ゴッドイーターでエロパロスレの保存庫です

カンカンと金属板を叩くいくつもの靴音がこだまする。エイジスへと伸びる地下輸送路は地下深く、足場は剥き出しの鉄板が覆っていた。
神機を手に生産プラントの区画を駆け抜け、次のエレベーターと急ぐ。
思えばトレーニングルーム以外でアナグラの中でむき身で神機を持って走るのは初めてではないだろうか。
それだけ安全な所に居たのだと思い知る。
外部居住区では頻繁に対アラガミ装甲が突破され、アラガミに抗う術のない住人が死と隣り合わせの生活をしているというのに。
アーク計画が実行されればそんな危険は無くなる。しかし、その益にあやかれるのは約1000人のみ。
しかもその殆どは今までも安全な場所に居た者達だ。アラガミを狩っていたのはその人達のためではなく、1000人に選ばれなかった人達の為。
そう思いながら"仕事"をこなしてきた。
始めは嫌で仕方がなかった仕事も、慣れと、何より外部居住区に行く度に聞こえる感謝の言葉で、好き…とまではいかなくても誇りを持てるようになっていた。
勿論心ない言葉を投げつけられる事もあったが、それを上回る必要とされているという満足感に満たされていた。
アーク計画はそれを全て無に帰してしまう。彼等や自分の存在意義ですら意味のないものだと否定されたも同然だ。
そんな事はさせる訳にいかない。例え、1000人が確実に助かるとしても。

道に詳しいコウタに先頭を任せ、リーダーである彼は後方の警戒に当たる。
いくら箱舟に計画の賛同者が乗り込みアナグラには反対派のみが残っている状況でも、計画を潰えさせようと動いている自分達を計画が最終段階に入ったとはいえ、あの計算高いシックザールが放っておく筈がない。
エイジスへ向かう途中で妨害があると考えていいだろう。気合いを入れ直して神機の柄を握り直す。
と、急に同じく後方に就いていたアリサが走る速度を落とした。前を走る三人と距離が空き、どうしたのかとペースを合わせる。
「大丈夫か?アリサ」
「え…?あ、はい!」
彼女はエイジス侵入からずっと捜索の手から逃げ続けていた。アナグラに漸く戻れるようになり、帰投できたのもつい先程の事。
連日の逃亡で疲れていない訳がない。大丈夫だと答える彼女の表情は陰り、覇気が無いように見えた。
「次を下に降りれば輸送路に出る。そこからは車だから」
唇を固く結びアリサは頷く。やはり疲れが溜まっているのだろうかと彼は思い、コウタに到達距離を聞こうとした時だった。
「あの、リーダー」
思い詰めた顔でアリサが呼びかけてきた。
「私、リーダー…いえ、貴方に伝えておかなければならない事があります」
その声色は切羽詰まったようで、悲壮感さえ漂わせている。距離を取ったのもこの為だったのか。
コウタ達に先に行くように目で合図し、二人は足を止めた。
「何?」
アリサは息を整え、キッと彼を見据えた。そして、重い口を開く。
「私、貴方が好きです…ずっと好きでした」
緊張のあまり、上擦った声だった。そこで急に彼女は言葉を切り、俯く。
「もう、最後かもしれないから…私の気持ち、知っていてほしくて」
上気した頬にローズグレーの髪がかかる。キャスケットの鍔に阻まれ彼女の顔を伺うことは出来ないが、声の調子から思い詰めた表情をしていると予測できる。
今際の際だからという事か。なんだか遺言じみている。
「アリサの気持ちだけでいいの?」
「えっ?」
「僕の気持ちは…答えは、いらない?」
付き合ってと言われた訳ではない。答えを求められているのでもない事は分かっていた。
だが、自分達は死にに行く訳ではない。これからも生きるためにエイジスに赴くのだ。
生きるか死ぬか、逆境時にそれを決めるのは実力と、時の運と、何よりも生きたいという気持ちの強さだ。
今まで何度も死線をくぐり抜けてこられたからこそそう思う。生きて帰った先に必ず成さなければならない事があればその気持ちも強まる。
だから、あえてその先に灯を吊した。
「アナグラに帰ったら答えるよ。だから、生きて帰ろう。皆で…勿論、シオも」
アリサの今の台詞は暗過ぎるよと笑い、彼女の肩にかかった髪を払う。
はっと顔を上げた彼女の顔に、わずかな笑みが広がった。
「はい、シオちゃんも一緒に」
再び闇に飲まれるような通路を走り出す。"全員で生きて帰る"ために。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

Menu

メニュー

どなたでも編集できます