なぜないのか疑問だった

だがそれがいい



どうしてこうなったのか。

「うあ゛っ......い、ぎっ.....」
「あーほんと慶次さん可愛い...ほらほら、もっと声出して良いんだよ?」
「っほざけ.........っひ!あっ、あ゛あ゛あ゛ぁ!?」

ギチギチと己の尻穴に突き刺さる疑似男性器に悲鳴混じりの喘ぎをあげる男――傾寄神、前田慶次。
通称ペニバンと呼ばれるそれはベルトの内側にも疑似ぺニスが生え、冒険者の少女の膣内にも食い込む形となっており、冒険者が腰を押しつけるたびに奥までズブズブと入っていく。
つまり快感が欲しければ穴を掘れ!という極めて卑猥なアイテムとなっており、その極悪さ、いやらしさはかのマシンゼウス降臨にも引けを取らないほどである。

一体何故男の自分が掘られているのか、しかも相手はまごうことなき女性たる己の主なのか.....半ば自暴自棄になりながら、慶次は今に至るまでの出来事を思い出していた。


※※※


「う........あれ、主...」
「あぁ慶次さん、おはよ...じゃない、こんばんわー」

ぼんやりとした頭で、ふと前田慶次が目を覚ます。
目の前には己の主の少女が微笑んでおり、部屋には薄い布団が一枚敷かれている。

「えーと...何で俺はこんな所で寝てるんだっけ?ここ主の部屋だろ?」
「やだ忘れちゃったの?慶次さんさっきまで皆と飲み比べしてたんだよ。
で、結局酔い潰れちゃって、私がここへ引き.....運んできたんだよ」
「あーそうだ.......」

苦笑いを浮かべながら先程までの出来事を思い出す慶次。
ひょんな事からイザナギやオオクニヌシ、メイメイといった酒豪達と飲み比べ大会を始め、鬼殺しならぬ神殺しの酒瓶を4瓶ほど飲んだ所で彼の意識は途切れている。
どうやら強い酒を飲みすぎて途中でダウンしたらしい。

「あーそうだそうだ思い出した...結局あれ、誰が勝ったんだ?」
「ヤマタノオロチの八人勝ち」
「ですよねー、あいつらまんま蟒蛇だもん.....」

ははは、と漸く笑う余裕が出てきた慶次。どうやら寝惚けている間に冒険者がクシナダ手製の酔い醒ましを飲ませたらしく、そのせいかやけに頭痛や吐き気もない。

「まぁ今深夜零時ですから。今夜はこのまま、ここで寝てればいいよ」
「はは、色々すまんな主。感謝するぞ....


......で、何で俺縛られてんの?」
「んー?さぁ、何でかなぁ」

先程までから気になっていた疑問をぶつける慶次。
いつもの奇抜な色の鎧と着物は剥ぎ取られており、当然二振りの刀もお気に入りの金の扇も無い。辛うじてファーのついた赤い上着(?)だけは着せられているが、下半身は丸出し。

何より、頑丈なロープで手足をギチギチに縛り付けられており、逃れようともがくたびに食い込んで...痛い。

「これはあれだよな、どっかのズオーと化した先輩みたいなやつだよな...昏睡姦とは感心しねぇぞ」
「野獣だなんてそんな酷い...それに慶次さんだってまんざらでもなさそーな顔してんじゃん。何、その期待を込めた目」
「いやそりゃ.....」

うっと言葉に詰まる慶次。
確かに、最近しばらくそういった行為をしてないせいか妙に期待しているというか、酔っているせいか体が熱いというか...自分に言い訳を始める慶次を尻目に、冒険者は淡々と話を進める。

「いやーせっかくなんで今日は私が攻めに回ろうと思いまして。
慶次さんにも攻められる辛さを知ってもらおうかと」
「えっ何?今日は主が攻めてくれんの?
いやー嬉しいな、たまにはこういうのも悪くないもんだね」

途端ににやにやと浮かれる慶次。まだ酔いが醒めていないのか、その顔はうっすら赤らんでいる。

ちらりと拘束された酔いどれ男を見る冒険者。
これから自分が何をされるからも知らずに呑気な...少しだけ哀れみを向けつつ、彼女はこれから起こる甘美な事に興奮が隠せない。

「じゃーん、今日はこれを使ってみようと思いまーす!」


「おぉ、これは立派なブツで...カリまでなんとリアルな............ファッ!?」
「お、いい反応っすね〜、じゃけんまずは慣らしていきましょうねー」

ばーん、と見せられたそれに驚愕のあまり思わず変な声を上げてしまう慶次。
ペニスバンドと呼ばれるそれは突き出たブツの無い女性専用アイテムであり、主に女性が男性の尻を犯したり、また同性同士で使ったりと、その用途は様々だ。
ちなみに無駄にリアルなペニバンのブツはかなり太くたくましく、下手すりゃ俺のよりデカいんじゃないか...と慶次は焦りつつもやや悲しくなってきた。


「ま、まてまて主、考え直せって!
そもそも俺男だし、しかもわりと厳ついし。こういうのは佐助とかウリエルみたいな奴にだな.........あっ、ちょ、おい!?」

抗議の声を無視し、細い指を彼の尻に這わせる冒険者。
縁をなぞるように動かせば、慶次の背中に寒気が走る。

「大丈夫大丈夫、ちゃんと痛くないようにしてあげるから...このローションセレス女王様特製だからね、たぶんなんか入ってんじゃないかなー」
「あのサド女!!つーか、お前も何だかわかんねぇモン人に使うんじゃ........く、うっ....」
「あ、ここいいんだ。やっぱ男の人も気持ちいいんだね」

たっぷりとローションを垂らした指を尻穴にいれ、穴を広げるようにバラバラに動かしていく。
男色経験など当然無い慶次にとってはそれは初めて味わう感覚であり、異物感の中にある鋭い快感に思わず声が出てしまう。

「てめっ、マジでいい加減に........うぁ、ふっ.....」
「今からそんな事言ってて大丈夫?これからもっと気持ちよくなるのに...」

ちっとも心配してなさそうに、さらに指の攻めを強くしていく冒険者。
次第に収まり切らなくなる快感と喘ぎ声に、これからどうなるのか、これ以上耐える事が出来るのだろうか...と、慶次は今まで生きてきた中で一番の恐怖を抱いた。


「さ、まずはおもちゃで試そうか」



※※※



「ッあぁもう!、いい加減抜けって.........っ!ぐ、あああぁ゛!?」
「慶次さん気持ちいい?私も慶次さんと一つになれてうれし....ひゃんっ!」

膣内に挿さる内側のペニバンが秘豆を押し潰し、悲鳴混じりの喘ぎをあげる冒険者。
後背位の体勢で後ろからガンガン突き上げる様は完全に立場逆転、といったザマで、女の自分が屈強な男を征服しているような感覚にゾワゾワと彼女の中のサディスティック心に火が着く。

もっと快感を得ようと腰を打ちつけると前立腺をかすったのか、より慶次の喘ぎが激しくなり、冒険者は重点的にそこばかりを責め立てる。

「ふあぁ!!も、だめ、イっちゃいそ.......ね、慶次さんも一緒にイこ?えいっ!...こ、こうかな?んっ、ああぁぁ!!」
「ふぅぅっ......はぁ!?、ちょ、それまずっ.........あ゛っ、あ゛っああ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

突如今まで全く触れられていなかった肉棒を冒険者の細くしなやかな指で扱き上げられ、そのあまりの快感に遂に慶次は声を我慢するのを放棄してしまう。
口内と後ろ、さらには空いた手で乳首をぐりぐりと責められ、全身を襲う快楽に気が狂ってしまうかのような錯覚に陥る。

「やっと素直になったね慶次さん!ほら指が汚れちゃった、舐めて綺麗にしてよ」
「ひぐっ...も、マジでやめ.........ぐっ?...っふ、むぅ...っううぅ!?」

うつ伏せの慶次に抱きつくような体勢の冒険者が精液で汚れた指を三本ほど彼の口の中に突っこみ、歯茎や舌をつー...となぞると微弱な快感からか、小さな声が漏れ出す。
自身の吐き出した物とはいえ、不快な苦さと粘っこさに顔をしかめてしまう。

さらに再び腰の動きを再開する冒険者。その動きは先程以上に激しく、ぐりぐりと奥まで突っ込んだり、少し腰を回すように押し付けたりと...さらにいやらしさが増している。
最速、ただの変態行為だ。

「あ゛っ、あ゛っ、またっ!イきそ...!.........っあ゛あ゛あ゛ぁ゛あああぁ!!........も、やだ、嫌だ....ひぐぅ!?」
「慶次さんイきすぎィ!でも私まだ一回しかイってないし....あと五回くらいはやりたいよね...あ、んっ」
「ごかっ.....!?っなら、俺が主に入れた........オ゛、あ゛ッ........!!」

ぐっ、ぐっと奥を潰され、快感のあまり声すら押し潰れてしまいそうになる。
人工ペニスと本物なら、明らかに本物のほうが気持ちいい。
だが今日の冒険者に”入れられる”という考えは一切ない。
普段勇ましく刀を振るい、豪放磊落な性格で、仲間の失敗すら笑って許す.....そんな男らしく優しい慶次が、自分の下で女のようにみっともなく喘いでいる。
しまいには、もっと欲しいと言わんばかりに催促混じりの喘ぎまで出して...そんな狂った状況に冒険者の興奮は最高潮まで達し、腰の動きは緩める事なく、彼女はさらに強く慶次を抱き締めながら、愛の言葉を耳元で囁いた。

「慶次さん好き、大好き.....ッあっ!.....だから、もっと一緒に気持ちよく、.....っあ、イきそ...!」
「........っ俺も、主が.....あッ、愛して.....ひぐうぅぅ!?」

甲高い声で達する冒険者と慶次。しかし冒険者は再び快感を求めようと腰を突き始め、慶次もさらに深みにまで堕ちて行く。

「もー慶次さんほんと好き、大好き......あっまたイッ、イっちゃ.....ふ、ああぁぁ!!」


※※※



「お待たせ慶次さん!アイスティーしかなかったんだけどいいかな?」
「それなんか入ってないよな.....」
「ほ、本当に何も無いって!さすがにそんな追い打ちしませんよ!」

怪訝そうな顔をしながら、アイスティーを受け取り一気に飲み干す...上手い。
どうやら普通の市販品のようだ。

「あーもうマジケツ痛いし...こりゃ今日はダンジョン無理だわ」
「あ、慶次さんは休んでていいよ。今日はチョキカニしか予定無いし、後で皆にも伝えとく.....あとその、ごめんなさい...」

心底申し訳なさそうに謝る冒険者。
結局あの後二時間ほど行為を続け、最終的に慶次が疲れのあまり気絶してしまい、流石にまずいと思った冒険者が中断し、夜通し眠った彼の側にいた...というわけだ。

「...別に、主は謝らなくてもいいよ。俺もその...そこまで嫌じゃ無かったっつーか.....」

気まずそうに主を励ます慶次。
冒険者に惚れ込んでるだけあって、それなりに彼も本心では満更でもなかった...あまり認めたくはないが。

「えっほんとに!?じゃあまた私が慶次さん雌堕ちさせても良いかな!?」
「”そこまで”っつってんだろ!!そもそも女がそんな卑猥な言葉を言うな、下品だぞ」
「慶次さんだって大概酷い淫語で喘いでたじゃん、おほぉらめぇみたいな」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛うるッせぇな!!お前も俺の立場になったらあの辛さが...」
「わかったでしょ?これで気持ち良さまで分かりあえたね、らっぶらぶぅ!」
「...........。」

返答に詰まる。確かに、普段の行為においても慶次は冒険者にわりと、いやかなり激しい要求をしたりするが...

女の感度は男の倍というのは昔何処かで聞いた事がある。
という事は、主は昨日の自分よりも凄い快感を味わっているのか...そう思うと、何故だか急に申し訳なくなってきた。

「す、すまん主。これからはちょい自重し...うん、無理だな。

だって主可愛いしさー、つい俺も張り切っちゃうというかさー」
「いや別に自重とかいいよ。私も慶次さんに激しくされるの好きだし...ただたまには位置を替えたかったというか...」

気まずい雰囲気で照れあう二人。
やがて沈黙を破るように、慶次が無理矢理明るい声を出した。

「ま、まぁそういうことで...じゃあ今日はゲリラ来るまで二人でなんか話そうぜ、主にあれをどこで手に入れたとか.....」
「あーうんそうだね。えぇと、こないだネットサーフィンしてた時に.....」

わあわあと談笑を始める二人。何はともあれ、二人は相思相愛の仲。
今回の件も彼等にとっては愛を深めるための行為――形こそ狂っていたが――の一種にすぎないのだ。

ちらりと時計を見る冒険者。
ゲリラまではあと7時間はある、たまには戦いを忘れ、こうしてのんびり一日を過ごすのも悪くはないだろう――そんな事を思いながら、彼女はアイスティーを口に注ぎ込んだ。



...尚、それから暫くの間、代わる代わる体位を交代するプレイに没頭した事は、二人だけの秘密である。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます