なぜないのか疑問だった

やわらかスマホ


 驚きの白さ。そう表現すると洗剤のCMのようだが、そうではない。むしろ、そうであって欲しかった。
「木曜に貯めたフラワーも、月曜と金曜必死に集めたアメリットも弾切れ。それはそうだ、1タリナイなら10もあれば足りると思うからそれだけしか集めなかったんだからな……」
 それは一切の表情と血の気が失せた冒険者の蒼白な顔。口から放たれたその言葉には深い虚無感が滲む。
 そもそもの原因は冒険者の従えるモンスター、パンドラにある。彼女のスキル上げを行ったのだが、1タリナイでスキル上げ素材の進化素材が尽きてしまったのだ。受けた精神的衝撃の重さに覚束ない足取りとなった冒険者を心配する声が従者から上がったが、それを無視して自室へ戻って寝台に倒れ込んだ。
「ホント、勘弁してくれよ……」
 実際のところ、パンドラを育成する必要はないのだ。手持ちの闇の弱さからしてサブとしてもリーダーとしても使えない、というのが実情だ。それでも、闇が充実した時に備えて育成しておきたかった。
「後半に降臨十倍読みで前半にチャレンジをスルーしたのが響いてきたな」
 読み通りに降臨十倍は来たが、スキル上げ三倍というイベントにパンドラのスキル上げを優先させた結果がこのザマだった。自嘲の笑みが冒険者に浮かぶ。
「……もう、パンドラは諦めて取れるところから取っていこう」
 そう結論付けて冒険者は思考を放棄。目を閉じてゆっくりと眠りに落ちていった。



 体が揺さぶられ、冒険者が微睡みから目覚める。色濃い疲労は全くと言っていいほどに取れていない。目の焦点が合う。淡い金の長髪に流血を思わせる淀んだ紅の瞳。……脳が動作し、漸く相手を認識。
「……パンドラ? 悪いが放っておいてくれないか」
 それだけ言って布団を被る。スキル上げとは単なる確率論というのが持論である冒険者からすればパンドラに非は無いのは分かっている。だが、よりにもよって今イチタリナイ状態のパンドラを見るのは流石に辛かった。
 だが、対するパンドラが布団を引き剥がそうとする。冒険者も抵抗するが、如何にパンドラがか弱い少女の姿をしていようと相手はモンスターである。抵抗虚しく布団は没収された。
「ご主人様、期待を裏切った悪いものにはお仕置きが必要ではありませんか……? ご主人様が十も用意すればスキルマになると踏まれたのに、私はスルーしたのですよ」
「別にそんなことする気は……」
 そこで、パンドラの格好が目に入る。黒と紫を基調としたドレスの様な豪奢なそれは肌蹴られ、真っ白な素肌が目立つ劣情を誘う姿をしていた。
「おま、服をちゃんと着ろっ!?」
「ふふふふ……何で?」
 狂気を孕んだ笑みに冒険者が恐怖を覚える。
「私の事、もう滅茶苦茶にお仕置きレイプするべきです。でないと、明日も同じことを繰り返しますよ……?」
「い、いや、止せ、お前はもう諦めたから……」
 完全に据わったパンドラの目に今更ながらも危機感を覚える。じりじりと冒険者は後退るが、同じだけパンドラが距離を詰める。結局、直ぐに部屋の隅に追い詰められた。
 脇から逃げようとするがパンドラのタックルを受けて二人で縺れて倒れ込む。引き剥がそうとする冒険者の抵抗を嘲笑うようにパンドラがマウントを取って冒険者の唇を狙うが首を振って回避。するとパンドラに頭を掴まれ強引に唇を奪われた。挙句舌まで入れられ、流し込まれたパンドラの唾液を飲んでしまう。身体の内側から冒されていく感覚に、屈辱感と同時に奇妙な興奮を覚えた。好き放題に口付けしたパンドラが陶然とした表情で唇を離した。……が、その表情が翳る。
「……勃ちませんね」
「そもそもお前から迫るならお仕置きレイプ云々じゃなくて和姦の間違いだろ、これ。スキル上がらない無能になんでご褒美上げなきゃいけないんだよ」
「いえ、やっぱりらぶらぶえっちじゃなくてお仕置きレイプですよ、私が抵抗しても無理矢理抑えつけて滅茶苦茶に突かれ、危険日なのに中出しされ、それで終わったと思ったらまだ足りないと言わんばかりに犯されて……」
 自分の言葉に興奮したのか、パンドラが己を掻き抱いて身震いする。誰がするか、そんなこと。口には出さないが、冒険者の意思は固い。というか、和姦を勝手にらぶらぶえっちと言い換えるなと声を大にして言いたい。


「無理矢理抑えつけてるのはお前だろ」
「ふふ、今は変に意地を張ってるご主人様もすぐに正直になれますよ」
 パンドラが衣嚢から白いハンカチと茶色の小瓶を取り出して小瓶を開け、ハンカチにとんとんと中身を押し付ける。状況と発言からして危ない薬物としか考えられない。
「お前、それ明らかに薬物だろ!? 自分を磨いて振り向かせる努力もしないで安直な手段に頼ろうなんて恥知らずに過ぎ……」
「大丈夫、そんなことは直ぐにどうでも良くなりますから」
 冒険者の言葉を遮って、パンドラはハンカチを押し当てた。
「う、うもう」
 そのせいでハンカチに染み込んだどこか苦い臭いをしっかりと吸ってしまう。自覚症状は心拍数の増加、陰茎の勃起、頭痛あたりか。パンドラは更に口の中にハンカチを押し込んだ。
 思考が冒され、綻んで行くのが自覚出来る。痛いくらいに勃起し、今すぐにでも出したい。肉の穴に自らをぶち込んで好き放題に突いて種付けしたい。どんな女、いやもう可愛ければ男でも……

 穴ならあるじゃないか、目の前に。

 パンドラの襟首を掴んで引き倒す。
「きゃっ!?」
 存外可愛らしい悲鳴を上げるパンドラに先ほどまでとは逆に覆い被さって小さな唇を己の唇で塞ぐ。舌を差し入れてパンドラの口内に唾液を注ぎ込んで身体の内側から自分で染めていく。血色の悪いパンドラの顔は紅潮するとそれがよく目立った。はだけた服の胸元から手を入れ、乳房を掴む。小柄な体躯相応に小ぶりながらもハリのある胸が指を押し返す。揉みしだくと甘い声がパンドラの喉奥から放たれ、冒険者に呑まれて音となる前に消える。
 衝動のままに冒険者がパンドラのスカートを捲り上げる。そこにショーツは無く、どうしようもなく蜜を湛えた牝の器官が剥き出しになった。自分から犯されにくるだけあって、大した奴だと意味不明の感心をする。何にせよ、脱がせる事さえ億劫なので都合が良い。
「準備は万端か、好色に過ぎるな」
 丁度目に入った充血した陰核をおもむろに抓る。
「い゛ひゃ゛ああぁ!?」
 痛みに叫ぶ声に嗜虐心がそそられる。もっと、もっとパンドラを苦しめたい。激痛で、悲嘆で、絶望でその整った顔を歪めたい。そして失意の底に叩き込んで犯してやりたい。
「何がお仕置きだ、大して何もしてないうちからこんなに濡らして。やっぱりご褒美じゃないか、この変態め」
 揶揄を込めた言葉にパンドラの表情が歪んだ。
「こ、これは違うんです……」
「お仕置きと言って来たのはお前だ。触れてもないのに股を濡らしているのもお前だ。期待してるんだろ? ならご褒美で合ってる。それとも犯されるのを望むのを変態と表現するのが間違いなのか?」
 冒険者の言葉に傷ついたのか、パンドラの瞳に涙が滲む。
「何も、そこまで言わなくても……」
「へえ、否定しないということは自覚はあったわけだ」
 遂にパンドラは顔を覆ってシクシクと泣き出した。時折混ざる嗚咽が僅かな罪悪感と仄暗い喜悦を感じさせた。

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