多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

物語

記述

第一部

解体された子宮がある。

これを、キュトスと定義する。


はじめまして。
私はインサ・マリサ?。九人目の騎士にして、言理の妖精から外れてしまった一度きりの記述者だ。
私が語るのはたった一つのイメージだ。
記述し、語る。それだけを為し、そして消え行くのが私の定め。
記述を残し、イメージを作り上げる。
そのイメージを想起させる為、今現在私がここに存在しているのだと、そう言っても過言ではない。
キュトス。
かの女神を語るためにのみ、私は記述を行うのだ。
私がこの界面にアクセスしているのは大陸から外れたとある辺境。
複数の川―とある大河の支流が入り乱れ、過剰に造船・貿易が発達した国家。
中州ごとの自治都市で構成された連合国家だ。
その内で、最も小規模な都市。
私は今、あるいは以前、そこにいる。
私は今からこの地で語られている伝承を語ろうと思う。恐らく、世界に広く知れ渡った大地の女神、邪悪な女神の神話ではない、かの地でだけ伝えられていた、とある女の物語。
そう。
私がいるこの水弦の都に於いて、キュトスとは神ではない。
とある一人の、女である。

キュトスは潜り女(もぐりめ)だった。
大地に網のように張り巡らせた支縁の泰河。新神の血管と呼ばれたその中に剣を携え潜り込み、血肉を裂くが如くに流れを割りて渦を作り出す。
その渦を壷の中に捕えて、都市のエネルギーにするのが潜り女の仕事だ。
潜り女たちは国の宝で、柱だ。
国民は皆、渦エネルギーによって生活を成り立たせているからだ。
渦が生み出すエネルギーはすさまじい。船を動かし、火を起こし、ポンプを汲み上げ、螺子を巻き、大の男の数人分のパワーを捻出する。
渦エネルギーがなければ、明日の生活にも困る人間が、たくさんいるのだ。
だから人々は、潜り女を称える。
英傑だと、皆が言う。
キュトスは、最も優れた潜り女だった。誰からも愛され、敬われ、称えられていた。
素晴らしい、素晴らしい潜りの技術から、彼女は女神とまで言われた。
茶色の女神。濁った川の、美しい女神。
腐り、汚れ、悪臭漂う忌まわしき川に果敢に挑み、その命をすり減らしながら民に奉仕する、だが短命であることが定められた哀れな女神。
潜り女。
悪意と怒りの新神の屍骸。死に満ちた河に潜り民に使われる使い捨ての奴隷。
それを欺瞞と偽善で塗り固め、心地よい罪悪感だけに浸るためだけの醜い崇拝。
キュトスは、全ての民を忌み嫌っていた。

新神は英雄よって殺された。シャーフリートと呼ばれた英雄は自らの肉を引き裂き、その地で新神の肉を汚した。
大地に呪いが振り撒かれた。
呪い。全ての人に死と絶望を。
呪い。
それは、英雄の皮を被った魔神が最後にもたらした狂気の遺物。
そして、彼を信じていた民は分断された大地に束縛され、大地と溶け合った新神はその血管を川と為して大地に根付いてしまった。
民は呪われた。
無責任に英雄を煽った咎で。英雄で無いものを無理やり英雄に仕立て上げた、その欺瞞の責任を取らされている。
その責任を回避するため、彼らは更なる欺瞞でその呪いを上から塗り潰した。
新たな英雄は、女たちだった。
使われる女たちだ。
男ではない。【雄】ではない。
道具である。
消耗する。それが雄の役目。
生み育む。それが雌の役目。
消耗する雌とは何か。
それは鋳型に捻じ込んだ、歪な道具。
人工の、剣。
生ませない。育てさせない。
女を否定された女。それが潜り女。

キュトスは反逆した。
一人の少年を襲い、身ごもった。
少年の首はキュトスの剣の柄の飾りになった。

身ごもったまま、キュトスは民を殺した。
妊婦の鬼神。
恐れが撒布され、産婦は子供を生んだ。
世界が崩壊した。
欺瞞は崩れた。呪いが甦った。しかし、それすらも出産によって否定された。
新生した世界が、新神と魔神とを塗り潰し、キュトスは罪悪の象徴として否定された。
しかし彼女は抵抗した。
道具として用いた赤子ごときに、否定されるわけにはいかなかった。
キュトスは赤子を道具として用いた。
そこに彼女の罪科があったが、それに涙するのは柄尻の生首だけだった。
父親は話せず、赤子もまた話せない。
だが両者の間には絆があった。
キュトスは、そこに勝機を見た。
計算通りであった。
キュトスは少年の首を潰し、赤子の父親を殺してみせた。
赤子に絶望が訪れた。
希望の象徴を絶望で打ち破った。
そのために少年の首を取っておいたのだ。
キュトスは全てに勝利した。
キュトスはそして、全ての呪いを打ち払った。
呪縛。
偶像の呪縛。
消耗品の呪縛。

そして女であると言う呪縛。
最後の呪縛を完全に否定するため、彼女は自らの腹を裂き、子宮を抜き出し、千々に引き裂いた。
解体された子宮。
キュ・トス。
それがキュトスと言う名の字義であるというのは、けして偶然ではない。
なぜならば、キュトスと言う名は後から付けられたもの。
潜り女の本当の名前を知るものは誰もいない。
何故なら、道具に名前を付ける必要は無く、偶像に名前を付ける必要もまた無い。
ただ使い、ただ崇めればいいだけ。
キュトスは自分で自分の名前を付けて、嘗ての自分を否定した。
キュトスは解体された子宮を全身に針と糸で縫い付け、高らかに嗤った。
世界を。
大いなる、世界を。
人を。
偉大なる、人類を。
彼女は、女神だ。
運命を破壊する、女神だ。

新生した世界を否定した彼女は、異形の姿のまま自害し、世界の礎となった。
キュトスは世界、大地となった。
世界はキュトスの大いなる意思に包まれた。
そうして、この世界はこれほどまでに残酷で、過酷で、そして不条理に満ちるようになったのだ。
この世界以外は、とても優しい。

・・・・・・。

私の話は、これでおしまい。
インサ・マリサの役目はこれだけだ。
え?
結局神話じみてるって?

いいや。
これは神話じゃない。


だって、全部うそだからね。


嘘吐きインサ・マリサは、本当のことは言わないよ。

あれは私の創作だもの。
だって、言理の妖精はみんな嘘吐きでしょう?
私がうそをついたって、海面に真水を垂らすようなもの。
しかもその海はとっくに汚れてる。
あああああああああああああああああああああああああいみない。


インサ・マリサの一人騙り おしまい。



インサ・マリサ
「待て。


 ちょっと


 待て。


 な
 んだこれは
      、リン
        クして
          い
          る
          の
          か
          ?


 何処から?

 どうやって?


 誰が何のためにいったいいつこの干渉を


 え?

 お前、ひょっとして」


永劫船のノエレッテ?
「出航します。


 ボー。ボォー。



 今の、汽笛ね。

 」


完。

大反響に応えて第二部執筆中!


嘘吐きノエレッテはいかにしてインサ・マリサを慰めたのか!
第二ノエレッテはいつ現れるのか!
マリサって略すとサラミの香りがするよね!
コルク抜きってかわいい!
ワインは青くってとってもまぶしい!

来月号巻頭カラー大増5ページ!堂々開幕!
グダグダにならないか心配だ!

第二部  インサ・マリサと青い船。




「俺たちの戦いはまだ始まったばかりだぜ!!」


完。
第二部の構成。
1P扉タイトル(赤色カラーなので青い表紙絵がちゃんと配色されない)
2・3P見開きで「俺たちの戦いはまだ始まったばかりだぜ!!」
4P「完!」一文字
5P「次号予告!第三部激烈強制執筆中!!期待せず待て!!!だが断る!!!!」

第三部

強制執筆中
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