テン×ソラ

そしてそれから、カデシュは帰ってきた。
「ドリスお姉ちゃん、きれいだよ。」
「うふふ、ありがと、ソラ。」

それから事態は急転し、カデシュとドリスは結婚することとなったのだ。

「ほら、テンも。」
「おめでとう、ドリス。それとカデシュも。」


「きれいだったね、ドリスお姉ちゃん。……私もいつか……。」
「そう言えばソラ、またコリンズから手紙が来てたよ。」
「そうなの、じゃあ返事を書かないと。」
「ソラ、コリンズと結婚するんだよね。」
「え?」
「大丈夫、たぶんコリンズもソラのことが好きなんだろうし。でもちょっと寂しくなるな。」
多分テンのことだから仲がいいということと結婚をそのまま繋げているのだろう、
ソラはそう思ったものの何かが引っかかった。

「ソラが幸せになるんなら何でもするよ。」
テンはそう続けた。
「何でも……本当に、何でも?」
ソラは聞き返す。
「うん、当たり前だよ。たった一人の、僕と一緒に生まれてきた妹だからね。」
「じゃあ、ついてきて。」
ソラは自分の部屋へ歩き出した。
「……テンの馬鹿。」
その言葉はテンには届かなかった。

テンと向き合うとソラはやはり自分は女でテンは男なのだということを思い知った。
そしてテンに抱きつくと、自分は少しつま先立ちになり、テンの腰を曲げさせる格好で口づけた。

「え……ソラ……?」
一瞬あっけにとられた後にテンは言った。
「動かないで。」

テンには先ほどからソラが不機嫌なように見えた。
だが、テンが驚いたのはそのあとのことだった。
「私がテンを好きって言ってもこうしないと気付いてくれないんだよね?」
ソラはテンから何歩か離れたその場所で、自分の服に手をかける。
ソラの体は窓からの光が逆行になってテンにはよく見えない。
だが、見てはいけないような気がして後ろを向こうとすると――。
「駄目。ちゃんと見て。」

「テン、どう?」
テンの前には身に何もまとっていないソラの姿。
だが、テンは唖然として何も言うことができない。
ソラはさらに不機嫌な顔になるとテンを押し倒し、テンの足の間に手を伸ばす。
「ソラ……?」
テンはソラの手を払いのけようとするが、
「動かないでって言ったでしょ。」
「でもこんなの……。」
「そう、私がおかしいんだよね。こんなにテンが好きだなんて。でも、私はテンと一緒じゃないと幸せになれない!」
最後は叫ぶようだった。

ソラは唇に何かの感触を感じた。そして目の前にテンの顔があること、
そして自分の唇に触れたものが何だったのかを理解した。
「ごめん、気づいてあげられなくて。」
テンが言った。
「動かないでって……、それにただの同情なら……。」
「ごめん、それも。今の僕にはソラを妹としてしか見られない。
でも、ソラにとって僕がソラを女としてみることが幸せなのなら……、
時間はかかると思うけどそうなりたい、いや、なってみせる。」
テンは起き上がると、服を脱ぎ始めた。
そしてソラをベッドに横たえる。


次の朝、テンは自分の父親に言った。
「僕は、ソラと結婚する。そして絶対にソラを幸せにしてみせる。」
「ソラは?」
「私は……、ごめんなさい、お父さん。私はテンと一緒じゃないと、幸せになんてなれない。」
「2人の意思なら私たちの言うことは何もないわね。」
「そうか……。わかったよ。」

テンとソラは顔を見合せて笑った。
これでずっと一緒だね。 その意味を込めて。
2013年05月24日(金) 00:08:26 Modified by moulinglacia




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