ここは、クトゥルフ神話TRPGのオンラインセッションに関する各種情報がまとめられているWikiです。

難易度:★★〜★★★(戦闘有り) シナリオ傾向:探索系

【はじめに】

探索者2〜4人向け。
オリジナル要素有り。
戦闘が有り。タイムリミット有り
親密度有り。
推定プレイ時間:
推奨技能:ドイツ語、探索御三家、戦闘技能、RP能力とリアルINT
推奨役職:医者、花言葉に詳しい仕事
Closed 
Classic Style

【シナリオの概略】

記憶を失った青年とともに、不思議な森の中を探索しよう。すべてのことを諦めている彼と友人になり、“日常”へ帰ろう
ポイント
花言葉に詳しい設定でしたら、知識は半分にしなくても結構です。
忘れている記憶は「家族のこと、自分の名前と病気、願いの代償」です。この世界を誰が作ったのか、どんな願いをしたのかは覚えています。

【アイテム紹介】

KPのための裏設定とか


手にいれられるAF


【NPC紹介】

【導入】

探索者たちは皆、自分の部屋で寝ています。暖かい布団で寝ているのか、勉強中に机に突っ伏しているのかは知りません。
『心地よい眠りの中で、あなた方は知らない青年が泣いている姿を見ます。そして優しい花の香りを感じ、「どうか、彼を……」という声が聞こえるでしょう。探索者の体が、ふわりと持ち上げられたような気がします。
次に探索者が目を覚ますと、そこは暖かくて優しい雰囲気のする部屋のベッドの上でした。隣には他の探索者たちもいます。
カーテンも扉も閉められていて、外の様子を見ることはできそうにありません。
部屋にはぱちぱちと音を鳴らして燃える暖炉、ガラスで作られた机、綺麗に整理された本棚、ふわふわの羽毛布団のベッド、そしてロッキングチェアに腰掛け眠るあの青年でした』
この部屋はアインスの心を映してできたものです。
(部屋は優しい心を、暖炉は暖かい心と諦念、机は話し相手のいない孤独で繊細な心、そして本棚は思い出一つ一つを大事にして生きていることがこの部屋には表れています。)

【アインスの心の部屋】

木で作られたこの部屋は、とても落ち着く内装をしています。
ここでは暖炉と机、本棚が調べられます。アインス自身は探索が終わるまで目覚めませんが、調べることができます。

〖カーテン〗

『カーテンを開くとそこにはただ、緑が広がっています。この場所は森のなかにあるということがわかるでしょう』
これだけです。

〖扉〗

『その扉は木でできた普通の扉です。開けようとしてドアノブに手をかけますが、開きません。どれだけ力を込めても、その扉は音も立てません』
アインスと一緒でないと、アインスが望まないとこの扉は開きません。

〖暖炉〗

もしもの時のSAN回復ポイント。30分あたっていると1d3回復できます。
『ぱちぱちと音を鳴らして燃える暖炉。煉瓦でつくられ、その炎はとても暖かくて心が落ち着きます。暖炉の上には小さな人形が5つ手をつないで座っています』
<人形>
人形は綿と布で作られています。(これは、アインスの家族です。)
『暖炉の上にある人形は右端が一番大きく、次に2番目、最後、四番目、真ん中と小さくなっています。それらをよく見てみると、それぞれに何か書かれています(※1)。その人形は、みんな笑顔ですがどこか引っかかります(※2)』
(※1ドイツ語で右端から「お父さん、僕、ルディ、ジーク、お母さん」とあります。)
(※2アイデアで「僕」だけが糸で無理やり笑わされています)
「僕」の人形を手に取ると、両隣の人形としっかり手をつないで離そうとしません。ですが、STR2と対抗で簡単に離すことができます。
何とかして、「僕」の人形を手に取ると見た目に似合わずずっしりとした重さを感じます。そして、胸のあたりが硬いことがわかるでしょう。服の下を見てみると、じわじわと赤い液体が出てきます。《医学》で調べてみると、それが人間の血液であることがわかります。0/1のSANチェックを。
中身を見るのなら、アインスも全く同じ位置を引き裂かれます。それによって命を落とした場合、BAD ENDとなりますので途中で気付かせてあげてください(胸元を抑えて苦しそうにうめく、血を吐くなど)。BAD ENDのときは報酬などはありません
<暖炉>
《目星》で暖炉の中に何かが燃えていることがわかります。そして、それは炎に飲みこまれながらも形を保ち続けています。部屋の中に火かき棒はなく、今は取り出すことはできそうにありません。もし探索者が手を突っ込んだら1d3のダメージを受ける代わりに取り出せます。
『それは封筒です。白い封筒に、花が描かれた赤い封蝋が押されています。中身を開けると書き殴ったかのように乱れたドイツ語で書かれた手紙が一通入っています。(《ドイツ語》成功)
「あの子たちは9歳と15歳になった。自分は19で、彼らの成長は喜ばしい。でも、もう助からない、そう決まってしまったから。今日だけ、この世界で過ごそう。明日はどうせ――—最期なんだから」
と涙の跡とともに書かれています』
アインスのすべてを諦めた心が、記されています。赤い封蝋には《知識》の半分でキスツスの花が描かれていることがわかります。花言葉は「私は明日死にます」

〖机〗

ガラスで出来た、一人が食事できるくらいの机です。
『一人が食事できるぐらいの大きさの、小さな机です。大きな部屋なのにこれだけがとても小さく、強く振れると壊れてしまいそうなガラスにどこか寂しさを感じさせます。そんな机の上には、一つの写真立てと懐中時計が載っています』
『懐中時計は繊細な装飾の施された、美しいものです。時間を見ると今は朝の6:00となっています』
『写真立ての中に入っている写真は、おそらく家族の写真です。真ん中で幼い男の子、10歳ぐらいの少年、そんな二人を抱きしめて優し気に笑う十代半ばほどの少年、そんな彼らの両脇にいる男女です。ですが優しげに笑う少年以外の顔は塗りつぶされたかのように真っ黒です』
アイデアに成功で、優しげに笑う少年が今ロッキングチェアで眠っている青年に似た面影を感じます。《目星》でその写真の裏にももう一枚あることがわかります。
『裏に入れられているその写真は、先ほどの家族が成長したものでしょう。ベッドに横たわり優し気に笑う青年と、彼を囲む家族の写真です。青年以外の家族全員の顔が、先ほどの写真のように塗りつぶされているかのように真っ黒です』
青年に《心理学》で、彼の優しげな笑顔は心からのもの。悲しみも不安も、何もないからこその笑顔だとわかるでしょう。

〖本棚〗

木製の本棚に様々な本がきっちり丁寧に入れられています。
アインスの記憶が記されています。が、記憶がないため見ることができません。
『様々な背表紙の本が丁寧に入れられている本棚です。本を手に取り、中を見てみますがそこには何も記されておらず、白紙のページが続きます』
《図書館》で言葉が記されている本が見つけられます。本のタイトルも中身もドイツ語です。
『本のタイトルは「病院での生活」です

「肺がんだとわかり、入院することになった。せっかく大学に行けると思ってたのになぁ。治ったら行けるなんて言われたけど、ほんとかな。治る、のかなぁ」
「可愛い可愛い僕の弟たち。この子たちが悲しむような結果を僕は望まない。信じよう」
「友人は、今日も来ない。きっと、もう来ない。仕方がないんだ」
「入院したせいで、二人とも忙しそう。弱気になんて、なれない……できるわけない」

「聞いてしまった……なんてことだろう……あぁ、神様」
「僕は…………死ななくてはいけないのですね」
「それが運命なら、僕は受け入れましょう……僕はあなたを、神様を信じていますから」

「神父様が僕の病室に訪れた。いったい何なのだろう……」
「神父様は、僕を理解してくれる。宗教の違う僕のことを、受け入れてくれる」
「あなたの言う世界を……僕は見たい」

「願いを……叶えてください」

このように、誰かが悲しみ諦めたことが記されています』
最後のページには、濡れたような跡と染みがあります。《医学》でその染みは血だとわかるでしょう。クリティカルやスペシャルで、肺がんによる喀血のものと分かっても構いません。

〖青年〗

彼は、アインスです。願いを叶えてもらい、自分の体が馴染むのを待っていました。探索者たちの存在は神父にとっても、彼にとっても想定外のことでした。
『座っている青年は、まだ眠っています。椅子に腰かけ、ゆらゆら揺れながら眠る青年の顔は、とても穏やかです。彼の膝の上には一冊の聖書、それには栞が挟まれています』
栞にはスイレンの花が描かれています。《知識》の半分で花言葉は「信頼、信仰」だとわかります。栞の挟まれたページは
「愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません。
愛は自慢せず、高慢になりません。
礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、 怒らず、人のした悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜びます。
すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。
(コリントI 13章4節〜7節)」
といったことが記されています。要約すると、これは愛とはどんなものかについて書かれたものです。

一通り探索を終えると、アインスは目を覚まします。

【おはよう】

『青年は目を覚ますと、探索者たちを見まわして驚いた顔をしつつも「おはよう」と微笑みます。彼は探索者が名乗る前にそれぞれの顔を見て名前を呼びます。なぜ知っているのかを聞くと
「神父様が……いや、天使様が今教えてくれたんだ。あなたたちの名前なんて天使様にはお見通しなんだね」
と嬉しそうに笑います。』
名前を聞いても、彼は覚えていません。好きに呼んでくれて構わないと笑います。
名前だけではなく、家族のことも、病気のことも覚えていません。ただ、この世界を堪能したいだけなのです

 Q:ここはどこ?
 A:……神様が作ってくれた世界だよ
 Q:神様って?
 A:父なる神、子なる神、聖霊である尊きお方だよ
 Q:君は誰?
 A:誰だろう……思いだせないや。確か……始まり……あれ?まぁ、いいや。好きに呼んでよ
 Q:誰がここに連れてきたの?
 A:天使様だよ。僕を憐れんだ神様が束の間の幸福をくださったんだ。君たちが来てくれたのも、神様からのプレゼントかな?
 Q:どうやって出るの?
 A:……さぁ?ま、ここで遊ぼうよ!
質問が一通り終わると彼は外へ一緒に行こうと誘ってきます。一緒に行かなかった場合、彼は寂しそうにしています。

【小屋】

部屋の扉を開けると、そこはもう外です。
『彼に続いて外へ出るとそこは森の中です。振り返ると自分たちが今までいた場所は、藁ぶき屋根の小さな家でした。中の様子から見ても、外から見てもこの家の中にあったのはあの部屋だけでしょう』
小屋自体に情報はありませんが、ネームプレートがぶら下がっています。しかし、どれだけ目を凝らしてみてもそこに書いてある文字をあなた方は認識することができません。
(このネームプレートは、動物たちと話して鍵を集めるたびに文字が浮かび上がります。最終的には「EINS」となります。)
『青年はあなた方を見て、「そこは、神様がくださった世界で僕が作った不完全な場所なんだ。だから、物足りないのかな」と悲しげに笑います。そしてその表情を誤魔化すように優しげに笑い、探索者の手を引いて進んでいきます』

【森の小道】

『彼に手を引かれて歩く道は、木漏れ日のさす、緑と茶色の世界です。気分を落ち着けるように鳴く小鳥の声とあなたたちの立てる音だけが聞こえてきます』
《目星》と《聞き耳》を振ってください。《目星》成功者は道から逸れた森の奥に、鮮やかな色が見えるでしょう。《聞き耳》成功者はがさがさという音が近く、目の前のほうから聞こえるでしょう。
《聞き耳》のほうなら、【紫の森】へ。《目星》のほうなら【花の庭】へ

【紫の森】

ここは森の王の城でもあります。最初に会わなくても、《花の守り人》が彼の存在と、会い方を教えてくれます
『しばらく待っているとがさがさという音はだんだんと近づいてきます。あなたたちがその音の主を待っていると、どういうことなのでしょうか。草と土だけだった地面に、紫色の花が咲き始めたのです。そして、その突然咲いた花を従えるように悠々と現れたのは、一頭の牡鹿です。立派な角を持ち、知的な瞳であなた方を見ながら堂々と胸を張り歩いてくるその牡鹿は、あなた方の前で止まります』
花に《知識/2》でラベンダーの花だとわかり、花言葉は「あなたを待っています、幸せ」とわかります。
「はじめまして、わたしは《森の王》。この森のすべてを治めるものだ。惑い人よ、選び取って過ごすがいい。君が選ぶ選択ならば、わたしは……いや、なんでもない」
と、アインスを見て言い淀みます。《心理学》で彼は迷っているようです。自分の出した答えが正しいのか、迷っているのです。彼はいろいろと答えてくれますが、肝心なところは言い淀みます。

 Q:ここはどこ?
 A:ここは、紫の森。わたしの城だ。
 Q:そうじゃなくて、この世界
 A:ん?この世界のことか?ここは……いや、いずれわかる
 Q:教えてくれないの?
 A:生きてさえいれば、いずれわかるだろう。
 Q:彼(アインス)は誰?
 A:運命を受け入れるために、旅をする惑い人だ。この世界のものではない。君たちもな
 Q:あなたは誰?
 A:《森の王》。この森は私が治めている。好きに過ごしていいが、あまり乱暴はしないでくれ
 Q:どうやったら出れるの?
 A:支配者たちが鍵を持っている。この世界に来た惑い人が、落としたものだ。そして、穢れ無きものを5つ集めよ。そしてあの忌々しい黒猫に渡せ
 Q:穢れ無きもの?
 A:《花の守り人》が知っている
 Q:黒猫?
 A:ふん。《夜の導き手》のことだ。すべてを知っているから、知らぬものを嘲笑うのだ。忌々しい
 Q:あなたも鍵を持っている?
 A:…………運命を、受け入れる覚悟があるならば

「お前たちは、どう足掻いても覆すことのできない運命があったとしたら、それを受け入れるか?」
受け入れられると答えた探索者に対しては、
「それが、人の生死だったとしてもか?」
こう問いかけ、黙りこみます。
《森の王》はアインスが死ぬ運命を否定しようとしていますが、どうにもなりません。せめて、この世界にいてくれたなら……とも思っています。ですが、運命を受け入れる勇気もまた大切なものだと知っています。だから、探索者たちが彼の答えを後押しできるような答えを出せば、彼は迷いながらも鍵を与えてくれます。
『《森の王》はあなた方の答えを聞き、にっこりと微笑んでいる青年を見ます。その笑顔はまた、《森の王》が選択を迷わせるものでしたが、《森の王》は迷いを振り払うように青年の手に何かを押し付けます。
(アインスに《心理学》でその笑顔は受け入れるというよりは、諦めているようだとわかります)
「持っていけ、勇気ある惑い人よ。君の未来が、せめて……少しでもよいものとなるように」
そう言って、祈るように目を伏せ、《森の王》はどこかへ行ってしまいます。同時に、咲いていた美しい花も空気に溶けるように消えていきます。青年の手の中を見ると、そこには銀色の大切に手入れされていたとわかる十字架のペンダントが置かれています。青年はこれを見ると
「なんで、こんなに悲しい気持ちになるのかな……」と呟いて一筋涙を流します。
十字架のペンダントを見ると、ぼんやりと「E」の文字が刻まれています』
この後も《森の王》と接触することはできます。ですが、さして役には立ちません。この森のイベントはおしまいです

【花の庭】

ここは美しい花の庭です。ここの花は《花の守り人》によって守られています。
『あなたがたは、視界の端に映った鮮やかな色に惹かれるように、足を進めていきます。道なき道を抜けるとそこには、様々な花が咲き誇る庭園が現れました。澄んだ川が流れ、その水を吸い上げて花たちは瑞々しく咲き誇り、その幻想的な美しさから目を逸らすことができません。光の差し込み方ですら、この庭は自在に操っているかのようです。そのあまりの美しさに見惚れていると、足元から可愛らしい声が聞こえます。
「お気に召しましたか?旅人さん」
足元には小さなウサギが一羽、花を抱えてあなた方を見上げています。
「初めまして、おはようございます。ぼくはこの庭に咲く花を守っている《花の守り人》です」
そう挨拶をして《花の守り人》は全員に花をプレゼントしてくれます』
この花は見たことがない花です。薔薇のようなのに桜のような、赤く見えるのに白い、そんな不思議な花の花束です。
『《花の守り人》は全員が花束を受け取ったのを確認して、首をかしげて尋ねます。
「皆さんはもう《森の王》にお会いになられました?」

(会っていた場合)「なら、良かったです。ぼく、皆さんが会わずにここへ来たらどうしようかと思いました」
(会ってない場合)「それは大変です!あの方にも一度お会いしなければいけませんよ!」
どちらにしろ
「これ、あげます。あのお方が、招待してくれますよ」と角笛をくれます。この角笛の使い方はAFの角笛を参照。
吹けばその足元に紫の花が咲き、目の前には《森の王》がいるでしょう。

「それじゃあ、ぼくの庭を楽しんでください。いっぱい綺麗なお花が咲いていますよ」
と誇らしそうに胸を張って言います。青年はウサギが可愛いのか、触ろうか触らないか悩んでいるようです』
悩んでいるのは以前肺がんで、動物に触ろうとして怒られたことが体に残っているからです。背中を押してあげれば、彼は嬉しそうにモフモフしています。
《目星》でここにある花はどれも見たことがないものですが、「一輪の白いユリ」と「オレンジ色の、三つの薔薇の蕾にひとつの薔薇」が咲いているのを見つけます。《知識/2》で白ユリは「純潔」を、オレンジの薔薇は「友情」を、三つの薔薇の蕾にひとつの薔薇は「あのことは永遠に秘密です」という意味だと分かります。
ユリの下に何か光っているものがあります。覗いてみると、それは白いユリから零れ落ちた蜜で出来た小さな一掬い分の泉です。これが、『純潔なものの涙』です
オレンジの蕾と薔薇の下にも、何か落ちています。そこには薬の入った小瓶が落ちていました。《薬学》で薬が「ユーエフティ(UFT)」、肺がんの薬だということがわかります。そして、小瓶に「I」の文字が刻まれています
『それらを見つけると《花の守り人》は近づいてきて話しかけます。
「それ、あげますよ。大切なものでしょう?」と小瓶を探索者からとって青年に渡します。青年は戸惑いながらもそれを受け取ります。彼はその薬を、「何の薬だろう?」という表情で受け取ります。《心理学》で彼は何かを思い出しかけているが、その記憶に蓋をしていることがわかります。
白ユリの泉にいる探索者のほうを振り返ると、
「それは、必要なものです。ここから出る時に大事なもののひとつです」
そういって黄金色をしたガラスのボトルを渡してきます。
「これに入れるといいですよ。全部集めたら観覧車に行ってください。黒猫さんが作ってくれます。
「僕が知っているのはヒントだけです。『純潔なものの涙、清らかなる水、太陽の雫、聖なる血潮、そしてお星さま』です」』
とだけ言ってウサギはもう何も教えてくれません。話し相手にはなってくれますが、他に有益な情報はくれません。
アインスはその小瓶をもって、にっこりと笑います。《心理学》をしなくても、感情を抑え込んで笑っているのがわかります。その感情は悲しみです。
「次のところ、いこ?どこに行く?」
《森の王》のところへ行かないのなら【泉】か【街】を進めてきます。

【泉】

ここの泉は蜂蜜酒の材料の一つです。
『水気を含む空気が漂う森を抜け、現れたのは美しい泉です。鮮やかで心落ち着く緑に包まれたその空間にある泉は、近くにある岩場からまるで空から絹が落ちてくるように静かに、まっすぐ降り注いでいます。
その場に広がる空気は清浄なもので、深呼吸をするだけで不安や疲れが薄れていくのを感じます。泉の水も美しく透きとおっていて、掬いあげ飲んでみたいと感じるでしょう』
少しでも泉の中に手を入れようとすると《泉の守護者》がどこからともなく現れます。
『泉の水を救おうと手を伸ばすと、あなたの首元に冷たい気配を感じます。
本能に身を任せて身をよじると、あなたの喉があった場所には金色の捻じれた槍が――いえ、あなたはすぐ気が付くでしょう。そこに佇むは仔馬ほどの大きさの美しい白馬……聖獣ユニコーンだと。そのユニコーンの角が探索者の喉元めがけて、突き付けられたのです。
「貴様、泉になにをしている」
その小さく美しいユニコーンは、角であなた方を牽制しながら睨みつけ、怒りと警戒を込めた声で問いかけます。
すぐに手を伸ばすのをやめれば、彼も角を引きます。
「われはここの泉を守護するもの、《泉の守護者》。穢れ無き泉の守護者」
そう名乗ると、泉を護るようにあなた方と向き合います』
そこの泉が『清らかな水』です。泉の水がほしいというと、彼は渋ります。
『「なぜ、この泉の水を欲しがるのだ?」
「それほどまでに、ここから出ることを望むのか?」
「小さきものはなぜ、ここから出ることを望む?ここは安寧の地だというのに……」
そういいながら、理解ができないと首を振ります。』
《アイデア》で、彼の言う「小さきもの」とは青年をさすのだとわかります。
《説得》にて、泉の水をもらえます。失敗の場合は3ターン戦闘です。彼が死ぬか、3ターン終わるかすれば、《泉の守護者》は諦めて水をくれます。仮に戦闘で誰かが死亡した場合、《泉の守護者》が泉にその体を浸すと、HPが全回復して生き返ります。1/1d3のSANチェックをどうぞ。
《目星》で泉の底に何か光るものが落ちていることに気が付きます。
「小さきものよ、あれがほしいのか?……その覚悟があるならば」
アインスか、《泉の守護者》が取ってくれます。探索者が入ろうとすると《泉の守護者》が戦闘態勢に入ります
拾い上げられたそれは、万年筆のでした。古い型で作られたその万年筆は、大事に使い込まれているのがよくわかる立派なものでした。万年筆には名前が書かれていますが「●●N●」と、「N」以外の文字が削り取られています。
『《泉の守護者》は青年がその万年筆を持って呆然としているのを見ると、悲し気に目を伏せます。
「小さきものよ……それを見てもなお、覚醒の世を望むか?」
その問いに青年は黙り込んでしまいます。困惑しているのでしょう
「……帰らなきゃ、いけない。それしか、わからない」
そう彼が呟くと「そうか」とだけいい、泉の上を歩いてどこかへと消えてゆきます』
もう泉に危害を加えない限り、出てきてくれません。危害の内容によっては、探索者が死ぬまでの戦闘に入ります。

【街】

ここは様々なものが置いてありますが、人はいません。ここに置いてあるものは、全部アインスを含む探索者の記憶にあるものばかりです
『街を訪れると、そこはとても静かです。それもそのはず、あなたたち以外誰もいないのですから。街にはいくつかの店といえ、その中で一番目を引くのは大きな観覧車でしょう。大きな観覧車は動くことなく、街を見下ろすように佇んでいます』
『店や家々に並んでいるものを見ていると、ふと気づきます。そこにあるもののほとんどが、あなた方の見覚えのあるものばかりなのですから』
手に取ってみても、それはあなたの記憶にあるままです。汚れも、感触もすべて記憶のとおりです。……つまり、探索者が一度触ったことのある武器も並んでいるのです。さすがに、戦車などはないです。なぜなら地形を大きく変えかねないもの(ほかにもショベルカーなど)は、支配者たちによって除外されているので最初からありません。
青年はそこに並べられたものをいくつかを手に取り、笑顔を消して悲し気にしていることが多くあります。
探索者が見つけたものによっては、悲しみや恐怖から0/1のSANチェックをどうぞ
【観覧車】へどうぞ

【観覧車】

『観覧車の近くまでやってきますが、どう見ても止まっています。そんな観覧車の入口においてある椅子に何かがいます。それは、黒い猫です。黒い猫はまるで人間のように椅子に座り、紅茶を飲んでいます。あなた方に気が付くと猫は、ティーカップを置いて椅子から降り、優雅に挨拶をしてきます
「ごきげんよう、お客人。お乗りなさいといいたいところだが、まだ足りないようだね。またおいでなさい」
と鼻で笑ってから、椅子に座りなおします』

 Q:あなたは誰?
 A:私は誰でしょう?
 Q:《夜の導き手》?
 A:今はまだ太陽の世界ですよ、お客人がた
 Q:何が足りないの?
 A:鍵も材料も、そして時も
 Q:どうすれば出られる?
 A:出ようと思えば。お客人、あなた次第ですよ(青年をチラリ)

といった喰えないやつです。
彼が出口ですが、まだ鍵と材料がそろっていないうえ、太陽の出ている時間なので脱出はできません。具体的には日没後です。【星空】の後になれば、帰るにはちょうどいい時間です。
『黒猫は椅子に座り、今度は新聞を手に取り読み始めます。しかし、ふと思いついたように
「あぁ、そうです。どうですか?暇ならばこの先にある聖堂に行ってみては?そこにも素敵な方がおりますよ。あぁ、暗くなったら林のほうへ行くのもいいでしょう。綺麗ですよ」
とウインクを一つして、新聞を読み始めます』
条件をクリアしてここに来ない限り、彼は動きません。あんまりしつこくすると、爪でひっかかれます。耐久力から1減らしてください。
探索者が立ち去る時、《聞き耳》成功で
「別れの時、夜空を案内いたしましょう……ここをどうか、忘れないでくださいね」
と呟いたのが聞こえます。

【聖堂】

街から出て聖堂へ向かうまでの道のりは、草原が広がっています。ピクニックにちょうどよさそうな、草原です。
『そんなほのぼのとした雰囲気の草原を抜けると聖堂が建っています。外から見ても、神々しさを感じるでしょう。聖堂を見ると青年は嬉しそうに駆け出して、扉を開けて中に入ってしまいます。急に駆けだした彼を慌てて追いかけ、中に入りますと外から見た以上に神々しさを感じるでしょう。青い光に満たされた聖堂の中は静かで、豪華な装飾が光を反射してさらに明るくこの場を照らしています。
(《知識》で装飾などからカトリックであることがわかります。)
室内には大きな宗教画が飾られているほか、大きな十字架と像の下には祭壇があり、青年は祭壇の前で跪き祈りをささげています。』
宗教画と祭壇に《目星》できます。
宗教画には聖母と天使たち、そして子羊が描かれています。成功者はその羊だけ、違和感を覚えます。
祭壇は刺繍があしらわれた白い布がかけられており、その上は美しく磨かれた祭具が置かれている。成功者はその中でただ一つだけくすんだ木製の小箱を見つけます。
『祈り終わった青年がその箱を開くと、音楽が流れることからオルゴールだとわかります。その音楽が流れると、子供特有のかん高い笑い声が聞こえます。聞こえてくるのは宗教画のほうからです。みると、宗教画から子羊が現れ楽しそうに跳ね回り始めます。跳ね終わった後子羊は祭壇の上に飛び乗って
「こんにちは!!ボクは《聖堂の使者》!どういうのかは知らないけど!!」
と元気よくあいさつします。』
彼はあまり難しい質問には答えられませんし、特に新しい情報はくれません。しかし、鍵とオルゴールについては話してくれます。
『オルゴールについて尋ねると何の問題もなく、青年に渡してくれます。オルゴールの蓋を開けると、円盤のところに「S」と刻まれています。《聖堂の使者》は
「これで、全部そろったね!」
と嬉しそうに話します。流れてくる音楽は「トロイメライ」です。』
これで「E」「I」「N」「S」の文字が揃いました。ここで探索者が名前を告げるか、小屋に戻ってネームプレートを見れば思いだせます。しかし、まだ鍵は集まっていないので【取り戻した記憶】まではいけません。
オルゴールに《聞き耳》《芸術(歌唱)》で音が少しずれていることがわかります。《目星》で円盤の下に何かが挟まっていることがわかります。その挟まっているものが原因のようです。
『取り出すとそれは、小さな一枚の紙でした。母国語《ドイツ語》以外の探索者は、《ドイツ語》成功で読めます。そこには

「お父さん、お母さん。今までありがとうございました。幸せでした。どうか、このオルゴールだけは僕と一緒に神様のところへ送ってください。
ジーク、いつも心配してくれてありがとう。これからは君が家族を守ってね。自分よりほかの人を大事にする、そんな優しい君にはこの十字架をあげる。
ルディ、君はまだ小さいからよくわからないかもしれないね。このことが君の心に傷をつけないかが心配です。賢くてしっかりしてる未来ある君には、僕が使っていた万年筆をあげるよ。
僕の愛する人たちに、光がありますように
●●●●・Beilschmidt」

と書かれています。まるで遺書のようだと思うでしょう。《目星》でその紙には染みがついており、その染みは涙の跡だとわかります。《アイデア》でその跡はとても少なく、泣きながら書いたのではなく不意に零れ落ちてしまったのだろうとわかります。』
アインスにこれを見せると、彼は茫然とそこに書かれている名前と苗字を見ています。しかし、思いだせることは特に無いようです。ただ、頭を押さえて何かを思い出そうとしています。
『《聖堂の使者》に鍵について尋ねると、
「う〜ん……これをあげなきゃいけないことだけはわかってるよ!はい!」
といって、祭壇の上に置いてある金色の杯を示します。杯には白い布がかけられており、中身を見ると葡萄酒が注がれています。見ているだけでも美味しそうな葡萄酒と分かるそれを一口なめると、口の中に葡萄の甘みが広がります』
この葡萄酒が『聖なる祈り』です。
『《知識》でキリスト教における葡萄酒とはイエス・キリストが最後の晩餐の時に弟子たちに与えたものであることと、キリストが流した血の象徴であることがわかります。失敗しても、青年が教えてくれます。
「じゃあね〜!また会わないことを願ってるよ!!」
と《聖堂の使者》は叫んで宗教画の中に飛び込んでゆきます』
葡萄酒とオルゴールを手に入れて外に出ると、空は少し暗くなってきています。
「林の方、行ってみようか」
と少し暗い顔をしたアインス。《心理学》で遺書から何か確信を持ったのだろうとわかります。しかし、彼は語りません。

【オーロラ】

しばらく歩いていくと、地面に少しずつ雪が増えて変わりに緑が消えてゆきます。
『やってきた林は雪が降り積もり、冷たい風が吹いています。生き物の気配はまるでなく、白銀の世界に包まれたそこでは自分たちが立てる音以外には、木から雪が落ちる音、風の吹く音しか聞こえません。身を刺すようなその風にあたった青年は、ごほごほと咳き込みます。その咳はなかなか止まらず、彼は膝をついてしまいます。彼を支えようとしゃがんだ探索者の目には、彼が吐き出したものによって白い雪が赤く染まる。彼の咳はなかなか止まらず、彼はわずかな血を何度も何度も雪の上に吐き出した。彼の顔は上気し、苦しそうに喉元に手を当て咳き込み続ける』

《医学》で彼の今の症状は肺がんによる空咳・吐血・発熱・呼吸困難と分かります。

『長く続く咳が苦しくてか、彼は意識を失います。しかし、それでも咳は止まりません』
《医学》で症状を和らげるか、UFTを使えば多少はよくなりますが咳は相変わらず止まらず、呼吸が苦しそうです。

『その突然のことに戸惑っていると、不意に一段と強い風が吹きます。風の吹いた先には仲睦まじく寄り添いあう番の狼が佇み、その静かな瞳であなた方を見つめます。
狼夫「それでは治まらん。泉の水があるのならばそれを飲ませよ」
狼妻「ついでにこれを食べさせなさい。よくなる」
と金平糖ほどの大きさの宝石をあなた方に向かって放り投げ、渡します。それは小さな琥珀です。《知識/2》で琥珀は『太陽の雫』と呼ばれていることがわかります』
この琥珀が『太陽の雫』です。

『少しの泉の水と琥珀を飲ませると、あっという間に咳は治まり呼吸も安定してゆきます。
その様子を見ると、二頭は大地を蹴り、一瞬で探索者の近くへ飛んできます。
「我は《雪原の支配者》」「妾は彼の方の配偶者」
「「歓迎しよう、道を失った哀れなものたち」」
そう挨拶すると、空に向かって遠吠えを響かせます。
「…………き、れい」
青年がそう呟き、空に向かって手を伸ばします。その先を見ると、そこには空いっぱいに広がる美しいオーロラが現れていました。絹の布が揺らめくようにオーロラは揺らぎ、そのたびに光が広がってゆきます。体を無理やり起こした青年はその光を受け止めようとするかのように、その腕をめい一杯伸ばして一歩一歩踏みしめるように歩いてゆきます。
「綺麗だね……初めて見たよ、オーロラなんて」
そうまるで夢でも見て、心ここにあらずといったように呟いています。その眼は感動していることがよくわかるほど、輝いています。
「満足したか、道を失ったものよ」「ならば進むべき道を早く決めなさい、哀れなものよ」
「「我らは、その選択を見届ける」」
そう叫ぶや否や、《雪原の支配者》は風のように消え去りました。二頭がいたところには片手に乗るくらいの量の琥珀が残されています』
琥珀を手に入れた後、アインスは歩き回るのをやめて俯きます。
『ずっと空を見ていた青年は突然立ち止まり、悲しげに俯きます。そして小さく
「でも、寒いのは嫌いなんだよなぁ……だって、寂しくなるじゃないか」
と呟き
「銀色の世界は音を吸い込んで、独りぼっちみたいにさせる……だから、嫌い」
とつづけます』
【星空】へ

【星空】

『彼がそう呟いたとたん、世界に変化が現れます。まるで絵具をかき混ぜるかのように、ぐちゃぐちゃになって溶けていくのです。それはあなたたちの立っている地面も同じこと。ですが自分たちが立っている地面は、溶けているにもかかわらず何の問題もなく立っていられるのです。やっと空と地面が落ち着いたとき、そこには雪景色もあの美しいオーロラもありません。新しく塗り替えられた世界は静かな海と、美しい星空でした。その、現実ではありえない事態を見た探索者は1/1d3のSANチェック』
このように世界が変化しても、アインスには何の変化も見られません。ただその美しい星空を、刻み付けるように見続けるだけです。
『青年はそのような変化が起きても、動じません。ただ、空を見つめるだけです。彼の唇が小さく動いたような気がしました。《聞き耳》をどうぞ』
《聞き耳》で「神様、ありがとう」と呟くのが聞こえるでしょう。
『突然の変化に戸惑う探索者をよそに、青年は海の近くへ歩いてゆきます。その足取りは先ほどまで咳で苦しんでいたとは思えないほどです。しかし突然、彼の動きが止まります。そのことに気付き、近づいた探索者はPOW11と対抗ロール。負けたら、海の中へとどんどん入っていくことになる』

海にいるのは深きもの3体。内一体が《セイレーンの歌》を歌っている。深き者どもを見たことにより0/1d6のSANチェック。

『青年と探索者たちは海の中へとどんどん入っていく。深きものたちが動き出したその瞬間、深きものたちは吹き飛ばされ、青年と探索者は砂浜に放り出されます。海の上に立ち、深きものたちを牽制するのは、先ほどの《雪原の支配者》とは違うもっと大柄で力強い狼。探索者と青年を護るように佇むのは白く巨大な虎だった。
「俺様は忘れ去られた王。海の世界を治める《海岸の主》だ!!」
そう空気を揺らすほどの大声で狼が叫ぶと、海岸付近へさがります。それを深きものたちも追いかけ、近づいてきます。それを見るや、《海岸の主》は
「俺様の支配する世界で暴れたいのならばかかってこい!全てを手に入れるのは強者だ!!」
と叫びます。戦闘開始です』

深きもののステータスはルルブの平均値を参照してください。探索者に合わせてアレンジしても構いません。
《海岸の主》は進んで攻撃しますが、白い虎こと《案内人》はアインスに命じられないと動きません。

セイレーンの歌:詠唱者が呪文を歌唱すると、2D6+20時間の間目標を束縛して、思うままに操ることが出来るようになります。詠唱者は1マジックポイントと正気度を5ポイント消費します。抵抗表で詠唱者と目標のPOWを戦わせて、目標が勝てば呪文は何の効果も現しません。《セイレーンの歌》はそれを聴いた者全てに効果を現します。

戦闘終了後

『白い虎は気が付いたらどこかへ消えてしまいました。戦闘から戻ってきた《海岸の主》は白い虎がいないことに気が付くと低い唸り声をあげます。
「くそっ《案内人》め、また逃げたか!」
彼の怒声はとても大きく、一言発するたびに空気が大きく揺れていると錯覚するほどです。《海岸の主》は青年の前に立つとまるで値踏みをするように、頭からつま先まで舐めるように見ます。そして、つまらなさそうに息を吐くと今度は探索者たちを一人一人見ます。そしてやはりつまらなさそうに息を吐くと、近くの岩場に上り大きなあくびを一つ。
「あの……」と青年が話しかけますが、一瞥するや否や興味がないというように目を逸らします。
「俺様は弱い奴が嫌いなんだよ。強い奴に会わせろ」
というと、眠りにつこうとします。』
彼は、アインスがここに来たことが運命から逃げたことと同義であると考えており、弱者であると非協力的です。探索者が彼と戦って満足させるか、また別の強者を見つけてあげるかすると、協力してくれます。ちなみに、強者の候補は《雪原の支配者》《案内人》です。彼らと戦った場合、勝つことができません。それでも、《海岸の主》は満足します。
または、アインスが元の世界に帰ることを選択し、運命を受け入れているのであれば協力してくれます。
彼の言う弱者は「精神的に弱いもの」と「肉体的に弱いもの」のことをさしています。「運命から逃れ」「病を患っている」アインスは、彼のお眼鏡にかなわないようです。

『《海岸の主》を皆さんが説得すると
「俺様は弱い奴は好かん。弱者など、生まれながらの敗北者だ。それに抗うならば、多少の見どころはあるな」
と、笑ったような気がしました。
「来い」
そう短く告げると岩場の向こう側へ飛び降り、走っていきます。着いてきているか、確認するように後ろを振り向きながら走ってゆきます。
《海岸の主》につづいていくと、向かっている先にある砂浜がぼんやりと光っています。たどり着くとそこには、砂浜であるはずなのに光り輝く麦畑が広がっています。光っているというのは比喩ではなく、本当に麦そのものが光を放っているのです』
この光を放つ麦が『お星さま』です。
『青年はその中に入っていくと麦をひと房摘み取ります。摘まれてもなお、麦は光を失うことはありません。
「どうだ、綺麗だろう?星空の下でしか育たぬ麦だ」
と誇らしげに胸を張り、《海岸の主》は麦を切り取って探索者たちに渡します。
「くれてやる。あの黒猫に全て渡すこともないだろう。少しは持ち帰れ」
と鍵の分のほかに、探索者たちに1d6房の星麦をくれます。
「自分の分はとったな?なら、さっさと帰れ。まだ時間はあるかもしれんが、帰れなくなるぞ?
ここの朝日も見ものだが、お前たちは見る必要はないだろう?」
そう最初とは違う優しげな眼で全員を見つめ、麦畑の中へ入りそれっきりどこにいるのかわからなくなりました』
一応、ここまで来たら探索できる場所はありません。
あとは、名前と記憶を取り戻して観覧車に乗るだけです。

【取り戻した記憶】

<条件>
・鍵を全部集めたうえで、名前を思い出させる。

『青年はその名前を聞くと涙を流し、声をあげて泣きました。
「お父さん……お母さん……ごめんなさい。大事な、大事な名前なのに……。僕は、二人のことも……うぅん、家族のことも忘れてここに……。みんなが、どんな気持ちでいるのかも……無視して、独りで……!!」
自分を心配してくれている家族のことも、家族がくれた贈り物のことも全部忘れて、この世界で過ごしたことを彼は悔やんでいます。そして、声をあげて泣きながら何度も何度も謝り続けています』
探索者が慰めても、慰めなくても、アインスは泣き止みます。そして、彼は立ち上がり
『「初めまして、僕の名前はアインス。アインス・バイルシュミットです。この名は父と母から命の次にもらった、大切な贈り物です」といって、爽やかで嬉しそうな笑顔で笑います。彼の笑顔にはもう、迷いも悲しみもありません
「さぁ、ここから出よう。出口はもうわかるから……」
アインスはそう言って笑います』
もう、彼に迷いはありません。素直に、運命を受け入れたことでしょう。
もう、探索する場所がないのならそのまま観覧車へ向かいます。

【帰ろうか】(鍵を取り戻した、材料を集めた)

『観覧車に戻ると《夜の導き手》が皆さんのことを待っています。
「お帰りなさい、ちゃんと、揃っていますね。いただきましょう」
そういって《夜の導き手》は「白ユリの蜜」「清らかなる水」「主の葡萄酒」「雪原の琥珀」「海辺の星麦」を受け取り、琥珀色のボトルの中でゆっくりとかき混ぜます。
「出来上がるまでお待ちなさい。さぁ、観覧車の中へ……」
《夜の導き手》は手を差し出し、エスコートしてくれます。皆さんが入り終わったのを確認すると、ゆっくりと観覧車が動き始めます。淡く光る観覧車は、地上から徐々に離れてゆきます。《夜の導き手》は琥珀色のボトルで何かを作りながら
「どうですか?この世界も捨てたものじゃないでしょう……あなたが残りたいのなら、残ってもいいのですよ?お客人、歓迎しますとも」
と呟きます』
この後の状況は名前によって分かれます

(名前がない時)

『青年は外の世界を見たまま、悩んでいるようです。落とし物を集めても、必要なものを集めても、まだ彼の心は晴れません。
「僕は……帰るよ……」
「そうですか……それもまた、いいでしょう」
「あなた方はいかがです?」>探索者
返事に「そうですかそうですか」と呟き、二人はそれっきりしゃべりません』
アインスは、自分の名前が思い出せないことを思い悩んでいます。彼の名前をどうにかして思いつくことができたなら、【取り戻した記憶】へ

(名前を取り戻した場合)

『アインスはだんだんと離れていく地上を見つめて、笑っています。そして問いかけに
「帰るよ。自分が誰かも思い出した。どんな状態なのかも、なぜここに来たのかも」
アインスは目を見てはっきりと答えます。それをみて、《夜の導き手》は満足そうに頷きます
「あなた方は、いかがですか?お客人と同じですか?」>探索者』
 
の後、下へ

『青年の答えを、探索者たちの答えを聞いた《夜の導き手》はくるくるとボトルの中の液体を回して様子を見ています。
「あぁ、いい色合いです……みなさん、お別れの用意はよろしいですか?」
「このお酒はほんの餞別。新たな一歩への祝杯です」
《夜の導き手》はワイングラスを人数分取り出します。そして、それを一人一人に渡し、
「あなたの人生が、光あふれんことを」「あなたの人生が、幸多きことを」「あなたの人生が、豊かなることを」「あなたの人生が、愛されんことを」
一人一人にそうささやき、ボトルの中身を注ぎます。注がれたものはほんのわずかでしたが、香り豊かで上等な黄金色の酒だとわかります。
探索者全員に注ぎ終わると、青年の前に立ち尋ねます。
「もう一度。覚悟のほどは?」
「もちろん、ある(名前がある)」   「……あるよ(名前がない時)」
その答えを聞き、青年のグラスにも酒を注ぐでしょう。
「君の人生に、笑顔と祈りを」
くるりと向き直り、皆さんを見て自分のグラスを高々と掲げ、叫びます。
「さぁ、別れの時だ!!ここにいる方々に祝福を!!」
「「「「「「「祝福を!!」」」」」」」
窓の外を見ると、たくさんの灯篭が浮かび上がってきます。もう、遠くに行ってしまった大地にこの世界の支配者たちが揃っています。彼らは「見ている!」「祈っている!」「幸あらんことを!」と祝福の言葉を述べながら小さくなっていきます。
 
そして黒猫は一人一人の前に立ってグラスを鳴らし、中身を少しずつ飲み干していきます。探索者がその酒を飲むと、その味はとても甘くて上品で、疲れた体に染みわたります。その程よい甘さと酔いは、あなた方の疲れた体を夢の世界へと誘ってゆきます。閉じられてゆく視界の中、あなた方は青年と目が合います。彼は最初に会った時と同じような笑顔を浮かべ語りかけます。
「ありがとう、僕の大切な――—―」
青年の声が聞こえてきますが、心地よい眠気に襲われているあなた方にはここまでしか聞こえません。沈みゆく意識の中、誰かのすすり泣く声が聞こえるでしょう。それが誰なのか……あなた方はわかりますが確かめる術はありません』

【エンディング】

ここからは条件や状態によって変わります。

『BAD END』(時間切れ。朝を迎えてしまう)

この世界で朝を迎えてしまった探索者たちは、自分たちの記憶が薄れていくのがわかります。その尋常ではないスピードで消えていく記憶。瞬きを数回しただけで、あなたは自分とこの場にいる全員の名前以外思いだせなくなりました。1d4+1/1d6+1のSANチェックをどうぞ。
名前ですら薄れていくなか、支配者たちが現れあなた方の傍に立ちます。そして、優しく守るようにあなた方の体を温めていきます。その温もりに触れたあなた方は、抗いようのない睡魔に襲われてしまいます。
うつらうつらと薄れていく意識の中、誰かが腕を引っ張ったような気がします。
「――――僕のせいで――—ごめん」
目覚めるとあなた方は見たことのない部屋にいます。そこは精神病院。記憶を失い、街を歩いていたあなた方はそこに保護されていたのです。自分の名前しかまだ思い出せませんが、あなた方の中には何か温かいものがある気がします。
その目覚めた日から、あなた方は記憶を取り戻すための入院生活が始まります。時折聞こえる、自分を正しい道へ導こうとする声を聴きながら、あなた方は生きていきます。その生活の中であなた方は、『医療ミスにより、アインス・バイルシュミットが亡くなった』というニュースを知るでしょう。しかし、記憶が完璧に取り戻せてもあなたには彼のことを思い出すことだけができません。

記憶が戻るのは1d10か月後です。
聞こえてくる声は『自分が想像するアインス』のものです。彼のことは全く思いだせませんが、“もう一人の自分”になった彼が大切な人だとどこかで感じます。
記憶が戻ってから、探索者は全員二重人格を持つことになります。そのもう一つの性格は、探索者が想像したアインスそのものなので、あなたが感じたアインスを演じてください。能力はキャラシを参考に好きなように作ってくださっても構いません。“もう一人のあなた”は、あなたを助けるために動くでしょう。

『NORMAL END』(アインスが名前を憶えていない)

目覚めるとそこは最後に眠りについていた場所です。探索者たちは傷もなく持ち帰ったものもないため、彼のことを夢の存在だと思い忘れていくでしょう。ドイツのニュースで、『医療ミスにより、アインス・バイルシュミットが亡くなった』と聞いて、あなた方は友人のことを忘れてしまったことのショックと、その友人が亡くなってしまったことを知って1/1d4+1のSANチェック。

『TRUE END』(アインスが名前を憶えている)

探索者は目覚めるとそこは最後に眠りについていた場所です。あの世界で手に入れたものも全部持っています。(持っているものの一部はAF参照)
探索者たちは彼のことを覚えています。そして、彼の入院している病院も手術の日にちも知っている。探索者たちは彼のもとへ向かうでしょう。
病院に着いた時、彼は手術室に運ばれる一時間前。アインスは探索者の姿を見て、うれしそうに悲しそうに笑います。どんな言葉で説得しても、運命は変えられない。どんな偉大な魔法を使ったとしても、神の定めた運命を捻じ曲げることはできない。仮に、探索者の中に医者がいて、変わりに手術をしたとしても自動失敗となり、探索者自身の手で友を殺すことになります。そしてあなたは彼の家族全員から恨まれるでしょう。
ミスでがん細胞の転移が予想以上でインオペするしかなかったのか、がん細胞を取り除く機器が歪んでいたのか、彼に手術に耐えられる体力が用意されてなかったのか……全てはKPしだい

【後日】
教会の墓場にアインスは埋められました。彼の遺言通り、棺桶の中にはオルゴールが入れられました。悲しみに暮れる彼の家族しかいない、寂しい葬式です。
彼の家族は父親と母親、15歳ほどの弟ジークフリード、9歳の弟ルディです。ジークは何かに耐えるように目元を隠して空を見上げ、ルディはなぜ悲しいのかわからないように泣いています。
両親は探索者たちに礼を言い、葬式の行く末を見守ります。
「息子が……これを渡してくれと、言っていたんだ」
と何かを差し出します。それは、一人一人にあてた手紙でした。内容は感謝と謝罪です。
アインス・バイルシュミットの19年の生はこうして幕を閉じました。生きて戻ろうと努力をしたのに救えなかったことは、あなた方の心に大きなしこりを作ったことでしょう。しかしあなた方が最後に見たアインスの死に顔が、死ぬ瞬間は苦しかっただろうに、幸せそうに笑っていたのは、あなたがたの救いになるのでしょうか。

【真相】

アインスは大学受験生となったころから肺がんに罹ってしまいます。同年代の友人は皆、就職や受験で忙しく疎遠となってしまい、家族ぐらいとしか接点がありません。病室から出ていこうとすると家族や病院関係者に止められ、動物はもちろん自然と触れ合うこともできずにいました。ある日偶然、自分の手術が失敗させられることを知ってしまった彼は、家族にもそのことを秘密にして頼ることはしませんでした。もう、彼の心の拠り所は宗教しかなく、聖書を読み、祈る毎日を送ります。そんな彼のもとに一人の神父が訪れます。他人だからこそ、寂しさを打ち明け慰められたアインスは、彼を神が自分に遣わした天使と思いこみ、願ってしまいます。
この世界は神父が創ったのか、助けてくれる動物たちはいったい何なのか……それはわかりません。もしかすると地球の神が、邪神の手に堕ちた自分の信者を救おうとしたのかもしれません。アインスの信じていた通り、彼の神様が憐れみ、救い出そうとしたのかもしれませんが、契約によって奪われた運命は奪い返せなかったようです。だから、せめて、幸せな時間を過ごさせようとしたのかもしれません……

最初、アインスの死は不確定の物でした。ですが彼は『最後に好きな場所で過ごしたい』と願い、対価として『手術が成功する運命』を捨ててしまいました。彼はそのことを知っていて、願ったのです。だって手術が成功する確率は、もともと低かったのですから。
神父が彼の願いを叶える対価に運命を奪ったのは、探索者の絶望する姿を見たかったからなのか……それはまさに、神のみぞ知る。

【クリアご褒美】

シナリオクリア:1d3+1
アインスと友人になった:1d4(仲の良さによっては+1~3)
アインスの死を見届けた:1d3

作者より

【作者より】

このページへのコメント

はじめまして槐(えんじゅ)さん
夜桜と申します
今回このシナリオを回させていただいていただいて
動画をniconico動画の方で上げさせていただくことになりました
「とりあえず始めたTRPGと
遅ればせながらのご報告申し訳ありません

シナリオはやっていてとても楽しくできました

0
Posted by 夜桜 2017年04月29日(土) 01:57:03 返信

ありがとうございます
(*⌒▽⌒*)

0
Posted by 槐 2016年07月27日(水) 20:31:46 返信

面白かったです

0
Posted by 手作り 2016年06月13日(月) 00:09:44 返信

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