俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです

―――生を謳う、花が咲く。
そよ風が吹き、草は青々しく育ち、白い雲は眩しく浮かぶ。
わたしの名前は吸血鬼。
醜い醜い血吸い鬼の、綺麗な綺麗な心象庭園。
夢見る乙女の愉快な世界。
ああ、でも。
ごはんの時間が来てしまった。
当たり前よ、生きているんだもの。
綺麗の終わりがやってきた。
醜い食事の時がきた。

―――命を吸い、花が枯れた。
風は淀み、大地は割れ、吹き荒ぶ砂塵が空を覆う。
わたしの名前は吸血鬼。
血に飢え食欲に塗れた、不様な不様な心象風景。
生きとし生けるものは枯れ、土に還ることなくわたしの中に。
血望む乙女の枯渇庭園。

ああ、でも。
一人だけ、まだ生きているみたい。


「オハヨウ」

黒髪。長身。知らない、男。
わたしの心に忍び寄る。

「食ベタイナラ、食ベレバイイ」

「ホラ」

「食ベテ食べテ食べ尽クシタ先ニ」

「狂ッタ破壊人形ニナッテシマエバイイ」

「我慢ナンテシナクテイイ」
「一緒ニ」
「食ベテ」「殺シテ」「幸セニナッテ」「最後ノ一人ニナッテ」

「オレガ―――ニナル」

最後の一部分だけが、聞こえなくて。
もしかしたら、この全てが幻聴なんじゃないかって、そんな気がして。
空腹を訴えて。
わたしの身体は、動き出した。





◇ ◇ ◇



ジメジメと湿気が充満した路地裏にて、身体を起こす。
弓塚さつき―――『死徒』である。
汚れた衣服から砂埃を払い、水溜まり等で濡れてないかを確認する。
顔が寝惚けてないか、パンパンと軽く叩き意識を覚醒させる。
出来ることなら顔を洗いたいが、近くに水道の存在は見当たらない。
仕方ないので、取り敢えずは我慢した。

「もー…運ぶなら運ぶでもっと丁寧に運んでよー…」

殺し合いだの何だのと説明された後、彼女が飛ばされたのはホームレスも柄の悪い男たちでも立ち入らないような路地裏であった。
『魔神皇』とか名乗っていた男の話はしっかりと覚えている。
眠りから眼を覚ますように意識を呼び起こすと、そこには大量の人間。
殺し合い。最後の一人が願いを叶える。友達になれる『悪魔』。どんっと首が飛んだ人たち。
はて。
寝惚けてコスプレイベントにでも参戦してしまったのだろうか。
わたしったらうっかりさん。
最近のコスプレはリアルだなーなんて考えている内に彼女の身体はまるで玩具のようにひゅーんと飛ばされ、しゅんっと移動し、受け身を取る暇もなく頭からずどんっと路地裏に放り投げられた。
割と容赦のないスピードで放り投げられたため暫し気を失っていた。
おかげで変な夢を見た気がする。
ひりひりと傷むデコを撫でながら、現実を再確認する。
正直なところ、殺し合い、なんて言われても実感は沸かない。
それなりに―――というか人並み以上に危険に揉まれて生きてきたが、此処まで危険が高まると最早現実味が薄れてくる。
―――だが、首を締め付ける違和感が緊急事態ということは理解させる。
このままでは人が死ぬ。一人や二人では済まない。
自分は怪物じゃない―――心まで怪物になってしまったら、おしまいだ。
だからこそ、彼女は人を守る。
死徒でありながら人を襲わず。
心だけは人間であるために。

「…とりあえず、シオン探さなきゃ」

そのためにも、他の友達を探さねばならない。
不用意に出歩いて代行者に消されてはそれこそ意味がないが、それはそれこれはこれ。
緊急事態なので、『不用意に出歩くな』というシオンの言い付けは破らせて頂くことにした。
しかし、陽光の下を歩くのも問題がある。

「うーんじゃあ――あれ?」

じゃあどうしようか、と。
頭を悩ませた彼女の懐から、かつん、と何かが落ちる。
折り畳み式の携帯のような、何かだった。

「携帯、じゃないよね…こんなもの、持ってたかな」

恐る恐る拾い上げる。
開いて眺め観察するが、ボタン配置も携帯そのものだ。
こんなもの持ってた覚えないけどなー……と、通話ボタンをつつく。
すると。
それと同時に液晶に表示される英文。
直後に、端末が光を帯びる。

「え?ちょっと待って、わたし変なとこ触っちゃったーーーーっ!?!?」

端末を光源に、眩い光が辺りを包む。
思わず瞳を閉じ、変な操作でもしてしまったかとわたわたと焦り出す彼女を余所に―――光は、暫く経つと収まった。
徐々に、路地裏の暗闇に瞳が慣れてきた。
眩い光に一瞬視覚をやられたが、それも大した障害ではない。
携帯も、爆発や破裂などという大きな変化もなく、光を放出する前と何ら変わらなかった。
ただ、一つを除いては。

「……え?」

男だ。
男が立っている。光の中から、男が現れた。
黒服―――軍服だろうか?を身に纏っている、若い男。
なんというファンタジー。驚愕で尻餅をつき腰が抜けそうになったが、その様子に男―――いや、年はそう自分と大差ないように見える―――は苦笑し、右手を差し伸べる。

「アレン・ウォーカーです。今後ともよろしく…いや、今後ともはおかしいのかな?
えっと、よろしくお願いします」

丁寧な、可愛い若者だ。
しかし、差し伸べられた手を握る前に、ある言葉が脳裏を過る。

『―――細やかながらCOMPには君たちの"友"となりうる悪魔を封じ込めておいた』

恐らく、この携帯がそのCOMPというものなのだろう。
ならば。
このCOMPから現れたこの若者は。

「えーと…もしかして君、悪魔…?」
「悪魔……いや多分この状況だと悪魔だと思うんですけど……いや、でもAKUMAではないというか……」

もじもじと言い淀む若者に若干の不安を覚えたが、答えを整理できたのか、はっきりと此方を見据える。
一回咳払いをし、再び笑顔を浮かべる。

「退魔師<エクソシスト>、です!」

…。
……。
………。

「ファンタジーだね……」
「ええっ!?もしかしてその目、信じてません……?」

遠野くん、わたし、頑張れそうにないです。
目の前のファンタジーにそう漠然とした不安を抱きながら。
それにしても、おなかすいたなぁと。
若干の空腹を訴える、さつきであった。











『アクマ、ダッテ』
『丁度イイ舞台ジャアナイカ』


『ネエ、アレン?』

【?????/1日目/朝】

【弓塚さつき@MELTY BLOOD Actress Again】
[状態]:健康、若干の空腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、未確認支給品(1)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を止める(現実味を感じていない)
1:でも日光の下をあるくのは…
[COMP]
1:アレン・ウォーカー@D.Gray-man
[種族]:退魔師
[状態]:健康
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033:「今から悪魔超人チェックメイトを名乗るがいい」「それ麻雀じゃなくてチェスな」
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035:「「ロックにいこうぜ!!」」
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START弓塚さつき064:現実:恐怖

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