先日の戦闘で、ボクの撃墜数は50機に達した。
 とはいえ、パイロットとしてはむしろここからが本番だ。この撃墜数が運ではなく実力によるものだと証明していかなくてはならない。
 自分にそう言い聞かせる一方で、やはり達成感も胸の内を満たしていた。

 ――アヤ大尉も、少しはボクの事を認めてくれるだろうか?

 憧れの上官の顔を思い浮かべつつ、ボクは夕食を済ませて自分の部屋へと戻る。
「お帰りなさい」
 ドアを開けたボクを、ベッドの上に座ったアヤ大尉が出迎えてくれた。
 しかも、いつもの軍服姿ではない。
 緑の黒髪を飾る猫耳バンド。
 首には大きなピンク色のリボン。
 白い肌に鮮やかに映える、黒いファー素材のビキニ。
 スラリとした手足を飾る青い手袋とブーツも、今は猫の足を模した黒い物に替わっている。
 バニーガールならぬキャットガールとでも言うべき出で立ちだ。
「…………」
 その時ボクは、本気で部屋を間違えたのだと思った。アヤ大尉の事を考えてる内に、無意識に彼女の部屋に来てしまったのだと。
 だが、廊下に身を乗り出してネームプレートを確認すると、そこには確かにボクの名前が記されてある。
 そもそも、ここが彼女の部屋なら、ボクの部屋のロックナンバーが通るはずがない。
 そして彼女は、確かに「お帰りなさい」と言った。
 つまり、やはりここはボクの部屋だという事だ。
 そして、何故かアヤ大尉は、その“ボクの部屋”で大胆なコスチュームに身を包んでいるという事で……。
「……何ですか?」
 間の抜けた声で、そう質問するしかなかった。
「似合う?」
 アヤ大尉はベッドから下りて、両腕を広げてクルリと一回転。まるで新しいお洋服を見せびらかす少女のようだ。
「とても、可愛いです」
 今一会話になってないような気もしたが、ボクは素直な感想を口にした。
「そう? 良かった♪」
 とても嬉しそうな、満面の笑顔。
 それを見ていると、心が安らいでいく。
「新しいエースパイロットさんへの、私からのご褒美よ?」
 アヤ大尉はそばに歩み寄ると、スッと両腕をボクの首に回した。
 甘やかな香りが、鼻をくすぐる。
 ビキニトップから覗く深い胸の谷間に、視線が吸い寄せられた。
「今夜は、アナタのペットになってあげる」
 唇が艶めかしく動き、過激な言葉を紡ぎ出す。
「私を、アナタだけのエッチな雌猫にして? ご主人様……♪」
 その言葉で、ボクの中の何かが切れた。
 ボクはアヤ大尉を荒々しく抱き締め、ベッドに押し倒す。
「本当に、良いんですね?」
「ええ」
 アヤ大尉は優しい笑みを浮かべていた。だけど、その瞳は確かに濡れている。
「でも、勘違いしないでね?」
 手袋を外した白い指先が、ボクの頬を撫でる。
「誰にでも、こんな事をする訳じゃないのよ?」
「わかっています」
 そう答えて、ボクは唇を重ねた。
 唇の柔らかさと温かさを確かめていると、彼女の方から舌を入れてきた。
 驚きながらもそれに応じる。
 ボクのぎこちない舌使いに対して、アヤ大尉の舌は滑らかに動いてボクの口の中を這い回り、舌に絡みつく。
「――んっ」
 彼女の首筋を吸っていると、突然股間に刺激が走り、ボクは腰を浮かせてしまった。
 ズボン越しに、アヤ大尉がボクの物を愛撫している。
「ふふ、もうこんなにしちゃってぇ……」
 嬉しそうにつぶやきながら、彼女は指に力を込めてグニグニとこね回す。
「パンパンになってるわね。今にもはちきれそうなくらい」
 時に優しく、時に激しく、アヤ大尉の手が蠢いている。
「どうしてほしいの? もう切なくて仕方がないんでしょう?」
 なぶるような口調でささやかれ、ボクは恐る恐る自分の欲求を口にした。
「大尉に……口でしてほしいです……」
「ふふ、素直で良い子ね……立って?」
 言われてボクは体を起こし、ベッドから下りた。
 アヤ大尉はボクの足下に座り込むと、慣れた手つきでズボンとパンツを下ろす。
 ――さっきの舌使いといいこの手慣れた動きといい、それ相応に経験しているのだろうとわかる。彼女ほどの美人なら、当然かも知れない。
 それでも、彼女がボク以外の男にもこういう事をしてあげてたのかと思うと、どす黒いものが胸の内に湧き上がってくる。

 ――ヌムムッ。

 柔らかい物に包み込まれる感触に、そんなボクの嫉妬は一気に吹き飛んだ。
 アヤ大尉が上目使いにこちらの様子を伺いながら、フェラチオを始めた。
 最初はボクの物のサイズを確認するかのようにゆっくりと唇を往復させる。そして徐々にその速度が増していった。
 口の中に唾液を溜め込み、ボクに聞こえるようわざとはしたない音を立ててしゃぶる。
 舌先が裏筋やカリ首をくすぐり、玉を転がした。
 憧れの女性の丹念な奉仕がもたらす快感に、ボクは腰が抜けそうだった。
「どう? 私のお口は気に入った?」
 口から唾液の糸を垂らしながら、アヤ大尉は尋ねる。
「はい……気持ち良すぎて、何だか夢みたいです」
 ボクは彼女の髪を撫でながら、本当にこれは夢なんじゃないかと思えてきた。
「……そうね。夢だと思って、存分に気持ち良くなりなさい?」
 アヤ大尉はもう一度ボクの物を丸呑みにして、頬をすぼめてしゃぶり立てた。 口が吸い付いてきて、ボクはドンドン高められていく。
「大尉、出ちゃいそうです……」
 このまま口に出すのはマズいと思い、爆発が近い事を報せる。
 だけどアヤ大尉は、更に激しくしゃぶり、吸い上げた。
 喉の入り口に先端が触れた瞬間、ボクは耐えきれなくなって、射精してしまった。
 射精が終わってもアヤ大尉は離してくれない。音を立てて尿道内の残り汁を吸い、クチュクチュと音を立てて唾液と混ぜ合わせてから、ボクの目を見上げながら飲み下した。
 白い喉がコクッコクッと鳴り、口の中が収縮するのが感覚でわかった。
 全てを飲み下したアヤ大尉がボクを解放すると同時に、ボクは本当に腰が抜けて、その場な座り込んでしまう。
「そんなに良かったの?」
 その様がおかしかったのか、アヤ大尉はコロコロと笑った。
「はい……」
 ボクは頭がボンヤリしてて、それだけしか答えられなかった。
 そんなボクを、彼女は優しく抱き締める。
「今夜はここまでだけど、アナタが頑張ればまたご褒美をあげるからね?」
 子供にするような柔らかな手つきで、彼女の指がボクの頭を撫でる。
「はい、頑張ります……アヤ大尉のために……」
 まるで母親に抱かれているような心持ちになりながら、ボクは答えた。
 どうしたんだろう、急に眠気が押し寄せてくる。そんなに疲れている訳でもないのに……。
「良いのよ、ゆっくりお休みなさい?」 アヤ大尉の声に奇妙な安心感を覚えて、ボクは目を閉じた。


 翌朝、目を覚ますとアヤ大尉はいなかった。
 食堂に行くと、そこでバッタリ出くわす。
「おはよう、新人くん」
 いつも通りの明るい笑顔。本当にいつも通りだ。
 やはりあれは夢だったのか………当然といえば当然だ。
 だけど、いつも通りのアヤ大尉に安心もしていた。
「今日も頑張りましょうね」
 だから、そう言って立ち去るアヤ大尉の首筋に、うっすらと赤い痕が付いている事に、ボクは気付かなかった。

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