっ」
 クリスの口をかなり強引に塞ぎ、リリィは耳元で囁いた。
「いいことクリス。この子の危うさって何となく分かるでしょ?このまんま放置してたら本当に死にかねないわ。そんなことになったら王国の威信にかかわるでしょ。おーけー?」
「ふ、むぐむぐ」
 結構、と言いたげに手を離して彼女はルイズに向き直り、打って変わって優しげな声で語りかけた。
「とま、辛そうなルイズさんを元気付けたいと思って、急遽今回こういう形の旅を考案したの。どうか楽しんでいってもらえればと」
「え、あ、えと、その…あの…」
「ど、どうかしたの?」
「い、いえ、その…こんな、優しくしてもらったことないので、し、失礼とはわかってるんですけど…その」
「何か裏があるんじゃないか、って?」
 ぎくり、と体を震わせ、ルイズは表情を硬らせた。そして、その通りだと躊躇いがちに首を縦に振る。しかし、そんな態度を取られてもリリィは気にする様子もなく、笑って返した。
「買収するのなら、もっといい人を選ぶわ。それこそ大使様とかね。今日は純粋に、貴女に楽しんでもらいたくて連れてきたのよ?偶には良いじゃない、こういう変わったお休みも」
「で、でも、なんでそんな、会ったばかりの私に…」
「ラピタでは、一々相手をよく知らなきゃとか、そういうことは考えないの。困ってる人がいたら、素直に手を差し伸べてあげなさい、がポマレ大王の教えだもの。クアキニさん、ルイズさんをお部屋に案内してあげて」
「はい、かしこまりました」
 困惑治らないルイズが部屋に案内された後、彼女はクリスに向き直り、真面目な声音で話した。
「いい、クリス。ただルイズさんを励ましたり、空元気を出させるだけじゃダメ。あの人が本心から自分を許して、愛せる様にしなきゃ」
「たかだか二日でそんなことは出来ませんよ」
「それでもやらなきゃダメ。王国の威信を守る為なの」
「…ほんとに、リリィ様はこうと決めたら一直線なんですから」
「そうよ、クリス。あなたが一番知ってる通り、ね?」
 部屋に案内されたルイズは、ここまで自身を連れてきた老従僕に対し、問いかけた。
「ヒロさん」
「何でしょう」
「王女殿下は、いつもあの様な振る舞いをなさるのですか?」
「と言いますと」
「その、見ず知らずの人を助けたり、とか…」
「ふむ…確かに。ご奇特な方ではありましょうな。常識の方にはまらず、実に奔放なことをなさる」
「やっぱり…」
「このラピタ島の近くの海に、ムルロア島という島があります。これは土地は痩せていて水が無く、アホウドリの糞が肥料になるほかは全く見るところない無人島ですが…あろう事かリリィ様はそれをご覧になりたいとお考えになり、船を出して向かわれたのですよ。『私の領地を私が見ずにどうするのか』とね」
「そ、それはなんとも…」
「『ムルロア王女』、という称号が形式でなく実体あるものとお捉えになったのはあの方が百年ぶりくらいでしょう…おっと、失礼。脱線してしまいましたな。…とにかくあの方は奔放で、いつも自分の思う通りにことを運ばれます。人助けにしても、政治にしても。ところが、神様のお導きか、あの方のなさることがラピタの害になったことは一度もございません。ですから皆、心から信頼しております」
「………」
 それから少し後のこと。荷物を広げ終えて、適当に部屋で寛いでいたルイズだったが、そういえばここのトイレとかの場所を聞いていなかった、と思い出して、所有者達を探すためにエントランスに降りてきた。その時、階段の下から、ひどく驚いた声が彼女の耳元に届いた。
「な、嘘でしょう…」
「申し訳ございません!なにぶん急なご来訪でしたから…」
「どうかしたんですか!?」
 慌てて駆けつけてみると、リリィは普段の態度からは予想できないほど弱々しく、顔色も悪くなっていた。
「いや、ちょっと、痛恨のミスをしてしまって」
「痛恨の…」
「実はリリィ様が唐突にいらしたものですから、お食事に使う食材が足りないんです」
 代わってクリスが簡潔に事情を説明した。視線の先では、料理長と思しき人間が恐縮して必死で頭を下げている。
「わ、わたしが来てしまったから…」
「いやいや、そんなわけないでしょう。というより…リリィ様のフットワークがあまりに軽いので忘れがちですけど、普通王族の御成りは一月前くらいから慎重に調整して、神官が吉凶を占い、それを基にして護衛や付き人を何十人も連れていくものなんです。なのに…」
「むぅ。あなたに言われると無性に腹が立つ。ちょっとツラ貸しなさい」
「いだだだだ!つねらないで下さいってば!」
「ふぅ…まぁ、こうなってしまったものは仕方ない。だから…」
「か、帰るんですか?」
「いいえ」
「じゃあどうするんです?」
「クリス。釣竿とスコップ、あと作業手袋を持ってきなさい。森へ行くわよ」
「…そうなると思ってました」
 と、この様な次第で、三人は予期せぬ食糧調達の難題を抱え込んだのだった。

 さて、三人は動きやすい服装に着替えると、離宮を出て裏手の山に向かった。装備はスコップに釣竿、木々の枝や下草を斬り払うための山刀、そして有事に備えてのライフルである。…といっても、ラピタ島の森には人間を害する様な肉食性の大型動物はおらず、植物と小動物を食べる「恐鳥類」がいるくらいだ。つまるところ、クリスが敢えてこれを持っていくことを主張したのは、同族からの襲撃に備えてのことだった。
 三人は森の中を行く危険を避け、ある程度道が開かれた山間の街道をまず進み、木の実や野草の採集を狙った。
「この先に渓流があって、色んな魚が釣れるから、そこを見てみましょう。あと、山奥は高地の人々の縄張りだから、下手に入らないこと。いいわね」
「はーい」
「あの…高地の人々って何ですか」
「ああ、低地や海辺、山の浅いところに住む我々に対して、山の奥深くや険しい高地に住む人々を指して高地の人々と言うんです。同じ国民ですが、実のところ言葉や文化は大きく異なっていて、長いこと我々との争いが続いていました」
「へ、へぇ〜…」
「まあ、仮にもここは国王陛下のお膝元なので、襲撃なんかはないと思いますが…」
「ぴ、ぴぇ!」
「こらクリス。そう怖がらせること言わない。というか、そもそもラピタ島自体七割山じゃない。低地高地の括りなんてあってない様なものでしょうが」
「失礼しました」
「さてさて…あ、あった。クリス、手伝って」
「了解しました」
「なんです?これ」
「そちらの言葉で言うと、パンノキです。焼くとパンに似た食感があるそうで…うんしょっとと」
「ちょっと、ふらつかないでよ?」
 肩車されたリリィは、木になっている実を短剣で切り取って下に落とす。ルイズは慌ててそれに駆け寄って拾い集め、袋に詰めた。
「この辺りに群生してるみたいだから、甘い果物と合わせて探してみて」
「は、はい!わかりました」
 この辺りの森はどうやらなかなか実り多い森の様で、すぐに皮袋はパンノミと果実で一杯になった。元々離宮に蓄えられていた芋類と合わせれば主食や副菜としては十分だろう。
「ぴぃ!」
「どうかしましたか!」
「い、いや、その…足跡が…」
「ん…あぁ、恐鳥ですねこれは」
「恐鳥?」
「大体2メートルかそのくらい、まあ人の男より少し大きいくらいの飛べない鳥です。人は基本的には襲いませんから、遭遇しても、静かにゆっくり下がれば大丈夫です」
「そ、そんなのがこの森に…」
 却って怖がらせてしまったかな。クリスは頭を掻いた。二十歳になったはいいものの、人の扱いというのはなかなかうまくいかないものだ。彼はそう思いつつ、震えるルイズの手を引いて、既に別の場所に向かいつつあるリリィを追いかけた。
「とうちゃーく。ここで渓流釣りをするわ」
「わ…滝が…」
 彼女が案内したのは、森の中で地形が段差になり、小さな滝と滝壺、そしてそこから小川が流れ出す場所だった。サラサラと流れる水は手を切るほどに冷たく、遠い山々の頂を彷彿とさせる。
「ここは大河の支流で、水が比較的冷えてるところです。こう言うところに面白い魚がいるんですよ」
「クリス。それ私の受け売りでしょ?」
 くすくす笑いながら彼女は手早く釣り針に餌をつけ、見事な手並みで竿を垂れた。ちなみに餌はその辺で捕まえてきた「いきの良い」ミミズやトビゲラなどの虫であり、適当に土を掘って飛び出てきたものをさっと掬って針に刺し、そのまま水に叩き込むという中々の乱雑さである。
 先住民の二人は昔からこの手のことに慣れていて、多少虫が苦手なクリスでさえも上手い手並みで針を刺して川に放り込んでいく。しかし、文明圏の便利な釣りしか知らないルイズにとってはそうはいかない。
「あ、う、ひゃあ!動いた!」
「そりゃ動きますよ。生きてるんだもの」
「きゃぁぁぁ!気持ち悪いぃ!」
「クリス」
「はい。ちょっと失礼しますね。よっこいしょ。はい、後は竿を振るだけです」
「あ、ありがとうございます…やっぱり私ダメダメだ…釣りも満足にできなくて、あぁ、でも私は釣りに釣られる側か…」
「なんかどんよりしてますけど大丈夫ですか」
「『釣り』と言う言葉に引っかかった可能性があるわね…」
 なお、意外なことにルイズは釣りにはそれなりの手並みがあった様で、次々と魚を引っ掛けて上手く釣り上げた。リールの無い原始的な釣りにも早くも順応し、糸を垂らした端から魚をポンポンと吊り上げ、それにはリリィも舌を巻いた。…尤も、釣り上げるたびに新しい餌をつけねばならないので、駆り出されるクリスは不満顔であったが。
 …ひとまず釣りでも満足する成果を得られた三人は、手に入れた食材を持って離宮へと凱旋した。時間は既に夕方に差し掛かっており、間も無く夜が来ようかと言う時間である。
「すぐにお夕食になさいますか」
「そうして頂戴。あと、温泉の支度もしておいて」
「分かりました。お夕食の後にすぐ入れる様にしておきます」
「ルイズさん」
「ぴ!」
「どうだった?多分向こうじゃそうできない経験だったと思うけど」
「…あの、えと、その…結構、楽しかった、です」
「それは良かった。少し休んだら食事にしましょう。私も少し休むから。お疲れ様」
「ひゃ、はい!」
 彼女が早足で去っていくのを、リリィとクリスは思わしげに見送った。
「少しは角が取れたかしら」
「どうでしょう。柔らかく見えても、中の芯は案外取れないことが多いですから。イカみたいに」
「例えとしてそれは適切なのかしら…?」

 程なくして、厨房から食事ができた旨報告があったので、クリスはルイズの部屋まで行き、それを告げた。
「マリーニさん。お食事の用意ができました」
「はい!す、すぐに行きます!」
「…大丈夫です?」
「な、何がでしょう!?」
「いえ、その…」
 彼女は痛々しいほどに緊張していた。動きはぎこちなくかくついて、フィールドワークが理由ではない冷や汗を額に浮かべ、全くもって心も体も休まっていないことが読み取れた。
「ひとまず食堂までご案内します」
「あ、あにょ!」
「はい」
「ど、ドレスコードは…」
「…ラピタでは全裸以外大体セーフです」
「よかった…」
 食堂は広いが調度品は全体的に質素で、照明も小さい為どこか薄暗い。しかし、テーブルはしっかりと照らされていて手元を誤る心配はなかった。
「来たわね二人とも」
「リリィ様、お連れしました」
「遅れてしまい申し訳ありませんですはい」
「まあまあ、気にしないで。さあ、食事にしましょう。メニューはラピタの伝統をそのまま踏襲した料理よ」
「というと…あの宴みたいなやつですか!?」
「流石にそんな豪華な物は出せないけど。スープと魚と芋と…後野菜とかかしら」
「スープ…この白い色と香り、見覚えが…」
「まま、そういうわけで。頂きまーす!」
 ルイズは恐る恐る、木のスプーンで謎のスープを掬って飲んだ。すると…
「豚骨スープだ!」
「正解。前の宴で丸焼きにした豚の骨を、脂とか他の魚や食材とひたすら煮込むスープ。いわゆる『ごった煮』というやつね」
「宴の後はこれって感じですけど、何で豚骨がここに?」
「国家機密」
「美味しい…おいひい…優しい味うっ!」
「何か?」
「い、いえ、その…これ、イワシの頭…」
「ああ、まあごった煮ですから。イワシの頭とかカエルの肉とか色々とあるでしょうね。前にマグロの尻尾が入ってた時はびっくりしましたが」
「食材というか、使い所のない物を無理くり煮込んだ感じの」
 ケラケラと二人は笑うが、彼女の方は気が気でない。この白いスープの中に何が沈んでいるのだろうか、という恐怖心が食欲を凌駕してしまったのだ。
「まあ、スープは適当に。メインは私たちが集めてきた食材だから」
「川魚の塩焼き美味しいですね…」
「はい、じゃあ、いただきます…」
 少しの間、三人は無言で食事を続けた。それぞれ前に置かれた料理を口に運び、もぐもぐと噛んで飲み下す。時折用意されたヤシ酒で喉を潤してまた食事に。それが少し続いた頃、クリスはあることに気が付き、視線でリリィに合図を送った。それを受け取って、彼女は、
「ルイズさん」
「は、はい!」
「あまり食事が進んでいないみたいだけど、口に合わなかった?」
「い、いえ、その…」
「?」
「マナーを間違っていないかなと…」
「マナー…あぁ、お作法のことね。気にすることは無いわ。別に晩餐会でもないし…」
「い、いやでも、王女様の前で失礼があったら…」
「いいの。私だって適当に食べてるし。ね?」
「リリィ様に宮中作法を教える先生は全部で四人変わりましたね」
「嘘言わないで。五人よ」
「……」
「…大丈夫?」
「いえ。ただ、その…怖くて」
「怖い?」
「はい。知らず知らずのうちに失礼とか、嫌がることをしてしまったりして、嫌われたりするのが怖いんです。私、昔から、そういう無神経なところがあって…」
「…まあ、仕方ないんじゃない。そういうこともあるわ」
「リリィ様!」
「しかた、ない?」
「だって、世の中そんな物でしょ?自分がどれだけ上手く賢くやったって、どうしたって妬み嫉みも湧いてくるし、なにが逆鱗に触れるかだってわからないもの。気をつけるのはいいけど、気にしすぎはー」
 しかし、彼女は気がついていなかった。その発言自体が、まさしく相手の逆鱗を断ち割りかねない、危険な発言であったことに。
 がたん、と大きな音を立ててルイズは勢いよく立ち上がった。そして、奔騰する感情のままに叫んだ。
「一緒にしないで!」
「…!?」
「貴女みたいな、生まれも育ちも良くて、みんなから慕われて愛されてる人なんかと一緒にしないで!こんな、平和で素朴な小さな国と、私たちの国を一緒にしないで!聡明で快活で、思いのままに生きられる貴女と、何も出来なくて、何も分からない私を、一緒にしないでよ!」
 はぁはぁと肩で息をして、周りを見回したルイズは、目の前の二人の驚いた表情を見て、ようやく自分が何をしてしまったか理解した。そして、切れ切れに謝罪の言葉を呟くと、文字通り食堂から駆け足で逃げ出し、薄暗い闇の中に消えてしまった。
「クリス!」
「はい!」
 慌ててクリスが追いかける。そして、一人になった食堂で、リリィは悔しげに唇を噛み、拳をテーブルに叩きつけた。

 それから少し後。ルイズの姿は、一人温泉にあった。彼女は、岩の上に置かれた幾つかの蝋燭の他に明かりの無い露天風呂の中に体を沈め、時折森から響く生き物の声と、お湯が口から注がれる音だけを聞きながら、傷心と後悔を癒そうとしていた。
 本当は離宮そのものから逃げ出し、荒野を彷徨ってどこかあてもなく歩いた末に、消え失せてしまいたかった。しかし、そうしなかったのはー
「クアキニさんから聞いたわ。ここに居るって」
「!?」
 振り返ると、そこにはタオルを持って、温泉に浸かる為に長い髪の毛を束ね上げたリリィがいた。明かりの少ない夜の闇に、この国にはそぐわない真っ白で華奢な肢体が浮かび上がった。その姿は、未だ幼さを濃く残す十代の少女のそれだったが、それでもルイズは一瞬目を奪われた。
「王女様…!」
「ごめんなさい。無責任なことを言ってしまって」
 リリィは軽く体を流すと、浴槽に足を踏み入れて彼女の隣に身を沈めた。その表情は同じ様に、後悔と傷心で満ちていた。
「…ただ、励まそうと思っていただけじゃないの。何も考えずに、貴女が見た目だけ元気になればいいとしか思ってなかったわけじゃない。でも…」
「分かっています。貴女と、クリスさんが一生懸命私に寄り添おうとしてくれたこと…なのに、それをぶち壊して…ほんとに、顔向けできません」
 泣きそうな声で彼女は言った。俯いて、涙を見せまいとしても、熱いものが瞳を満たし視界をぼやけさせる。
「…実はね、ルイズさん。私は、貴女が言ってくれた様な、よく出来た聡明な人じゃないの。ほんとの私は、頑固で、わがままで、意地っ張り。大事な務めも、何もかも放り出して逃げたことだって何度もある。そんな人なの」
「そんなわけ…」
「疑うのなら、後でクリスに聞いてみて。彼は、私が赤ちゃんの時から側に居てくれて、どんな時も一緒で、私の裏も表も全部知ってるから」
「……」
「…話がそれちゃったわね。…宴で会ったあと、ふと気になって、貴女のことを少し調べた。ルイズ・マリーニ三等書記官。大学を出たあと、公務員登用試験で最優秀、表彰だって何度も受けてる。将来の特命全権大使候補だって」
「やめて下さい。私、そんなのに相応しい人間じゃないんです」
「でも、私が一番興味を惹かれたのは、貴女の経歴でも、才能でもない。…貴女の持ってる、そのひたむきさと優しさよ」
「そんな…」
「貴女の同僚が言っていた。『ルイズはいつも周りを見ている。誰かが困っていたら、必ず手を差し伸べるし、自分の仕事じゃなくても、一番の結果を出そうとするんだ』って」
「それは、私は何も特異なことが出来ないからで」
「…多分、それは違うのよ。きっと、私ならそんなことできないもの。私は私の仕事しかしない、周りの人は私に付いてきて当然、心のどこかでそう思ってる。クリスに対してだって、そうだから」
「………」
「貴女は違う。周りの目線を気にするのは、自分のことで誰かが苦しまないでほしいという優しさ、自分に自信が無いのは、もっと高みへ登りたいというひたむきさの裏返し。それは、私には無いもの…」
「……」
「それに、貴女が脱衣所に残していった、あの小さなブレスレット。多分、故国の神殿のものでしょう?」
「…神様だけ、神様だけわかってもらえたらって…」
「愛する者にも一途。…私に無いものばかり、貴女が持っているものは、私だって手の届かないもの」
「違います、私はそんな、高尚な存在じゃない…!怖がりで、能無しで、迷惑ばっかりの、そんな存在なのに…」
「違うわ。優しくて、ひたむきで、一途な…そう、ちょっぴりだけ狡賢さとわがままが足りない人。私はそう思ってる」
「……」
 沈黙の帷が降りる。ルイズは、泣いていた。涙を零して、何度も目元を拭う。しかし、それは止まってはくれない。今までの様に逃げてきた時に流す涙ではなかった。今までの様に、辛い時に流す涙ではなかった。その時彼女は初めて、涙の温度を知った。
「…確かに、大国アルセチアに比べたら、私はずっと世間知らず。私やクリスの知る世間よりも、ずっと大きな世間を貴女は知ってきた。どれだけ人間が醜くて、どれだけ冷たいか。私達の知らないことをたくさん知っている…でもね」
「……」
「人間がどれだけ素晴らしくて、どれだけ温かいか。あらゆる人が、その中にどれだけの強さと、偉大さを秘めているか。それは、どんなに狭い世間でも分かるの。例えそれが、二人きりの…掌に載るくらいの、小さな場所でも…」
「リリィ様…」
「…烏滸がましいかもしれないけど、でも、自信を持って言うわ。…ルイズさん、貴女の中にある力を、私は知っている。貴女の中の偉大さを、私は知っている。だから、今度は…貴女自身が、それを知って欲しい…」
「…はい、はいっ…!」

 その頃。クリスは脱衣所の扉の前で聞き耳を立てていた。そして、中の話が上手く落着したことを悟って、小さく安心の息をついた。
「クアキニさん、もしかしてこうなることがわかってたのかな?」
 その頭の中には、最初に案内してくれた老従僕の顔がある。逃げ出そうとするルイズを温泉に案内したのも、彼であった。
「どうぞ落ち着きなさいませ。…一度、体を温めてからここをお発ちになっても、遅くはありますまい」
 逃げようとする人を落ち着かせて、ここに留まらせる。一体どんな話をしたのだろう。
「…いや、考えるだけ野暮か。何しろ、五十年の開きがあるものな…」
 今の自分達にはわからない。ただ、自分達はそれをじきに知ることになる。クリスにとっては、今のところそれで十分だった。戻るか、そう考えて歩き出した時、
「きゃぁぁぁぁぁ!」
 絹を裂くような悲鳴が響いた。一瞬で彼の脳は安息から警戒、警戒から戦闘へと切り替わり、腰に下げていた山刀に手をかけつつ、浴場へと飛び込んだ。
「リリィ様!」
 その時彼が見たのは、浴場の隅で怯えるルイズと、彼女を庇う様に前に陣取るリリィ、そして、その向こうの森から大きな嘴を出した影…
「恐鳥か!」
 大きさは二メートルを超えるだろうか、ギョロついた目は前で震えるか弱い人間を捕らえて離さず、羽毛に覆われた羽根をブルリと振るわせ、今にも鋭い鉤爪を前に出して中に入り込もうとしている。木の実や小動物を餌としているが、その体躯に勝ちうる生き物はラピタ島には存在せず、仮に襲われれば人間など簡単にズタズタに引き裂かれてしまう。
 そして、彼らはこの世界における一族最後の生き残りである。四足歩行の大型哺乳類に駆逐され、同胞達が姿を消していく中、彼らだけが絶海の孤島であるこのラピタで生き残った。強い海流によって泳ぎ来る哺乳類から守られ、やって来た人間さえも容易く蹴散らし、遂に神の使いや神そのものと崇められるに至った。文明世界の住人であるルイズにとって、この生き物はとっくに絶滅したはずの、過去の亡霊に他ならない。
「(クソ、拳銃を持っておくべきだった!)」
 クリスは己の選択を心から恨んだが、それはそれとして今をなんとかしなくてはならない。彼は一瞬鳥の注目が自分に向いたことを利用して、風呂に足を踏み入れ、水音を立てながら二人の前に立ち塞がると、刀の柄に手をかけて相手を睨み据えた。そして、足の動きで、
「隙を見て逃げろ」
 とリリィとルイズに伝える。そして、緊張を孕んだ睨み合いが数分続いた。一秒が永遠と思われる程の恐怖、それに三人は打ち克った。
 睨み合いの末、一声鳴き声を上げて恐鳥は森の奥へと消えて行った。元より彼らは大型の生き物を狩ろうとはしない。同じ位置に目線を持つ人間と睨み合えば、大体向こうが退く。尤も、如何に理解していようとも上手くいかないのが人間なのだが。
「ありがとう、クリス」
「ありがとうございます…」
「立てますか。リリィ様、ルイズさ…ん…」
 そういえば、ここは何処だったか。彼は今更それを思い出した。そして、今しがた手を貸して立たせた目の前の人物は…
「…クリス」
「ひっ」
 ある意味で、彼女は恐鳥よりも恐ろしい生き物だったかもしれない。一秒後、過去最高に痛烈な一撃を浴びて、勇者は温泉の中に昏倒してしまった。

 「リリィ様、そろそろ許してくださいよ」
「嫌だ」
「どうしてですか?」
「裸見た。あなた、いやらしい妄想してる。許せない」
「してませんしなんでカタコトなんですか。というか、今更リリィ様をそんな目でいだだだだた!」
「それはそれでイライラするわ!」
 翌日。朝早く三人は離宮を出て、都への帰り道を歩いていたが、案内を担当する二人はルイズを蚊帳の外にして、絶賛喧嘩の最中であった。
「というか、リリィ様見ず知らずの人とか、男の人と混浴するのに躊躇いは無いのに、なんで俺だけダメなんですか」
「…なんか嫌なの。私の魂が嫌だと言ってる」
「そんなに俺のことが嫌いですか。…分かりました。もう、辞表を出してきます」
「え、あ、いや、違っ…そういうわけじゃっ…」
「クリスさん」
「ルイズさん、どうかしたんですか?」
「王女様は、クリスさんのことを嫌ってなんかいませんよ。昨日助けてくれたことも感謝してますし、それに…」
「あ、や、その、そういう意味じゃないから!違うから!」
「でも、私には分かりますよ。王女様がどう思っているか。ですから今度は…王女様自身がそれを知らなきゃ、ですよね?」
 クリスとルイズは笑った。心の底から、二人は明るく笑い声を上げた。そして、この場で一番の賢者であるはずの少女は、恥ずかしげに顔を赤くすることしかできなかったのである。

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