クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki

　北京に事務所を構えてから早５年。
　北京は今や世界有数の大都市として発展し、張秀角の死が発端となったあの事件は欠片ほどの痕跡も残してはいない。
　今思ってもしけた俺が、事件の一端を担っていたとは夢とは思えないのだが、言業師のにーちゃんに、時々仕事を回してくれる張維來。
　そして、金庫に残る、四元のじーさんの謝礼と魔道書。
　売っちまえば金になるんだろうが、これを手放してしまうと四元との繋がりが切れてしまいそうで、ずっと保存する羽目になっている。
　早く、ひょっこり顔を出してくれよじーさん。　こっちは元は流浪の身、仕事が安定しても一箇所に留まるのは慣れてないんだ。

　さて、次の仕事は、上海。　どうやら魚人が現れたということだ。
　たんまり前金は貰ったし、こいつはどうも死ねないな。

　後日談、遅くなりました。
　年始にかけて慌しく、最近まっくさんの募集を見かけて思い出して、ついに書くことが出来ました。
　主要ＮＰＣの名前を間違えるなど、大ポカもありましたが、無事に生還できて何よりでした。
　梅雪さんには、特に推理面でフォローを何箇所か入れてもらって、九龍が生存できたのもおかげさまです。
　まっくさんには、このような素晴らしいシナリオを回してくださりまして、本当にありがとうございました。
　いくつかインスピレーションもいただいたので、九龍をＮＰＣとして上海編でも作ってみようかなと水面下で活動中です。
　また、どこかでお会いしましょう。　ではでは。

　久々に帰宅した実家は本当に変わっておらず、父母も何時もの通り変人だった。
　杏子の樹はたわわに実をつけ、椿の緑が日の光を受けて艶めく。
　丁度いい、どうせ帰ってきたのだったら蔵の片づけの手伝いをしろと、深い皺を
刻んだ父が言う。中身は変わらないと言うのに、見た目がどんどん年老いて行くも
のだから、どちらを基準にして接すればいいのかわからなくなってしまう。
「女の名前つけた割に扱いは男のまんまなんだから……」
　ぼやきつつ蔵の中を整理する。久方ぶりに訪れた蔵ではあるが、私にとっては
勝手知ったる場所だ。自分の実家であることに加えて、子どもの時から好奇心の
旺盛だった私はここを遊び場にしていたのだから。無論、その頃にはそこここに
置いてある古い巻物などを見ても、なんのことやらさっぱりで、ただ広げて学者
のごっこ遊びをしていただけなのだけど。
　一つ一つを手に取り、丁寧に紐を解いて広げていく。所々紙魚の這った痕があり、
カビが浸食した部分があり、そういう個所を指でなぞりつつ、中身も少し確認
しつつ、虫干しをするもの、修繕を頼むもの、捨てるもの、移動するもの、などに
仕分けをしていく。
　仕分けが五割方済んだところだったか。次に手に取った書物を広げてみると
どうやら家系図らしい。言業師の家系と言うことだし、まああることはおかしく
ないな、と思いつつ見ていく。
　はっきりと知っている父母の名がある。それは当然のように他の箇所より墨は
新しく、その次に祖父母の名がある。祖父母の名は物心ついた頃にようやく知った。
家族や血縁というのはおかしなものだ。こんなに近しい間柄なのに、名前を知ら
ずに過ごすこともある。お父さん、お母さん、お祖父さん、お祖母さん、そう、
呼んでしまうから。
　家系図は随分と時代を遡っていく。もはやこれが何年くらい前のものなのだろうと
いうことを推測するのも面倒になってきたころ、本当は知らない筈の名前がそこに
あった。
『林　四元』
「……」
　共に過ごした時間など、三十分にも満たないだろう。先祖という自覚なく、名前
から知ることになった私の血縁。本当なら絶対に会うことの無かった遠い人間。
「本当に、不思議な……」
　自分に向かって与えられた言葉をまだ覚えている。何度も思い返して、文字にして、
刻み付けておいたからだ。言葉を使う私達だからこそ、言葉をつかって繋がることが
できるのではないかと、そんなことを思って。
　家系図を丁寧に巻いていく。大変恐縮ではあるが、この巻物は頂いていこう。
　どうせこんな蔵で埃をかぶっているものだ。それに次に書き込まれるのは私の名前
なのだから問題ないだろう。なんだったら私が伝えていけばいい。
「……できればこれを渡したいものだね」
　彼の生があり、彼が生きたが故にこうして繋がってきたのだと、伝承によれば
多少変人であったことに間違いはないが、それでも長い時を生きてきたそのねぎらいに
でもなれば。
「どうやら、貴方の子孫はしっかりあなたの好奇心を受け継いでいるようですし、ね」
　蔵の隅で寝転がっている狼の艶々とした毛を撫でる。蔵の中には西日が射しこみ、
遠くから母の呼ぶ声が聞こえる。
　埃を払い、立ち上がる。腰と尻が少々痛い。
（ああ、そうだ）
　ちょっとあの探偵さんにもこの家系図を見てもらおう。
　きっと驚くに違いない。
　夕餉の支度をしているのだろう、食欲をそそる香りが蔵の中に入ってくる。
　狼に声をかけ、明かりを消して父母のもとに向かった。

ファンブルスペシャルファンブルスペシャルファンブルファンブル
普通の成功や普通の失敗にこの上なく感謝しておりました、久方です。
この度は素敵な卓に参加でき、本当にうれしかったです。
鮫板さんのRPに感激しておりました。ハードボイルドで素敵でした。
まっくさんの狼にすごくほのぼのしてました。あと出目ぇってツッコミを何回したことか。
中国卓は初めてだったので緊張しておりましたが、とても楽しかったです。
本当に有難うございました。

では、またお会いする機会を心待ちにしまして。