三顧の礼。
 古来の伝承に由来する言葉。
 優秀な人材を獲得し、重要な仕事を引き受けて貰う為には、礼を尽くし、相応の処遇をもってしなければならないこと。
 〜MOEYON〜より抜粋。


 その優秀な人材を捜す一人の女性がいた。
 ミツコ・イスルギ。 言うまでもなく、イスルギ重工の社長さんである。
 マオ社の専売特許である『念動』を何としてでも解明し、自社の利益にしなくては成らない。
 だから、どんな手段を持ってしても念動者を手に入れなくては成らない。
 そう、自分の身を犠牲にしてまでも―――
 と、最初は悲壮な決意で始めようと思ってたらしいんだけど。
 ………あれ?




「艦長! 救難信号をキャッチしました!」
 慌ただしい声がブリッジに響く。
 そして、その声に合わせるようにその信号の主がクローズアップされる。
 ブルックリン・ラックフィールド。
 その姿が確認された瞬間、一人の女性に笑みが浮かばれた。
 その女性とは、水葉楠葉。
 正直、当て字のような名前の女性である。
 ま、そんな名前に関して個人的な主観を述べても仕方がない。
 とにかく、そのクスハさんは今まで行方不明だった恋人の為に
 趣味で作っていた健康飲料をその手に抱え、ブリットを迎えに行くのだが……

「おかえりなさい! ブリット君!」
 正直、恋人に対して君付けはどうよ……
 ブリットを迎えた戦艦内の一同が一斉に心の中で突っ込んだ。
 とりあえず、満面の笑みを浮かべてるクスハさんには、突っ込むのはどうかと思い、誰一人口には出さなかったが。
「あ……ああ……ただ…いま」
 ブリットは、そんなクスハに対して元気に応えることは出来なかった。
 ―――良心の呵責? それとも、社長との情事を思い出して?―――
「…悪ぃクスハ、ちょっと一人にさせてくれないか?」
「ブリット君……?」
 怪訝がるのはクスハの方だ。
「つ、疲れたんだねブリット君、よ、よかったらこれでも飲んで元気、取り戻してね」
 おずおずと自慢の健康飲料を取り出す。
「疲れてるって謂ってるんだよ!」  バシン!
 乾いた音が響いた。
 その場にいた者、全員が注目した。
 ブリットの平手がクスハの手に命中した。
 カラン…
 クスハの手からカップが零れ落ちる。
 それは、クスハがブリットの為に作った健康飲料。
 それを、ブリットは叩き落としたのだった。
 この行動に一番驚いたのは、他ならぬブリット自身であったという。

「ったく、俺は何をやってるんだ!」
 一人になった、暗い自室の中でブリットは自問自答している。
 クスハに対し非道い行為をとったこととの後悔と、ミツコの蠱惑的な魅力。
 その二つを考えると、暗澹とした気持ちになってくる。
 あの時ミツコは言った。
「今から鎖をときますわね。
 けど、契約は勿論果たして頂きますわよ……続きが欲しいのなら、ね」
 続き……想像をするだけで、下半身に力が入ってくる。
「くそっ!」
 その部屋の壁に己の拳を叩きつけ悪態を付きつつも、彼は部屋から出た。
(ゴメンクスハ…でも俺は……)
 汝、欲望に忠実であれ。
 どこかの神様の格言を思い出した気がする。
「ゲシュペンストTT…だったな」
 既にその表情には、以前の穏和なブリットの表情など失せていたのかも知れない。

 格納庫に行くブリット、しかし、その格納庫には先客がいた。
「よ、ブリット、生きてるかぁ?」
「ああ、なんとかな」
 先客とは、クスハの元彼(以前)、現R−1のパイロット、生粋のロボマニアのリュウセイであった。
「な、なにやってんだ、リュウセイ。 こんな暗い格納庫に一人でさ」
「ああ、ちょっとな、アンジュルグを見に」
 きっぱりと言い切った。
 そんな微妙な理由で格納庫に一人いるリュウセイ。
 対してブリットは気が気で成らなかった。
 ゲシュペンストTTは何としてでも、ミツコの元に持って行かなくてはならない。
 けど、この場はリュウセイがいる。
 これでは隠密に持っていくことなど出来ない。
 思案を張り巡らす。
 ――リュウセイはアンジュルグに見惚れている。
 ――そういえば、ラミア・アンジュルグはイスルギ重工から出向とか聞いたけど。
 ――…なら
「リュウセイ、イスルギ重工に行かないか?
 あそこだったら、アンジュルグの開発元だ、もしかすると乗れるかも知れないぞ」
 と、言ってみた。


「嘘ッ! マジで!? 行く行く!」

 そこから先は話が簡単だった。
 リュウセイを連れ、そのままイスルギ重工、果てはミツコ社長のトコまで一気に進んだ。
「あら、もしかしてブリットさん、この人は?」
「…リュウセイ・ダテ、R−1のパイロットです」
「どこどこ、アンジュルグドコー!?」
 一人だけ状況読めてない。
「あんじゅるぐ……?」
 これには、流石のミツコ社長も呆然だ。
(アンジュルグ…アンジュルグ。
 データに残ってますわね。 あの女騎士風のロボット…)
 なんとか、その『アンジュルグ』を思い出すが、だからどうしたという訳でもない。
「ブリットさん、待っていてくださいね。
 あなたへの報酬は、彼の後にします」
 そう言って、ミツコはリュウセイの手を引いて別室へと移った。

 取り残されたブリットの眼には。
 特にクスハのことを考えることもなく。
 ただ、ミツコの姿しか映っていなかった。

「それで、リュウセイさん、あなたに取引をしたいのですけれども?」
「そんなことより、アンジュルグドコー、アンジュルグドコー!」
(っ! 一言ぐらいは言わせて欲しいものですね)
 かくっ! と膝が折れそうになるが、耐えつつつつ。
「そんなロボットよりも、良いものを見せてあげますわ」
 そう言って、ミツコは自分の服を脱ぎだし、一糸まとわぬ姿になる。
 一度決めたら行動が早いのが取り柄だ。
「どうでしょ、リュウセイさん、欲しいでしょ…?」
 シナを作り、自分の唇に指を当て、胸を強調しつつリュウセイに近づく。
 ……が。
「ん〜、それよりもアンジュルグが見たい」
 ズコゥ。
 今度は本気でガックリ行った。
 ――この男、目の前の裸体の女性より脳内のロボを選ぶのか!
 アンジュルグに負けるのは、女としてどうか…と思ったのだが
 ここで、変な意地を張っても仕方がない。
 ので、一種の強行に出ることにする。
「ちょ、ちょっと待ってて下さい!」

 暫くの時が流れた。
 リュウセイは、アンジュルグを見に来たはずなのだが、変な部屋に押し込められてちょっと不機嫌だ。
(もう少ししたら帰ろうかな…それにしてもブリットの奴俺を騙して)
 もはや子供だ。
 さて、そんな考えを抱きつつあった時に、先程ミツコが出ていったドアが開いた。
 そこにいたのは
「あ、アンジュルグ!?」
 …正確には、そのコスプレをしたミツコ社長だ。
「こ、これなら靡かないワケはないでしょう?」
 部分鎧状態のミツコ社長。 中世のコスプレと言ってもちょっと言いすぎではない感のある社長。
 それが目の前に存在した。
「……も」
「……も?」
「もえ〜!」
 言うが否や、リュウセイは一気にミツコを押し倒した。
「ちょ、ちょっといきなり!  あっ!」
 そして、一気にミツコ…いや、アンジュルグの唇を塞いだ。
(な、なに、この人。 この格好したらいきなり変わって)
 正直、露出具合で言えば、アンジュルグコスはしていない。
 本物のアンジュルグ(画像で見た限りだが)よりは多少肌を晒してはいるが
 胸元、そして秘所部分等は隠している。
 なのに、このリュウセイという少年は…。

「ん、はぁ……」
 一通り、リュウセイはミツコの口の中を堪能した後に。
「うっは〜、夢みたいだ。 あのアンジュルグとこんな事が…!」
 ――ダメだ、この男終わっている。
 が、しかし、念動力者には違いない。
 手っ取り早くも、一番効果のある『精子』でもはき出さなければ行けない。
「今の私だったら、こんなこともできるんだよ」
 リュウセイに好まれる演技をする。 即ち、アンジュルグに成りきる。
 今必要なのは、女としての誇りよりも念動力者の精子。
 だから、アンジュルグに成りきることにした。

 手っ取り早くリュウセイの股間に手を突っ込む。
 そこには既に隆起したブツがあった。
 …そう言えばさっき脱いだ時は、大きくなってなかったような…
 それは、考えちゃいけないことかも知れない。
 兎にも角にもそれを口に含もうと、腕で支え口に運ぼうとすると。
「ね、念動爆砕!」
 叫ぶやいなや、リュウセイの口から発射された、一撃必殺必殺砲。
 それは、ミツコ@アンジュルグの顔面を須く汚した。 ついでに口にも入った。
「……」
 開いた口を塞ぐことが出来ない。
 この受け入れようとした口は一体どこへ向かおうというのか…

「あぁ…よかった、よかったよ、アンジュルグ…」
(じゃないですわよ!
 これから私はどうすればいいと言うの? こんなコスプレまでして…)
 ちょっと赤面した。

 とりあえず当初の目的は果たした。
 念動力者の念動力解析の為に、DNAを採取。 精子から行った。
 けど、何だろうこの虚無感は……
 とりあえず、虚無感を埋める為に、その後一人で自分を慰めることになるのだが、それはまた別の話。


 一方、置いてきぼりのブリット君は
「く…リュウセイの奴…! くっ! でる!」
 のぞき見しつつ、自分の男根棒を慰めていましたとさ。 めでたしめでだし。

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