前回までのあらすじ…あらど君 は オ姉さン の お気ニ入り に 大バッ擢。

地上ルート第三十三話辺り。戦艦アークエンジェル
アラスカから戦線離脱してから、αナンバーズはお尋ね者と相成った。連邦内のブルーコスモスの専断は既に病的なまでに進行しており、彼等は完全にナンバーズを敵視。その包囲網は地上のほぼ全域を覆っており、彼等は十分な補給も出来ない状況が続いていた。
そんな暗い状況を打破する様に、着々と成果を上げ続けるパイロット達。
勝ち続けさえすれば、飯にありつけ、命も繋げられる。
アラドも頑張っていた。……自分を取り巻く泥沼を忘れようと、戦闘に打ち込んでいた。


「ねぇ、アラド君。良いお酒が手に入ったんだけど、付き合わない?」
「チーフ?真昼間から未成年を悪の道へ勧誘するのは感心せんぞ」
関係を持ってしまったお姉さん方に追い回されるのが今の彼の日課であった。
「あら…何を言ってるのかしら?貴女も同じ穴の狢でしょうに」
「否定はせんさ。だが、抜け駆けはさせない」
ゴゴゴゴゴ…濁音系擬音が背景を埋め尽くす前にアラドはその場所を離れようとする。
「「何処に行く気(だ)?」」
ガシッ、と強烈に肩をグラップルされた。逃がしてくれませんか。
「ちょっと…トイレ?」
「却下」「我慢しろ」
あー…デブリーフィングだってぇのに何だってこんなに締まりが無いんだろうか。
…殺伐とはしているけど。
「アラド君も私の方が良いわよね?あんなに高飛車でおっかないパイロットよりも優しくて色っぽいナビゲーターを選んでくれるわよね?」
「ふん。色っぽいと言うよりは腹黒いの間違いだろう?年増め。それにそれ位の年頃の少年は強くて格好良いモノに惹かれるものさ。私の様に、な」
一進一退。互いに退かず。ああ…憎しみの波動がここまでやってくるよ。
「「アラド(君)」」
「は?」
「「どっち?」」
どっちと言われましても。ツグミを選べばスレイに殴られる。スレイを選べばネタで脅される。陣営を定めればどの道戦火は免れぬ!明日はパナマの二の舞ぞ?
「ツグミさん…スレイさん…」
「「む」」
アラドの言葉にピタリと憎し合いを止めた二人は、次の言葉を待つ。ゴク。どちらとも無く唾を飲み込んだ。ゆっくりとアラドが口を開く。
「そう言う事は…」
「「そう言う事は…??」」
「考えないでおきます…」
「は?か、考えな…?」
「お、おい…それはどう言う…」
言葉を反芻し、噛み砕く。そうして互いを見合わせたツグミとスレイ。
アラドはその一瞬の隙に駆け出した。三十六計逃げるが勝ち。
「あ!…逃げられた」
「しまった…逃したか」
その場に残されたお姉さん二人に周りから失笑が漏れた。

する事も無い…と言うより逃げ込む為にやって来たハンガー。戦闘後だけあって、人の出入りは激しく、計器や工作器具の唸りが体に染み込んで来る。彼が向かうのは愛機であるビルガーの元だ。
整備はあらかた終わっているが…微調整でもやっておくか。
「えーと…照準調整…+コンマ0.2っと」
自分の乗る機体だ。クセは自分に合わせて然るべき。格闘戦特化のアラド。例え砲戦使用の機体だろうと彼にかかればあっという間に宝の持ち腐れ。
「油圧チェック…作動誤差無し…オッケー」
ここはいじる必要は無いか。しかし、随分と長い間コイツとは戦い続けている気がする。
「アビオニクスは…空力と関節制御で行っとくか」
出会ったのが封印戦争中だから…もう一年近くか。否、まだ一年か?
「…げっ!エラーかよ」
コンソールに表示されるエラー表示。そんな無茶な値は要求してはいない。…再計算。
「…対して変わらんな。えーと…次は」
…まぁ、もっともどれだけ一緒に戦っていようとも、そもそもこの世界では何の意味も無かったりする。…存在しない筈の人間なのだから。
「電装系…これは一人じゃいじれないな」
不意に湧き上る疑問。では…この身は何の為に存在しているのか。どこぞのタイムダイバーになった気分。
…駄目だ。途端に出来る事が無くなってしまった。所詮、この身はパイロット。技術屋でもメカニックでも無い。アラドは諦めてコックピットから出た。

さて…次は何処に行くか。…贅沢は言わない。あの二人の居ない場所なら何処でも良いのだ。

そうして、ハンガーの出口でその人物と鉢合わせた。

「あれ…アラド?」
「…どうも」
アイビス=ダグラス。ご存知ハイペリオンキャプテン。今日も今日とて機体整備に余念がありません。
「珍しいじゃない。君がハンガーになんて」
「ええ…偶には」
実はそう珍しい事ではない。自機の整備に余念が無い彼女と微調整に余念が無い彼。方向性はちょいと違うが双方ともにハンガーには頻繁に出入りしている。会う機会が無いだけ。
「へえ…偶には、ね」
「…なんすか?」
下から覗き込む様にこちらの顔色を伺う彼女に一歩後退した。
「ん?何か暗いなー、って思ってさ」
「暗い?…いえ、そんな事無いっすよ」
気取られた。己を取り巻くこの状況…暗くもなる。だが、そんな事は他人に漏らさない。特に彼女には。嫌なデジャヴが脳内に…ぶるぶる。
「本当に?」
「ええ。疲れてるだけっすよ」
お姉さんらしく、年下のアラドを心配するアイビスとそんな彼女に笑って答えるアラド。端から見れば仲の良い姉弟の様に写るのだろうか。
「そっか。最近、連戦続きだしね。補給物資だって足りてる訳じゃないし…そんな状態続けばパイロットだって参っちゃうよね」
「あ、いえ。そうじゃなくって」
それはアンタも一緒だろって。第一話からこっち同じ小隊なんだから。
「え?違うの?…じゃあどうしたってのよ」
しまった。とっとと話を切ってこの場から去りたかったのに、何を真面目に返答しておるか。話が続いてしまうではないか。
「…どうもしないっすよ」
「?」
頭に?マークを浮かべたアイビスは可愛らしく小首を傾げる。自分より一回りは年上であろにそう思えてしまうのは彼女の人柄となり故だろう。
「まぁ…強いて言うなら」
「え?」
ふっ、笑って口から漏らす。屑の様な言葉。半分は虚言。だがもう半分は…
「人生に」
「はあっ!?ちょっと…アラド、大丈夫?」
そう呟き、アイビスの脇を抜けてハンガーを後にする。
アラド=バランガ。ちょっと頭の休養が必要です。

「アラド…何か…冷たいな」
お姉さんもがっかり。最近の彼は実に素っ気無いので。前はあんなに懐いてくれていたのに。
…最近はツグミやスレイがべったりと。ガラスのハートが寂しいと呟いた。

「もう…さ。俺疲れちまったよ。こんな感じで振り回されたら体の前に頭がイカレちまう」
「…まぁ、判らんでもないな。俺も似たような状況だ」
アークエンジェル休憩所。アラドとクォヴレー(青)が顔をつき合わせ互いに愚痴を零す。定位置となった長椅子。今回はちゃんと灰皿もあるぞ。
「いやぁ…俺の方が混沌としてると思うけど?…泥沼って言葉あるだろ?まさに今の状況がそれだ。……いや、ひょっとしたら底無し沼かも」
「もがく程に深みに嵌る、か?…足掻いても抜け出せないと」
ドロドロのグチャグチャ。背中を刺される恐怖と毎日格闘中。
「ああ…発端は向こうにあるけどさ。俺も至っちまった負い目があるから…無視も出来ねえし…」
「だが…お前の意思は兎も角、以前より人間関係は円滑なのではないのか?」
紫煙を上らせる煙草。クォヴレー(青)はそれを咥えてフィルターを一吸い。
ふゅぅ…。煙をゆっくりと吐き出す。
「そう…かもしれないな。実際は判らないけど…」
それは確かに実感している。二人共笑う事が増えたし、戦闘時での連携や指示は完璧だ。
それ以上に…二人を身近に感じられる様になった。以前は…仕事仲間以上の感情は無かったと言うのに。
「なら…それに乗ってみるのも一つの手だぞ」
「ああ!?溺れろってのか今の状況に!?」
何を言うのか、青ワカメ。若い身空で女一人に思いを寄せられ、あまつさえ別の女にはご主人様呼ばわりの被所有者宣言までされた。そんな状況に嵌れば人間の屑確定じゃないか。
「違う。もがけば沈み込むなら…敢えて身を任せてみろと言う事だ。そうすれば…誰かが通りかかって助けてくれるかもな」
「…他力本願かよ」
「そう言うのもありって事だ。別に悪い事ではないと思うが…」
「そうか…」
こんな状況から引き上げてくれる人間など、居る訳が無いと思う。居たとしたらそれはどんな人間だ?…想像できない。だがもっと想像できないのは今を自力で打ち破る為の確固たる方法だ。
「…当然、時間制限はあるがな」
判っている。沈降速度は遅くなったが、沈んで行ってる事には変わりない。いずれ頭までどっぷりと浸かって…最終的には溺れてしまうんだ。自分はどうなんだろうか?
「俺は助けてやれない」
クォヴレーの抑揚の無い言葉。そして刻まれた煙草の香りが妙に印象的だった。

「そう言えばさ…」
「ん?」
「ここ最近、青いお前にばかり出くわす気がするんだけど…」
クォヴレーには良く会う。作戦中やブリーフィング、はたまた食事の時に。だが、こう言ったプライベート…取り分け込み入った話をする時の彼の髪は何時も青い。それはつまり…
「気のせいではないのか?」
気のせいじゃない。髪が銀色の時、お前は煙草を吸わない。
「…中の人に侵食されてる?」
「中の人などいない」
全力否定。そりゃ中の人扱いは酷いか。…でも、背後霊よりはマシだろう。
「じゃあ…今のお前は?…クォヴレー?それとも、イングラム少佐ですか」
「その問いに意味は無い。俺は…どちらでもありどちらでもない」
どこかで聞いた台詞だ。まぁ、半ば予想していた答えだが。
「だが…」
って、否定接続詞!?
「だ、だが?」
「今の俺はイングラムに近い…限りなく」
「ってーか、そのものなんじゃあ…」
少佐(確定)はノーコメント。目を合わせようとしない。
お前…大変だな。少佐が前面に出てる時、その時の記憶ってあるのか?
ひょっとして…体を好き放題使われてるとか…?

「!……追っ手か」

「え?ま、また大尉っすか?」
絶妙なタイミングで少佐は闖入者の存在を告げた。一応、受け答えは丁寧にね。
「判らん。複数、だな。…俺は行くぞ」
立ち上がった少佐は逃げる気満々。灰皿に吸いかけの煙草を突っ込み、立ち上がる。
「そうだ…餞別をくれてやろう」
「い、いや…いらないっすよ」
前回と同じ台詞。アラドは拒否した。悪い予感が沸々と湧き上る故に。
「そう言うな。お守りだと思えば良い」
だが、無駄だった。別れ際に少佐は封の開いた煙草を押し付けてきた。ライター込みで。
「って…俺、吸わないんだけどなぁ」
握らされたソフトパックを見て呆然とするアラドがそこに残された。

少佐が去って一分後。現われたのは…
「あ、大尉…とセレーナさん?」
珍しい組み合わせだ。この二人…因縁があるらしく滅多に顔を合わせる事がない。
それが並んで歩いている時点で何かきな臭い。
「やっほアラド君」
シュタ、と片手を上げた女…セレーナ=レシタール。格好が世紀末救世主伝説な元特殊工作員。エルマ曰く「女の武器を使うのが下手」。泣き顔に萌えろ。
「アラド……イングラムを…って、また逃げたの?彼」
「ええ。複数の追っ手が…とか言って。何処行ったかは知りませんよ」
また逃した。そんな悔しげな面を張り付かせた二人は互いを見合わせた。
「見当付くかしら?彼の行きそうな場所」
「さあ…?大尉に判らないなら私にはさっぱり…」
「そうよね…」
「でも…煙草の残り香を辿れば…スンスン」
突然鼻を鳴らし周囲を嗅ぐ変態一匹。アンタは犬か。てーか、エルマ辺りにサーチして貰えば……アレ?エルマが居ない。
「…まだ居住区、かな。遠くには行ってないみたいですけど」
「…自室に戻っている可能性があるわね。行ってみる?」
「了解!お付き合い致しまする!」
…大尉は兎も角、セレーナは何なんだろうか?何故に少佐を追っているのだろう…
「お邪魔したわね、アラド」
「それじゃ!」
足音も高らかに二人は去っていく。
「まさか…まさか、セレーナさんとも…!?」
邪推せずには居られない。自分がそうである様に、少佐も若しそうだとしたら…
前言撤回。まだまだ自分は及ばない。そして……
「へこたれんなよ…クォヴレー」
存在が黙殺されつつある友に祈った。

「面白いもの持ってるじゃない?」
っ!?……何時の間に。心此処に在らずであったアラドには接近する彼女を確認する事は出来なかった。
「あ…アイビスさん」
今日は良く彼女に会う日だ。特徴的な白いジャケットとホットパンツ。遠くからでも分かる橙の髪と桃色の瞳。それに気付かないのだからかなりの重症。
「不良だったんだ…アラドって」
アイビスの視線がアラドの掌に握られたソフトパックに注がれる。年端も行かない少年がそんなものを持っていたのならそう思うのが普通だ。
「押し付けられたんです。俺は吸いません」
否定。友…否、先輩?上官?に押し付けられた代物だ。彼自身、自分の持ち物と認めてはいない。
「じゃあ…頂戴」
「は?」
ぷりーずぎぶみーあしがれっと。寄越せとばかりに仰向けられた掌。欲しいの?これ?
「吸わないんでしょう?」
「え、ええ。…まあ、良いか」
持ってたって宝の持ち腐れ。ならば…有効利用してくれる御方に渡すのが世渡りの道。
どうぞ。お納め下さい。
「ありがとう」
手渡されたソフトパックとライター。優しく、そして嬉しそうにアイビスは微笑んだ。
「っっ」
どくんっ。…っつ!胸の奥にチクリと刺さる痛み。一瞬だが全身の血が燃え上がる錯覚。
「どうしたの?」
「い、いえ…」
その顔が直視出来ずにそっぽを向いた。某美野郎に純粋美の太鼓判を押された女。その破壊力が今の自分には強烈過ぎる。落ち着け…焦るな……良し。落ち着いた。
…ゴホン。咳払いして仕切り直す。
「…アストロノーツが煙草なんて吸って良いんですか?」
湧き上る何かを飲み込んでアラドは向き直り、軽口を叩く。
「ホントは駄目だよ。体に悪いし、酸素の取り込みも低下するし。しかも周りに迷惑が掛かってエアーも無駄に消費して……百害あって一利無しってね」
慣れた手付きで一本咥え、着火。ジジジ…先端に火が渡り、煙が生まれた。
吸引した煙を肺に溜めて、全身に行渡らせる。
「ふうぅ…っ、けふっ。…やっぱ効くわ。久しぶりだと」
若干咽て、アイビスは涙目。吐き出した煙が流れ、二人以外誰も居ない休憩所に流れた。そして長い腕を伸ばして二人を包む。…煙たい。
「久しぶりって…」
「うん…前にやさぐれてた時に、ちょっと」
それは…事故起こして、プロジェクトを抜けていた期間で間違いは無いだろう。
「半分、酒浸りだったし」
「アイビスさんが…?」
笑って言う彼女の顔にアラドは何かの影を見た。それは翳りか。…何とも自嘲気味な笑いだと思ったのは気のせいではないだろう。
「まぁ…今となっては良い思い出だね」
「そう…っすか」
暗黒時代を経ての今の栄光。だが、その時の悲愁と雌伏の日々は未だ忘れえぬ…消し去りたい過去。…似ているな。ちょっとだけ。アラドは思った。

何やら…互いに声が掛けられぬ雰囲気。気まずいとも、重たいとも違う…危険な空気。
一寸先は闇。手探りで進んだが最後、二度と這い上がれぬ深淵に落ちる…そんな予感。
事実として、アラドはそれを感じていた。全身が警鐘を鳴らす。これ以上、踏み込むべきでは無い。今直ぐこの場を去らなくては。だが、彼の体は石の様に重く、動かない。
「アラドは…」
「え?」
そうして、その予感は的中した。危険の権化が…アラドに牙を剥く。
「アラドはどうだったの?昔は…」
尋ねられた己の過去。語る事等、無い。そう答えるべきだったのに。
「面白い事なんて…何も無いっすよ」
自然と口が動いてた。…何を口走った?…拙い。拙い!拙い!これは…
「そうなんだ。…でも、聞きたい、かな」

…双眸から向けられる熱い視線。ボッ、と火を噴くアラドの顔。それに気付いてしまった時点で勝負あり。
「っ…どう、して」
「アラドの事…知りたいから」
正常な思考出来なくなる。話す事等無いのに。無い筈なのに奥底から溢れ出て来る言葉の波。そう言えば、過去を他人に話す…なんて無かった。
俺は…話したい、のか?聞いて欲しいのか?

……話せば、少しは楽になるのかな。

そうしてアラドは思考を頭の隅に追いやった。
「素面じゃあ…ちょっとキツイ、かな」
「ん…付き合うよ」
幼子をあやす様に、柔らかな笑みと共にアイビスは囁く。その瞳の奥に隠れた暗い感情。

ククク…貴様の血塗られた心臓は既に我が掌の中。ピクピクと蠢いて…!


フラグビルダー最後の戦い!


通された簡素な部屋。アラドの自室。自分の部屋と大差無いその真ん中に陣取って、どっかと腰を落とした。無言で差し出されたグラスに少量注がれる琥珀色の液体と水。
一体、何処から仕入れて来るのか?仮にも戦艦。物品の持込みには厳しいチェックがある筈なのに。しかも、持ち主は仮にも未成年なぷに少年。…否。未成年だからこそチェックが甘いのか。今度、半舷休息の時にチャレンジしてみようか…。
「頂くわね」
「ああ…どうぞ。遠慮無く…っす」
軽く口に含み、一気に嚥下。酒の味は分からない自分だが、上等なモノであろう事は何と無く判った。…美味いとも不味いともつかないグラスの中の液体。嘗てはそれに溺れていた自分を思い出し、心の中で唾を吐いた。もう…負け犬ではない。
「それで…?」
「っ…」
同じく琥珀色の液体を啜るこの部屋の主。何とも末期的な姿。昔の自分、一歩手前か?
普段は明るく朗らかな少年をここまで追い詰めるのは何であろうか?
否…実は知ってはいるが。
「聞かせて…くれるんだよね。昔話を」
「ん…」
何か恥じ入る事があるのだろうか。視線を合わせようとせず、アラドはポツリポツリと語り始めた。


………痛い。


ある程度は予想していたが、これは。
年端も行かぬ少年に対する悪逆非道な振る舞い。人体強化、薬物投与、精神操作、失敗、廃棄……死んだ友人に涙しつつ、生き残れた自分に対する喜びのジレンマ。
笑顔の裏で…枯葉は何時もこんな闇を抱えていたのか。
……項垂れるアラド。それが無性に保護欲をそそる。ハァハァ

「忘れて…下さい」

多くの犠牲の上にこの命がある。家族に支えられて、俺は生を繋いだ。そんな俺が泣き言漏らす訳にはいかないから。一頻り喋った後にアラドはそうとだけ言って、笑った。
この少年にどんな言葉を掛ければ良いのか?用意した台詞は多くあったが、全ては喉に留まり出ては来なかった。
だが……それ以上になんつーか、もう…抱き締めたい!例えこの身の抱き心地指数が規定値よりも大きく下回っていようとも。抱っこしてナデナデしてあげたい。

「アイビスさんも…話してくれませんか?」

「う…え、あたし?」
「俺も…昔話、聞きたいっす」
そうこう妄想している内に振られた話題。…チャンスを逃した。
そうして、己もまた昔語りを始める。

・・・・・・

酒がどうにも不味く感じられて仕方が無い。暗く沈んだ気分がそれに拍車をかけるのだ。
今日は…色々と感傷的になり過ぎる。ツグミとスレイの一件から余裕を無くし、今、こうして酒を呷りながら過去を吐露する。自身の弱さを。…否。それを溜め込むばかりで、吐き出せない事こそが弱さか?
語られる彼女の話。生まれ育ったニューヨークの街。普通の少女時代。プロジェクトに抜擢され、訓練ばかりしていた一昔前。そして、その後にやってきた暗黒時代。
何と言うか…憧れる。自分に無いものがそこにはあったから。…言ってもせん無き事だが。

「ねえ」
「…何すか」
不意に掛けられた言葉。
「そんなにテンパってるの?二人に追い掛け回されてさ」
「っ」
その一言に言葉が詰まる。彼女は全部知って…?
「知らないと思った?」
「いや…当然っすよね。アンタにバレない方がおかしいか」
チームTDのキャプテンとして、常に横から自分と彼女達のやり取りを見ていた彼女。
どんな鈍感な輩でも気付かない方が逆におかしい。
「そう思いつめる事でもないと思うけどな。…もっと楽しんだら?」
「何か…他人事みたいっすね」
「あは。そりゃあ、あたしはアラドじゃないからね」
「……悪いけど、そんな気には」
纏まらぬ思考をどうにかする為に、グラスの中身を呷った。…やはり不味い。
楽しめ、だって?そんな図太い神経は自分には無い。だが…この関係を終わりにする言葉を言い出せないのもまた自分だ。ドロドロの関係が嫌ならばそう言えば良いのに。でも、それが言えない。
……ひょっとして、この爛れた関係が心地良い…とでも思ってしまっているのか?
そうだとしたら。……ハハハ。笑うしかない。

「じゃあさ…」
「…っ?」
そう言って、アイビスがグラスの中身を飲み干した。…ヒック。しゃくり上げ、覚束無い足取りのままこちらにやってくる。
「え、あ、あの…っ」
普段の彼女からは想像もつかない…妖艶な空気。それを纏ったまま、アイビスが耳元で囁く。
「あたしがさ…助けてあげよっか?」
こちらの心境を読んだかのような言葉。その響きがどうしようもなく頭に響く。
助けてくれる?…俺を?…アンタが?
……拙い。この展開……死亡フラグか?うなじの辺りがチリチリと違和感を訴えて来る。
「やさしくして……あげようか?」

…が。
その言葉に惑う事無く、アラドは答えた。

「いや……そうして欲しいのは、アンタだろ?」

「………え?」
真顔で返したアラドにアイビスの動きが止まる。
アラドには判っていた。イルイに向けられる冪アイビスの怪しい視線が何時からか自分に向いている事を。何故、標的が自分なのかは知らないが、もう目を付けられたのが運の尽き。その原因は明らか。己と同じ存在。前作から引き継がれる主人公達のあり方だ。
「イルイと絡めないのが寂しいんでしょう?」
「うぐ」
三十三話の時点で言うのもどうかと思うが、一応の真理だったりする。
そう。このルートはトウマ編準拠。自動的にイルイは…
「ゼンガーさんちの子供になっちゃうからね」
親分とソッフィーとお幸せに。
「ぐはっ!」
アイビス、吐血。50ポイントのダメージ。
「それに俺等、存在も空気ですからねぇ」
「たわばっ!?」
げふっ…あみば。更に吐血。100ポイントのダメージ
「アンタも判ってた事でしょうが。俺も…なんか寂しいけどさ、割り切らないと」
トウマ編=ゼンガー編の続き。他の主人公達は出番が無い。あるのは特定の戦闘会話のみだったりする。いや、本当に空気だよ?ぶっちゃけ、便利な助っ人位の扱いだから。

「あ、あは…あはは。…判ってるなら話が早いよ。なら、次にあたしがどうしたいかも判るよね?」
吐いた血を拭い、それでも渇いた笑いを浮かべつつ、尚もアイビスはアラドに接近。
じりっ。アラド、後退。
「どうしたいって…あー。やっぱり、ナニですか(汗)」
「……馬鹿。それ位、察してよね(赤)」
アイビス、一歩前進。アラド、一歩後退。じりじりっ。
「こ、このまま事に至るつもりっしゅか」
流れ的には当然か!?…馬鹿馬鹿!俺の馬鹿!こうなるの判ってた筈なのに何で!
「ん……アラドはイヤ?」
アイビスの紅潮した顔。潤んだ瞳。何かをねだる様な甘い声色。だが、その瞳の奥から漏れる鈍色の濁った視線が危険に見えた。

「そう言うのは、間に合ってるから…俺はその」
だから……お許し下せぇ、御奉行様!
「何ぃ!!?あたしじゃ不満だっての!!」
アイビスの怒号が突き抜けた。ひぃ!何処ぞの祭祀長の様な声と共にアラド、更に後退。
あ、あんた…目が据わってるよ…!酒が脳味噌にでも回ったか?
「い、いえ!決してそんな訳でわ!でも…こう言う事は本来好きあった…」
「…なら、問題無いでしょう?あたしは…アラドの事、好きだよ?だから…」
先手を打たれた。もう一歩後退。じり…どん。壁際。これ以上の後退は不可。
「そ、そりゃあ!…俺もアイビスさんの事、嫌いじゃ…ないけど」
「けど……何よ?」
「これは何か違「っ、ああー!もう!これ以上グダグダ言うの中止!!」
これ以上、世迷言は聞いてられんとばかりにビシッ!…っとアイビスの人差し指がアラドの唇を押さえた。
そして、般若もかくやという形相で、地の底から響くような低い声で呟いた。

「バラしちゃうよ?君と二人の関係」

「げっ…」
貴様は鬼か。こんないたいけな少年いびって、追い詰めて楽しいのか!
「へ、へへ…喋れば良いじゃないっすか。そんな与太話誰も「エルマに頼んでその時の動画、世界中にばら撒くのも良いかも」
ザ・ワールド!アラドの時が止まった。
居直り、容易く粉砕。真偽は不明だが、もし本当だったら……(汗)。

…身の破滅ドコロじゃねぃ(泣)。

「やさしく…してあげるよ?」
鬼の形相から一転。アイビスははにかんだ笑顔をアラドへと向けた。
結論…既にフラグは立っていた。そして、もう回避は不可。
目の前の女怪をハメ倒すより道は無し。そして時は動き出す。

この……っ…外道ォォーッ!!(CV…加藤康之)

「もう…好きにして」
出会った人物が助けてくれるかもしれない。青ワカメはそう言ったが、実際出会った人物は溺れる我が身を更なる深みに突き落としてくれた。もう…どうでも良いや。抵抗は諦めたぞ。降参だ。
「アラド……うん」
そんな彼の気持ちを知ってか知らずか。アイビスはアラドに口付けた。
ちゅむ。
優しく触れ合ったのは最初だけ。次の瞬間には息をするのも忘れ、求め合った。
「はあ…っ、…む」
「はむ…ん、ちゅ…あむ」
お互いに酒気を孕んだ唾液を交換し合う。ぴちゃぴちゃと湿った水音が木霊した。
絡んだ舌がお互いを離すまいと更に絡みつき、深く深く貪り合う。生暖かい淫靡な感触に酔いつつ、互いの熱を感じ、ぶるりと背を振るわせた。
「っ…ふう」
「ふはっ…ぁん…、ん…アラド、上手い…ね」
唾液の糸を拭いもせずに互いを見合う。
「どうもこっちの方に適正があったみたいで…」
「ふふ…そうなんだ。…なら、期待しても良いのよね♪」
胸中に抱えた昂ぶりを解放すべく、何度も口付ける。その度に昂ぶりは情欲の炎となり身を焦がす。そうして、互いの唾液に塗れてベッドまで辿り着いた。

いそいそと上着を脱ぎ、それを床に放り投げた。パサリ、と音も無く落ちる。
晒した上半身が妙に寒い錯覚を覚える。
…ひょっとしてこの尋常ならざる空気の所為、なのか?

…ゴクリ

生唾を飲み込む。酒によって胡乱なこの頭。水分を欲している訳では無いのに、喉が渇いて仕様が無い。……自分は緊張しているのか?この目の前の女に。
それとも……萎縮しているのか?この目が『逝ってる』(※強調)女に…
「はぁ…はッ、ハー」
犬か何かの様に荒い吐息を隠さないアイビス。その様を見て、ブルリと身を震わせる。
悪寒が止まない。だが…今更の抵抗は意味を成さないのだ。全ては遅すぎる故に。
でも…でも、それにしたって………やっぱり怖ぇぇ!
「じっとしててね?……あたしがしてあげるよ」
そう言ってペロリ、と赤い舌を出したアイビスが密着してきた。
何時もと全く以って雰囲気が違う彼女。さっきから心臓は高鳴りっぱなし。無論、厭な予感故にだ。
だが……例えそうだとしても、今は任せるしかないのだ。
「アイビスさん…」
「ん?」
俺の声に目の前の女が止まる。…そうだ。これだけは言っておかねば。

「取り合えず…涎拭いて下さいっす」
「うえ!?」
アラドに言われて、漸く気付いた。…いけないいけない。気持ちばかりが先走り過ぎていた様だ。手の甲でそれを拭い去った。
…じゅるり。再び唾液が湧き上がってくるの感じる。極上のスウィーツを目の前にしてもこうはならない。やはり…相手が彼だからなのだろう。痩せ型だが、それでも十分に逞しいアラドの体を見て自身の裡が熱く燃えるのを感じる。
「んっ…ん」
「…っ」
首筋に唇を寄せて、軽く吸い付く。ちゅっちゅっ。淡いキスを降り注がせ、熱く滑った舌で動脈辺りを舐め上げた。れるれる…ちゅく。
「はァ…はふ、ん」
執拗に首筋を攻めながらも私の手は胸板へと伸びる。
「…ぅ」
アラドが小さく呻いたのは、指がそれを捕捉したのと同時だった。
胸板の頂点で自己主張する小さな乳頭を、だ。
「んふ…っ、っん…ちゅく」
「…ぅ、ぅ」
指先で乳輪を撫で、自己主張を始めた突起には敢えて触れない。擽ったそうに、それでももどかしそうに呻くアラドが可愛い。……ハァ。鼓動がさっきから自分でうるさい程に高鳴っている。
舌が触れた頚動脈からはトクトク、と彼の脈打つ血の流れを感じられた。その熱さと含まれている情欲は比例しているのだろう。だって…アラドの心臓は私と同じ位に吼えているのだから。
「…っ、ふふっ。じっとしててくれるからさ、やり易くて良いよ」
「…っぁ!」
くりり!人差し指と中指で突起を挟み潰してやると、急な刺激に吃驚した様な声が彼から漏れた。…ゾクゾク。怖気が止まらない。私は彼の首筋から離れ、耳朶を軽く噛んだ。
カプッ!
「ふあぁ!?」
一瞬だが、確かにビクッ、と身体を跳ね上げたアラド。それ以上に彼の口から出た悲鳴…否、嬌声?が愛欲と嗜虐心を更に煽る。…可愛い!可愛過ぎる!
「されるのにさ…慣れてない?」
「う…いや、ん…んぐ!」
耳元で囁いた私に口どもるアラド。その隙を逃さず不意打ちで唇を重ねた。軽い口付けであったが、効果は十分あった。
アラドから唇を離してしまったが、その彼の顔は真っ赤で視線は泳いでいた。
「可愛いよ…女の子みたい」
「か、可愛いって……あんまり嬉しくな、っあう!」
ちゅく。乳首を口に含んで転がしながら、ぷっくり勃起した薄桃色のそれを甘噛み。基本構造は男の子も女の子も同じ。刺激してやれば立派な性感帯となるのだ。
アラドは荒い息を吐きながら、何かに耐える様に呻く。上目遣いでそれを確認し、目と目が合う。
「どう?気持ちイイ?」
「あ、いや全ぜ(ばちこーん!)ぶべら!!」
…取り合えず、ぐーで殴っておいた。

「嘘はイケナイんじゃないかなぁ?アラド〜?(怒)」
あれだけハアハア悩ましい息を吐いておきながら、一体何を言うのかこの少年は。
ガクガクと起こした彼の体を揺すってみる。虚勢か?空元気なのか?それともそれは真実で余裕が有りって事?…私が下手って事、なの?
「あう…っ、き、気持ち良いかと問われればそれは間違い無く…」
「な、何よ…それなら問題無いじゃないの」
「否!大ありっすよ!」
「ふ、ふえ!?」
バン!叫びと共に跳ね起きたアラドは一度だけしっかとこちらを見据えて…
ソレを指差した。
「あ……え?」
「直接的な刺激の方が有難いっす」
指差されたソコ。両足の付け根。股座。御神木の眠る場所だ。

ヂィィィー…

ジッパーを下げた途端に嗅覚を刺激するその香り。…アラドの香り。青くてそれでいて、頭に霞をかける牡の香だ。
「ぅ…っ」
おずおずと物怖じしながら、それを手に取る。…柔らかい感触。外気に触れた彼のソレは小さかった。ツン。指で突付いたが反応らしい反応は無かった。
「…あ、どう…すれば良いの?」
「は?どうすればって…お好きにどうぞ?…シてくれるんですよね?」
「あ、ああ…そうだった…ね。そうだった…」
「・・・」
自分でも判る乾いた笑いを浮かべ、再び男性自身を手に取った。
「あー…」
「っ!?え?な、何?」
アラドが何か言いたそうな顔でこちらを覗き込んでいた。
「か弱い場所なんで…乱暴にゃあせんで下さいね」
「…う、ん。判った」
明るい緑色の瞳が私を射抜く。
ドクンッ!
一際高く胸がなる。温かいのか、それとも辛辣なのかは判断がつかない曖昧な感情の篭った視線。それが注がれる度に熱く何かが燃える。……アラド。

…何時までもこうしてはいられない。先に…進まないと。
「ん…っと…こう、かな」
指で竿の部分をやんわりと握り、上下に扱き始めた。
しゅっしゅっしゅこ…。こちらのか細い指に擦られ、一瞬だがアラドのそれが震えた様な気がした。
「…ん、っ…ぁ…」
妙な気分。しているのは私なのに、言い知れぬ何かが内部より沸き立ち私を苛む。
自然と喘ぎが漏れた。子宮の奥から蜜が滴ってくる。
「はぁ…はっ…はー…っ」
荒くなっていく吐息。私はこんな状態なのにアラドは微動だにせず、一切の言葉を漏らさずに見下ろしてくる。…随分と余裕があるみたいだ。逆にこっちは…余裕が削がれて行く。
「ふぅ…ふっ、ん…っ」
半分ほどの硬さになった一物。その先端から滲む滑った液体が指に絡みつく。
アラドがここに至り口を開いた。
「漸く、先走りに到達?…ツグミさんはもっと早かったっすよ?」
「…っ」
…その一言にムッ、とした。…ツグミ?よりによって彼女?私が下手って事か。
否…違う。そんな事は些事だ。本当は…今だけでも良いから、私だけを見てくれないアラドがちょっと悲しかった。
「なら…これで、どう?」
ぬちゃり。粘液を纏った指先で裏筋を、尿道を刺激しながら扱き上げる。
「っ!…ぅ、良い感じっす…そのまま」
「こう?…こうで良いの…?」
ようやく効果が見出せた。相変わらず仏頂面のアラドだったが、彼の息子には変化が現われる。半勃ちのそれは見る間に屹立し、ムクムクと大きくなっていく。
しこっしこしこっしゅこ…粘つくカウパーに塗れた指先。そして…
「…っ、っ!?」
同様にテラテラ黒光りするアラドのそれが眼前に。

…ゴキュ。

意図せずに唾を飲み込んだ。…これが、アラド?さっきはあんなに小さかったのに?
これは何なのだろうか。臍の辺りまで反り返るアラド自身。それは凶器と言う名称がぴったりだ。これは…どうしたものか。
「これでお終いっすか?」
!…こちらの反応を見て楽しむ様なアラドの視線。口の端は釣り上がり、嘲る言葉が私を打つ。だが、逆にそれが火を点ける。
「………良し。決めた」
「え?」
一端アラドの元を離れ、床に立つ。そして…パサ。着衣を全て脱ぎ捨てた。
「あたしだって…戦う覚悟は出来ている…!」
小細工は最早無用。…ぶつけるだけ。そうして私はアラドに跨った。

「か、覚悟は出来てるって……正気かよ」
「煩い!君はじっとしてれば良いの!」
跨ってきた彼女が俺の一物に挑みかかる。濡れた柔肉に先端が触れ、生暖かい感触に愚息が更に硬さを増す。
このまま彼女が腰を落とせば、そこにジャスティンは成る。…チームTDコンプリート達成と同時に人間の屑もまた確定する。まぁ、そんな事はどうでも良い。
「・・・」
「ぅ…」
だが、何時まで経っても彼女が腰を落とす事は無かった。彼女の様子を見て悟る。
ああ。駄目だこりゃ。だって、完全に腰が引けてるんだもの。
「へ、へへ…怖気付いたっすか?お姉さん?」
「な、何を…そんな事…!」
軽く挑発してみると彼女は直ぐにそれに掛かった。
「ああ…皆まで言わない。事が事ですからね。それが当然でしょう、それが」
「……どの時点で、気付いてたの?」
「竿を取り出した辺りで。……雑談はそれ位にしてさ。若し、アンタに疑問が少しでもあるんなら、この先は踏み込む冪じゃあない。俺としても責任が重い…」
「イヤだよ!ここまで来て…途中で止めるなんて!」
拒絶の言葉が吐かれた。あくまで初志は貫徹するつもりらしい。…だが。
「気持ちは判るけど…そんな及び腰でどうするつもりっすか」
「あぅ」
気持ちが空回り気味なアイビス。そんな状態ではまともに行為に至れる筈が無い。

(……仕方ねえ。余計かもしれないが、助け舟を出すか)

「ふやっ!?」
彼女が可愛い悲鳴を一鳴き。
空いた片手でアイビスの腰をぐっと引き寄せる。もう片手はアイビスの手を愚息へと導き、しっかりと握らせてやった。
「どうっすか?これ以上のお膳立ては望めないっすよ」
「…っ…う、ん」
「さっきアンタ、覚悟出来てるって言ったけど…そりゃどの程度のもんなんすかね?
もう一度言うけど、半端な覚悟なら…挑むのは止めときな。身を切るのと同義だがらね」
実際問題、彼女の覚悟とやらを試したいので煽ってみた。責任を負うのは俺と彼女なのだから後になって後悔はして欲しくないし、何より俺自身が負い目を負いたくないのだ。
若し…彼女が行為を諦めたとしたらそれも一興…否、僥倖。願っても無い事だ。
「……に、しな…でよ」
恐らく、俺は心の奥底でそれを望んでいたろう。だが、結果としてそれは…
「アイビスさん?」
「馬鹿にしないでよ!!」
グプゥ!…ミチミチッ!!
アイビスが腰を落とした。頑なな肉の抵抗感から始まり、狭く温かい感触。その後に一瞬だが先端に感じた引っ掛かり。
メリッ、とかブチッ、とか…肉を裂いた感触が先端から伝わってきた。
「っ!…う、え?…まさか」
「っっ!!?…っぐ…が、ぁ…ぁ」

どうやら…それは叶えられなかったらしい。逆に俺の死期を早めただけだった。

「なんつー無茶な…」
「ぐ……う、ううぅ…あく…」
目を落とした結合部から細い赤い筋が伝う。アイビスは…荒い息で涙を流しながら破瓜の痛みに耐えていた。
男を受け入れた事の無い処女の秘洞。多少濡れていたと言っても、前戯も無しに咥え込めば激痛が襲うのは必至。先走った余り、アイビスはそれをやってしまったのだ。
「い、痛いの痛いの…俺の方に飛んでけー」
痛みに咽び泣く彼女の頭をしっかと抱き、撫でる。鮮やかな橙の髪は柔らかくて、良い香りがする。こんな事をしても彼女の痛みの鎮痛剤にはならないが、そうしたいと言う気持ちがその行為に走らせる。ナデナデナデ……こう言う時のおまじないはバランガバラン…おっとっと。
何か…ちょっと胸が痛む。これって俺がリードしてたら…違ってたかもなぁ。もう遅いけどさ。
あう…動かしてないのに、きつい。


………痛い。


膣を中心に伝播する灼熱の傷みが思考を霞ませる。一息に飲み込んだアラドの剣は剛健な硬さを持ち、その熱が更に痛みに火を点けた。
「ぐ……う、ううぅ…あく…」
我ながら情けない声を垂れ流す。ピクピク蠢く己の膣。そして彼の剛直がピクリ、と動く度に熱さは灼熱感となり、身体の全ての動きを止めるさせるのだ。
痛い…痛い…そして、熱い。
半端な覚悟ではなかった、筈。だが、破瓜の痛みに動けない自身の不甲斐無さが憐れで滑稽に思えた。
アラドはそんな私の頭を優しく抱き、撫でてくれた。
「い、痛いの痛いの…俺の方に飛んでけー」
…くす。馬鹿っぽくて笑えて来た。無論、彼ではなく私だ。
これでは…どちらが年上なのか分かりはしない。
「んんっ!」
「むっ…!!」
涙で滲んでアラドの顔は見えはしないが…唇を重ねる。薄く、柔らかい唇が触れ合う。
閉じられた口を割り、己の舌を捻じ込み、絡ませた。
くちゅっぷちゅちゅ…くぐもった水音が耳の奥に届く。
彼の唾液を啜り、自身の口腔を満たす唾液をアラドに送ると口の端から唾液が漏れた。
カリッ。アラドの舌の先を軽く噛んでこちらの奥に引っ張り込む。
ちゅっ、ちゅううぅぅ…それを飲み込む様に強く強く吸った。
(このままじゃ…流石に格好悪いよね)

「っ…いいっ!?アイビスさ…」
「くっ…!ん、ぐっ…痛ぅ…」
やたらディープな接吻が終わったと思ったら、今度は愚息が甘美な刺激を受ける。
扱き上げられる感覚がある。それはつまり…
「アイビスさん!無茶は…」
ぎこちない動きだが、確かに彼女の腰が上下に動いている。ぱつぱつと結合部から漏れる音がその証だ。一体彼女は何を。痛みで動けないんじゃなかったのか?
「あは…っ♪気持ち良い?ねぇ…気持ち良い?アラドぉ」
彼女の顔を見て固まる。涙でくしゃくしゃになり、半ば苦悶で占められたアイビスの表情。
痛みは未だあるだろうにそれに耐え、懸命に腰を振り続ける。こちらを果てさせる為にだ。
そして、もう半分の恍惚とした女の顔。心臓が大きく高鳴り、同時に欲情が下半身を中心に渦巻く。
「う…あ、ん…た、大変宜しいのではないかと……っ」
「良かった……。あたしのオ○ンコで…んんっ、感じてくれてるんだぁ」
あー、駄目だ。見てて痛々しいから止めろとは言えない空気。それ以上に俺自身が止めて欲しくない。
「沢山…しゃぶってあげるからね?いっぱい…気持ち良くなってね?」
ギチギチに締め上げられる。火傷しそうな程に火照った内壁が愚息を押し潰さんばかりに圧迫してくる。そんな状態の上、更に扱かれれば自然と射精のボルテージは上がっていくものだ。
「う…」
呻きが漏れる。彼女の様子は相変わらずで、唇を噛み、目をきつく閉じた状態で腰を上下させていた。……なんつーか、健気だ。普段の勝気で若干男勝りの彼女の顔を見ている故にギャップが大きい。こんな側面も…あったんだなぁ。
「うぐっ!!」
意識が飛んでいた為、愚息の守りが疎かだった。突然ギュッ、と締まったアイビスの膣に強烈に絞れられる感覚を覚え、焦る。ちょっと…ま、拙い…!
「アラドの…ピクピクしてる…。出ちゃう?もう、出ちゃうの…?」
「うぐぁ…っ、づ…!」
耳元で息を吹きかけられ、少しだが仰け反った。エロい声がこちらの装甲を剥ぎ取って行く。機体温度は上昇し、既にオーバーヒート。動く事も儘ならない。
……ふう。もう限界だ。ここらで一発、濃い〜のを注いでおくか。
「ふっ…ぐ……で、出ます。出そうです…っ」
「あは!出ちゃうんだぁ。イイよ?我慢しないで…?」
げげ!打ち付ける腰が更に早まる。止めを刺す、つもりだ。
襞が今までに無い程に愚息を舐め上げ、こちらの守りを突破する。腹に力を入れて耐えるも、それも今となっては蟷螂の斧。虚しい抵抗だ。……うん。負け。俺の負け。
「ぅ…そ、それじゃぁ…遠慮無く」
「き、来てぇ…沢山飲ませてぇ♪」
アイビスの声に導かれるままに解き放つ。我ながら今回は早い。だが、構うものかい!
そんなに欲しいなら…俺の子種!受け取れぃ!
「っお…ぐうっ!!ぅ…あ…ぁ!」
「ひぁっ!…あ、ああ…あつ、ぁ……ぁ、ぁ」
昇り詰め、一滴残らずアイビスの子宮に注ぎ込んだ。

「ふあ…ぁ、あふっ…ふ、っ…」
疲れ果て、だがそれでも満ち足りた表情でアイビスは脱力。こちらにしな垂れかかる。
「んぅ…っ、おなか…あったかいよ?…アラドのでさ…ふ、ふふ」
身体を預けたまま、頬に、首筋にキスの雨を降らせて来る。
「アラドのが…あたしに納まってる。…んふ、判る?」
彼女の指がこちらの手を掴み、その場所…腹の上に導いた。しっとりと汗で濡れた彼女のお腹。その場所には己の肉棒がある。同時に、吐き出した精液もが、だ。
「ずっと、さ…こうしたかったんだぁ」
「え…?…ふっ、ぐ!」
突如として首筋に発生した刺激と熱さに戦慄く。チュッヂュウ!アイビスが強く吸い付いた。痕が一つや二つ残るかもしれない。
「あはぁ♪唾…付けたからね♪」
確認した彼女の顔は何か大きな仕事を成し遂げたかの如く満足気であった。そして、ぷにぷに俺のほっぺを指先で小突きながら微笑むのであった。
…唾を付けた。その台詞に込められた意味。己を取り巻く状況が取り返しの付かない所まで来たのだ。
だが……そんな今の状況が何処か他人事に見えた。今…己の目に留まるのは唯一つの事象のみ。
はぁ……一際大きく息を吐く。

そう。ここからは…俺の時間だ。

「くひぃ!?つぁ…ぁ…ぅ」
彼女の膣に収まった愚息は未だ衰えずにそそり立つ。それを最奥目掛けて打ち込んでやった。案の定、下腹部から生まれた刺激にアイビスは仰け反り、苦悶の表情を晒した。
「ア、アラド…い、一体な…きゃうん!」
ぐにっ。彼女の控えめな…それでもしっかりと実用に足る胸を握り潰し囁く。
「攻守交替って奴っすよ。…あんな甲斐甲斐しい様を見せられて黙ってるなんざぁ男が廃るっす!だから…」
「だ、だから…?」
アイビスの脅えた表情がこちらの情欲に油を注いだ。可能な限り、泣かせたいし、よがらせたい。己が黒い面が一斉に発露する。これは苛めたくなりますな。
「今度は俺がアイビスさんを良くしてあげますよ…ふ、ふひゃひゃひゃ…」
「ッ!…ひ、ひィッ」
気力限界突破。「極」発動。精神コマンド「直撃」「魂」「必中」「幸運」「努力」「鉄壁」のオマケ付きだ。しかして、エッチの時に「極」は一体何の役に立つのか?それは誰も知らない。…会心のクリティカルが出やすくなる位だろうか?

「あっ…!」
ドン。体を預けっぱなしだった彼女を跳ね除けた。脱力し、支えが聞かない彼女の身体は少しの力で後ろに倒れる。トサ。ベッドに身体を預ける結果となった。
「ぁ…っ…や、あ…」
弱弱しく萎縮したアイビスの声に加えて、その捨てられた子犬の様な表情が嗜虐心を煽ってくる。
「痛くしないから。そんなに怖がらなくても良いっすよ」
ぶっきらぼうに言葉を吐き捨て、今度はじっくりと彼女の身体を眺める。
余計な肉は付かないしなやかな肢体だ。普段、あれだけ甘いものを食べているのにこの細さ。白い肌は紅潮して更に汗ばみ、全身に紅葉を散らす。
胸は小ぶりだが、その中心で突起はしっかりと勃起している。
何と言うか…美味そう。今ここで噛り付いたら彼女はどんな声を上げるのかあらぬ妄想を掻き立てられた。
そして、処女肉を断ち割り己が分身を咥え込むアイビスの秘部。出血はもう無い様で、その代わりに少量の透明な粘液を吐き出し、愚息もそれに塗れていた。注いだモノは漏れていない様で、未だに彼女の裡に収まっているだろう事が予想できた。
そして、注目したのが結合部の直上。髪色と同じ薄いヘアから覗く、自己主張する痛い程に勃起したアイビスの小さな真珠。…迷わずに指が動いた。
「っ、ふあぁんっ!」
包皮の上から軽く触れただけで、彼女が鳴いた。
やはり…。男を受け入れた事が無い娘。それならば、内部を掻き回されるよりは外性器による刺激の方が確実に昂ぶらせる事が出来ると言うもの。
「ここ…やっぱり弱いっすか?」
「ぁぅう!駄目…あ、あんまり弄らないでよぅ!」
「弱いみたいっすね?ツグミさんもスレイさんも弱いんすよね」
あははは、と無邪気に笑いながら捏ねる。その度、ビクビク肢体を痙攣させるアイビスとその引き攣った声が面白くて、口の端が自然と歪む。
「良い感じみたいっす。したらば…剥いちゃいましょうか」
「ふえっ!?む、剥くって…っ!?ああああ!!」
彼女の言葉は紡がれない。包皮を摘み、捲り上げた瞬間にアイビスは白い喉を見せて仰け反った。外気に触れただけでこれなら…
「陰核…あんま弄ってないみたいっすね。ちょっと痛いかな?なら…」
扱いは繊細に。結合部から漏れる愛液を指に絡ませ、剥き出しになった彼女のペニスを軽く摘んだ。
「んぎィ!!きひっ!!!」
「おおぅ」
一瞬だが今確かに彼女の腰が浮いた。それと共に腹に収まった愚息が小刻みに締め付けられる。とろり、と奥から分泌される汁はとろみと量を増し、彼女の柔肉は更に柔らかさを増す。どうやら、効果はあった模様。
「どうっすか?こんなもんで」
「っあ!あ、あはぁ!!あー!」
指の腹で圧迫しながらの扱き上げ。ビンビンに勃起したそれを優しく扱うのに神経を使う。
だが、彼女の口から発せられるのは熱の篭った嬌声ばかりで良いのか悪いのかの判別が付かない。あー、否。間違い無く前者だろうが。
喘ぎ、劈くアイビス。その腹の一部分。臍の下…膀胱の辺りを強く指で押す。
「くひっ!」
明らかに今までとは違う反応が返ってきた。期待に胸を膨らませつつ問うた。
「未だ…痛むっすか?」
「くふっ…ぅ、んん…奥の方、は少し。でも…我慢出来る、よ?」
よっしゃ!ゴーサインが出た。後は…ふ、ふへへへ。

長時間、アイビスの膣に居ても尚、己が愚息は余裕を失わずにいた。一度射精しただけあり、ボルテージの上がり方は牛歩の如しだ。
「俺に任せてくれますか?」
「…ん」
コクン。目を瞑り彼女はゆっくりと、力強く頷く。この先は己に全てを委ねると同意してくれた。
指でそっと彼女の涙の跡をなぞった。そこに刻まれるのは新たな涙の筋と言う確証。しかしそれは痛みの、ではなく歓喜のである事。
痛みだけを与え、そのまま放り出す事などは出来ぬ。一度犯ると決めたのならこちらの仕事もきっちり果たさなければなるまいて。
「俺の股間…もとい、沽券に関わる事っすから」
「は?」
その為にこの戦、勝利させて貰う!

「最初はゆっくり…っと」
「あ、あぁ…アラドぉ」
愚息の往復はかなりゆっくりな速度で、入口から中程までを重点的に行う。奥は未だ痛むと言う彼女の声を重視してのものだ。
くちゅりくちゅり。湿った水音だけが部屋に木霊し、己と彼女の耳に届く。
「はっ…っ、はあ」
「あ、あん…あふ…っ!…んぁ…やぁ」
彼女の細い腰を掴み、慎重に膣壁を擦り上げる。先程までとは違い、アイビスの膣には頑なさは既に無く、千切り取らんばかりの膣圧はそのままに奥へ奥へと滑った襞が一物を誘う。
「あん♪」
時折、敏感な場所を雁首が擦り上げるとアイビスは身体をビクつかせ鳴くのだ。その様を見せ付けられ、理性の螺子が飛びそうになるのを抑え付ける。
…正直、もどかしい。射精には間がある。しかし、精神的には余裕が着々と削られていく。
今直ぐ、腰を猿の様に振ってアイビスを味わい尽くしたい。声が嗄れるまで泣かせたい。
そんな己が暗い欲望に身を任せてしまいそうになる。
だが、それは憚られた。彼女は破瓜の痛みに耐え、こちらを絶頂へと導いた。為らば、こちらもそれに準拠すべきだと無理に結論付けた。
しかし…例えこれが試練だとしてもこれはきつい。俺は若いんだ…!初回だけだとしても…この女、今まで一番の強敵かもしれない。

・・・・・・・・・

ずっ、ずりゅりゅ…ぷちゅ。にゅぷぷっ、ぷちゅっ…
「っ、ぐ……うう、っく」
「っは!ひゃん!…あはん♪あ、あああんっ♪」
かなり長い時間、中程までの挿入を行っている気がする。にちゃにちゃ糸を引く結合部からは蜜が止め処無く流れ、ベッドシーツに水溜りを作る勢いであった。
アイビスもすっかり出来あがり、ブルリ、と身を震わせて短いストロークを甘受する。甘い喘ぎを吐きながら、一物を刺激するアイビスの膣襞は苛烈さを増していく。
く、糞…。何時になったら突貫出来るんだ。
何時まで耐えられるのか。己自身、理性が消えかける恐怖と格闘中。
そうして…
「はあっ、はー…っ、アラドぉ」
「う、え…」
漸く…
「もう平気、だから…ね?」
「アイビスさ…」
彼女の方が我慢出来なくなった様だ。
「一番奥まで…愛して♪」
………勝った!囁かれた言葉。その通りに最奥へと遠慮無くブチ込んだ。

「ひぐぅ!!…かっ、はぁ…!」
その瞬間にアイビスは爆ぜる。きつくシーツを握り締め、己が裡から生まれる快楽に息をするのも忘れた様子。だが、未だだ。
「いやあ…別の意味で辛かったっすわ」
ズプン!ズプチュ!内壁を削り取るが如し。今迄の牛歩の歩みとは対照的に基本的に荒々しい動きで最奥を抉る。
「ひっ…かはっ!ふあ!あ、あふん♪」
「でも、漸く解放されたっすよ。どうっすか?具合は…って、聞こえて無いみたいっすね」
無論、多少の手加減はしてあるが。しかし、それを差し引いたとしても今の彼女の顔に浮かぶのは愉悦であり、肉欲に支配された牝としての顔だ。まともな返答は返って来ない。否…嬉しそうに肉棒を加え、しゃぶり尽くそうとするアイビス自身が十分な返答をしてくれている。
「悦んでくれてるなら幸いだけど…やっぱ人語で喋って欲しいな」
「あひっ!あひぃぃん♪」
ヒイヒイよがるアイビスは犬そのものと言った様相を呈してきた。何だかなぁ。ツグミがアイビスを溺愛する理由の一端が少しだけ判った様な?…否、判らない方が良いな。俺には人間の女を飼う趣味は無いんだから。
亀頭の先を子宮口に埋め込んだ状態で改めて尋ねた。
「どうです?堪らなくなってきちゃいました?」
「ハー、ハアッ…す、凄…い♪奥っ、奥まで…擦られて…もう、ワケ判らないよぅ…♪」
一応は人語の回答が返って来た。…そうですか。訳が判りませんか。
「…なら、もっと幸せにしてあげますね」
馬鹿になっちゃえ♪
此処に至って理性の手綱を緩める。ベロリ、と唇を舐め上げた。
加減は忘れ、思うが侭にアイビスを貪る。
「いぎィ!!?くはっ…が、は…げしっ!激しいよぅ♪」
バスバス最奥を目指して腰を叩き込む。ギシギシ軋むベッドとガクガク揺れるアイビス。熱い滑りは何枚もの舌となり愚息を舐め上げ、締まりは万力の如く。一突きする度に彼女は歓喜の悲鳴を上げ、子宮口を小突く度に愛液は飛沫く。
「いやいや…意図的に激しくしてるんですよ。もうこれ位が丁度良いんじゃないっすか?」
「ら、らめ!らめえ!判ら…わはらなうなるぅぅ♪♪」
呂律が回らず、涎と涙を垂れ流し喘ぐ。そうだ。俺はこれを望んでいた!
お前を壊してやる!なんてな。
「も、もう…もうっ!らめぇ…!!!」
膣壁が切なげに痙攣し、アイビス自身も全身が張り詰める。来た来た来た…!
「我慢は要らねぇ。…派手に逝ってみせてください?」
「く、来るよぅ!お、大きいの…来ちゃうぅぅぅ!!!」
大きな劈きが鼓膜に響いて痛い程だ。俺は慈悲などは与えず、止めを刺しに行く。
先程、捲り上げてそのままの陰核。それを捻り上げた。グリッ。
「ぎっ!?っあああああああああああ!!!」
一際大きな声。ぎゅうぎゅう締め上げる柔肉の感触と共に仰け反るアイビス。達した事は明らか。
…ふう。
意趣返しは此処に成った。後は…


後は…こっちの始末を付けるだけだ。

「い、いや…いやぁ!い、今…駄目ぇ!今…私、逝って…♪」
「寂しい事言わないで下さいよ。俺…未だっすから」
達している最中に更に奥を突き上げられ、アイビスはイヤイヤしながら行為の中断を求めてくる。快楽の大波に晒されている最中の彼女に更なる快楽の上塗りが待つ。
「あー…後もう少しなんで。ね?」
「ぁ…ぁ…もう、限界だよぅ…♪」
それは却下。口では否定しようとも、貴女の膣は俺の愚息を離してくれませんよ?それこそ射精をねだる様に吸い付いてきます。これは如何に?
「えっちぃなあ。アイビスさん。ほら…判ります?さっき出した俺のとアイビスさんの汁が音立ててるの」
「い、いやぁ…!」
じゅぷっじゅぷぷ。淫らな水音は絶え間ない。アイビスは顔を手で覆い、それを見ようとはしない。蜜壷で精液と愛液が攪拌され、隙間から泡立ち流れ出る。その視覚的効果は大きく、愚息は今度こそ痺れ始めた。
「っぐ…くそ、しんどい…な」
「あん!あんん♪あん!」
ポタリ。鼻の頭から汗の雫が伝った。最早全身が満身創痍。動く度に筋肉は悲鳴を上げ、軋む。腰の感覚は殆ど希薄で、それこそ一物から伝わるアイビスの感覚以外は無いと言っても過言では無い。
ぐちゃぐちゃ粘つく音を立てる結合部は熱を帯び、湯気すら立ちそうな状態。肉を割り、蹂躙する愚息は溶けそうで、己との境界がどこまでも曖昧。
それ以上にヤバイのは脳味噌で、何度劈かれる彼女の黄色い声と思わず咽帰る程濃密な牝の香にやられて、今はもう軽口を叩く事も、余裕ある発言すら出て来ない。
唯一つの…ブチ撒けたいと言う強い考え以外は軒並み看板を下ろした。
もう少し…もう、少し…!
「ぁ…アラドぉ」
アイビスが首に手を回して来た。何度も突かれ、絶頂に絶頂の上塗りを重ねられた彼女の顔はとても淫靡で、そして綺麗だった。
「…好き」
「う…え?」
その一言。その一言がどんな刺激よりも射精感を強烈に煽った。
愚息がオーバーフローを訴える。アイビスの背中に手をやり、抱き起こした。
「好きぃ…アラドぉ!好きぃ!」
「ぐ、ぐぅ…っ」
最奥まで収まった己が剣。もう爆発しそうで、間はもう無い。それを予期したか、アイビスの膣は締まり、射精を促す。
好き…と言うその言葉。俺は言葉を返さず、代わりにこれがその答えとばかりに打ち込んだ。
「アイ…ビス、さん……っ!!」
「っ!ふああああああああああああ!!!」
二度目の、それでも濃度、量共に一度目以上の白濁が注がれた。
勝った!…そして、落とした!一仕事終えた様に俺は満ち足りて……

…って!勝つ事はまだしも、落とす事が目的じゃあねぇだろ!
セルフツッコミが脳内に虚しく響く…

後始末は全て終わり、ベッドサイドに腰掛け琥珀色の中身をひたすらに呷った。
「痛ぅ…」
背中が痛む。絶頂の間際にアイビスが刻んだ爪の跡が。嘗てツグミが刻んだそれを上塗る様に刻まれたそれが何とも暗示的ではないか。
「…っ、アラド……」
その犯人は既に夢の中。大の字でベッドを占領し。こちらが入る場所が無い。
「さぁて…俺ぁ…どうなるのかな」
半ば脅迫。そして半ば覚悟を決めて掛かった今回の情事。だが…状況がどう動こうが、今の自分にはどうでも良い事だった。
きっと、今以上の地獄は無い。なら、今を生きている俺にとってはどう転んでも天国になり得るだろう。そう、結論を付けて、思考を閉じた。
「・・・」
テーブルに放置された煙草。イングラムに譲られたそれに目が行った。それを徐に掴み、一本取り出した
「えーっと」
イングラムが、アイビスがそうした様に加え、そしてフィルターを吸いながらライターに火を点す。ジジジ…先端に火が渡り紫煙が立ち昇る。
「……ぶっ!ぐっ、げほっ!げぼっ!」
その煙が肺に到達した途端、咽て煙を全て吐き出した。…不味い。そして気持ち悪い。
「っ、げふ。大人って…こんなもん吸って喜んでんのか」
理解が出来ない。出来ないが…
「ちょっと…良いかも、な」
それを飲みかけのグラスに放り込んでベッドに倒れ込んだ。
ヤニでクラクラする頭。胡乱な思考の一切を忘れ、襲い来る睡魔に身を任せた。


サードステージ戦況報告。
撃墜数…1。アイビス=ダグラス。
獲得経験値…36。獲得PP…200。
獲得強化パーツ…青ワカメ愛用シガレット+オイルライター、チャコール・メローイングが要るアレ。

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