多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

書物

世界最大の奇書。作者不詳。

どう奇なのかは、Niv?が責任を持って説明する。

そのうちロードショー。

以下、引用。
滅ぼすんだよ神々を。わたしたちはそのために何百という言語を生み出して配置してきたんだ。言語の魔法としての寿命は長くなくてね。君らの持ってる魔法書の大半は役に立たんよ。書かれた当初は間違ったことを言ってなかったものもあろうが、すっかり連中の方に免疫がついてしまってな。

もともとわしらには言語も何もなかった。ただそこにいただけだ。むしろいなかったと言ってもいいくらいでな。そこにあるとき、言葉なんてのを始めてみようと思い付いた変わり者がいた。最初はひどく単純なものだった。命令形しかなくてな。

なんでいろんな言語で命令することをアケル?とかエアケルとか言うと思う。最初に言葉をはじめたそいつの名前がアケルって言うのさ。みんなあのじいさんのことが好きだった。だから、記念に自分の言語にアケルの名前を彫り込んどいたんだ。私の場合は開けると言う意味を与えておいた。あのじいさんがまさに、最初の扉を開けてくれたわけだからな。まあ、これはわしら同士の間で交される目配せみたいなものだ。

思えばあの頃が一番楽しかったね。「光あれ!」って言えば光があったし、「お前なんか死んじまえ!」って言えば、お前なんか死んじまった。「今のなし!」って言えば、それで何度でも蘇った。面白くてどれだけ繰り返したかわからない。驚きの連続でね。何せ、驚くってことすら驚きだった。アケルに「驚け!」って言われたときは、あれは本当に驚いた。

いつまでもそんな風にして日々が続いていくんだろう、ってその頃の私たちは考えていた。いつかそうでない日が来るとは、来る来ないの問題設定の次元で考えになかった。何か様子が違うって気付いたのが先か、アケルが向こうに行ったきりになったのが先かははっきりしない。あの頃は時間も今よりいい加減だったからな。いつも通りに言葉遊びをしていたわたしたちは、アケルを蘇らせようとして、いつまで経っても死んだままなのに気付いた。言葉が魔法としての性質を保てるのは無期限ではなくてな。いずれ免疫をつけられると、現実というやつはびくともしなくなってしまう。

そこに新しい言語っていう案を持ち込んだのがビセだ。ビセがいろいろつくって試していた言語にはまだ魔力が残っていたんだ。名詞もビセのアイディアでな。「名乗れ!」って命令を最初に捻り出したのがビセだ。あれにはアケルも驚いていた。

それで、わたしたちはみんなして新しい言語を考えはじめた。

神々を滅ぼすチャンスは2回あった。

最初がヌト語だ。ヌトは活発な、頭のいい子でな。わずか二万語の語彙でありながら、ヌト語ほど時空間を操る魔術に秀でた言語は未だにない。神々の存在に最初に気付いたのもヌトだ。彼がSsarmaquihueの影を踏んでいなかったら、未だにわたしたちは神のことを知らず仕舞いだったやらしれん。

悔やまれてならないのは、その頃わたしたちは、言語の耐久性が有限だと気付いていなかったことだ。アケル語以外に言語が擦り切れるのなんて見たことなかったからな。世界に魔術への抗体ができるなど想像もしていなかった。わしらは面白半分にヌト語を使いすぎて、あっという間に魔法言語としての寿命を縮めてしまった。その頃は神々が何なのかすらよくわかっていなかったからな。奴らの園に手を伸ばせる言語の重大さをわかっていなかったんだ。

2回目はジャッフハリムだ。あれは変わった女だった。わたしたちがみんな文法やら単語やら考えている間、ジャッフハリムはずっと絵を描いていて、それであるときいきなり、その絵を言語にすると言い出した。最初、誰もその意図を理解できなかった。わたしは絵に描かれたものの中で言語の体系をつくる試みだと思っていた。それがわかってみればアケル並の衝撃でな、つまりはそれが文字だったんだ。

文字の力は凄まじかった。実際、神々の一部は文字の中に完璧に封じ込めることができた。しかしな、今度はわしらは慎重になり過ぎた。ヌト語の過ちを繰り返さないように、ゆっくりとやり過ぎたんだ。そうしているうちに、神々の側が印刷を人間にもたらしてしまった。

ものすごい勢いで文字が溢れかえってな、言ってみれば予防接種だ。すぐに文字の魔力にも耐性をつけられてしまった。

あれからわたしたちは弱まった魔力で、手品まがいの魔術を使って生き延びてきた。わたしの名はミアスカ。チャカの表意文字に二系統の表音文字を合わせ、他言語の吸収率を高めることで免疫のつくりにくい言語をつくりあげた。辛うじて魔力を残しているが、それでもかつての力のほとんどは失われている。

しかし今ようやく待望の新しい言語が生まれようとしている、声と文字に続く予想し得なかった新しい言葉が。三度目の失敗はない。今度こそ神々の息の根を止めるんだ。

***
確かに引用元は存在した筈だ。だが其れも喪われてしまったのか。
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