男戦士×女盗賊 639@Part10

「おらよ。ご苦労さん」
 ゴールドの入った金袋をもらい、俺はにんまりした。
今回の仕事の楽さに少々拍子抜けしていたものだったが、仕事は仕事だ。
これで、しばらくは遊んで暮らせるな。そう思うと、ポーカーフェースが
売りの俺も口元が緩むってもんだ。
 俺の名はバース。戦うことが俺の人生であるバトルマスター…なんて言うと
かっこいいが、要するに戦士だ。しかも、最近はほとんど用心棒みたいな
ことで食い扶持をつないでる状態だ。世の人間が想像する「戦士」と
比べると、どうもちゃちい人間に感じるかもしれない。が、こういうことを
していかないと、食うこともできなかったりするのだよ、この世の中は。
 というわけではないが、はした仕事をやって、俺は金を手に入れた。
ちなみに今回の仕事はイシスで商売をやるキャラバンの護衛だった。最近は
モンスターが強くなっているという話だったし、そうでなくとも、金品を
満載したキャラバン隊が砂漠を超えるには護衛の一人や二人は必要なもんだ。
そんなわけで、この仕事が舞い込んできたときにはほんのわずかながら
躊躇したもんだが、いざ同行してみると、それほど凶悪なモンスターが
現れることもなかった。一番警戒していたのは金品だけを狙うハイエナ
どもだが、こいつらも見かけない。この楽さで、こんなにもらっていいものか
と、ちょっとだけ頭をよぎった。もちろん、返そうとも思わないがな。
 よりによって、ここは歓楽の町・アッサラーム。金はいくらあっても
困りはしない。たまにはぱあーっと遊ぶものいいだろう。
 というわけで、日も暮れだした街の、そこだけにぎやかな一角へと
ふらふら吸い込まれていったのだった。金袋を懐にしっかりとしまいこんで。

 劇場で酒をあおりながら、ベリーダンスを楽しむ。金さえつめば、
酒場のマスターもいい席を滑り込ませてくれる。おかげでがぶりつきを
楽しみつつ、酒に酔いしれるという、なんとも贅沢な時間を過ごせるって
もんだ。
「よぉ、なかなか上機嫌じゃないか」
 頭上から、聞き覚えのある声が降ってくる。振り返らなくてもわかる。
顔見知りの同業者だ。
「ゲヘナ」
「しこたま儲けたようだなあ。顔に書いてあるぜ」
 からかうような口調でそういうと、さっさと俺のテーブルに陣取って
しまう。そういう奴だとわかっているが、なんともずーずーしい奴だ。
「だけど、気を付けな。お前の懐を狙ってる奴だっているんだぜ」
「わかってるさ。だいたい、お前だってそのつもりなんだろうが」
 人の頼んだつまみの肉に手を伸ばす奴の手に、思いっきり平手を食らわせて
やる。あんまりあからさまに図々しいと、怒りを通り越して感心さえして
くる。まあ、こいつは憎めない奴だからいいのだが。いつものことだといえば
それまでだし。
「俺だけならたいしたことないだろ」
 こいつはいともあっさりと言いのける。さすがに一発説教してやろうと
大きく息を吸い込んだそのとき、ゲヘナの顔つきがすっと変わった。
その顔は、恐れでもなく、逃げ腰でもなく、真剣で真面目な顔。思わず
吸った息をそのまま吐き出してしまった。
「…なんだよ、なんか言いたいことでも……」
「あくまで噂だ。だから、とり越し苦労で終わるかもしんねぇけどよ」
 ゲヘナはそこでグラスの酒を一気にあおると、顔色を変えずに、
こう言った。
「黒いハイエナどもが、潜んでるって話だ。黒い色香で身ぐるみ剥いじまう
らしい」
「まじかよ」
「…わからん。だが、用心棒の連中が、給金をもらった後にやられてるって
言うのがもっぱらの噂だ。最悪、命まで奪うらしいからな」
「……!」
 そういえば、同業者の一人が恋宿で死体になって発見されたとか言う噂を
聞いたことがある。そんなとこで死んだんだから、春売りのねーちゃんと
しっぽり濡れてる最中に腹上死したのだと思って、さして気に求めて
いなかったが……。
 ぶるぶるぶる。いやな想像が頭を駆け巡り、俺は身震いをする。
「馬鹿野郎。そんなわけあるか。大体、俺は戦いのプロだ!」
「わかってるよ。ただ……」
 俺が苛立っていることがわかるらしく、ゲヘナは今度こそ逃げ腰になる。
「そんな話するな。酒が不味くなるだろがっ!」
 酒の勢いに任せ、俺はゲヘナの頭をぽかりと殴ってやった。

 一悶着はあったが、久しぶりにいい感じに酔いしれられた。ボトル単位で
酒が飲めることなんて、そうそうある話じゃない。まあ、懐も思ったより軽く
なってしまったが、まあたいした問題じゃない。
 ただ、ここで心残りなのは、ベリーダンスの踊り子ちゃんたちをゲット
できなかったことだ。適度に声をかけてみたものの、のらりくらりと
かわされてしまう。彼女たちはいつもそんな調子なので腹が立ったりは
しないのだが、たまには俺だけにそのダンスを披露してほしいものだ。
もちろん、そのあとはご褒美に快楽の空まで翔けあがらせてやるってのにさ。
 ……こんな馬鹿なことを思ったりしているのも、きっと人肌が恋しいから
だろう。この街では見知った女は一人もいないからなあ。困ったことに。
 と、上の空で道端を歩いていたものだから。
「きゃっ」
「っって!」
 誰かにぶつかってしまった。その弾みで、相手は弾き飛ばされるように
道端に倒れこむ。俺がなんともないところを見ると、小柄な…女か?
「お、おい。大丈夫か?」
 真っ白なローブをゆったりと着込んだそいつに声をかける。ローブが
大きすぎるのか、布に埋もれているようだ。手を出して起こしてあげたいが、
どこが手なのか見当もつかん。
 どうしたもんかと思案する間もなく、そのローブの固まりがもこもこと
動き出した。そして、ぴょこっと勢いよく飛び出したのは。
 涼やかな光をたたえる銀髪。白いローブに散るように広がる、
セミロングの光の波。
「……」
 その波の向こう側から放たれる、サファイヤのように青い瞳。その下には、
珊瑚の様に薄いピンク色をした、微かに潤んだ小さな丘。その、2つとない
であろう宝石の輝きに、俺はすっかり心を奪われてしまった。

「…ったーい!」
 気がつくと、宝石……違う、彼女はしたたかに打ちつけた腰の辺りを
さすりながら、恨めしそうにこっちを見つめていた。上目遣いにきっと
睨み付けるその視線に、吸い込まれてしまうような感覚がするのは
なぜだろう?
「ちょっと、何するのよぅ!」
 心持ちハスキーな声。けれど、その声の中に、どうにも魅惑的な響きが
含まれている。容貌とあいまってか、不思議と官能的に聞こえる。
「声かけてるのに、全然気づかないし! おまけに痛くて立てない
じゃないの!」
「あ、すまん……」
 はっとわれに返り、俺は彼女に手を差し出した。彼女はためらいもなく
俺の手をつかみ、ぐっと力をこめて起きあがろうとする。しかし、すぐに
ふにゃりと崩れ落ちてしまった。
「っつ…。足ひねったみたい…」
 苦痛に顔をゆがめる彼女。そんな表情がなにかを誘っている、ように
感じる。まて、どうしたんだ、俺は。
「大丈夫か?」
「……そう見える?」
 恨めしそうにまたもきっと睨み付けられる。俺はすっかり困ってしまった。
まさか、女性をほっぽり出して逃げるわけにも行かないし、そうかといって、
彼女の傷の手当てをしようにも、戦士である俺は治癒魔法を使えもしない。
薬草は間借りさせてもらってる宿屋に帰ればあるかも…いや、ちょうど
使い切ってしまったところだ。
 う〜む。どうしよう。道具屋を叩き起こして売ってもらうのも手
なんだが……。
「ねえ、あんた。力はあるでしょ?」
「へ? あ、ああ」
 予想だにしなかった妙な質問にどきまきしている俺に、彼女は笑いかけた。
「あたしを宿まで連れてってよ。そしたら、薬があるから」
「宿までって……」
「そんなに重くはないわよ、あたし」
 彼女が片目をぱちりとつむる。
 ふう。俺はため息をついた。自分に責任があるからその点に不満は
ないのだが、普通、見も知らずの人間に宿まで送らせるものなのか?
「責任とってよ。あんたがぶつかってきたんだから」
「責任」といわれると、さすがに弱い。しぶしぶ彼女を抱き上げた。

 ……軽い。思った以上に軽い。
 そして、微かに漂う、この甘い香りは……?

「どこの宿に行けばいいんだ? お嬢さんよ」
「うふふ。そんな遠くじゃないわよ」
 にこっと微笑む彼女に間近で見つめられて、俺の心拍数が一気に跳ね
上がったのを実感する。そして、あわよくば……と考えてしまい、妄想を
吹き飛ばすようにぶるぶるとかぶりを振った。
 そんな俺を、不思議そうな顔をしてじっと見つめる彼女。そんな一見無垢な
表情の裏になにかあるなんて、そのときの俺は気づきもしなかった。

「そっち。そこから入って」
 彼女の言うがままに、町外れの宿屋の裏口をくぐる。確かこの辺りは
怪しげな恋宿が多い地区のはずなのだが、ここは地味でいかにも普通の安宿と
いった雰囲気のところだった。俺は必要以上に大きな足音を立てないように
気を付けながら、その宿屋の2階の角部屋へ彼女を抱きかかえたまま入った。
 真っ暗な部屋の中をそろそろと歩き、ベットだと思われる場所にそっと
彼女を下ろすと、俺はため息をついた。
 あー、やれやれ。
「で、これでいいかな、お嬢さんよ」
 ベットの上でにこにこ微笑んでいる彼女に声をかける。一瞬きょとんと
した表情を見せた彼女。こうして見ると、その顔はやけに幼い。いったい
いくつぐらいなんだろうか? 
 やがて、さっきのニコニコ顔に戻ると、
「ついでに傷の手当てもして行ってほしいな」
と、手まねきをする。こうなればやけだ。彼女の言うがままにしたがって、
納得するまで付き合うしかない。改めて考えなおせば、彼女のいいなりに
なる必要はまったく無かったのだが、とにかくその時はそう思った。
「わかった、わかった。やくそうはどこにあるのかな」
「ん? こっちこっち」
 相変わらずにこにこと微笑んで、彼女は手まねきをする。彼女の前まで
行って、やくそうの袋を探そうときょろきょろしたその時。
「!!」
 不意に何かが俺の腕を捕まえ、一気に引き寄せる。それがあまりに突然
だったものだから、俺はバランスを崩し、そのまま倒れ込んでしまった。
 ベットの中に。
 何がなんだかわからないまま、したたか打ちつけてしまった身体の上に、
ふわりと甘い香りが立ち込める。その香りに注意力がそがれたほんの僅かな
隙に。
「ん……!」
 俺の唇が何かに塞がれる。暖かく、柔らかく、甘い感覚。うっすら瞳を
開けると、かすかに潤んだサファイヤが2つ。

 コレハ モシカシテ……?

 ヤバイと何者かが頭の中で警鐘を鳴らしている。だが、それよりも甘美な
感覚が勝った。
 そのまま華奢な腰を抱きしめ、離れかかった唇を舌で追い回す。そのまま
捕らえた柔らかいものをなぞりこじ開け、さらに奥へと進入させる。
「んっ……」
 彼女の鼻から甘い吐息がもれる。それすら掬い取るように、歯の裏側を
舐め回し、お互いの舌を絡め合わせる。ちゅ、ちゅ…という微かな音が、
耳の奥で何倍にも増幅されて聞こえている。
 やがて、それは開放された。甘いため息をつく彼女は、俺の上で馬乗りに
なっていた。間近で見て始めて気づいたが、彼女の肌は褐色のそれ。何か
頭の中で引っかかるものを感じたが、あえて無視をした。

「やってくれるじゃん」
 俺はにやりと笑った。彼女がそう出て来るのなら、こちらもそうせねば
ならまい。いや、そのつもりならば俺はむしろ大歓迎だ。
「怪我してるんじゃなかったのか?」
 そのまま、彼女の足をぐいっとつかむ。
「あっ……」
 今度は彼女がバランスを崩す番。俺の股の間にこれまたタイミングよく
倒れ込むと、俺は上体を起こした。そして、つかんだ足の先をホーズを
履いているその上からそっと舐めた。
「ひゃう!」
 さすがの彼女も、そう来るとは思わなかったらしい。ぴくんと身体を
硬直させたかと思うと、プルプルと身体を震わせる。
「しょうがないなあ。俺が傷の手当てをしてあげよう」
 いいながら、すばやく足を覆っているホーズを片方だけ取り去ってしまう。
外気に振れたせいか、その華奢な足がふるりと震えた。
「や、やだぁ!」
 いやいやと彼女は首を振るが、それにはかまわず俺は足首に舌を這わせる。
触れたその先はかすかに熱を帯びている。やはり、足を痛めて腫れているのは
確からしい。そのまま指先まで舌を這わせていきながら、こっそり彼女の
表情を盗み見する。どうやら痛みは感じていないようだ。むしろ、羞恥で
いっぱいといった表情を浮かべている。
 痛みを与えるのは、俺の趣味ではないからな。ちょっとだけほっとし、
愛撫を続ける。
「やだって。本当はいいんだろう?」
 足の指の股をちろりとくすぐる。そして、爪の付け根を尖らせた舌で
そっと撫ぜる。
「あぅっ! や、やだっ……」
 言葉は否定的だが、その声は艶やかなものに変わっている。
「あっ。やんっ…ダメっ……」
「嘘付け。好きなくせに」
 パクリと親指を口に咥え、そのまま褐色の引き締まった太ももをさらりと
なで上げる。
「ああああっ!!」
 艶やかな嬌声とともに、彼女の身体は魚のようにぴちりと跳ね上がった。
太股も、かなり弱いらしい。けっこう、敏感な身体なのかもしれない。

 そのまま悦にはいっていると。
「ね、ねぇ…そっちよりも……」
 彼女は俺の手を捕まえ、自分の胸まで持っていく。そして、そろそろと
胸をはだけさせた。小ぶりだが、なかなか形のよい胸があらわになる。
「小さいな。手にあまるぜ、それじゃ」
 俺は悪態をついてやる。サファイヤの瞳がかっと見開く。やっぱり気に
してるのか、それともそんなこと言われたことがないのか、どちらかは
しらんが。
 俺は笑った。
「なあに、女ってのは大きさじゃねえ。感度なんだよ」
 そういって柔らかい丘をもみしだした。
 先の尖がりを軽く刺激しながら優しく揉む。揉みながら体の位置を
動かして、胸に顔を近づけてみる。
 そのとき気づいた。
 こいつ、余裕がある。
 胸と言うのは、人によって感じたり感じなかったりするものだ。勿論、
場所と言うのもあるのだろうが。あえぎ声は聞こえるが、その声がうそ臭い。
瞳に余裕がある。
(ふうん。やるじゃねえか)
 俺は片方の胸をもみしだき、片方の胸に口付けながら、下の茂みへと
伸ばして行った。
「あっ!」
 彼女がぴくんと跳ね上がる。予想通り、こっちの方が感じるらしい。
茂みをかきわけ、やがて花芯にたどり着く。そこを優しくつんつんとつつく。
「ああっん! やんっ!」
 彼女の喉がのけぞる。
「やだっ! ああん! そこ…いじっちゃ…」
「だめか? 感じてるじゃないか」
 口先だけで笑いながら、その指は奥のほうをまさぐる。一気にあふれ出す
滴。あっという間に指全体がびちゃびちゃに濡れた。
(すげえな、これ…)
 俺は面白くなってきた。何人も相手にしているが、この程度でここまで
濡れる女は初めてだ。こりゃあ当たりだな、そう思った。
 親指で花芯をこりこりと弄びながら、二本の指で奥を刺激する。どうやら
花芯が一番感じるようで、一往復するたびに身体がぴくりとのけぞり、
引きつったような、それでいて甘い喘ぎ声が漏れるのだ。
「ああん、もう、ダメ…」
 彼女が涙目でそう訴える。
「なにがダメなんだ、まだまだいけるだろ」
「ダメ…イっちゃいそう…イクっ、ああっ!」
 その声にあわせて、指の動きを早くする。身体の反応が徐々に大きく早く
なる。
「だめっ! だめっ! ああっ! やあっ! イクッ、イクッ! ああああっ!」
 見たことのない量の愛液があふれだす。それと同時に、えびぞりになった
身体が痙攣しだす。ぎゅっと握り締めたシーツがプルプルと震えている。
(落ちたな…)
 そのまま身体がくてりと崩れるまで、俺は指を動かすのをやめなかった。

「あふう…」
 甘いため息を漏らす彼女。力が入らないのか、それともまだ快感が続いて
いるのか、秘所をだらしなく晒し出している。
「誘っといて、その程度か」
 俺は笑った。
「その程度でそのザマじゃ、俺は満足しないぞ」
 その言葉に、潤んでいた青いサファイヤがきっと光る。
「……そんなことないわ」
 息を整えるように彼女はそういった。
 俺は鼻でふんと笑った。
「じゃあ、俺にも奉仕してくれよな」
 そういって、俺の欲望をぐいっと彼女の顔の前にさらけ出す。それを
見てぎょっとしたように目を見開く彼女。
「まさか、したことないとは言わせないぞ」
 嘲笑うかのように言ってやると、彼女の目がきっと細くなった。そして、
のろのろと起き上がると、ぺろりと舌を出して舐め始めた。
 俺の欲望は、正直そんなにでかくない。身体のわりには普通の男並だろう。
だが、隆々と反り立つその欲望は、これまでに何人もの女をヒィヒィ
言わせてきた。その自信が、おれの欲望をさらに大きく見せているのかも
しれない。彼女は戸惑うようにぺろぺろと舐めている。亀頭の裏から
玉の筋まで。だが、咥えようとはしないのだ。気持ちいいといえば
そのとおりなのだが、なんか物足りない。
「なあ、咥えてくれよ」
 俺の言葉に、はっとしたかのように顔を上げる。だが、おずおずと
顔を近づけると、またぺろぺろと舐め始める。
「…まさか、咥えたことない、ってことないよな?」
 そういうと、口を離し、うつむく。おいおい、マジかよ。
 俺はいらいらしてきた。フェラチオしてくれないことにいらつくのか、
それともその態度にいらつくのかよく分からないが。
「いい。横になれ」
 命令口調で言うと、彼女はのたのたと横になった。さらにいらつきが増す。
そのいらつきをぶつける様に、ぐいと足を開かせると、一気に腰を突き上げた。
「ああっ!」
 濡れた秘所はぬぷっと俺の欲望を飲み込んだ。一気に締め付けるそれは、
処女ではないもののかなりきつく狭い。ぎゅうぎゅうと搾り取るように
締め付けるのだ。
「くうっ…」
 思わず声が出る。だが、苦しいのは彼女のほうだろう。たぶん、今までの
相手がかなりの祖チンだったと思われる。
「ああっ、壊れっ、ちゃうっ…」
 動かし始めると、彼女が喘いだ。相変わらず、ぎゅうぎゅう締め付けるが、
びちょびちょに濡れた秘所は欲望の動きを阻害しない。
 ぱんぱんぱん。
 小気味よいリズムをつけて、乾いた音が響く。
「ああっ、いいっ、んっ、ああう!」
 ハスキーなその声は、泣き声にちょうどいい。ぐちゅぐちゅと言うあそこの
音と相まって、俺の欲望を膨らめていく。
 入れたまま上半身を起こし、彼女の身体をくるりとひっくり返す。そして、
背面座位の形を取らせると、腰を動かしながら花芯にくちゅりと触れた。
「ああっ!」
 一段と高い声で泣く。
「だめっ、そこはっ、あっ、いくっ!!」
「いいじゃねえか。イっちまえよ」
 にやりとほくそ笑んだが、おれの欲望は限界に近かった。
 一気に腰を突き動かし、限界点まで上り詰めていく。
「ああっ、ああっ、ダメ、ダメ、イクッ!」
「っくっ…」
 彼女の身体がぴくりと跳ね返り、一気に締め付けたところで、俺の欲望は
一気にはじけ飛んだ。

(……ん)
 強い日差しを感じ、俺は目を開けた。どうやらその後眠ってしまった
らしい。何回か楽しんだ記憶はあるのだが、そのあとどうしたもんだか。
 俺はゆっくり起き上がると、大きく伸びをした。そして、辺りを見回す。
(……ん?)
 なんかおかしい。いや、部屋の内装に心当たりがないのはともかくとして、
何か足らない。
 ん? なにか?
 そこで気づいた。あわててブランケットを引っぺがし、ばたばたと
バスルームを見回し、部屋中を駆けずり回って。
 いない。
 あの彼女がいないのだ。
(どういうことだ…?)
 まさか、何も言わずに出かけるとは思えない。だが、彼女の居た気配は
すべて消えている。荷物らしきものさえない。
(なぜだ?)
 そう思いながら、脱ぎっぱなしの服を着て、そこで分かった。
「やられた!」
 内ポケットに入れておいた金がほんのわずかしかない。飲んで少なく
なったとはいえ、確か1000ゴールドは残っていたはずなのに。
「……32ゴールドかよ……」
 俺はため息をついた。まさか、あんな華奢なガキに掠め取られるとは
思ってもみなかった。
 ふう。よくよく思い返してみれば、怪しいところなどいくらでもあった。だ
が、気づかなかったのは俺が悪い。いや、気づかなかったと言うより、
欲望が勝ったと言う方が正しいのかもしれない。
 ふう。
 もう一度ため息をついて、部屋を出ようとすると。
「お客様…宿代を」
 後ろから声をかけるやつがいる。振り返ると、50半ばの親父。たぶん、
ここの宿のあるじだろう。
「ここには女が泊まってたはずだぜ」
「その人は「中の戦士様が払ってくれるから!」と申しておりましたが…」
 やられた。
 俺は頭を抱えた。そこまで俺持ちなのかよ。
「……いくらだ」
「32ゴールドになります」
「……」
 というわけで、俺は一文無しになってしまったのだった。

 半年後。
 流れ流れて、俺はアリアハンにいた。
 あのあと、必死になってあの女を捜したのだが、行方はようとして
知れなかった。ゲヘナたち同業者には「命とられなかっただけありがたいと
思いな」と妙な慰めを受け、俺は軽く凹んでいたのだが。
 とりあえず分かったのは、たぶんあの女は盗賊。褐色の肌からいくと、
裏街道を賑わしている奴らの一味だろうと言うことだ。
 見つけたらタダじゃおかないと思いつつ、情報を色々探しているうちに、
辺境の国家にたどり着いたと言うわけだ。
 辺境とはいえ、ここの酒場は賑わっていた。なんでも、この国の勇者の
子供が旅に出るらしい。その仲間を探していると言う情報もあった。また、
近辺の怪物どもが強くなってきたため、怪物狩りをする戦士を城が雇い入れて
いると言う情報もあった。
 いずれにしろ、ここにも働き口があるだろうと滞在を決め込むことにした。
 そして数日後。
「勇者が雇い入れたいと引き合いがあったわ」
 酒場の女マスター・ルイーダが声をかけてきた。
「ほう。俺にか。光栄だな」
「街の入り口で待ってるそうだわ。すぐですって」
「…せっかちだな」
 言いながら、俺はよいしょと立ち上がった。
 そして、街の入り口。確かに、それらしき人間がいた。2人組。
 一人は僧侶服を着た、年のころ16、7の少年。もう一人は勇者の印である
青い宝石をはめたサークレットをしている。
(こいつが勇者か…)
 値踏みをしてみる。まだ若い。僧侶と同じ位の年齢だろう。線も細い。
かなり華奢である。
「バースさんですね」
 トーンの高い声で名前を呼ばれ、はっと我に返った。見ると、サークレットを
はめたガキが、屈託ない笑顔で手を振っていたのだ。
 いそいそと駆けつけると。
「はじめまして。ボクは勇者のヴィスタです。こちらは僧侶見習いのクリフ。
若輩者ですが、よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げられた。
「ヴィスタ…お前、もしかして女か?」
 声の感じでなんとなく分かったが、思わず聞いてしまった。すると、
ヴィスタは軽く微笑む。
 ううむ。間違いない。
 確かに、身体の線は女のそれだ。小さいながらも、胸のふくらみが
感じられる。ただ、引き締まった身体や、筋肉のついた腕などを見ると、
どちらかといえば少年のそれに近いのかもしれない。微かに健康的な
色気はある。
(女が勇者かよ…オレ、ババ引いたかな…)
 一人ごちてると。
「ヴィスタ、あともう一人は?」
 僧侶服のガキ…クリフが声を出した。こちらも線が細く、背が高い。
声のトーンはテノールで、間違いなく男だ。
「ウーン、もうすぐ来ると思うけどね。ルイーダさんが「見つけるのに
時間かかるかも」って言ってたけど」
「なんて名前? その人」
「アミュレ、って言ってたわ。盗賊さんよ」
 親しげに話すその雰囲気からすると、たぶん幼馴染なのだろう。
(盗賊…)
 そのフレーズを聞いて、真っ先に思いつくのは、あのサファイヤの瞳の女。
銀髪をなびかせて喘ぐその姿を思い浮かべて、思わずかぶりを振るう。
(まさかな…)

 と、そのとき。
「おまたせ。色々支度があってさあ」
 ハスキーな声。この声には聞き覚えがある。
 振り返ると。
「あなたがヴィスタちゃんね。あたし、アミュレ。よろしくね」
 サファイヤの瞳。短い銀髪。褐色の肌。
「ちゃん付けはやめてください」
 言いながら手を差し出すヴィスタ。アミュレと名乗った女盗賊と握手を
かわしている。
「お、お前…もしや…!」
 強引に二人の間に割り込み、アミュレの手をつかむ。
「俺を忘れたとは言わせないぞ」
 アミュレはしばらく考えていたが、やがて、あ!といわんばかりに目を
見開いた。
「まさか、あん時の…?」
 これで確信した。アッサラームの女狐はこいつだ!
「そうだ。金返せ! 知らんとは言わせねえぞ!」
「そんなこと言われても…」
「…お二人は知り合いなのですか?」
 困った顔をするアミュレの助太刀をするかのように、ヴィスタが尋ねる。
「ああ、知り合いもなにも。こいつは色で誘って俺から金を奪った大悪党だ」
「いろ…?」
 ヴィスタは少し困ったような顔をした。だがやがて。
「まあ、悪党でもいいです。ボクが決めた仲間ですから。ボクたちの旅に
ふさわしい、強い人のはずです」
 ヴィスタは笑った。



 こうして、妙なパーティのもと、新しい旅が始まった。
 だが、俺は知らなかった。この旅が、もっとも長く、もっとも過酷で、
なおかつ最初の伝説になることなど。

  • END・
2008年12月27日(土) 19:53:36 Modified by test66test




スマートフォン版で見る