男戦士×女盗賊 795@Part10

 勇者・ヴィスタ一行は、ようやくロマリア王国にたどり着いた。着いたのが
宵の闇に包まれるころだったこともあり、国王への挨拶は次の日にすることに
し、宿屋にて休むことにした。
 ツインルーム二つ取ると、いつものように、戦士・バースと僧侶・クリフで
一部屋ねといわんばかりに鍵を渡そうとする…のだが。今日は様子が違った。
バースが鍵をひったくると、
「今日はこいつと一緒な」
アミュレの方を抱きすくめ、にやりと笑ったのだ。
「は…!?」
 びっくりしたのは、ヴィスタだけじゃない。アミュレ本人までもが目を
見開いているのだ。
「な、なに考えているのよ!」
「考えてることは一つさ」
 バースはニヤニヤ笑っている。
「まさか、約束を忘れたとは言わせんぞ」
「……!」
 アミュレがかっと目を見開く。そして、うっすらと顔を赤らめた。
「約束、ですか」
 そう言いながら、ヴィスタが思い出したのは――。

「返せ! といわれても、持ってないわよ!」
 アミュレが声を荒げている。
 初めてのパーティ編成の顔合わせで、アミュレとバースが顔なじみ(だと
ヴィスタは信じ込んでいる)だということがわかった時のこと。
「じゃあ、なんかで返してもらわないとな、女狐」
 どう考えても、普通の顔なじみじゃないと思われる会話(というか言い争い)
が続いているが、人生経験が浅いヴィスタには、仲よさげな会話に聞こえて
いるらしい。
「借りたものは返したほうがいいですね」 
あさっての方向で合いの手を加えている。似たり寄ったりなのはクリフで、
会話が見えてないらしく、小首をかしげながら遠巻きに眺めていた。
「ほら! 勇者様もそういってるじゃねえか!」
「勇者様と呼ばないでほしいのですが…」
「だからって! 返すものがないんだってば!」
「じゃあ、身体で返すってのはどうだ?」
 バースがにやりと笑った。いやらしげに。
「身体? 勤労で返すのですか?」
 ようやく会話の輪に入れたらしく、クリフが不思議そうにたずねた。
「勤労…ウーン、まあそんなとこかな」
 バースのニヤニヤは消えない。
「毎夜、夜伽に来てくれればチャラにしてやってもいいな」
「!!」
 アミュレの顔がかーっと赤くなる。
「…夜伽?」
「…下賎な…」
 何にも知らないヴィスタと、少しは言葉の意味が分かったクリフの反応は、
対照的。きょとんとした目と、伏せがちに十字を切る姿が印象的である。
「まあ、毎夜とはいわんな。月1くらいでいいな」
「なんで! あんたなんかと…」
 真っ赤になって反論するアミュレも、
「じゃあ、今すぐ返すんだな。3000ゴールド」
「くっ…」
あっさり撃沈してしまったのだった――。

「あれですか? 約束って」
 「夜伽」の意味を知らないヴィスタが屈託ない笑顔で微笑む。
「そうですね。もう出発してから一月経ちますからね」
「ヴィスタ!」
「リーダーも言ってることだ。決まりだな」
「ちょっと! いやよ、あたしは!」
「待ってください、お二人さん」
 割って入ったのは、意外にもクリフ。
「二人はいいとして…私とヴィスタはどうすればいいのですか?」
 もっともな意見である。だが。
「…二人で寝たら?」
 大人の意見には、勝てないのだった。
 そして。
「ボクはかまいませんよ。ボク達、腐れ縁みたいなものですし」
 やっぱり何も知らないリーダーの意見にも勝てないのだった。

 部屋にしぶしぶ入ったアミュレだったが、ふてくされた表情が消えない。
そんなアミュレを見て、やれやれと言いたげにベット端に腰を降ろすバース。
子供っぽいなと思ったのは、やはり最初に出会ったころの印象が強いせいなの
かも知れない。普段旅しているときは、そうは感じないのだが(それ以上に
勇者たちお子様ペアが頼りないというのもあるのだが)。
「なーに、ふてくされてるんだよ」
 声をかけてみるが、こっちを見ようともしない。
「初めてヤルわけじゃないし、何を今更…」
「…今更、だから嫌なのよ」
 やっと、アミュレが口を開いた。
 ふふん。バースが鼻で笑う。
「どういう意味だ?」
「あたしだって、好きでそんなことしてるわけじゃないのよ」
「当たり前だ」
 すっくと立ち上がると、バースはアミュレの元に歩み寄る。そして、
くいっと顎を持ち上げると、
「だから、罰になるんじゃねーか?」
そのまま口付けた。
「んんっ!?」
 必死で抵抗するアミュレ。だが、所詮女。男の力にはかなわない。反対に
ぎゅっと抱きすくめられてしまう。
 最初はじたばたともがいていたが、やがておとなしく抱きすくめられる
ようになって、バースは唇を開放した。
「やっと女らしくなったな」
 その言葉にかっと目元を赤くし、きっと睨み付けるアミュレ。私は女よ!
といわんばかりに。
 その勢いを鼻で流して、バースはもう一度口付けた。
「おとなしい方がいい女だぞ、アミュレ」

 いっぽうそのころ。
「ねえ。聞きたいことがあるんだけど」
 寝床を整えているクリフに尋ねるのは、同部屋のヴィスタ。実は、幼馴染と
はいえ、成人した二人が一緒の部屋で寝るのは今日が始めて。ヴィスタは
ともかく、クリフはそれを意識してしまい、ものすごく緊張していたのだった。
「は、はいっ!」
 あわてたように返事するが、明らかにおかしいことはばればれである。
もっとも、ヴィスタは何も気にとめてないようだが。
「あのね。こんなの聞いたら笑われると思って聞けなかったんだけど…」
「ふえ? なに?」
 あたふたしているのを隠すように深呼吸しつつ聞き返すクリフに、
ヴィスタは屈託のない笑顔を浮かべてこう尋ねた。
「『よとぎ』ってなあに?」
 ぶっ!
 顔を真っ赤にして、一気に噴出すクリフ。それをどう勘違いしたのか、
ヴィスタはぷーっと顔を膨らませた。
「そんな笑うことないじゃない。ボクだってわかんないことあるんだからさあ」
「い、いや、笑ってるわけじゃないよ」
「じゃあ、何よ」
「ち、ちょっと驚いただけ」
 ぜーはーぜーはーと肩で息をしながら、ようやくクリフは答えた。
「で、よとぎって何?」
「え? えーっと……」
 穢れを知らないヴィスタの問いに、クリフは困ってしまった。まさか、
ここでおしべとめしべの話をするわけにはいかないし。かといって、リアルな
話をするのはもっと困るし。
「んー…。じゃあ、こっそり覗いてこようかな」
「!!!」
 困っているクリフをどう思ったのか、ヴィスタはもっと突飛なことを言い
出した。
「それはダメ!」
「じゃあ教えてよ。教えられないなら、見た方が早いし」
「それはその…」
「なあに?」
 にっこりと微笑むヴィスタ。
 クリフは観念した。
「…夜伽というのは。『夜のお伽話』と書くのであって…」
 ……逃げることにした。
「お伽話? それならお母さんから色々聞いたわ」
「……それとは違うんだよ。大人のお伽話ってヤツ」
「ふーん…」
 訝しげにうなずかれて、クリフはあせった。これ以上深く聞かれたら、
なんて答えたらいいのだろう。
 だが。
「そうなんだ。なんかよくわからないけど」
 杞憂に終わった。
「じゃあ寝るね。おやすみ」
 そういうと、ヴィスタはさっさと眠ってしまった。
 ふー…。
 クリフは大きくため息をついた。クリフ自身は当然体験したことはない。
だが、何をどうしているのかぐらいは知っている。一応16歳の男だし。
ヴィスタも16歳になったというのに、なんで知らないのだろう。もしかして
「夜伽」という言葉だけが知らないのだろうか。いやいや、そんなことはない
はずだ。片親がいないヴィスタの場合、親の「夜伽」を見たことがない可能性
もある。そこだけ知識が欠けてる可能性もある。
 だが、しかし……。
 色々思案するが、当のヴィスタはすっかり眠ってしまっている。
 考えるのはやめよう。とりあえず、納得してもらったし。
 そう考えて、クリフはもう一度ため息をついた。
「なんて、こんな世間知らずなのかなあ…」

「んっ…ぁはぁ……」
 ようやく唇を開放されて、アミュレは甘いため息をついた。その甘いため息に、
バースはぞくりとする。そして、その表情にまたゾクリとした。
 甘い瞳。
 いつものきつい物言いの時の、そして戦闘中の鋭い瞳とは違う、とろりと
溶けた甘い瞳。
(俺が溶けちまいそうだ…)
 少し潤んだそのサファイヤに、バースはしばらくの間魅入られていた。
 だが。
「いきなり口なんて卑怯よ」
 潤んだ瞳がきついいつものものに変わって、バースは我に返った。
「い、いきなりって…」
「こう言うときは、キスしないものよ」
 どういう理屈なのだかよくわからないが、どうやらキスしたことに怒って
いるらしい。決して恋愛に明るいほうではないバースには全く理解できない
怒りだが。
「そうなのか」
 とりあえず、そういうもんなのかと納得して。
「まあ、いいじゃねえか。どうせ一緒だろ」
「い、一緒じゃないわよ! あ、やんっ!」
 さっさと上着を脱がせて行く。ぷるんともろびでた小ぶりの胸を優しく
揉み、それに口付けていく。
「やあっ…急ぎすぎっ…あんっ」
 唇で転がすように舐めまわし、たまに軽く甘噛し、息を吹きかける。その
たびに、小刻みにふるふると震える身体。
「素直になっちまえよ」
 耳元で囁くと、うっすらと朱を帯びた目元がうるりと潤む。その隙を狙って
とんと押すと、アミュレはあっさりとシーツの海へ埋もれた。
 ばさり。
 わざと音を立てて上着を脱ぎ捨てると、バースはアミュレの上に覆い
かぶさった。そして、すっくと足を持ち上げると、ホースをするりと脱がして
しまう。
「あんっ、やだぁ!」
 身体を固くして、抗議の声をもらすアミュレを無視して、バースは無言で
両足を脱がせてしまう。そして。
「ああっ…ゃあんっ!」
 その足にそっと舌を這わせる。そっと、触れるか触れないかくらいの深さで。
ぴくりと身体を震わせるたびに、舌が触れ、感じるところを刺激する。その
快感にまた身体を震わせるのだ。
 ふふん。バースは声にならない笑みを浮かべる。こいつは足が一番感じる
ようだなと。
 そうしておいて、秘所を包む布切れをゆっくり取り去った。
「やあっ! だめぇ…」
「何がダメなんだ?」
 柔らかい銀の草原の奥に指を滑り込ませる。くちゅっと湿った音がした。
「あうっ」
「こんなにびちょぬれじゃないか」
 濡れた指を、顔の前まで持っていってやる。かーっと染まる頬がいとおしい。
「やだあ。恥ずかしい…」
「何が恥ずかしいんだ。もっと恥ずかしいことするんだぞ」
 ニヤニヤにやけると、バースはもう一度草原の奥に指を突っ込んだ。
そして、ゆっくりとかき混ぜる。
「あっ! ひぃっ!」
 アミュレが顔を歪ませる。
「ああっ、やめてっ。あんっ、ああっ!」
 その歪みが、だんだん快楽に変わっていく。そして、指の動きも音も大きく
なっていく。
「あんっ、ああっ、いいっ! やあっ! ああっっ!!」
 ぴくぴくぴくっ。
 海老反りになり、アミュレは身体を震わせた。

 ぐったりしているアミュレをそっと横たえると、バースは身につけている
ものをすべて脱いだ。隆々とした欲望が、天へ向かって反り立っている。
そして、うっすら目を開けたアミュレの顔の前に、それを持っていった。
 ぎょっとしたように、アミュレは目を見開く。そして、恐る恐るといった
具合に、バースの目を見た。
「……やることは、わかってるだろうな?」
 前回の一件もあって不安がよぎるバースだったが、とりあえず要求する。
 だが。
「…こんな大きいの、無理よ」
 あっさり断られてしまった。よっぽど前の男が貧弱だったのだろう。
べらぼうに巨根というわけではないのだが。
「舐めるだけでもいいから」
「ウーン……」
 そろそろと起き上がると、アミュレはバースの欲望に口付ける。そして、
ぺろぺろと猫のように舐め始めた。
 雁の部分。亀頭の部分。裏筋の部分。それらを丁寧にツーっと舐めていく。
それはそれで気持ちいいのだが、バースにはなんか物足りない。
「くわえてくれない?」
 要求しては見るが、一行にその気配はない。ただぺろぺろ舐めるだけである。
 バースはいらいらしてきた。無理やり突っ込んでやろうかとも思ったのだが、
苦しむ姿を見るのは逆に興ざめである。
「……もういい」
 そこで、先に進むことにした。言われて、はっと顔を上げたアミュレの
身体をひっくり返すと、足を取る。そして、大きく広げると。
「あうっ!」
 一気に欲望を突っ込んだ。

 タダでさえ狭いその奥が、きゅっとさらに閉まっていく。
「力抜け」
「む、無理っ…ああっ!」
 それはまるで、内部に侵入するのを拒むかのように。
 バースはちっと舌うちした。これでは、お互いに痛いだけではないか。
 そこで、バースはそろそろと手を伸ばすと、草原の奥の花芯に指をかけた。
ぴくりとアミュレの身体が硬直する。そして、つまむようにして刺激を始めた。
「あんっ! やあっ!」
 そのとたん、身体の力が一気に抜ける。それを機に、少しずつ奥へと進入を
始める。少し進むとまたきつくなり、そろそろと刺激するとまた奥へ進むと
いった具合に。
「ふう……」
 そして。やっと奥まで到達した。まだ狭いが、そろそろ動かないと自分自身が
やばい。
「動くぜ」
「あんっ! そ、そんな激しく…!」
 パンパンと小気味よいリズムが、辺りに響き渡る。それにあわせたかの
ように、アミュレの喘ぎがこだまする。
「ああっ、だめっ、ああん! やん、あんっ!」
 きゅうきゅう締め付けるが、奥はぬるぬるで、動かすことに何の支障も
ない。それに、花芯を刺激してやることで、奥の花園の力は少し緩むのだ。
それだけ感じているのだろう。
 ひょいっとアミュレの上半身を起こして、逆に自分が寝っころがると、
今度は動けと強制する。
「ああんっ、だめ、だめなのっ! ああんっ!」
 パンパンと騎乗位になって自分から動き出したアミュレが色っぽいと
思った。それに泣き声がまたいい感じにバースを刺激する。
「ううっ…そろそろダメだ」
 限界が近くなってきた。もう一度起き上がると、今度はくるりとアミュレの
身体を反転させ、バックスタイルになる。
「い、行くぜ!」
「ああっ、あん、あん、だめ、っいくっ! ああああ!」
「くうっ…」
 ぴくぴくと身体を痙攣させるアミュレに思いきり腰をたたきつけ、そして
奥の奥まで刻み付ける。
 どくっ、どくどくっ!
「あああ!」
 そして、その奥に、大量の精を放出した。

「ああん……」
 シーツに埋もれているアミュレが、甘い喘ぎをもらす。イってから結構経つ
のに、まだ快感に酔いしれているらしい。
「だいぶよかったみたいじゃないか」
 悪態をついてやると、アミュレはとろんとした目をバースの方に向けた。
「これじゃ、罰にならないな」
「……そんなことないわよ」
 シーツに埋もれたまま、アミュレは答える。
「あんた、あたしのタイプじゃないもん」
「よく言うぜ。あれだけアンアンよがってたくせに」
「!!」
 かーっと目元を赤くさせる。どうも、こう言う言葉のやり取りには弱い
らしい。すぐに顔に出るんだなと、バースは思った。
「まあ、今日はこの辺だな」
「……当然よ」
 ぷいとそっぽを向くと、アミュレはシーツに包まってしまった。どうやら
もう寝るらしい。
「おやすみのキスくらいしてくれよな」
 冗談でいうと、枕が一つ飛んできた。

「おはようございます!」
「あ、おはよ…」
 朝になった。バースが起きる前にアミュレが部屋から抜け出すと、そこには
ヴィスタが。まるでずっと覗き見されて居たかのような錯覚に陥って、一瞬
顔を赤くする。
「元気ないですね。お伽話ってそんなに大変なのですか?」
「は? お伽話?」
 首を傾げるアミュレを無視して、顔洗ってきますとヴィスタはさっさと
廊下の向こう側へと走り去っていってしまった。
(へんなの……)
 そう思いながらも、若干けだるいアミュレは、それ以上追求することは
しなかった。
 しばらくの後の食堂。ようやく4人とも目が覚めて、顔をあわせることに
なった。のだが……。
「…眠いのか? クリフ」
 一人、僧侶服の青年だけが真っ赤な目をして、目をこすっている。
「あ、いえ、大丈夫です…」
 そういうそばから、生あくびが出ている。かなり眠いらしい。
 実は、クリフは隣の部屋からの声が気になって眠れなかったのだ。隣と
いえば、アミュレとバースの部屋。しかも、ちょうど壁のすぐ向こう側が
その部屋なのだ。そんなに立派ではない宿屋。隣の喘ぎ声など筒抜けである。
 もっとも、同部屋のヴィスタはぐっすり寝てしまっていたので、そんなことは
ぜんぜん気づかなかったのだが……。
「これから王様のとこ行くんだから。しっかりしてよね」
 何にも知らないヴィスタにいわれて、がっくりと落ち込むクリフであった。
(なんで私だけ……)
 思ってみても、運が悪いだけである。過ぎたことはしょうがない。だから
といって、声の当事者を責めるわけにもいかない。聞き耳立ててたことが
バレれば、なんといわれることやら。

 とはいえ、このあと王様のところで、クリフの目がパッチリ覚めるような
事件に巻き込まれるのだが……。それはこのあとのお話。

  • END・
2008年12月27日(土) 19:54:23 Modified by test66test




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