後顧に憂いを持ちながら、
ロードレア国軍とほぼ同数の兵力を動員した
カルディスの手腕は流石としか言い様がなかった。
両軍は2月18日に布陣を終えてにらみ合い、翌19日の早朝に激突した。
ロードレア国軍から仕掛けた戦いにも関わらず、戦場で先手を打ったのは
カルディスであった。
この日の
ゼイレアン平原は、朝から深い霧に包まれていたが、霧に乗じて
カルディスは全軍突撃を命じる。
レイディックは、これを冷静に受け止めて弓隊での防戦を命令する。
この戦いは、攻めに徹した
カルディスと、守りに徹した
レイディックが
ゼイレアン平原を舞台に完全に互角の戦いを見せるが、
ロー・レアルス国の士気は高く、また短期決戦で終わらせなくてはならない事情もあり、徐々に
ロー・レアルス国軍が戦場を支配し始める。
夕方前には
ナッシュ、
ノース、
ボルゴスの陣が戦線を維持できなくなり、後退して別部隊と合流。
この穴をカバーするべく最前線に出た
ラディア、そして猛将
アリガルの陣も、二人が自ら剣を振るうほど追い詰められていた。
このまま
ロードレア国軍は前線を突破されるかと思われたが、戦場に雨が降り始め、霧に加えて更に視界を悪化させていく。
この瞬間を見逃さず、
レイディックは待機させていた騎馬部隊だけで編成した
アルヴァドス指揮する機動部隊に出陣を号令、視界の悪さと守りに徹していた相手がまさか攻めに転じるとは思っていなかった
ロー・レアルス国軍は、この機動部隊の速攻を許してしまう。
カルディスがこの突撃を食い止めている間に、前線の
ゼノスたちは更に攻勢を仕掛け、鬼神の如き強さで次々と
ロードレア国の将軍を討ち取るが、
ラディアがかろうじて食い止め、
ロー・レアルス国軍の戦線は完全に延びきった状態で停滞する。
ここで
ソフィスの命令がくだり、予備兵力が一気に投入されると、ここまで守りに徹した
ロードレア国軍が一気に攻撃に転じ、
ロー・レアルス国軍を分断して各個撃破していく。
攻守は逆転し、今度は
カルディス自らが流れ矢を打ち払うほどの激戦となるが、
カルディスの軍師となっていた
メファイザスが、攻撃を受けている本陣を無視して前進し、側面から
ロードレア国軍を攻撃することで突撃を一旦食い止めると、全軍撤退を進言する。
ロードレア国軍に追撃の余力なしという
メファイザスの進言を聞き入れた
カルディスは、素早く全軍を撤退させる。
結局この戦いは「先に戦場を去ったのは
カルディスだが、最終的に兵を多く失ったのは
レイディック」という形で、明確な勝者を指定することができないまま痛み別けとなる。