ゴッドイーターでエロパロスレの保存庫です

時を同じくして、アナグラのエントランスは先程の喧騒と打って変わり、静寂に満ちていた。
そんな中、キーボードを叩く音だけが響いている。
神機使いが達がアラガミの掃討とタツミの捜索に向かってから、さらに時間が経過していた。
ヒバリは、安全な場所にいながら何の役にも立てない自分が歯がゆくなった。

日もすっかり沈んでしまった頃、極東支部のエントランスは騒がしく人であふれていた。

「本日、第二部隊の四名がヴァジュラの大群に遭遇。
囮として大森タツミが残り、負傷者一名と残りの二人が帰還した。
今回、第一部隊と帰還した第二部隊の二名に遂行してもらう緊急任務は
突如現れたヴァジュラの大群の掃討および大森タツミの捜索だ。
第二部隊の報告では、ヴァジュラの数は特定できないほどに多い。
乱戦が予想されるため注意して任務に当たれ。」
雨宮ツバキの声量の割によく響く声がエントランス全体を包む。

「カノン、どうだ。繋がったか?」
「ダメみたいですっ。何度も通信してますけど…応答しません」
出撃前。何度もタツミとの通信を試みるカノンだったが、応答は一度もなかった。
タツミが一人でアラガミの大群の中に残ってから、約2時間は経過していた。

カノンとブレンダンのやりとりを見ていたヒバリは、ため息を吐いた。
ヒバリはヒバリで、第二部隊がアラガミの大群と遭遇した地域にタツミの反応がないか調べている。
しかし、今のところタツミのものらしき反応は無かった。

「今日は俺たちのせいで済まないな。休暇を潰して来てくれたんだろ?
ありがとう、力を貸してくれ。俺はなんとしてもタツミを助けたい」
「…私からもお願いします!」
ブレンダンとヒバリは第一部隊のリーダーに懇願するように言った。
リーダーは黙って頷いた。

そんなやり取りを見ていたヒバリは、ため息をついた。
「くっ…、どうして見つからないの!?」
普段のタツミに対する態度や様子からは想像できないほどに、ヒバリは焦っていた。
焦りに比例するように、キーボードを叩くスピードが増す。
これだけ探して見つからないのは、おそらく反応を感知できないほどタツミが衰弱しているか、
最悪の結果だろう。それが分かっているだけに、ヒバリは落ち着いていられない。
ヒバリ自身、どうしてこんな胸が締め付けられるような焦燥感に駆られるのか、理解できなかった。

「私…タツミさんなんて、ただしつこく声かけて来る人、くらいにしか思ってなかったのに…なんでだろ」
自問自答する。ヒバリはその答えを心の中で少しずつ紐解いていく。

軽薄そうに見えて、いざとなれば自分の事なんて顧みず仲間を守るタツミ。
皆には誰よりも明るく振舞い、その裏で誰よりも防衛班班長として責任を感じていたタツミ。
ヒバリの心の中で、そんな日常の一ページとしてしか見ていなかった出来事が蘇ってきていた。
思考を遮る様に響き渡る足音。ヒバリは音のした方向に視線を向けた。部隊が出撃するようだった。

アナグラの外へと神機使い達が駆け出す。
戦いが始まろうとしていた。

「くそっ、なんて数だ…。どっから沸いてきやがった!?」
ソーマが息を荒げて言う。
戦況は良くなかった。第二部隊が遭遇したヴァジュラの大群がほかのアラガミまで引き寄せ、
小型から大型まで様々なアラガミが群れを成していたからだ。
「もしかしたらアラガミにも『アナグラ』みたいなものがあるのかもしれませんね」
トリガーを引きながらアリサが答える。

そんな中、タツミを探す人影が二つあった。
ブレンダンとカノンは、声を上げて戦火の中を走り回る。心なしかアラガミの少ない一帯に
入ったときだった。何かを見つけてカノンが声を上げる。
「あっ!!ブレンダンさん!!あれタツミさんじゃっ…」
「何だと…!?」
見ると、視線の先でタツミらしき人物が黒い影と対峙していた。
さらに近づく。だんだんはっきりと見えてくる、ボロボロに傷ついたタツミとその神機。
そしてその正面にアラガミ。

「あれはヴァジュラ…、いや。ディアウス・ピターか!?」
「ブレンダンさん、早く助けに行きましょう!!」
そう言って駆け出したカノンとブレンダン。しかし、上空から突如飛び込んできた二体のヴァジュラに
道を遮られてしまう。とっさに二人は神機を構えた。
「くそっ、簡単には行かせてくれないらしいな…」
「タツミさん…待っててくださいっ!!」
二人は、現れたヴァジュラと交戦しながら、時折タツミの様子を気にしたように視線を向ける。
その先でタツミは、倒れそうになりながらも果敢にディアウス・ピターに挑んでいた。

タツミが振りかざしたブレードがディアウス・ピターに直撃する。
しかし、皮一枚切ったところではじき返されてしまった。ディアウス・ピターは反撃のタイミングを
逃さず、電撃を放つ。タツミの身体が宙に浮き、回転しながら地面に落下した。
「ぐッ…は、あ!!ダメだ…強い。俺、もうダメなのかな…」
先程までは何度吹き飛ばされ、何度地に伏しても立ち上がっていたタツミだったが、
胸に抱いた希望を超える絶望を前に、もう立ち上がろうとすることは無かった。
タツミの耳に、遠くから聞き覚えのある二つの叫び声が聞こえた気がしたが、
反応する気力はもう残されていない。
タツミは、地面に仰向けになったまま、静かにポケットから携帯を取り出した。
震える指で操作し、想い人の名前の上にカーソルを合わせ、通話ボタンを押した。

タツミの帰還を望む気持ちは、誰よりも強いのに。
そう、誰よりも望んでいた。
タツミのことをおもうと、胸が苦しくなる。もし今日、何事も無く任務を終えて、約束どおり
二人で食事が出来ていれば、どれだけよかったか。
二人で他愛ない会話をしながら食事をしてをして、また明日、元気な姿をいつもと変わらず
見せてくれたら、どれだけ嬉しいか。
そんな願望や、タツミを心配する気持ちががどこから来るのか、ヒバリにはもう分かったきがした。

「私はタツミさんのこと―――」


突然、ヒバリに通信が入る。同時に、青年の枯れた声が響いた。
「繋がってよかった…。ヒバリさん、俺だよ」
落ち着いてはいるが、聞くだけで極限状態だと分かるその声に、
ヒバリはらしくもなく取り乱したように答える。
「タツミさんっ!!その声っ…、今どこに!?無事なんですかっ!?」
「すまねェ…。へへっ、今日の約束、守れそうに…無い。
ヒバリちゃんと話すのもこれが最後だ。今までしつこく話しかけてすまなかった」
―――最後。その言葉に、ヒバリは普段の落ち着きを失ってまるで幼い少女のように嗚咽を漏らした。
「俺は、もうダメらしい…。身体も…神機もボロボロだ。
あ、そーだ。食事に誘ってくれて…ありがとな。結局行けなかったけど、最後にいい夢が見れたぜ」
「最後だなんて…言わないで。諦めないでくださいっ…!!
通信の反応から位置を特定して、第一部隊の皆さんに救援に向かってもらいますので―――」
言葉をさえぎるように無線の先から聞こえる、アラガミの呻き声。そして、確実に近づく足音。
ヒバリにも、タツミが今どんな状況に置かれているか簡単に理解できた。

「いやッ、タツミさん…!!早く逃げてくださいっ!!はやくっ」
「ッく…。ホントに最後になりそうだなッ。
俺、言うよ。今まではこういう言葉は安易に使って安売りしたくなたったから
一度も言わなかったけど。ヒバリちゃんに嫌われてるのはわかってるよ。
こんなしつこくくる男なんて嫌だもんなァ。もしかして俺、軽い男だなんて思われるかも知れないけど
こんなに強く惹かれたのは、ヒバリさんが最初で、最後だ。だから聞いてくれ
俺…ヒバリさんのことが…―――」
これ以上聞くと、全てが本当に終わってしまう気がした。
頭の中が真っ白になり、何も考えられないヒバリ。
無線の先から聞こえる、荒々しい獣の吐息。
完全に生き伸びることを諦めた人間と、それを救いたいと強く願う心。

気がつくと、ヒバリは大粒の涙を頬へ流していた。それが誰のために流した涙かなんて、もうわかっていた。
そして、無意識のうちに叫んでいた。
「――逃げないでくださいッ!!」
「なっ、ヒバリちゃん…?」
「自分だけ言いたいこと言って逃げるなんて…ずるいですよ。
私だって…タツミさんに伝えたいこと、あるんですから」
「ヒバリ…ちゃん」
「私、いつもタツミさんが話しかけてきたとき、冷たくしてしまってたかもしれません。
でも本当は、部下や仲間や居住区の人たちのために頑張ってた事、ずっと評価してました。
ちょっと恥ずかしくて、あなたやほかの人の前では素直になれなかったけど、
私、また誰よりもやさしくて頼もしいあなたの笑顔が見たいです。
帰ってきたら食事でも、デートでも何でも付き合ってあげますから。
だからっ、帰ってきて…おねがいっ」
それ以上は言葉にならず、嗚咽にかき消された。

タツミは泣いていた。こらえてもこらえても涙が流れた。
「くっそ…、俺…いやだよっ…!!
おれ…しにたく、ないよ。ヒバリちゃん…」
タツミは嗚咽を漏らしながら泣いた。ヒバリの前でこんな姿、みっともないと思ったが
それでも止まらなかった。
タツミが今までヒバリと接した中で始めて見せた弱さだ。

気がつくと、ヒバリは自分が非戦闘員であることも無視して、外へと飛び出していった。

タツミは、泣きながら立ち上がる。足が震え、神機を持つ手にも力が入らない。
それでも、声を上げて眼前のアラガミに立ち向かった。

「タツミ、なんとか持ちこたえたかッ…!!だが、俺達もかなりヤバイな…!!」
「ヴァジュラと一対一なんて…、勝てる気がしないよっ!!でも、勝たなきゃ」
「カノン、一人が一体を相手にしていても埒が明かない。片方を集中的に叩きのめして
戦力を減らすぞ!!」
ブレンダンが片方の敵の懐に飛び込み、斬る。すばやいステップで離脱したところを
カノンが射撃する。視界の外から飛び込むもう一体の攻撃に吹き飛んだブレンダンに
カノンが回復弾を撃った。
起き上がったブレンダンはすぐに反撃に出ようとするも、ふと目に留まった光景に、
動揺したような表情をした。それにつられてカノンもブレンダンの視線を追う。
見ると、ヒバリが息を切らしながらこちらへ向かっていた。
「っど、どういうことだ!?何で君がここに…」
問い詰めようとしたブレンダンだったが、ヒバリの様子を見て悟った。
「タツミのところへ行くのか…?」
ヒバリは静かにうなづく。

本来なら非戦闘員を死地へ送り込むことなど言語道断の行いだが、
だからといって今の状況では護衛することも出来ない。
「タツミの、力になってやってくれ…」
ブレンダンは決心したようにそう言うと、行く手をふさぐヴァジュラを引き付けて道を空けた。
「でやあああああああ!!」
ヒバリが去るのを見届けると、カノンの神機が業火を上げる。必殺の一撃を食らった一体のヴァジュラは
うめき声を上げながら倒れた。


その頃タツミは、ディアウス・ピターを何とか瀕死に追い込んでいた。
「ハァ…ハァ、へへっ…。あとは…止めを刺すだけだが、ダメだ
もう腕が思うようにうごかねェや」
地面に片足をついてひれ伏すディアウス・ピター。ブレードの切っ先を向け
止めを刺そうとするも、力なく神機は手から滑り落ちた。
その時、タツミは自分のもとに駆け寄る足音と、なんだか心地よい声を聞いた気がした。
朦朧とした意識をそちらに向けると、何か暖かいものに正面から抱きしめられた。
タツミは困惑したが、それがヒバリだと気付くのに時間は要さなかった。
ヒバリの流す涙が傷口にしみる。そんな痛みさえも、今のタツミには力になる気がした。

ヒバリがタツミの手を取り、神機を握らせる。
目の前のアラガミに、最後の一撃を与えるために。
愛する人を、守るために。


夜が明ける頃。
アラガミの大群は沈静化し、負傷者は出たものの、誰一人として犠牲は生まれずに
緊急任務は終了した。
タツミは、ひどい怪我を負っていたものの命に別状はなく、病室内に見舞いに来た仲間達に
いつもの明るい笑顔を見せていた。

そしてまた、病室のドアが開く。
タツミは、また誰か見舞いに来てくれたのかとベッドから上半身を起こして入り口を見た。

そこに立っていた人物は少し頬を染めてタツミに微笑みかけた。
タツミはそんな表情を、始めてみた気がした。

このページへのコメント

たつみさんの少なかったのでうれしいです

0
Posted by たつみさん格好いい 2013年10月22日(火) 21:07:37 返信

感動しましたっ

0
Posted by ☆ハンニバル☆ 2013年05月12日(日) 19:42:13 返信

これは、本にした方がいい!!

0
Posted by 馴れ馴れしくして 2012年10月18日(木) 22:09:12 返信

感動の一言!

0
Posted by 名無し 2012年05月10日(木) 07:41:23 返信

傑作!!

0
Posted by バンボー 2011年08月31日(水) 03:20:42 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

Menu

メニュー

どなたでも編集できます