カウンセリングの実践 氏原寛
＃１
カウンセラーはクライエントの役に立たねばならない。クライエントがよくなったかどうか、という結果が大切だ。カウンセラーが己のあり方を反省するのは大切だが、肝心のクライエントがどうなったかが見えなくなっては、本末転倒だ。カウンセリング関係だけが、人間の成長に寄与すると思うのは愚かである。一種類の関係で成長を期待するのはおかしい。カウンセリングよりももっと役に立つ方法があれば、もともとカウンセリングなどする必要はない。要するに、相手の人がよくなりさえすればそれで良い。われわれはカウンセリングをするためにクライエントに会っているのではない。クライエントの役に立つために会っているのである。
＃２
カウンセリングで目指すべきものが現実適応なのか自己実現なのか、という古くて新しい問題がある。カウンセラーは、ややもすればクライエントの自己実現を目指したがる。方向としては間違っていない。しかし、自己実現の道はいうほどに生やさしいものではない。ある程度以上の力がなければ、非現実的な世界に落ち込む危険性があるのだ。だから、アンバランスは承知の上で、現実適応に重点をおいた方がよいクライエントのいることを、カウンセラーは重々承知しておかねばならない。アンバランスをアンバランスのままに現実を生き抜くか、アンバランスをバランスよくする修正するか、その判断が大事だ。
＃３
クライエントの中には、自分の内側の世界に入り込んでしまって、外側の人たちとかかわろうとしない人がいる。厳密にいえば、外の世界とかかわりたいのかもしれないが、その道が狭すぎるのである。外とつながる道（パターン）を探すのが、カウンセラーの最初の仕事である。カウンセラーが方法を間違うと、クライエントは傷つけられる危険を敏感に察知して、自分の殻の中に逃げ込んでしまうかもしれない。しばしばカウンセラーはクライエントの内的世界を共有しようと試みるが、ある種のクライエントにとっては、それが堪えることのできぬ侵入、脅威と感じられる。カウンセラーは、必ずしもクライエント内側に入り込む必要のない場合、むしろ入り込まない方がよい場合もあるのだ。もしカウンセラーが、そういうクライエントの感情の内側に入り込もうとするのなら、途方もなく大きいその期待を受け取る覚悟がなければならない。
＃４
そもそも本書を書く気になった一番の理由が、近頃、カウンセリングという（理想）型に縛りつけられて身動きできなくなっているカウンセラーが多すぎるのではないか、という著者の個人的な危惧の念なのである。あまりに理想ばかりにこだわると、自分のしたことがカウンセリングなのかどうか、つまり、自分がカウンセラーの名に値するかどうかばかり気になって、肝心のクライエントが見えなくなってしまう。（→＃１）
＃５
人間の本当の幸福とは何かなど、誰にも分かりはしない。
＃６
先生やカウンセラーがいろいろやってもうまくゆかないのに、占い師の指示でよくなることがある。カウンセラーは自分の得意とする方法とは違っても、それでクライエントがよくなったとすれば、なぜそうなったのかについて自分なりの枠組みで納得しておく必要がある。いわゆる伝統的心理療法の各派の間の差に加え、それら全部と行動療法の違いを思えば、カウンセリングと四柱推命（＊占い）の落差もそれほど大きいとはいえないかもしれない。原始的なおまじないと近代的な心理療法との類似性については、エレンベルガーの『無意識の発見』の第一章を読むのがいい。占い師や拝み屋さんのところで治る人たちのいることを、われわれは謙虚に認めねばならない。もし批判するなのなら、まずなぜ治ったかについて自分たちなりの考えを示し、その上でその限界を指摘すべきであろう。
＃７
カウンセラーはクライエントの役に立たねばならない。クライエントがよくなったかどうか、という結果が大切だ。カウンセラーが己のあり方を反省するのは大切だが、肝心のクライエントがどうなったかが見えなくなっては、本末転倒だ。カウンセリング関係だけが、人間の成長に寄与すると思うのは愚かである。一種類の関係で成長を期待するのはおかしい。カウンセリングよりももっと役に立つ方法があれば、もともとカウンセリングなどする必要はない。要するに、相手の人がよくなりさえすればそれで良い。われわれはカウンセリングをするためにクライエントに会っているのではない。クライエントの役に立つために会っているのである。
＃２
カウンセリングで目指すべきものが現実適応なのか自己実現なのか、という古くて新しい問題がある。カウンセラーは、ややもすればクライエントの自己実現を目指したがる。方向としては間違っていない。しかし、自己実現の道はいうほどに生やさしいものではない。ある程度以上の力がなければ、非現実的な世界に落ち込む危険性があるのだ。だから、アンバランスは承知の上で、現実適応に重点をおいた方がよいクライエントのいることを、カウンセラーは重々承知しておかねばならない。アンバランスをアンバランスのままに現実を生き抜くか、アンバランスをバランスよくする修正するか、その判断が大事だ。
＃３
クライエントの中には、自分の内側の世界に入り込んでしまって、外側の人たちとかかわろうとしない人がいる。厳密にいえば、外の世界とかかわりたいのかもしれないが、その道が狭すぎるのである。外とつながる道（パターン）を探すのが、カウンセラーの最初の仕事である。カウンセラーが方法を間違うと、クライエントは傷つけられる危険を敏感に察知して、自分の殻の中に逃げ込んでしまうかもしれない。しばしばカウンセラーはクライエントの内的世界を共有しようと試みるが、ある種のクライエントにとっては、それが堪えることのできぬ侵入、脅威と感じられる。カウンセラーは、必ずしもクライエント内側に入り込む必要のない場合、むしろ入り込まない方がよい場合もあるのだ。もしカウンセラーが、そういうクライエントの感情の内側に入り込もうとするのなら、途方もなく大きいその期待を受け取る覚悟がなければならない。
＃４
そもそも本書を書く気になった一番の理由が、近頃、カウンセリングという（理想）型に縛りつけられて身動きできなくなっているカウンセラーが多すぎるのではないか、という著者の個人的な危惧の念なのである。あまりに理想ばかりにこだわると、自分のしたことがカウンセリングなのかどうか、つまり、自分がカウンセラーの名に値するかどうかばかり気になって、肝心のクライエントが見えなくなってしまう。（→＃１）
＃５
人間の本当の幸福とは何かなど、誰にも分かりはしない。
＃６
先生やカウンセラーがいろいろやってもうまくゆかないのに、占い師の指示でよくなることがある。カウンセラーは自分の得意とする方法とは違っても、それでクライエントがよくなったとすれば、なぜそうなったのかについて自分なりの枠組みで納得しておく必要がある。いわゆる伝統的心理療法の各派の間の差に加え、それら全部と行動療法の違いを思えば、カウンセリングと四柱推命（＊占い）の落差もそれほど大きいとはいえないかもしれない。原始的なおまじないと近代的な心理療法との類似性については、エレンベルガーの『無意識の発見』の第一章を読むのがいい。占い師や拝み屋さんのところで治る人たちのいることを、われわれは謙虚に認めねばならない。もし批判するなのなら、まずなぜ治ったかについて自分たちなりの考えを示し、その上でその限界を指摘すべきであろう。
＃７
2005年08月08日(月) 02:14:22 Modified by gedo5