「うぅん……」
 春が来た、と形容するには気が早すぎる時期だが、こうやって、少しそよ風を感じながら、陽光を体いっぱいに浴びると、なんともいえない、のどかな、暖かな気持ちになってくる。
「いい気分だね……」
 窓から身を乗り出し、ウェントスは、目尻を下げ、穏やかに微笑みながら、この陽気を体中に受けていた。
 彼には、少し周りよりのんびりとした時間が流れているようで、そのまま放っておいたら、スズメが何匹か、止まり木代わりに降りてくるんじゃないか、となんだか、変な不安を感じるような、そんな時間が流れていた。
「ウェン、ウェン」
 ふと、いつも彼を呼ぶ、リムの声が聞こえ、いつも通り彼は振り向いた。
「なんだい、リム?」
 リムは、にっこりと、しかし、どこか緊張した微笑みで、ウェントスに尋ねた。
「ねね、ウェン。今日が何の日か、知ってる?」
 今日が何の日?
 はて、とウェンは記憶は思い返してみる。他人から、お前は少し抜けている、と言われる事が多々あるウェントスだが、記憶力自体は、並の人間よりはかなり高い。しかし、その記憶に、気にかかるようなキーワードは、一つとして出てこなかった。
「……ごめん、リム。ちょっと思い出せないな」
 バツが悪そうな顔をするウェントスに、リムが慌ててかぶりを振る。
「う、うぅん、いいの。知らないなら、別にいいんだよ。私がこれから教えてあげるから」
 ウェントスの横に膝をついて、少し、悪戯じみた笑顔を浮かべながら、リムは言った。
 そういう笑顔を浮かべている時のリムは、大抵、自分が困ってしまうような事を考えている。
 ウェントスは、経験でも感覚的にも、そう知っていた。


『まず、準備が必要だから、ね。ウェンは、下に行って、おやつの用意をして待ってて。三十分ぐらいしたら、来てね』
 そう言われて、ウェンはのんびりと階段を降り、台所へと向かった。
 リムの好きなおやつは、チョコだったかな。
 戸棚を引っ掻き回したが、チョコを使った菓子は、一つとしてない。十五分ぐらい探し回ったところで、一番上の戸棚のさらに奥の辺りに、スナック菓子の袋をようやく見つけた。
 しょうがない、あれでいいかな、と考えたはいいが、下から一番上の一番奥のある袋を取り出すのは、少々難しい。
 脚がしっかりとした椅子を取り出し、慎重に椅子に登り、戸棚の奥に手を伸ばしながら、ふとウェンは考える。
「誰があそこに袋を置いたのかな?」
 ジョシュアは分かりやすい場所に置くし、グラキエースは自発的に菓子を買うようなことはしないし。
 まぁ、あの袋があそこに行くまで、色々事情があったんだね、などと考えていたら、足場がぐらりと揺れ、思わず転びそうになった。幸い、転びはしなかったが、軽く頭を棚にぶつけて、ちょっとだけ痛い。
「あいたた……後は、飲み物も必要かな」
 リムはミルクココアが好きだが、さすがにココアとスナックは食い合わせが悪いかな、とミックスフルーツジュースを、氷を落としたコップに注ぐ。
「あ……いけない」
 リムの部屋に向かうべき時間を、長針の動き三つ分ほど、遅れている。慌てて、トレイを抱えて、ウェントスは階段を駆け上がった。
 と。
『クシュン!』
 クシャミが一つ、部屋から聞こえてきた。
「リム?」
 クシャミなんかして、どうしたのかな?
 少しだけ心配になり、慌てて、リムは扉の前に立った。
「リム、どうしたんだい? もう開けていいの?」
 トントン、と、扉を強めにノックする。
『わ、わ! もうなの!? ちょっと待って……』
 ゴソゴソと、慌てて何かを片付けるような音がした後、ふう、とリムのため息が一つ。
『……うん、いいよ。ウェン、入ってきて』
「わかった……? じゃあ、開けるよ」
 トレイの中身を零さないよう、慎重に右手でドアノブを回し、ウェンは部屋の中に入った。

「これが、答えだよ、ウェン」
 思わず、ウェンは言葉を失った。
 部屋の中にいたリムは、ほぼ生まれたままの姿に、リボン二本を体に巻いて、立っていた。
 リボンが、乳首を隠すように、平行に並んで胸を締め付け、臍の辺りで交差したリボンは、ちょうど、リムの一番大事な所を隠す形で、股の間で交差し、もう一度お腹の上で交差し、結び目を作っていた。
 そんな様子で、少し顔を赤く上気させながら立っているリムの手には、一つの、ハート型の包みが握られていた。
「え、えっと……これは……」
 狼狽するウェンに、リムが教える。
「今日はバレンタイン。誰かに、好きだよ、って気持ちを一緒に、チョコを贈る日なの。わかる?」
「わ、わかったよ。今日は、つまり……」
「そ、そうじゃなくて、ね……私は、つまり……」
 ここまで来て、リムはちょっと言いよどむ。さすがに、恥ずかしくなってきた様子に、ウェンは見える。
「い、言いたいの、ウェンに……す、す……」
 しばし口ごもった後、キッ、と口を真一文字に結び、一気に吐き出すように、リムは言う。
「好きだよ、って……」
 何をどうすればいいのかわからず、とりあえず、このままだと零してしまいそうに感じたから、菓子のトレイを机に置き、ウェントスはリムに歩み寄る。
「その、つまり、リムがチョコを贈りたい人って……」
「ウェンだよ。アタシ達、ウェンが、大好き、だから」
 大好き、という言葉に込められた力に、ウェントスも、少し顔を赤くする。
 と、リムが少しだけ両手を差し出し、ウェントスにハート型の包みを差し出す。
「受け取って……貰えるかな? 私達の、気持ち」
 リムの気持ちが、トクン、トクン、と心臓の鼓動に合わせて流れ込んでくる。
 包みを握り、微かに震えるリムの両手を見て、ウェントスは理解する。リムは何を受け取って欲しいのか。
「リム――」
 そっとリムの指先に触れ、その、暖かい指を少しだけなぞる。そして、その先に手を伸ばし、腕を掴み、ゆっくりと引き寄せ、そのまま抱きとめる。
「……喜んで、受け取るから、リムの気持ち……」
「ウェン……」
 ちゃんと受け止めてくれた。それが嬉しくなり、一気に顔が赤くなる。ちょっとだけ、涙ぐんでしまう。
 すぐそこにあるウェントスの唇に、そのまま自分の唇を寄せる。ウェントスも、それに合わせて唇を近づける。
 リムは甘いものが好きだ。つまり、これも大好きなキス。

 ウェントスはトランクス一枚になり、リムとベッドに向かい合って座り、再び長いキスを始めた。
 互いの手を握り、互いの唾液を流し込みながら、互いの唾液を舌で掬い取る。と、奇妙な感覚に、ウェンは不思議そうな顔をした。
「(……あれ……リムの唾液……なんだか甘い)」
 そんな気がする、という話ではなく、間違いなく甘い。事前に甘味を口に含んでいたという様子ではなく、純粋に、蜜のように甘く感じる。
 今度は胸の辺りに手を伸ばし、ふにふにと、優しくリムの二つの乳房に触れる。少し強めに縛られたリボンの内側で、ふるふると乳房が揺れる。
「んっ……」
「あっ……乱暴だったかな」
「うぅん、大丈夫。むしろ、くすぐったかったぐらいかな」
 微笑んで、リムは答える。
「それより、もっと色々してもいいよ。ウェンのしたいように、私の体をして」
 その言葉に、おずおずとウェントスはリボンをつまみ、少し下にずらす。鮮やかなピンク色の、リボンで隠しきれていなかった、少し大きめの乳輪と、ぷっくりとした乳首が、蛍光灯の下であらわになる。
 その乳首を、指で軽くつまみ、コリコリと指の間で転がす。んっ、と一つリムが声を上げる。と、乳首を口の中に含み、舌先で甘噛みする。
「あんっ……ウェ、ウェン……アタシのおっぱい、好きだよね」
 茶化すつもりで言ったのだが、赤子のように一心にリムの乳房を口に咥えながら、ウェントスは自然に答える。
「うん……ちゅう……僕……リムの胸……ちゅば……好きだな」
 その様に返答され、リムも一層顔を赤くする。
「そ、そんな……」
「やわらかくて、暖かくて、大きくて……僕はリムの胸、好きだよ」
 どう返したらいいのかわからないリムの胸を、より一層ウェントスは吸う。
「そんなこと言ったら、私……ひゃっ……」
 乳房を舐める舌は、ゆっくりと脇腹へと向かい、ちょうど、腋の下にウェントスは顔を埋め、そこで、音を立てて舐め始める。
「そ、そんなところ、臭いよ……舐めちゃだめだよぉ……」
「リムに臭いところなんてないよ。どこも、優しくて甘い匂いがする」
 ツンとする、クセのある匂いと一緒に、甘い匂いが漂う。仕方なく腕を上げ、大きく見せられた脇を、ウェントスは歯で表面をなぞりながら、乳房と同じように、キスをしていく。
「なんだか……リムの体……ちゅっ……甘い匂いがするね」
「……やっぱり、そう、んんっ……思う?」
「?」
 震える手を伸ばし、机の上にあった、一枚の小さな四角い紙を取り、ウェントスに見せる。
「これ、シティ7で今流行ってる、体臭ガムだって。口臭ガムってあるけど、これは一枚噛んだら、体液の匂いが変わっちゃうんだって。
 今日は、私がウェンのチョコなんだよ? ちゃんとそういう準備をしなきゃダメでしょ?」
「なるほど……でも、次からはいいよ。僕は、リムのそのままの匂いが好きなんだ」
 スンスン、と腋の匂いを嗅がれながらそう言われ、リムはますます、嬉し恥ずかしな困った表情を見せる。
「(うぅ〜……そう言ってくれるのは嬉しいけど……ウェンってそういう嗜好があるのか、心配になっちゃうよ)」
「(純粋なんだよ、ウェンって)」

 閑話挿入。
「あ……」
 ふと、思い出した様に、ウェントスは呟いた。
「ど、どうしたの?」
「その……鍵はかけてあるけど、そろそろ、ジョシュア達が帰って来るんじゃないかな」
「ああ、そのことだね」
 おかしそうに笑いながら、リムはウェントスに答える。
「お兄ちゃん達は大丈夫。帰りが遅くなるって言ってたから」
「そうなの?」

 同日同時刻、某所より実況。
「はぁ、はぁ……ジョ、シュア……も……ダメ……おかひく……はぁぁッ!」
「ん……ラキ……そんなにしがみつかれると……」
「イク、イッてしまう、おかしくなってしまう……ジョシュア……ジョシュア、ジョシュ……アァ!」
「ラキィッ! ……くうっ!」
「んくっ! ……はぁ……はぁ……熱い……と……溶けて……しまいそうだ……」
「ラキ……大丈夫か?」
「ん……ああ……だが……溶けないように、ぎゅうって抱きしめて……くれ……」
「ああ……わかったよ」
「……ふぅ……ふぅ……む。な、なんだ? また大きくなったぞ。節操の……ないヤツだ……な……ジョシュアは」
「す、すまない。ラキがこんなにしっかり抱きつくから……」
「私の責任、と言いたいのか……? ……いいだろう、もう一度、やるがいい。私だって……お前に子種を注がれると、
 とても幸せな気分になれるのも事実だ……ま、まて、まだ早い、準備ができて……んん!」
 
「だから大丈夫なの」
「そうなんだ」
 閑話休題。

 互いの性器が丁度顔の辺りに来る様交差する形、俗に言うシックスナインの形になり、二人は互いの性器の愛撫を始めた。
「(ん……リムのここから染み出してくる汁も……なんだか甘味がする)」
 これって、ちょっと使い方間違うと、そういう病気の早期発見を遅らせたり、誤認させちゃったりするかも。などなど考えながら、ちょうど性器を隠していたリボンを少しずらして、愛液が染み出したクレヴァスに、ウェントスは舌を這わせる。
 ウェントスの通常時の陰茎は、若干仮性包茎気味で、ちょっと可愛いかも、とリムに思わせるものがあるが、勃起時はそんなあどけなさはなりを潜め、中々のボリュームがある陰茎が姿を見せる。
「(ウェン、どの辺りが気持ちいいかな)」
 両手で優しく陰茎を包み込み、亀頭をおずおずと口に含む。飴を舐めるように、しょっぱさを多分に感じるその味を口の中に広がらせると、一度亀頭から口を離し、陰茎を手で臍の方に押さえて、亀頭から根元へ向けて、裏筋を丹念に舐め始める。
「うっ! ……リ、リム、それ……!」
「こうすると気持ちいい?」
 れろ、と何度も裏筋に舌を這わせ、ウェントスの反応を楽しむ。根元まで達すると、口と左手で、睾丸を口に含んだり、軽く揉みながら、何度も刺激していく。
「(変な感触……)」
 それが少し楽しい。陰茎を押さえる手を離すと、先ほどより反り返った陰茎が、ますます臍に近い辺りを指して、その怒張を保っている。
「(やっぱり、こうなのかな?)」
 もう一度亀頭から陰茎を口に含み、ゆっくりと飲み込んでいく。包皮に舌を差しこみ、恥垢を舐め取ると、じわり、と亀頭から溢れ出してきた粘性の高い液体が、口の中で広がるのを感じ取りながら、口を上下させ、口内の圧力で、陰茎に快感を与えていく。
「うわっ……! こ、これ、凄い……! わぷっ……」
 快感に震えるウェントスの顔に、リムは自分の尻を押し付けて、ちょっと悪戯っぽく言う。
「ウェン、アタシも気持ちよくしてくれなくちゃやだよ」
「う、うん」
 言われるまま、もう一度、舌をリムの女陰に這わせる。だが、陰茎に与えられる快感のせいで、それどころではない。
「(リムにされるままじゃあ……)」
 少し悔しい。と、リムの体に巻きつけてあったリボンに、ウェントスは目をつけた。丁度女性器を覆う様に巻かれたリボンに目をつけ、それを、ぐいと引っ張る。
「ひゃう!?」
 いきなりの衝撃が、陰核を強く締め付ける。容赦なく、ぐいぐいと引っ張るウェントスの容赦ない責めに、リムは思わず口淫をやめ、声を上げる。
「や、だ、だめぇ……そんなに、強く引っ張っちゃ……んん!」
 何度も締め付けられ、プシュ、と愛液が溢れ出す。膣口と尿道口を交互に舐めながら、合間にリボンを何度も引っ張られ、一転攻勢、今度はリムが嬌声を上げ始める。
 溢れ出る愛液を、余さず口で吸い取り受け止める。口の中に、甘酸っぱい匂いが広がっていく。

「(リムの……美味しい……)」
「ん……んん〜っ!」
 ウェントスの陰茎を吸い込む力を強くし、軽く歯を立て、こちらにも強い刺激を与える。
「うくぅっ!?」
 こちらも、既に十分に高まっていた快感が、それによって一気に爆発し、リムの口の中へ、熱い性の塊を、一気に迸らせる。
「ん……んぐっ……」
 口の中で一気に拡散したウェントスの精液を、一滴も逃すまいと喉の奥で受け止める。ウェントスも、リムからトクトクと溢れ続ける愛液を、すすり続ける。
「(ウェンの精液……口の中いっぱい……ちょっとしょっぱい……)」
 放精が終わり、口の中いっぱいに広がった精液を、嚥下し続ける。だが、さすがに一度に全てを飲み込みきるのは……。
「む……んむ……んぐっ……ごふっ、ごほっ!」
「リ、リム!?」
 ウェントスは慌ててリムの体を横にずらし、少し背骨が浮き出た、華奢で小さな背中を、ゆっくりとさする。
「ゴホッ、ゲホッ……! ご、ごめん、ちょっとむせちゃった……」
「いいよ、無理はしないで。窒息でもしたら大変だよ」
「窒息なんかしないよ。でも……ウェンの精液、全部バッチリ飲んじゃったよ」
 リアナの、艶っぽいけど、少し無邪気なところがある表情で、指をVの字にして、笑いながらそう告げる。そういう仕草を見ていると、ウェントスは、ますますリムの事が好きになる。
 両手で顔を掴まえて、リムの艶やかに濡れる唇に、自分の唇をもう一度重ねる。ウェントスの口の中に残っていたリムの甘い愛液と、リムの口の中にたまっていた唾液と精液を互いの口の中で反芻しながら、互いに、快感の余韻を味わっていた。
「……ウェンのキス、気持ちいい……」
 うっとりとした表情で、リムは夢うつつのように呟いていた。

 リボンを横にずらして、もう十分に濡れそぼったリムのクレヴァスを、いとおしむように、優しくなぞっていく。
「ん……! そ、そんな風にすると……」
 二度、三度、ウェントスの指先は、リムの秘裂を優しく刺激する。リムが口を真一文字に結び、快感に堪えている様子を確認すると、今度は、ささやかに繁るリムの陰毛に押し当てるように、クリトリスを指先で押しつぶす。
「んっくぅぅぅ!? そ、そんなにやっちゃ……」
 スリスリと、優しくなぞられる方が、この場合辛い。ウェントスは、本当に心からデリケートに愛撫したつもりだが、リムはこの生殺しな快感に、ふるふると震えるのみ。
「も……もう、入れ……て……ウェンの……」
「入れる? 何を?」
 キョトンとした表情で尋ね返すウェントスの顔を見て、狙ってやってるのかも、などとリアナは思いながらも、クリスは従順に返していた。
「ウェン……の……お……おちんちん……私の……ここに……オマンコに……」
「――わかった」
 頬に一つキスをしてから、リムの脚を開き、そこに、自分の股間にあるモノを、ゆっくりと沿える。
 鈴口から少しずつ漏れるカウパーと、糸を引くのと、さらさらしたのが混じった愛液を、混ぜ合わせるように、何度も擦り付ける。
「も……焦らさないで……はやく……ん……うっ……んっ……!」
 まずは亀頭が埋まっていき、そこから、ゆっくりと、しかしスムーズにウェントスの肉棒が、リムの女陰に飲み込まれていく。
「はっ……はっ……」
 気を抜くと乱れてしまいそうな呼吸を抑える為、意識してリムは何度も深く呼吸する。
「う……んっ……リムの中……ふわふわで……あたたかい……」
「私も……ウェンの……いっぱいで、いっぱいになって……とっても……気持ちいい……」
 ぎゅう、と互いの手の握り、しばし、互いの感触を深く味わう。
「そろそろ……動くよ……いい……ね?」
「う……ん」
 ゆっくりと腰を持ち上げ、ずるずると半ばまで引き抜く。膣壁をこそげ取るように、ゆっくりと動かす。もう抜けてしまう、そうリムが不安になりかけた所で、再び、思い切り肉棒を打ちつける。
「ッッ! はっ……あっ……!」
 甘く喘ぎ声を始めたリムの様子を見て、同じ要領で、今度は小刻みに、ストロークを始める。じゅぷじゅぷと音を立てて、秘裂の中で粘液と体液がまじりあい、淫猥な音を立て始める。
「あっ、あっ、いいっ、それっ、いいのっ、ウェンが私の中で、アタシ達の中で動いてるッ、きもち、いっ……んんっ!」
「リム、僕も……ッ」
 リムの体に巻きつけられたリボンが、リム自身を締め付け、刺激し、そのリボンが丁度ウェントスの肉棒を擦り、さらに刺激を与える。
 次第に、きゅうきゅうと精一杯、柔肉と膣襞が快感を与えんと締め付けだし、ウェントスもそれに応えようと、ストロークを早める。
「はっ……んぅ……だ……して……いっぱい、いっぱい、私達の中に出して……!」
 口の端から、一筋唾液が垂れるのも構わず、リムは一心不乱に腰を動かすウェントスに、懇願する。
「僕も……出したい……! リムに、出したいッ……!」
 一際強く、膣奥に突き込むように挿入する。ぎゅっ、と両足をウェントスの腰に巻きつけ、快感の波を受け止める。
 その瞬間、堰を切ったように放たれた精液が、リムの子宮を熱く直撃する。がっしりと体を固定された今、ウェントスも、自分の体からあふれ出した情欲の塊を、素直に流し込む。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
 ウェントスの胸にピッタリと頭をくっつけて、声にならない声を上げると、腰に巻きつけていた両足を弛緩させ、そのままベッドへと、沈み込むように身を投げ出した。
 はっ、はっ、と荒く息を吐くリムの体の上に、ウェントスもゆっくりと体を預ける。胸の上に乗せられた頭を、リムは優しく受け止める。
 しばし、二人の、文字通り息の合った呼吸だけが、部屋の中を満たしていた。
 そっと、ウェントスは首を伸ばし、リムの亜麻色の髪の匂いを感触を弄びながら、リムの耳の辺りを甘噛みし、囁いた。
「……ありがとう、リム。まだ、今日はちゃんと言ってなかったね。僕、君が大好きだよ」
「……私も。大好きだよ、ウェン……あ、待って、また胸を噛むのは……あんっ……」

 それからもう一度交わった後、ウェントスの胸の上で余韻を味わうリムに、ふと、ウェントスが尋ねた。
「あ……リム、いいかな?」
「なぁに?」
 トレイに置いておいた、リムが持っていた包みを取り、ウェントスは尋ねた。
「こっちは……チョコ、なのかな?」
「うん。本当はこっちをちゃんとあげないといけないのにね。開けてみて」
 リムの許諾を得て、包みを彩るリボンをちぎらないようにゆっくりと解き、包み紙を慎重に開き、中にあった、深い藍色の箱を、ウェントスは丁寧に開いた。
 そこには、ハート型のチョコレートが、包み紙とふわふわとした詰め物に守られて、鎮座していた。
「……ハートの形をしているね」
「うん。貴方が好きだよ、って形」
「心を表す形が、好きって意味というのは、なんだか不思議だね」
「ふふっ、そうかもしれないね。要するに……私の心も、貴方のものってことなんだよね、きっと」
「……そうか」
 包み紙を開き、そのハートのチョコを、ウェントスは、暫しの間、じっと見つめていた。
「ね、食べないの?」
「え? あ、うん、なんだか、勿体無くて……」
「食べてくれない方がもっとやだよ。はい、あーん」
「あ、あーん……ん、甘くて、美味しい」
「本当に?」
「本当の本当」
「……そんなに美味しい? もう一回、味見してみよ」
 もごもごとチョコを頬張るウェントスの唇に、リムは唐突に、キスをした。
「リ、リム?」
「ん……ちゅっ……うん、甘くて美味しい♪」
 と、そんな風にじゃれている二人に突然、来訪者を報せるチャイムが、ポーン、と間の抜けた音を立て届いた。
「リム? 今帰ったぞ」
「……!? お、お兄ちゃん!? ウェン、早く片付けて! いくらなんでも、お兄ちゃんに見られたら気まずいよ!」
「わ、わかった。早く片付けよう」

「お、お兄ちゃん、早かったね!」
 いつも通りを取り繕った顔で、二人はいそいそと階下に降りてきた。ソファーの上ですやすやと寝息を立てるラキの頭を撫でながら、ジョッシュは憮然とした表情で二人を見つめた。
「……何かあったのか?」
「え!? な、何もないよ、うん。いつも通り」
「リム、お前、チョコを渡すとか息巻いてただろ」
「そうだね、うん」
「……渡したのか?」
「うん、貰ったよ」
「そうか、よかったな」
 ラキの方に視線を移し、ラキがまだ寝息を立てていることを確認すると、ポツリと呟いた。
「……二人とも、口にチョコが残ってるぞ。どういう食べ方をしたんだ?」
「え、え!?」
「つ、ついていたかい?」
「嘘だ」
 これまた、ポツリとジョッシュは言い放つ。
「……もぉーッ! アニキの意地悪!」
「……まぁ、ほどほどにしとけよ。俺は別に、お前等が好きあってることに文句言ってるわけじゃ……」
 と、むにゃむにゃと寝息を立てていたラキの口から、寝言が漏れる。
「むぅ……ジョシュア……もっと気持ちよく……うぅん」
 一瞬、三人が固まる。そして、顔を真っ赤にするジョッシュの顔を見て、リムが悪戯っぽい表情で言う。
「アニキ……アニキもほどほどにしなくちゃダメだよ」
「……ラ、ラキも疲れてるみたいだし、先にシャワー使うからな!」
 ラキを抱えて、そそくさとジョッシュは、奥へと消えてしまった。その様子を、おかしそうにリムは見ていた。
「お兄ちゃんも隅に置けないんだから……」
「多分、二人でマッサージか、健康ランドに行ったんだね。今度は僕らも行きたいね」
「……そうだね。今度にでも行こうか」
 ため息後、苦笑い。ウェントスは、不思議そうに微笑んだまま、首を傾げるだけだった。

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