この地球は、呪われでもしているのだろうか。
偵察任務に出ているラトゥーニは、ふとそう思った。

ビアン・ゾルダークを筆頭として連邦軍と戦争を始めたディバイン・クルセイダーズ。
ただ、当初は人類の乗り越えるべき試練として立ちはだかっていたが、今は力による地球の統一。 簡潔に言えば世界征服のための組織になっている。
同じ地球人である分たちが悪い。

前大戦以降動きを見せないが、おそらく今も確実にこちらを狙っているであろう、地球人を自軍の兵として戦わせる恐るべき異星人、エアロゲイター。

突如空間を裂いて現れた生物の骨のような形をした機体。
自己修復機能を持っており、一体落とすまでにも手を焼く。
キョウスケは「アインスト」と言っていたか。

最後に、これもまた突如現れた、謎の部隊。
だが、アインストと違いそれはパイロットも機体もこちら・・・地球のものとよく似ている。
AMによく似た機体を多々見かけるし、敵の隊長と思われるパイロットは、キョウスケを知っていた。
「シャドウミラー」。 そう名乗っていた部隊。

DCは同じ地球人だとしても、それ以外はどのような組織図かもわからない謎の敵だ。
今はただこうした偵察や、攻撃をしかけてきた敵に対してがむしゃらに迎撃していくしか術はない。
いつか、この地球に安穏の時は来るのか。 これら全ての敵を排除すれば、本当に平和になるのか。 答えの出ない自問がラトゥーニの頭の中をまわる。

「えっ!?」
最初は、悶々と考えていたから見落としていたのかと思った。
だが、それは間違いなく何も無い場所に突然として現れたのであった。
ライノセラスが一隻、バレリオンが四体にガーリオンが三体。
「ふむ・・・転移成功じゃの。 あれはビルドラプターか。
間違いなくハガネの部隊の機体。 パイロット共々持ち帰れば、いい兵ができそうじゃわい。」
どこかで聞いた声。 いや、聞き間違う筈もない。 あの、嫌悪感をもよおすしわがれた声。
「アードラー・・アードラー=コッホ!?」
そう、その声は前大戦で死亡した筈の、憎むべき敵であった。

「ふむ、あのビルドラプターのパイロット、わしを知っておるようだが・・誰だったかのう。
 その声。 聞き覚えがあるような無いような・・・」
とぼけているのかはたまた天然か。
だがどちらにせよ、その言葉がラトゥーニの癪に障ったことは確かだった。
「ふざけないで、アードラー! あなたが忘れても、私は忘れない!
 その、人を見下したような目を、声を!」
柄にもなく激昂する。 その怒りの量は、そのままラトゥーニの心を蝕んでいた量。
投薬、戦闘兵器化、精神を犯され、壊れていき、散っていった仲間。
様々な言葉が頭の中に浮かんで消える。
「むぅ・・・・」
ライノセラスの通信モニタ越しに叫ぶ少女の顔を、アードラーは凝視する。
「む? 思い出したぞい! お前はラトゥーニ=スゥボータではないか!
 その格好のせいで全然気付かなかったわい!」
そう言葉を発し、大きな笑い声をライノセラスの艦首に響かせる。
それは通信機を通り越し、ラトゥーニの耳にまとわりつく。

「・・・・・・何故、生きているの?」
昂ぶる気を抑え、冷静に問う。 今は落ち着かなければならない。
戦力差は圧倒的に向こうが上。 迂闊に飛び掛っていっては、やられるのはこちらなのだ。
「何故、と言われてもな。 わしは死んでおらんから、ここに生きておる。
 ふむ、つまりお前はわしを一度殺した、ということか。 ラトゥーニ。」
死んでいないから生きている。 そんなことはわかっている。
やはり、ラトゥーニにとってこの男は鬼門なのだ。 振り返りたくもない過去。
振り切ったと思っていた過去に、再び対峙しているようなもの。
「だとしたら、残念じゃったな。 それはわしのクローンじゃよ。」
「!?」
「いや、その言い方はおかしいかもしれん。 お前さんの殺したアードラーは本物かもしれぬし、
 わしが本物かもしれん。 自分のクローンを多く生成しすぎてしまってな。 いつからかそのようなことを考えるのはやめてしまったよ。」
と言う事は、このアードラーの他にもまだアードラーがいる。 そのアードラーを殺してもまた次のアードラーがいるかもしれない。
どれだけ自分を苛めば気が済むのだろうか、この男は。
ラトゥーニは耳を塞ぎ、目はモニタをそらしコクピットの中で小さく縮こまっていた。
「ところで・・そのような衣装を着て、パーティーにでも行くつもりかね?
 まさか、その衣で自分の弱い心を隠したつもりかね?」
ラトゥーニの思考が止まった。 視界はブラックアウトしていき、ライノセラスだけがその目に映る。
「確かに似合っているよ、ラトゥーニ。 そのようなことでしか過去を振り切れない、無様なお前さんにはね。 ひゃひゃひゃひゃ!」

瞬間、ライノセラスに突撃するビルドラプターの姿があった。
自分のことなら、何を言われても耐え切れたであろう。
だが、この服を貶されることには耐え切れなかった。
大切な家族にプレゼントしてもらったこの服。
大切な友人に褒めてもらったこの服。
そして、初恋の人を振り向かせるために着ている、この服。
それを貶されることは大切な仲間を貶されることと同義であり、
そしてそれを受け流せるほどラトゥーニの心は成長しきっていなかった。
「アードラー!!」
こんなに大声を出したのは初めて。 こんなに人を憎んだことも初めて。
その感覚に、ラトゥーニ自身が戸惑っていた。
だから、護衛の機体のことを失念してしまっていたのだ。
バレリオンの巨大なレールガンがビルドラプターを襲った。
それに気付き、咄嗟に回避行動に移る。
一発目、二発目は避け切れたが、三発目を脚部に受け動きが止まったところを四発目が襲った。
「くぅっ・・・・!」
機体が大きく揺さぶられ、苦悶の声をあげる。 だが、ラトゥーニに休んでいる暇はなかった。
ガーリオンがソニックブレイカーの構えを取り、エネルギーに身を包んだ機体が突撃を仕掛けてきた。
「嘘・・ただのパイロットじゃない!?」
機体がやや不安定とはいえ、一般のDC兵士の技量なら対応できると読んでいたラトゥーニが甘かった。
ガーリオンの狙いは正確。 一分の隙も無くこちらを捕らえ、この機体を打ち砕こうと迫っている。
だが、ラトゥーニとて伊達にDC戦争、オペレーションSRWを生き残ってはいない。
一体目を間一髪でかわし、二体目は両腕を交差させることにより耐え切った。 だが・・
「あうぅっ!!」
二体目の攻撃によりがら空きになった正面に、三体目が突っ込んできた。
回避行動を取る暇も無く、ビルドラプターにガーリオンが埋まった。
その衝撃は相当なもので、身体をあちこちに打ちつけ、ラトゥーニの意識は薄れていった。

「無様じゃのう。 わしはそのような脆弱者に育てた覚えは無いのじゃが・・まあ、いいわい。
 Wシリーズ、ビルドラプターを捕獲しろ。お主らの仲間になる人物じゃからの、丁寧に扱うんじゃ。」
顔を皺で歪めながら、アードラーは不気味な笑みを浮かべた。
見る人が見れば、あるいは、それは好々爺に見えたかもしれない。
「了解。」
Wシリーズと呼ばれたAMのパイロット達は、簡潔に答えるとビルドラプターをライノセラスに運び、
自らも帰艦していった。
そして、全員の収容が終わるとライノセラスは来た時と同じように、突然とその場から姿を消した。

硬いベッドの上に、手足を拘束された少女が一人。 大の字に縛られた四肢は、未だ動かず。
縄が食い込んだ手首足首は、うっすらと色を変えている。
いくら篭の中の鳥にしたといっても、相手は熟練した兵士数人に匹敵する身体能力を持ち合わせている。
生半可な拘束をしていては、いずれ外される。 片手でも外されてしまえば、
その拳が飛んできて、アードラーなど一撃で吹き飛ばされてしまうだろう。
己が強化した兵士に殺されてしまっては、笑いものにもなるまい。
「さて・・今回の薬はちと強力じゃぞ? 果たしてその身体で耐えられるかな?」
注射器に入った、毒々しい液体がアードラーの手の中で揺れる。
本人の言うとおり、この薬は今まで投薬してきた身体強化や精神強化などといったものではない。
強制。 言うなれば、アードラーの思うがままになる人形にしてしまうような薬。
その効き目は、彼の周囲にいるWシリーズが物語っている。
彼女らもまた、マスターの命令どおりに動く人形であったのだが、
この薬によりアードラーの僕となった。
そのことを彼女らの元マスターが知れば、驚くどころでは済まないだろう。

アードラーは一歩一歩、踏みしめるようにラトゥーニに近づいていった。
自分を裏切り、殺したと言った人物が、次に目覚めた時はその人物の人形となっているのだ。
それに至る過程を楽しまなければ、損というもの。
「ラトゥーニよ・・今一度、わしのために働いてもらうぞ。」
アードラーが服の右腕部分をまくり上げた時、スカートのポケットから何かがのぞいているのがみえた。
手にとって見ると、その写真には一人の男性とラトゥーニが写っていた。
「これは・・・SRXチームの念動力者か。」
一片の写真に写された人物は、リュウセイとラトゥーニ。
その写真の中のラトゥーニを、アードラーは知らなかった。
今と同じドレスを着て、リュウセイの腕を引っ張りながら、笑顔でカメラに向かってピースをしているラトゥーニ。
対してリュウセイは少々困惑気味の、苦笑いをしていた。
「ファハハハハハハ、ヒアーッハッハッハッハ!」
気がつけば、アードラーは室内に響くほど笑い声をあげていた。
「フハハ・・・あの人形が男と一緒の写真を持っているというのか。
 しかも満面の笑みではないか! あやつが恋をしているのか!この男に!
 ファハハハハハハハハハ!」
壊れた人形のように叫び笑うアードラーを、Wシリーズは無表情で見ていた。

そう、事実、ラトゥーニの気力の元には、リュウセイがいる。
彼に出会い、惹かれていくことにより、生きている希望、価値、喜びを見出すことができた。
この写真はオペレーションSRWが終わり、皆と離れる直前、ガーネットに頼んで撮ってもらった写真。
精一杯の勇気を出してリュウセイの腕を掴み、カメラの前へ連れて行った。
そして、仲間と離れて以来、今日までずっと肌身離さず持っていた、かけがえのない写真であった。

「人形ごときが、恋をして幸せになるなど、わしは断じて認めんぞ。
 お前は戦うために生まれたものなのだ。
 そのような心の隙を作ればどうなるか、その身に教えてやろう。」
しわがれた声をさらに潰し、蛙が鳴くような声を出し、アードラーは呪詛のような言葉を呟いた。
自分自身が掴めなかった幸せを、自分が作り出した兵器が掴もうとしている。
それはアードラーのプライドが許さなかった。
「複製品とはいえわしを殺したことを含め、徹底的に絶望を味あわせてやるわい・・・・」
右手にかまえていた注射器を元に戻し、透明な液体の入った注射器を持ち、再びラトゥーニの前へ戻る。
「なくがいい、ラトゥーニ=スゥボータ。」
躊躇うことなく、注射器を右腕に刺した。
「ん・・・ぅ・・」
ラトゥーニが目を覚ましたのは、注射器を腕に刺されてから十分後のことだった。
異変にはすぐに気がつく。 自分の手足が拘束されていることに。
だが、身体の内部の変化にはまだ気がつかなかった。
「ふふふ・・おはよう、ラトゥーニくん。」
聞いただけで吐き気がするような声が聞こえた。
「アードラー・・! 何のつもりなの?」
「なに、最初は目覚める前に薬でわしの兵にしようと思っていたが、おもしろいものを見つけてね。」
アードラーの言っている意味がラトゥーニにはわからなかった。
スカートのポケットから写真が抜き出されているかもしれないと仮にラトゥーニが思ったとしても、
自分ひとりではそれを確認することはできない。
「おや、これは君の大切なものじゃないのかね?」
懐から例の写真を取り出すと、案の定、ラトゥーニの態度が変わった。
「それは! アードラー、返して、その写真を!」
本当ならば飛びついていきたいのだが、縄がそれを許さない。
身をよじって抜け出そうとするも、拘束はきつく、手首足首を余計に痛めるだけだった。
「いい反応だよ、ラトゥーニくん。 だが、年上に刃向かうのはよくない。
 まして、わしは老人じゃぞ? わしの命令にはおとなしく従えと教えた筈なのだがな。」
「アードラー、私はもうあなたの人形じゃない。 私は、私だもの。
 あなたに従う道理はないわ。」
「だからお前は失敗作なのだ! わしに刃向かわねばこの写真は無事だったものを!」
言うが早いか、写真を床に置き踏みつけた。

「あああぁぁっ!!」
何度も、何度も踏みつけた。 アードラーの目は血走り、口からは笑い声が聞こえる。
「あああぁ・・・・やめ・・・やめ・・てぇ・・・・・」
あまりの悔しさに、涙が出ていた。
こんな外道に自分の一番大切な、言うなれば宝物を踏み躙られて、何も出来ない自分に涙が出ていた。
拭うこともできず、涙がぽたぽたと音を立ててベッドに落ちていく。
「カカ、いい顔じゃ。 その顔が見たかったのじゃ。 わしに逆らう愚か者の泣き顔がな・・ヒヒ・・」
その言葉で、また涙が出てくる。 泣けばアードラーを増長させるだけとわかっていても、耐えることが出来ない。
老人の笑い声と少女の泣き声、サナトリウムと靴が擦れる音と涙がベッドに落ちる音、それぞれが重奏を奏でている。
ひとしきり写真を踏みつけた後、アードラーは急に真面目な顔になり、ラトゥーニに問うた。
「ところでラトゥーニくん、君は自分の身体が熱くなってきていることに気付かないのかね?」
「身体が・・・熱く・・?」
確かに、ラトゥーニの身体は熱くなってきていた。 だが、それは怒りや悔しさ、
感情の昂ぶりによって熱くなっているものだと思っていた。 それが違うというのなら、何なのだろうか。
「わからないなら教えてやろう。 こういうことだ。」
骨ばった指が彼女の緩やかな胸の曲線をなぞった。
「ひあぁっ!!」
途端、小さな身体が電圧マッサージでも受けたかのようにびくん、と跳ねた。
「わかったかね?」
そう言うアードラーの声もラトゥーニの耳には入っていなかった。
胸をなぞられた瞬間、感じたこともない強い刺激が全身を襲った。
それがなんであるのかが、ラトゥーニには理解できなかった。
男性に恋をすることはわかっていても、性に関しては無知であった。
「何を・・・・はぁ・・・はぁ・・・したの・・・?」
呼吸を整えることが出来ず、言葉の最中に息が漏れてしまう。
「ふむ、そういえば、スクールでこのようなことは習わせなかったな。
 ならばわしが教えてやろう。 個人授業じゃ、有難く受講するんじゃぞ? ラトゥーニくん。」
アードラーの顔がラトゥーニに近づき、再び胸をなぞる。
「あああぁっ、いやああ、なにぃ・・これぇ! んあああぁ!」
小さな身体に似合わない、大きな声をあげる。
先ほど打った薬は血を廻り全身に行き渡り、わずかな刺激でも敏感に受け取るようになってしまっていた。
「これだけでこんなに喘ぐとはな。 これは楽しみじゃわい。」
不揃いな歯を出し、アードラーの頬が緩んだ。
老人は胸を撫でることをやめると、次は服の上から激しく揉みしだき始めた。
「鳴け! わしに逆らった報いを受けぃ!」
「はぁっ! あ! いやぁ! やめ・・・やあああぁん!」
小さな膨らみが形を変え、細指のなかで踊る。 乳首は勃起し、触ると確かな硬さがあった。
アードラーは少々硬みのある乳房を刺激することは忘れず、硬い乳首を重点的に擦った。
「うううぅぅ・・・いや・・・・やめ・・・・息が、できな、はっ、あっ、あっ、ああっ!!」
呼吸をしたいのに、呼吸が出来ない。
自制から外れてしまった身体はびくびくと跳ね続け、口からは出したくもないのに声が出てしまう。
今まで、どのような危機状況でも、持ち前の冷静な判断と、自分の腕で戦場を渡ってきたラトゥーニにとって、
この状況は意識をさらに混乱させた。
先ほどの戦闘でも冷静さを欠いてしまったが、その原因は判る。
だが、今は自分の身体がアードラーの成すがままになっている理由がさっぱりわからない。
「ふああぁん! やめて! お願い、息を・・・んああっ、ひゃぁぁ! くる・・・っし・・・・あぁっ、うぁっくあぁぁ!」
懇願しても、その指はとまらない。 むしろ、テンポがはやくなるくらいだ。
「おねがっ、だ・・・めっ、しんじゃ・・・う・・・・・・んはっ、あっ、あっ、やあああああぁぁあぁっ!!」
呼吸困難になっている肺をさらにいたぶるような、少女の絶叫。
ラトゥーニは、初のオーガズムを迎えた。 この世でもっとも嫌う人間によって。
「ふぁふぁふぁ、もうイッたのか? 早いのぅ、そんなことでこの先を乗り越えていけるかの?」
フルマラソンを走り終えた時のような荒い息をしている少女に、アードラーは勝ち誇った笑いで手向けた。
ラトゥーニは、自分がどうなったか、細かくは分析できなかった。
しかし、ひどい恥辱を受けたということは、女の感覚でわかった。
でも、そのことにかまっている余裕などない。 一心不乱に空気を貪った。
2〜3分すると、ようやく呼吸が整ってきた。 どうやら死なずに済んだ、と安堵していると
「眠るにはまだ早いぞ?」
再び、左手でぐにぐにと乳房を揉んできた。 アードラーの細く長い指にラトゥーニのバストはすっぽり収まり、
胸のあちこちから刺激が襲ってくる。
「ああっ! また・・・はあぁっ! やあ! やめて・・・んあっ!」
整えた呼吸が、再び乱れていく。 抗うことも出来ず、ただ受け入れることしかできない。
しばらく左手だけで胸を揉んで、身体が刺激に少し慣れてきた頃、アードラーは不意を突いた。
身体を跳ねさせたことによりスカートがめくれ、
その隙間からストッキングを通してわずかに見える白いショーツに手を伸ばし、擦り始めた。
「ひゃあぁ!? やぁ! う! あ! だ、めぇ! こ、こんなの! たえられ・・な・・あぁ!」
「良い触り心地じゃ、身体も素直に反応しておる。
 普段からそのように素直になっておれば、好きな男にその身を捧げる事も出来たんだろうがの・・・」
口では哀れむような事を言っていても、彼女を責める手は勢いを増すばかり。
薬によって敏感になった身体は望まざる愛撫を受け意識とは無関係に悦んでいる。
「へ・・ん、あっ! こんなの・・へん・・・ああぁ!
 わたしじゃない・・・・んんんんっ! わたしのからだじゃないっ! くうぅ! ダメ・・もう・・・・」
絶頂まであと一歩というところまで高められた快感は、止まることを知らなかった。
ぷちぷちと理性を潰し、思考することが困難になっていく。
股から零れ出た愛液はベッドに大きな染みを作り、なおも広がっていく。
そして、とどめにと毛の生えそろっていないスリットから存在を露わにしたクリトリスをぐち、と押しつぶした。
「―――――っはああああああぁぁぁぁっっっ!!!」
女性にとって一番敏感な場所に突然強い刺激を与えられ、咆哮にも近い嬌声をあげ身体が爆ぜる。
両手首の縛られた部分は血が滲んでいた。
二度の絶頂を迎え、少女の精神はズタズタに切り刻まれていた。
だが、ラトゥーニはこんな時でも思考をやめなかった。 たとえ頭がうまくまわらなくとも、諦めたら時点でもう負けてしまう。
逆に言えば、諦めない限り勝機はある。 共に戦った仲間は最後まで諦めなかったからこそ、
ヴァルシオンやジュデッカ、セプタギンといった絶対的な力を持った者を打ち倒していったのだ。
だから、諦めない。 たとえ望みは限りなくゼロに近くても、諦めなければ。
そう言い聞かせた頭に、再び雑念が入った。 先ほどよりもインターバルが短い。
「何を考えておるか知らんが、無駄な抵抗はやめるんじゃな。 ほれ、休んでおる暇などないわ!」
その老体のどこに力が余っているか知らないが、アードラーはラトゥーニの服の胸元を手で引き裂いた。
ショーツと同じ純白のブラが姿を現す。
フロントホックのそれをも引き裂くように開け、初めて露わになった胸を舐め回し、今度は左手をショーツにもっていく。
「いやあぁぁ、きもち・・・わるっ、いぃ・・・・んん・・ふぅっ、あぁっ! だ、さわら・・・そこ、さわらないでぇぇぇ!」
今のラトゥーニにはぬめった唾液もざらつく舌も快感でしかなかった。
そして、粘液の感覚に戸惑いを見せる暇もなく女の弱い部分を刺激され、すぐに身体が火照ってくる。
そんな自分の身体が情けなくて、知らず涙が流れていた。
「うぅっ・・・・・・ひぅ・・・ん・・・・・あっ・・・・・くぅ・・・・・やあああぁ・・」
泣きながらも感じている。 もはや泣き声が喘ぎ声か判断がつきにくくなっている。
「ひひ・・・失敗作めが、いとおしくなってしまうぞ。
 もっと早くこうしていれば、スクールの人間に不幸を背負わせることもなかったかもしれんな・・・」
少女から牝に変わって行く身体に、アードラー自身、無意識に溺れているのかもしれない。
「うああぁ・・・・あぁっ、はぁっ、あっ、かっ、あ、んむんんんんんんん!!」
三度目の絶頂はこもった声だった。 寸でのところで歯をくいしばり、声を出さないようにした結果であった。
そして、それをアードラーがよしとする筈がなかった。
「まだ逆らうか・・・どこまでも忌々しい小娘だ!」
今度はストッキングを音を立てながら裂き、ショーツをずらし、
本当に、その年老いた身体のどこにそのような余裕があるのか、
赤黒く天を仰ぐ肉棒を出し、ノンストップで突き刺した。
「が――――ぐ、ぎいいいいぃぃぃぃぃぃ! い、いた、痛ぁ、いたいいぃぃ!」
先ほどの咽び泣く様とは違い、転んでしまった小さなこどものように、
大粒の涙をぼろぼろとこぼし、ラトゥーニは泣いていた。
破瓜の証である血がぽたぽたと愛液の上に新たな染みを作っているが、
アードラーは容赦せず、本能の赴くまま犯した。
「ひぅ、いぃ、いたっ、やめて、あっ、くっ、きついぃ・・許して、許してえぇぇぇっ!!」
その懇願には応じず、無言で腰を動かす老人。 腰は曲がっているはずなのだが、
痛みを我慢しているのか、はたまた擬態だったか、腰を動かすスピードは早まるばかりだ。
「うぅっ、あうぅ、あっ、やっ、つ・・・なんでぇ・・・なんで・・・おかしいよ・・・ぉ・・・・」
最初こそ破瓜の痛みで感じることもできなかったが、少し痛みが落ち着くと、快楽が身体にまわってくる。
アードラーの薬はどこまでも強力だった。
「あぁっ、はぁっ、いや・・・かんじた・・く・・・・ない・・・・の、にぃ・・・・んあぁっ!」
呼吸を合わせることもテンポをとることもせず、ただ自分だけのペースで出し入れするアードラー。
それを、気持ち良いと思っている。 いつ強くするかわからない、いつ焦らされるような弱いものになるかわからない。
それが、たまらなく良いと思っている。
(駄目・・・そんなこと、駄目・・リュウセイ、助けて・・・・・っ!)
自由に動く首をぶんぶんと左右に振って湧き上がる感覚を否定しようとするが、そのようなことでは気休めにもならない。
少女の淫らな声と肉がぶつかる音、液がかきまぜられる音に、ラトゥーニの精神は限界まで苛まれていった。
「あっ・・・はぁっ! いい・・・いいよぉ・・・・んっ! ・・・・・もっと・・・・・」
言って、取り返しのつかないことを口走ったと自分を責めた。
だが、少し遅かった。 その禁忌の言葉は心も身体も幼い少女を陥落させるには十分であった。
「はあっ! もっと、もっとぉ・・・くはああぁん!」
元々薬の効果で敏感になっていて、そこに初めての性快楽。
普通の女性ならば一度イッただけで落ちてしまっていただろう。
悲しいことに、スクールでの精神強化が、苦しみを味わう時間を引き延ばしたのだ。
だが、その苦しみもここで終わる。 かけがえのないものを犠牲にして。
「んっ!はぁっ! あ、くる・・・くるよぉ・・・・ん、あ、あ、あ、あ、あああぁぁあぁぁぁぁっ!!!」
ぐんっ、と背を弓なりに仰け反らせた。縛られた場所からどれだけ血が出ようとも。
身体をベッドに預け、首をまわすと、そこには足跡にまみれた二人の写真があった。
(リュウセイ・・・・・・・)
大好きな人の名を胸の中で呟き、ラトゥーニは目を閉じた。
そして次リュウセイと会う時、その綺麗な蒼い瞳は濁っていたという・・・・・・・

END

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