ベガは、信じられなかった。

彼が誇る三人の部下、不祥事でボクシング界を追われたものの
現役時は天才と言われていたバイソン、
スペインで無敵を誇る闘牛士のバルログ、
そして、ムエタイの帝王サガット。
何れも油断ならない男たちではあるが、戦闘能力の高さはベガ自身が一番良く知っていた。
だが、その三人がたった一人の女性に敗れ、その女性は今自分を追い詰めている。

そのことが信じられなかった。

春麗と名乗った女性は自分がかつて始末した刑事の娘で、
復讐のために自分をここまで追ってきたという。
復讐心にとらわれた者など自分の敵ではない、
部下が負けたのは女と侮って油断したからに過ぎない・・・そう思っていた。
だが、拳を交えてからは反撃する機会も見つけられず防戦一方だった。
春麗の飛び蹴りがベガの顔面を捕らえると完全にペースは春麗のものとなった。

「ぐふっ!」
「まだまだ、父さんの受けた痛みはこんなものじゃないわ」

2発、3発、急所に的確に攻撃を受け、少しずつだが確実にベガは追い詰められていく。
「まさか、この私が敗れるだと?」敗色が濃厚になってくるにつれ、そんなことを考え始める。

「シャドルーの総帥も大した事ないわね。もっと強い相手はいくらでもいたわ」

自分が最強だという自負があったベガはその一言に思わず熱くなる。

「小娘、調子に乗るなよ! サイコクラッシャアア・・・・!」

自分の最強の技を全霊を賭けて繰り出したベガの攻撃は不意を突かれた春麗をとらえた。
「殺った! 私の勝ちだ!」ベガはこれ以上無い歓喜に包まれたが、次の瞬間それは無残にも打ち砕かれた。

「ふう・・・ もう終わりなの?」そう呟くと春麗は攻撃を防いでいた両腕を解く。
腕には僅かに焦げ後がついているだけだった。

「な・・・なんだと」最強の技が通用しなかったベガは目に見えて狼狽する。

「残念だけど、私はすでに世界一の格闘家なのよ。そんな技は通用しないわ」
春麗はそう言って目にも止まらぬ速さでベガの懐に飛び込むと渾身の力で技を繰り出す。

「百裂脚!やっ!やっ!やああ!」無数の蹴りがベガの体を捕らえ、後方に吹き飛ばす。

「うおおお・・・」後方の石像に激突し、倒れるベガ。
恐らく、全身の骨が折れているであろう痛みと、最強の技が通用しなかったことの絶望から
立ち上がることにかなり手間取っている。

ゆっくりと近づいてくる春麗に怯えるベガ。辛うじて立ち上がるとこう言った。
「し、シャドルーは解散する!罰も受ける!だから命だけは助けてくれ!お願いだ!」
これ以上無い敗北感を味わったベガにもはや自信は残されていなかった。
格闘家としての再起は不可能だろう。

「ダメね。あなたはそうやって命乞いしてきた人を何人殺してきたの?
まあ、遺言くらいなら聞いてあげてもいいわ」
春麗はそう吐き捨てると「うっ・・・ああ・・・」と、言葉にならない言葉を発するベガの口を塞いで地面に叩きつける。

「それがあなたの最後の言葉? 冴えないわね」

春麗はベガに向かってそう言うと天高く飛び上がり、ベガの顔面を渾身の力で踏みつけた。
反動で飛び上がると、ベガの顔面は完全に潰れ、周囲に赤い花が咲く。
ベガは2度、3度ピクピクと痙攣すると完全に動かなくなった。

「あははっ・・・ やった・・・。ベガを倒した・・・。父さん、敵は討ちました。安らかに眠ってください」
ベガの亡骸を見据え、そう言うと春麗は何処かへ去っていった。

Wiki内検索

管理人/副管理人のみ編集できます