なぜないのか疑問だった

バインド小ネタ


「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」
 彼女の攻撃に小太りの冒険者が絶叫、凄まじい勢いで脱糞する。
 彼女の攻撃は、ダメージを与えると同時に変換の効果を
持つ。故に、俗に指定多色と呼称される、“特定の属性を揃えて攻撃することで倍率を出す”リーダーに対して高い効果を持つ。なにせ、指定色を消されてしまえば倍率が出ないのだから。それでも尻を汚した冒険者が必死に抗う。指定色以外の変換を待つ耐久戦のつもりらしい。と、落ちコンで指定色が揃う。
「よし、やったナリ! さぁ死ぬナリ!」
 強烈な倍率だが死ぬわけ無いだろ、と彼女は思う。様々な属性が揃っていようと、染めパの染め色が1コンボで倒せるわけがない。だが、体力が半分を切る程度の威力はあった。
 その事実に、彼女の次の行動が決まる。
「な、な、な、何をするナリ!?」
 冒険者のフレンドを縛りあげる。冒険者達はバインドと呼ぶ状態だ。体力が50%を切った彼女の報復である。
「こ、こんなんじゃ十全な倍率が出せないナリ……!」
 冒険者が再び耐久を始めるが、彼女に許す気はなかった。
「や、辞めるナリ! 回復消したりしたら……! あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」
 彼女が追撃すると小太りの冒険者の従者は倒れ、彼は汚い脱糞音を撒き散らした。彼女の勝利だった。
 勝利の余韻に浸る間もなく次の冒険者が現れる。次の冒険者は小太りの冒険者を蹴飛ばして隅へ追いやり、彼女に正対する。今一度戦いが始まった。
「(今日は妙に来客が多いなぁ……なんでかな?)」
 小さな疑問を胸に抱きながらも、敵を倒さんと傾注する。今回の敵はどうやらタイプ染めのptで、全ての能力に補正を掛けているようだ。だが、彼女のやることは変わらない。変換攻撃と通常攻撃。そしてある程度削られたらバインドを掛ける。それだけだ。

 殴り合ううちに、彼女の体力が半分を切った。バインド地獄の時間だ。
「えいっ!」
 彼女の気合に応じ、バインドが発動、したはずだった。
「……嘘、なんで……?」
 だが、敵のフレンドである偉丈夫は何らかの影響を受けた様子は無かった。
「も、もう一回! えいっ! えいっ!」
 彼女が何度もバインドを仕掛けるが、それは全て無駄な努力だった。彼女の努力を嘲笑うかのように冒険者は闇のドロップを溜め込み、よりにもよって火のドロップで攻撃してきた。彼女の属性で半減されるとはいえ、それでも僅かずつ身が焼け爛れていく。
「あ……」
 幾度となくバインドを仕掛けた彼女の耳に、冒険者の間抜けな声が唐突に届く。ドロップを見ると、闇のドロップが3つ繋がって落ちる様が視界に入った。冒険者の従者達が各々構え、一斉に襲いかかってきた。
“私、また殺されるんだ……”
 今まで何度も繰り返された激痛の記憶が蘇る。そのたびに蘇り、そして大半の場合、また殺されて。その経験がまた一度……。

 そこまで紡ぎ、彼女の思考は死の闇に塗り潰された。



 彼女は知らない。後日、彼女を屠った冒険者が「完全バインド耐性持ちのフレンドを選んで嵐海龍が50%切ると愉快なことになるぞ」と、フレンドとの会話のネタにしていたことを。

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