SouthMoon

アルバレストは、宝珠を「守る」ことしかできない。それを誰かに継ぐことはできない。
継がれた血(種族)に意味はあるため宝珠を扱うことはできる。しかし、己から継がれる血(種族)に意味をなさない。彼だけでは宝珠を継げる者(モクロー族)は生まれない。
継がれた血があるからこの宝珠は己にも反応し、力を与えるが、自分が持ち続けても意味をなさない。
だから、アルバレストは知らず知らずのうちに、どこかで生きる「まだ未熟ゆえ宝珠を扱えず、しかし宝珠を継ぐ血を成せる嫡女」のために宝珠を守っていることになる。いつか彼女が宝珠を受け入れられる日を迎えた時に、それを渡せるように。しかしその時は、おそらく、宝珠を奪った「ならず者」を討伐した証として、その宝珠はかかげられるのだろう。
嫡女からしたら、アルバレストの父親である傭兵は「何もわからぬまま親から引き離した見知らぬ男」で、挙句「置き去りにした」存在で、その間に「帰る場所は無くなった/見失った」状況。しかもそんな幼い中でも確かに覚えているくらいには何度も母から聞いた大切な宝珠は、「跡地からは見つからなかった=なくなった」と風の噂に知ることになる。
宝珠を「奪った」男がいるとなれば、彼女はどうするだろう？　今現在の彼女は、自分の血の自覚と復讐の気持ちを内に秘めながら、情報を集め回っている。いつか、きっと、彼女は「宝珠」を見つける。それを「奪い返しに」来る。自分の血統の復活を宣言するために。
ーーアルバレストは、「殺される」ために宝珠を守り続け、生き続けている。けど彼自身は死ぬために生きているつもりはない。ただ「宝珠を守り続ける」ために、強く強くあろうとしている。